ヘルシンキ工科大のT.ラウリラ、V.ヴオリネンらの論文
ヘルシンキ工科大のT.ラウリラらの論文の要旨
論文1
Pbフリーはんだ付けでの界面反応層への不純物と合金化の効果
要約
合金化および不純物成分はSn基はんだと導電金属との反応で3つの主要な効果をもつ。
第1に反応、成長速度を抑制、促進する。
第2に形成相の物理的性質を変化できる。
第3に界面に付加反応相を形成したり、別の反応生成物を形成できる。
合金化および不純物成分はおおまかに2分類できる。
IMC相に顕著な固溶を示すもの(Ni、Au、Sb、In、Co、Pt、Pd、Zn)
IMC相に多くは固溶しないもの(Bi、Ag、Fe、Al、P、RE、Ti、S)
ある種の合金化成分は適量の添加で界面のIMCの性質を調整できるが、過剰だと信頼性の劇的低下をもたらす。
*Cu−Sn IMCで
Cuを置換・・・Ni、Au、Co、Pt、Pd
Snを置換・・・Sb、In、Zn
1.序言
携帯製品の登場により電子製品の信頼性に関係するIMC反応層の機械的性質がより重要となっている。
はんだ相互接続での応力の大きさと分布は熱サイクルと落下試験条件とでは異なる。
Pbフリーはんだの高流動応力のためIMCは落下では熱サイクルより顕著に高い応力を蒙る。
界面反応と生成相の性質を変化させるのによく使用される手段は金属形成層またははんだへの微量成分添加である。
ここではSn基はんだとCu基体の反応を検討し、Ni基体については行わない。
2. 熱力学−速度論的接近
2.1.1. 完全平衡
すべての相の平衡。
2.1.2. 局部平衡
界面での相の平衡。
250℃での液体SnとCuの接触で相間領域に形成されるIMC(赤線)
(平衡相は温度で異なる)
2.1.3. 準安定平衡
2.1.4. 化学反応の駆動力
2.2. 速度論的考慮
2.2.1. kirkendall効果
異なる元素は異なる速度で移動する、このため反応対では一方に空孔が蓄積することによりkirkendallボイドが
形成されることがある。これは多くのはんだ相互接続で見られる。
3. Sn|Cu反応対での微細構造形成
典型的はんだ付け工程温度260℃以下ではCu6Sn5(η)が最初に形成される。
形態は幾分のファセットをもつ半球状あるいは丸形。
表面粗さの影響を受け粗いほど単位当たりに多くの結晶が形成される。
局部的組成的過冷却のため一様な帆立貝殻状Cu6Sn5(単一相)のほかに単一相に隣して(Cu6Sn5+Sn)
2相層が形成されうる。
過剰なCuが存在すると共晶構造同様に長い管状Cu6Sn5が生成する。
通常検知されない非常に薄いCu3Sn層がCu基体とCu6Sn5層の間にあるに違いない。
Cu6Sn5は室温では単斜晶η’が安定で、高温では六方晶ηが安定だがはんだ付けでは低温相に変態できず、
高温相ηが準安定相。平衡での変態温度は186℃。
もし150℃付近になると変態は起こりうる。
固相では50−60℃以上でCu/Cu6Sn5界面にCu6Sn5を食ってCu3Sn(ε)が形成される。
4. Cu−Sn IMCへ顕著な固溶を示す成分のCu−Sn IMC形成への効果
4.1. Niの効果
最も一般的な導電金属はCuだがしかしCuの液体はんだへの溶解速度は速い、そのためAu保護膜を形成した
Ni金属層形成(無電解、電解)が利用される。しかしこれは他の問題を引き起こす。
たとえばCuを含まないSn基はんだではNi3Sn4の上に(Au,Ni)Sn4の再堆積が起こる。
またCu含有はんだではCu量により(Ni,Cu)3Sn4、(Cu,Ni)6Sn5あるいは両方のIMCがNi上に形成されうる。
無電解Ni(P)では界面反応生成物は複雑で脆くなる。
4.1.1. Cu−Sn系でのIMC層の成長と特性へのNiの既知の効果
もしCuの良好な濡れ性とNi、Cu(Ni)合金の低溶解、反応性を兼ね備えると新しい金属化材料として利用できる。
OhrinerらはSn基はんだとCu合金での反応を調べ、Sn5Ag、Sn5Sb、共晶SnPbではいつも5〜10原子%Niで
IMC成長速度が最大になることを発見。またCu−Ni合金では成長するのは(Cu,Ni)6Sn5。Cu3snが存在しないのは
Niによると考えられた。
Paulは固相反応では上記量Ni含有Cu合金の(Cu,Ni)6Sn5の粒寸法は純Cuより1桁小さいことを発見。
これより(Cu,Ni)6Sn5での高拡散流がCu3Sn形成を抑制する可能性がある。
