〔[〕 化学的性質とマイグレーション
(17) 化学的性質−酸化、腐食とマイグレーション
はんだに関わる化学的現象、特に環境化学的現象の酸化、腐食、イオン・マイグレーション
(電気化学マイグレーション)、更には化学的とはいえないが、関連するところの物理的マイグレーション
すなわち、エレクトロ・マイグレーション、熱・応力マイグレーションについてみて見る。
(17−1) 酸化
ここでは乾食(高温でのO2)による酸化を考える。
(17−1−1) 自由エネルギー
(A) エリンガムEllingham図
金属の酸化と酸化物の還元性のギッブスの自由エネルギーによる評価(エリンガムEllingham図の利用)
ここでは高温における金属のO2による酸化(乾食)を考える。
酸化物(硫化物・・・、一般に化合物)の生成自由エネルギーを温度に対しプロットしたものを
エリンガムEllingham図といい、
この図で下にあるほど酸化物は安定で還元されにくい。
酸化物の生成自由エネルギーはΔG
0=lnPo
2であり、詳しいエリンガム図では右側に酸素分圧の目盛りや還元ガス比(H2/H2O、CO/CO2)
も目盛られている。
2M+O2→2MO
MO+H2→M+H2O
右側にはその基点(上からOまたはΔG=0、H、C)が示されており、ある金属のある温度の自由エネルギーと基点O(0)を結んだ線と酸素分圧の
目盛りの交差点がそのときの平衡酸素分圧を示し、したがってこれでおおよその真空還元の目安となる。
水素還元に対しては自由エネルギーとH点を結ぶ線のH
2/H
2O目盛りの交点がそのときのH
2/H
2Oを与え、この比を大きくする(H2を多くする)と
金属が還元されることとなる。
炭素還元はコークスの燃焼でCOを発生させ、このCOで金属を還元させることとなる。
MO+CO→M+CO2
CO/CO2はC点と自由エネルギーとH点を結ぶ線のCO/CO2目盛りの交点が与える。
(B) はんだに関係する元素の酸化反応のギッブスの自由エネルギー
Lee
Hwang
ESPEC
Kuhman
SnPb、InSn、AuSnの比較
Lin
溶接学会 竹本
硫化と酸化 神戸製鋼 大西
(17−1−2) はんだの酸化膜の諸性質
AIRPRODUCT
融点+140℃での酸化膜厚
Ni/Auへのフラックスレスでの濡れ
Miric
Indium Co.
Warwick
Snの酸化
雰囲気腐食
(17−1−3) 酸化膜の保護性(PB比)
PB比
PB比=酸化物体積/金属体積=(酸化物分子量/酸化物密度)/(金属原子量/金属密度)
PB比>1で酸化物は緻密だが圧縮応力を発生する傾向をもつ。成長機構が金属イオンの外方拡散だと
応力解放されるが酸素イオンの内方拡散では解放は困難。
その2
(17−1−4) 酸化膜の色
めっきSn膜の変色の原因には、めっき浴物質の含有、不純物、下地の拡散、反応、酸化膜の干渉色などがある。
ここでは酸化膜の多重干渉色を考える。
干渉色は酸化膜厚みの目安となる。
干渉色(垂直入射による強めあう条件)
2nd=(m+1/2)λ
d:厚み、n:屈折率、
屈折率 屈折率
Sn:約2.0、Cu2O:2.7、ZnO:2.0、InO2:約2.0
Snめっきの酸化による干渉色
色 |
厚み(nm) |
はんだ濡れ性 |
無色 |
2〜8 |
◎ |
薄黄色 |
8〜15 |
○ |
黄青色 |
15〜20 |
△ |
青色 |
20〜30 |
△ |
青紫色 |
30〜50 |
× |
褐色 |
50〜 |
× |
銅の酸化膜
銅表面の色と酸化皮膜の厚さ
銅表面の色 |
酸化皮膜の厚さ(nm)
|
|
暗褐色 |
20 〜 35 |
赤褐色 |
30 〜 40 |
紫色 |
35 〜 45 |
青色 |
40 〜 50 |
緑色 |
60 〜 80 |
黄色 |
80 〜 100 |
橙色 |
100 〜 120 |
赤色 |
110 〜 125 |