Niははんだ合金成分としても利用される。
AmagaiによるとNi添加で(Cu,Ni)6Sn5粒構造は微細化し、リフロー回数をふやしても粗大化しにくい。
GaoによるとNi添加は(Cu,Ni)6Sn5の界面での形成速度を液体と固体でも上昇させる。
また固体アニールでのCu3Sn層厚みは減少し、(Cu,Ni)6Sn5粒寸法は顕著に減少する。
NogitaらによるとNi添加は六方η−(Cu,Ni)6Sn5を室温で安定化させる。
XuらによるとCu6Sn5がNiを固溶すると高剛性化、高硬度化する。
4.1.2. Cu−Sn系での固相IMC成長でのNiの効果の熱力学−速度論的解析
(@) 少量(0.1原子%)添加でIMC全厚がCu/Sn拡散対の約半分で、Cu3Sn/Cu6Sn5比は顕著に減少。
(A) もし0.4原子%以上液体Sn基はんだに添加されるとはんだマトリクスからNi3Sn4析出。
固体ではNiとCuは完全に固溶。
(B) このため1〜2.5原子%添加でCu/Cu3Sn界面に空隙が形成されCu6Sn5厚みはCu/Snより増加。
更に増えると(5原子%付近)Cu6Sn5厚みはCu/Snの約2倍となりCu3Snは完全消失。
(C) 10原子%添加で空隙は消え、Cu6Sn5厚みは再度Cu/Snに接近。
Sn−Cu−Ni系状態図と実際の挙動には差異がある。
4.1.3. Cu−Sn系での液相IMC成長でのNiの効果の熱力学−速度論的解析
液体SnとCu−Ni合金の反応層厚み
反応帯は2つの異なる形態からなる。
Cu−Ni合金に接して連続で一様なIMC相(単一相)が見られる。
この層の上に針状と繊維状のIMCがSnマトリクスに埋め込まれた2相層が存在。
2相層の厚みは組成に依存する。
高反応速度では反応層は主に2相層からなり厚みは大きくに変化。
準安定Sn−Cu−Ni状態図
Cu、Ni、Snの液体での強い相互作用のため溶解したCuとNiは固液界面に接して存在し、
溶解の駆動力を減少させ、厚い2相反応層形成を可能にする。
純Cu/Sn反応対ではCuはもとの界面から移動し去り、局部的過飽和度は不十分で厚い2相反応層形成
あるいは溶解減少は起きない。このため非常に薄い2相層の前に多量のIMCを析出させる。
4.1.4. Cu−Sn系での液相IMC層成長でのNiの効果の要約
Ni添加で固体ではCu6Sn5が増加しCu3Snは減少。
Niは固液接触で2相層厚み〔(Cu,Ni)6Sn5+はんだ〕を増加させる。
(Cu,Ni)6Sn5粒径を減少させ機械的特性を改善するがIMC成長速度を促進。
粒界拡散の温度感受性は高くない。
Ni置換でIMCは硬く、高剛性になる。
NiはCu6Sn5の構造変化に顕著に影響、これには得失がある。
機械的特性改善にはNi量制御が重要、0.1原子%以上ではIMC相の成長速度が非常に高くなる。
Niのはんだへの安定、準安定溶解量は非常に小さいのではんだへの添加量は制限される。
4.2. Auの効果
導電体表面保護のためのAu被覆が永らく使用されている。
液体SnへのAu溶解度は高く速い。
しかしはんだ相互接合のAu量は低く保たれている、Auが多すぎるとはんだ接合の脆化をもたらす。
あるいはAuSn4再堆積と信頼性問題が生じる。
ParkらはNESACに0.1〜5.0のAuを添加しバルクはんだと界面の微細構造を調査。
0.25%以下ではリフロー後は通常の帆立貝殻状(Cu,Au)6Sn5、しかしこれより多いと界面IMCの
形態が変化。界面構造は2相層〔(Cu,Au)6Sn5+Sn〕からなる。
Sn−2原子%Auの150℃、2560hアニールでは純Cu−Sn系と非常に異なりε−Cu3Snは
いつでもη−Cu6Sn5を越えることがなかった。
(Cu,Au)6Sn5でAuはCuを19.5原子%まで置換。
Ni電極での界面脆化すなわちAuSn4再堆積。
(Park)
4.3. Sbの効果
SbはSnを固溶強化するのでSn基Pbフリーはんだ合金化成分として調査されている。
SbはSnを置換〔Cu6(Sn,Sb)5〕する。
RaiらによるとSn5SbはんだはSn3.5Ag、純Snと同様の挙動を示し反応生成物は同様の厚み、形態を示した。
リフローではSbはCu−Sn IMC形成にたいした影響を与えない。
ChenらはSACに0.5〜1.5%Sbを添加しリフロー、やはりたいして影響はなかった。
(Chen)
(Chen)
(Chen)
(Lee)
Sb量は液相が1相領域であればSbは界面反応に顕著な影響を与えない。
Sb2Sn3が形成されるほど高濃度ではもっと調査が必要。
4.4. Inの効果
Inは主に低融点化のためSn基はんだに添加される。非常な延性材料であることも利点である。
しかし強い偏析挙動を示し、はんだで16原子%以上だと113℃を越えるはんだの部分溶融をもたらす。
SharifらはSAC305+9InでInは無添加に対しCu溶解を抑制しCu6Sn5の厚みを減少させるとするが、
Laurilaらはデータからは逆に増加していると主張。
InはSnを置換しCu6(Sn,In)5とする。
はんだのAg3SnでもSnを置換しAg3(Sn,In)とし、形態を板状から球状に変える。
もしそうであれば低変形速度での信頼性に重要な結果をもたらす。
Inに関する結果は錯綜している。
(
Sharifら)
4.5. Coの効果
Sn−0.7Cu−0.4Coの低コストSAC3元共晶近傍合金の代替可能性検討されている。
AndersonらによるとSAC3610への0.15〜0.45CoでCu3Snが抑制され、Cu6Sn5成長が促進。
CoはNiと類似した効果を示す。
Coは(Cu,Co)6Sn5となり固溶度はNiの40%。
(@) 微量添加(0.03−0.1重量%)でリフローでのCu6Sn5の形態は帆立貝殻状から平滑なものに変化、
粒径微細化、Cu6Sn5の成長抑制。しかし0.1%以上でIMC厚み増加、ポーラス2層構造促進。
(A) CoはCuを置換し(Cu,Co)6Sn5とし、Cu3Snへの固溶は無視できる。
(B) 微細粒化でSn拡散促進され固体アニーリングでのIMC成長促進。
(Nogita)
(Nogita)
(Nogita)
(Amagai)
4.6. Ptの効果
Ag基厚膜ペーストはしばしばPtを含有。
AmagaiはSn3Agに0.05Pt添加、その結果、Ni、Co同様の挙動を示すが効果はNi、Coほどはない。
PtはCuを置換し(Cu,Pt)6Sn5とし、粒径微細化、リフローでの粒成長を抑制、しかしNi、Coほどはない。
(Cu,Pt)6Sn5は4回リフローでも帆立貝殻状でこれはNi、Coと異なる。
(Amagai)
4.7. Pdの効果
Pdは主にAg厚膜ペーストで利用される。またNiの保護層としても提案されている。
Ghosh、SharmaらのPd金属化層とCu含有Pbフリーはんだの反応では界面にPd−Sn IMC層が
形成される。従ってSn基はんだでCuが存在してもPdではNiと異なり(Cu,X)6Sn5形成が引き起こされない。
HiroseによるとPdはCuを置換し(Cu,Pd)6Sn5を形成し、Ni、Co、Au、Pt類似の効果が期待される。
4.8. Znの効果
Sn−Znは低融点はんだとしてBi、Ag、などを添加して提案されている。
SnBi、SnCu、SACはんだの合金化成分ともなっている。
しかしZnは高温高湿での耐食性が悪く、Cu、Ni/Auなどの一般的基材との両立性も良くない。
Sn−9ZnではCuに対し界面にCu5Zn8(γ黄銅)が形成される。
Sn−Bi、Sn−Cu、Sn−Ag−CuへのZn添加でも同様である。
Sn−Cu−Zn系状態図によればZnが1.3原子%(約7wt%)以上で2相領域L+Cu6Sn5から去り、
最初にβ黄銅形成が可能となる。3原子%(1.7wt%)で、230℃でγ黄銅が最初の相となる。
溶解量は温度に依存するから臨界Zn量は温度で変化する。
追加成分が値を顕著に下げうる。Sn−Bi−Zn、Sn−Cu−Zn、Sn−Ag−Cu−Znなどが当てはまる。
BiはSn−Znはんだの融点を下げ、濡れ性を改善する。
Sn8Zn3Biではγ黄銅が界面に形成される。
DuanらによるとSn9Zn3Biの固体アニールで170℃、500hでCu5Zn8の両側にCu6Sn5層形成。
状態図によればアニールを続けると更なる微細構造進展が期待される。
Znは両Cu−Sn IMCに固溶しCu6(Sn,Zn)5、Cu3(Sn,Zn)となる。
固溶量は250℃でCu6Sn5に6原子%、Cu3Snに9原子%。
共晶近傍SnーZnではいつもγ黄銅が最初に界面に形成される。
γ黄銅は機械的に弱く、特に衝撃荷重で信頼性が明らかである。
そのため他のはんだへの微量添加が提案されている。
(Chou)
WangらはSn−0.7Cuへ0.2〜1Znを添加、260℃で20秒ディップ後、150℃でアニール。
1%でβ黄銅形成(Cu6Sn5からCu5Zn8)、純SnとZnの230℃での1.4%と比べるとCuはZnの必要量を
若干下げるように見える。
0.2%でCu3Snを効果的に抑制。
総IMC厚みはSn0.7Cu0.2Znに比べSn0.7Cuは顕著に大きいが、Cu6Sn5層は同程度。
Cu6Sn5のCuを置換する元素(Ni、Co、Pt)はリフロー後の粒寸法に大きな影響を与え、Snを置換する元素
(Sb、In、Zn)は影響を与えないようである。
粒寸法が小さいことは衝撃に対し良いが、粒界拡散のためアニール(エージング)で高い層成長しその利益が
失われる可能性があり、もっと調査が必要。
共晶Sn41.5BiではZn臨界量は顕著に低くなる。
(Duan)
(Chou)
(Wang)
(Kivilahti)
SnとCuの界面反応へのZnの効果は
(@) Znの微量添加で固体アニールでのCu3Sn成長を抑制。
(A) ZnはリフローでCu6Sn5のSnを置換固溶するがCu6(Sn,Zn)5層の粒寸法と形態に顕著に
影響しない。
(B) もし1.3原子%以上のZnがSnに添加されるとCu−Zn IMC形成が可能で界面での最初の相として
Cu6Sn5に取って代わり、機械的特性を悪化させる。
5. Cu−Sn IMCへ顕著な固溶を示さない成分のCu−Sn IMC形成への効果
5.1. Biの効果
Sn−Bi共晶はAg、Sbなどを添加し低温はんだとして提案されている。
SnAg、SnZn、SnAgCuの合金成分としても添加。
KattnerらによるとSnAgBiでは12.5原子%までのBi添加で融点を200℃より若干下まで低下させ、
融点138℃の4相三角領域を逃れられる。しかしKimらによると、Sn−3.5Ag−5BiのDSCで138℃の小さな
ピークが見られ、In(SnAgIn)同様偏析傾向が示される。
BiはCuと反応せず、SnBi共晶とCuの界面IMC層は純Snと変わりがない。
Cu−Sn IMC成長に若干の効果が期待される。
固体アニールでCu6Sn5に対しCu3Snが純Sn/Cu対より若干薄い。
SnBi共晶/C系での200℃以上でのはんだ付けで、特にはんだ体積が少ないと、反応で微細構造と
信頼性問題に劇的変化をもたらす。
これは液体はんだ組成のBiリッチ液体への更なるアニールとはんだ量が少ないことによる移行による。
Bi富化で55原子%Biになると〜235℃ではCu6Sn5はCu3Snに変態し、Cu3SnはCu6Sn5の形態を保つ。
Liuらはやや複雑な熱処理でCu/Cu3Sn界面へのBi偏析を認めている。
YoonらのSn5Biでの調査では70℃からのアニ−ルで150℃でのみCu3Sn認めた。
Sn5Bi系は純Snより高温でCu3Snが成長し始める。
Sn5Bi系は純SnよりCu6Sn5の成長は少し速く、Cu3Snの成長は非常に遅く、総厚はほぼ変わらない。
BiはCu6Sn5に顕著には固溶しない。SnPb共晶/Cu反応対でも同様の挙動が認められる。
SnPb共晶/Cu反応対のCu3Snの厚みはSnBi共晶/Cu反応対より小さい。
PbとBiの挙動は顕著に類似している。どちらもCuあるいはSnと反応しない。
(Ronka)
5.2. Agの効果
AgはSn基Pbフリーはんだの既知の合金化元素で、表面処理材料としても利用される。
Cu−Sn IMC層(総厚)成長速度はSn3.5AgではSn36Pb2Agより小さいと報告されている。
Sn3.7AgはんだはSn0.7Cu、SAC387より少し遅いCu−Sn IMC成長速度を示すと報告されている。
Sn11AgとCuの150℃でのアニールでのIMC成長の挙動は非常に純Sn/Cuと類似している。
Cu3Snの厚みはCu6Sn5を純Sn/Cuより若干速く越え、IMC総厚は若干減少する。
大きなAg3Snがはっきりと認められる。
5.3. Feの効果
Feははんだに主に不純物として存在し、量は少ない。
FeはCu−Sn IMC成長に影響しない。
FeはCu−Sn IMCに顕著には固溶しないからである。
固体SnへのFeの固溶はAgより小さい。
5.4. Alの効果
AlはSACへ機械的特性改善のため、Sn−Znへ濡れ改善のため微量成分としてや添加。
AmagaiによるとSn3Agへの0.05Al添加はリフローで何の効果もあかった。
5.5. Pの効果
AmagaiによるとSn3Agへの0.03P添加はリフローで粒寸法や、IMC厚みに影響を
示さない。Cu−Sn IMCへの固溶もない。
5.6. REの効果
REは濡れ性、クリープ強度、引張り強度向上のためPbフリーはんだに添加される。
微量のRE添加がCu−Sn IMC成長速度を減少させるという報告がある。
(主にCeとLaをSn3.5AgとSn0.7Cu)
リフローではRE添加はIMC厚さにあきらかな影響はないという報告もある。
RE添加は若干Cu6Sn5成長に影響するように見え、また亀裂を誘起するように見える。
諸報告からREは固体アニールでCu−Sn IMC層厚みを減少させる可能性がある。
しかしREはCu6Sn5層の脆化を引き起こす可能性もある。
(Wu)
(Hao)
5.7. Tiの効果
Tiは活性元素でSn、Cuと激しく反応、Ti6Sn5を形成し、790℃以下で斜方晶α−Ti6Sn5、以上で六方晶β−Ti6Sn5となる。
(Laurilaらの実験ではTi2Sn3生成)
TiはCu−Sn IMC成長速度を若干減少させ、特にη相形成を抑制する。
TiはSnと反応しバルクはんだにTi2Sn3形成し、界面反応には加わらず、Cu6Sn5には溶解しないと思われる。
(Zhang)
5.8. S(とC)の効果
SとCはしばしば電解めっきからの不純物として存在。これらは一般的に異なる添加剤から生じる。
Ni(P)層からの有機不純物は界面反応層の空隙状構造形成に顕著に寄与する。
我々の実験ではKirkendallボイドと称されるものが空隙ではなく有機物質の集合であることが示された。
Kimらは電解めっきCuでの残留Sの影響を調査し、SがCu層内に存在するとCu3Sn/Cu界面付近に
多量の空隙状構造が存在し、この部分にはSが富化していることを認めた。
電解、無電解Cuではボイドが形成されるが、高純度Cuでは形成されない。
残留有機不純物はCu3Sn/Cu界面近くにボイド状構造を形成するといえる。
要約
(1)グループ Cu−Sn IMCに顕著に固溶
Cu6Sn5の粒径を減少させ、耐落下試験性向上。
Ni、Co、Ptなど、Cu6Sn5のCuと置換。
微粒化で固相アニーリングでのIMC成長促進、特に(Cu,X)6Sn5の成長が速くなる。
特にNiの場合にIMCを脆くする。
Cu3Sn/Cu界面の空隙状構造発生。
添加量は少なくおさえる必要がある。
Znは液相Snに1.3原子%以上あるとIMCがCu6Sn5からCu−Zn IMCに変化。
(2)グループ Cu−Sn IMCに顕著には固溶しない
Cu6Sn5に固溶せず、Snの活性度に影響する事で間接的に影響。
Bi、Fe、Ti、AgはSnの活性度を下げCu6Sn5の成長速度をある程度減少させる。
一方Cu3Sn成長には影響せず、IMCの割合を変化させる。ただしBiではCu3Snは特に薄い。
Cuに不純物があると厚いCu3SnはCu3Sn/Cu界面近くにボイド状構造形成。
REは固溶度は不明だがCu6Sn5成長を遅くする効果が若干ありそう。
S、CはCu3Sn/Cu界面近くにボイド状構造形成を助ける。
論文2
鉛フリーはんだと一般的基体金属との界面反応 (
SD)
上記論文ではSnとCuの反応だけを扱っているが、この論文ではSnとNi、Au、Agも扱っている。
要約
固液反応でのIMC形成は主に基体金属の溶解過程によって支配される。
固体でのはんだ接続のアニーリングは固液反応によって形成された微細構造を劇的に変化させることができる。
特にはんだの1成分だけが界面反応に加わる場合。
添加成分は基体金属とSn間の2元反応に3つの主要な影響を与える。
反応、成長速度を増加、減少させる。
形成される相の物理的特性を変える。
付加反応生成物を形成あるいは新しい反応生成物と2元平衡相を置き換える。
序言
電子製品ではほとんどの基体金属、コーティング、金属形成層metallizationははんだ中のSnとIMCを形成する。
IMC形成で良好な金属学的接合を示すとされる。しかしまたIMCは本来脆く、構造欠陥を発生しやすい。
このためはんだ相互接続でのはんだ−導体金属相互作用と相進展を理解することが信頼性理解にとって重要である。
はんだ付け過程は主に溶解、化学反応、凝固の3つの過程からなる。
またはんだ付けで形成されたIMCは製品の保管、使用で成長・変化する。
それゆえ製品の信頼性理解のためには固液系と固固系を研究する必要がある。
電子製品の信頼性はIMC反応層の機械的性質に関係する。
特に落下のような機械的衝撃ではそうである。
落下衝撃と熱サイクルでのはんだ相互接合の受ける応力の大きさと分布は異なる。
高ひずみ速度でははんだバルクよりIMC層の性質が相互接合の破壊挙動を主に決める。
慎重な構造的調査と熱力学と速度論がこれらの界面反応の理解への基礎を提供する。
1. SnとCuの界面反応
関心温度域(350℃以下)ではCu3Sn(ε)とCu6Sn5(η)が形成される。
Cu6Sn5は186℃で変態し、高温相ηと低温相η’をもつ。
はんだ付けでは高温相が準安定相として残る。
平衡変態温度は186℃なので、装置の使用で低温相η’への変態が起き得る。
更にIMCの厚みは電子装置の作動で自然に成長できる。
このため信頼性問題を引き起こすIMC層に存在する欠陥と不純物の重要性が重くなる。
1.1. Cuの液体Snとの反応
はんだ付け過程(260℃以下)ではまずCu6Sn5が形成される。
CuのSnへの溶解は速く、Cu/液体界面へのCu6Sn5形成は速い。
一様な帆立貝殻状Cu6Sn5層(1相)に付加して(Cu6Sn5+Sn)2相層が1相層に隣して形成しうる。
Cu/液体界面でのCu溶解濃度は一様でなく、過剰なCuで共晶でのCu6Sn5束同様の長い初晶Cu6Sn5管が
形成されうる。
熱力学的にはCuとCu6Sn5の間にCu3Snが形成される。
しかしリフローやウェーヴではCu3SnはCu6Sn5よりはるかに薄く、その形成には通常更なる接触時間が必要である。
Gaglianoらは240−300℃での液体SnとCuの反応でη相形成を確認。
KaoらはCuとCu添加有無の液体Snでの24−275℃での反応で、Cu飽和ではηとε相が層状構造として形成され、
Cu添加がないとε相が非常に薄く、η層が厚く、不規則であることを確認。
1.2. Cuの固体Snとの反応
室温から60℃付近までは最初にCu6Sn5が形成され室温の主要な拡散種はCu。
60−200℃ではSnが拡散し始めCu6Sn5の成長を支配する。
この温度範囲ではCu6Sn5を犠牲にしてCu3Snが成長する。
アニールでCu3SnあるいはCu/Cu3Sn界面にKirkenndallボイドが生成する。
このKirkenndallボイドにはCuの不純物が影響する。
1.3. CuとSnの反応への添加成分の効果
・Niの影響
NiはCu3Snの形成を抑制し、(Cu,Ni)6Sn5を促進する。
NiはCu−Sn IMC層の特性と成長に種々の影響を与える。
Cu−Ni合金との反応例 (Cu,Ni)6Sn5の2層構成
SnとCu−15at%Niの拡散対
・Znの影響
Zn含有はんだはCu−Sn IMCをCu−Zn IMCに置き換える。
・Biの影響
SnBiはんだではBiはCuと反応せずSnだけが反応で消費され、はんだ組成はBiリッチ側に移動する。
このため局部的平衡条件が変化しCu6Sn5がCu3Snとなる。
・Ag、Auの影響
AgはCu6Sn5に微量しか固溶せず、Cu6Sn5の成長に顕著な影響は与えない。
AuはかなりCu6Sn5に固溶する。Auは低温での規則長周期超格子Cu6Sn5形成を抑制していると思われる。
2. SnとNiの界面反応
Niと液体Snの反応速度はCuより遅いのでCuとSnの拡散バリア層によく使用される。
260℃以下でSn−Ni系では3つのIMC相が安定。
Ni3Sn、Nii3Sn2はいずれも低温と高温の2つの相。
Ni3Sn4はリフローで他の相より形成されやすい。
SnへのNiの溶解度はCuよりかなり少なく、Cu−Sn IMCよりNi−Sn IMCが安定。
2.1. Niの液体Snとの反応
260℃以下で液体SnとNiで最初に界面に形成されるのはNi3Sn4。
Niの液体はんだへの溶解はCuよりかなり低く、そのためはんだ付け中でのNi IMCの厚みはCuあるいは
AuのIMCよりかなり小さい。
Ni3Sn4の形成は融液からの結晶化と思われ、Cuとは異なる。
ある条件で2相反応層(Ni3Sn4+Sn)が起こりうる。
300℃を越えるような高温での反応、Ni3Sn2とNi3Snの形成については矛盾するような結果が出ている。
Niサンドインチ構造の例 3形態 Niから微粒で平らな層、長く薄い自形ウィスカ、大きな多角形自形結晶。
(Baderら)
(Baderら)
2.2. Niの固体Snとの反応
固ー固反応でもNi IMCの成長はCu IMCよりかなり遅い。
固相反応(エージング)ではNi3Sn4しか形成されない。
(Haimovich)
2.3. NiとSnの反応への添加成分の効果
実際上では純Niとの反応はほとんどなく、電子産業では無電解Ni−Pが広く利用されているので、
Pの影響が精力的に調査されている。
Sn−Pbあるいは純SnとNiの反応で最初に形成されるのはNi3Sn4である。
・Cuの影響
微量でもCuを含むPbフリーはんだでは最初に(Cu,Ni)6Sn5が形成される。
CuのNi−Sn反応への影響は大きく少量のはんだへのCu添加で最初に形成される相はNi3Sn4から(Cu,Ni)6Sn5に変化
する。Cuが少ない(SnAgでは〜0.4重量%?)うちは(Ni,Cu)3Sn4が形成される。
・無電解Ni−Pとの反応
Cuを含まないとNi3Sn4、含むと(Cu,Ni)6Sn5が最初に形成される。
無電解Ni−Pの場合はPの存在で、特にエージングで複雑な反応層連鎖がおきる。
Ni3Sn4とNi(P)の間にはP富化層(通常Ni3Pとされる)が形成されるがその反応と詳細構造は複雑。
(Cu,Ni)6Sn5が形成された場合も同様。
SnPbはんだと無電解Ni(P)の反応例
(Liuら)
(Matsukiら) 14原子%P、ピーク245℃、7分リフロー MatsukiらはKirkendllボイドとする。
SACとNi(P)
Laurilaらはボイド状のものは有機物とする。
高Pでは3元Ni45Sn35P20だけ存在。
3. SnとAuの界面反応
導電体表面保護に長い間Au被覆が使用されている。
AuはSnはんだに急速に溶解する。
Au−Sn系にはいくつかのIMCが存在する。
AuSn、AuSn2、AuSn4が関心の対象だが、はんだ付けからはAuSn4に最も興味がある。
AuSn4がSn基Pbフリーはんだとの反応で最初に形成される。
3.1. Auの液体Snとの反応
はんだ付けでAuは最も速くSnリッチ合金に溶解する。
Auの過飽和で一様なIMCがAu/液体界面に形成され、1相IMC層に対し2相層(Au−Sn IMC+Sn)が
非常に厚く形成される。
もしはんだ量が非常に多いとAuSn4は通常はんだ相互接合部に存在する。
普通はAuは非常に薄く、反応時間が長いからAuは完全に溶解し、連続層を形成せず、AuSn4ははんだ中に
無秩序に分散して存在する。
KimらによるとAu/Sn対がPbリッチはんだとSn−4Agより溶解はすくない。
Auと唯一比較的平らな界面が形成されたのはSnBi共晶。
以上のように、Auと液体Snとの反応で最初に形成されるのはAuSn4で形態は一般的に針状。
もしAu量が多く反応が長いとAuSn4は連続層となる。
1相IMC層(実際は非常に薄いAuSn2と比較的厚いAuSn4)は2相層より非常に薄い。
Au−SnではIMC層の大部分は溶解と凝固で形成されるが、Ni−Sn、Cu−Sn系では
溶解と化学反応で形成される。
もしAuが十分存在するとAuSnとAuSn2も形成しうる。
厚いAu被覆で過剰なIMC形成を避けるにはInPbはんだが役立つ。
Au線のSnPb共晶への230℃、100秒浸漬。
はんだは針状AuSn4で満たされて、基材溶解が激しく、界面には不規則なIMC(AuSn4とAuSn2)
が形成され厚いAuSn4層にはPbリッチ相が存在。
実験中Au溶解は継続するが(AuSn4+Pb)2相層の厚みは比較的変化しない。
SnとAuでは薄いAuSn2と非常に厚いAuSn4が形成され、不規則AuSn4層にSnリッチ相が存在。
3.2. Auの固体Snとの反応
固体SnとAuの反応で最初に形成されるのはAuSn4。
同時に若干遅くAuSnが形成される。
AuSnとAuSn4の分解でSnあるいはAuリッチ相が形成されるかは存在するAuとSn量による。
Au−Sn系での拡散は強く濃度依存で、特にSnリッチ領域でのAu拡散は高い。
3.3. AuとSnの反応への添加成分の効果
・Ni/Au導体金属
SnPb(SnAgも)とNi/Auではエージングではんだ中のAuSn4の界面への再堆積が起こる。
AuはNi3Sn4に固溶(Niを置換、室温で17原子%)し、NiはAuSn4(Auを置換、10原子%)に固溶する。
Cuが存在すると(Cu、Au、Ni)6Sn5が形成され(Au,Ni)Sn4形成は抑制される。
(Au,Ni)Sn4再堆積はNi3Sn4成長を加速する。
(Hoら) CuとAuの影響
(Shiauら) 0.5CuでIMC剥離、240℃ピーク、120秒
(Hoら) エージングの影響
4. SnとAgの界面反応
Agは保護層としてのほかPbフリーはんだの主要成分である。
IC産業では電導性のよさからAg相互接合を基礎としている。
Ag−Sn系には2つしかIMCはない。不規則ζ相と短範囲規則Ag3Sn(ε)。
SnはかなりAgと固溶する。
4.1. Agの液体Snとの反応
Agの溶解速度はAuに近い。
はんだがAgで過飽和すると凝固でAg3Snが形成される。
Ag基材が十分厚いとIMCは元の表面の上に連続層として形成される。
表面処理では(量が少ない)元の表面からすみやかに溶解し、バルクはんだ中にAg3Snを形成する。
Ag IMCは比較的大きな薄片状の形状なので少量でも厳しい問題を起こしやすい。
しかしAgがそのような大きな構造を形成しないほど十分すくないとAg3Snはバルクはんだに均等に分散する。
4.2. Agの固体Snとの反応
Au、Ag、CuはSnでいわゆる高速拡散を行う。
Snは六方構造なので単結晶SnではAu、Agの体拡散は非対称である。
多結晶体では粒界拡散が問題となる。
Agの固体Snとの反応で形成されるのはAg3Snで、この反応は室温でもおきる。
このように低い反応温度の理由はAu、Cuと同様のSnでの格子間拡散能力である。
4.3. AgとSnの反応への添加成分の効果
AgにはAuのような再堆積は認められない。
バルクはんだ内に形成されたAg3Snは安定である。
AgとSn間の反応にはどんな成分でも触媒効果の存在は認められない。
GasらによるAgリッチ(Snとの)固溶体でのIn、Cd、SbのAg拡散への効果は
Cd、Inでは若干の増加があり、Sbは強い増加がある。
Sbの効果は顕著な増加を認めるSnより強い。
5. 要約
*
関連2元系状態図
Sn−Cu、Sn−Ni、Sn−Au、Sn−Ag、Sn−Pd
Zn−Cu、Zn−Ni、Zn−Au、Zn−Ag、
Au−In、Ag−In
論文3
Vuorinen博士論文 Sn基はんだと一般金属層の界面反応
要約
はんだ付けでの界面IMCの厚みと形態morphologyに影響する主要因子は
溶解度と液体はんだへの固体金属の溶解速度。
局部平衡とその時間、温度による変化。
過飽和液体はんだ界面での化学反応
添加成分と不純物ははんだ相互接続の微細構造的進展を変化させ、機械的一体性を減少させる。
2. 熱力学−速度論接近
2.1 相平衡の熱力学評価
2.2 速度論的考慮
3. 電子装置での一般的金属系
3.1 Sn/Cu反応対での微細構造形成
3.2 Sn/Ni反応対での微細構造形成
3.3 Sn/Ag、Sn/Au、Sn/Pd系
・Sn−Au
Sn-Pb-Au、Sn-Bi-AuではAuはPb、BiともIMC形成するがSn-Auだけが観察される。
AuSn4が通常SnPb、Sn基Pbフリーはんだと薄いAu被覆導体金属では認められる。
しかしバルクAu線でのSnPb、SnBiによる実験では別のIMCも形成しうる。
(*写真ではAuSn2の上にAuSn4が複雑に突き出ている)
IMCの形成にもかかわらず実験中Au溶解は続いた。
しかし(AuSn4+Pb)2相層の厚みは比較的変化しないままであった。
(即ちAuSn4は10秒から100秒まで同じ厚み)
KimらによるとSnPbで2相層(Au−Sn IMC+Sn)は1層IMC相に比べ非常に厚い傾向を示す。
TuらによるPbとPbフリーはんだとAuの薄い被覆ではPb−5SnでAuの溶解が最も速かった。
純Au/Sn対は高PbはんだとSn−4Agより溶解は遅かった。
高PbはんだとSn−4Agの界面は凸凹であったが共晶SnBiでは唯一比較的平らでIMC形成は
比較的ゆっくりであった。界面IMCはAuSn2であった。
これらの系の界面IMCはAuSn4よりAuSn2
IMC形態に対しはんだ付け工程の温度と時間の影響は小さく、組成と特にAu量が重要。
1相IMC層は2相層(AuSn4+Sn)に比べて非常に薄い。
固体SnとAuの反応で最初に形成されるのはAuSn4、ほとんど同時にゆっくりとAuSn形成。
存在するAuあるいはSn量によりAu−Sn IMCの分解によりSnあるいはAuリッチ相形成が起きる。
・Sn−Ag
・Sn−Pd
Pd−Sn系にはいくつかのIMCが存在するがはんだ付けで一般的なのはSnリッチのPdSn4とPdSn3。
リフロー後はPdSn4だけで、AuSn4の2相層形態と類似。
(*だいぶ違うと思えるのだが、バルク中にPbが分散するPdの場合と林状の間にSnが存在するAuの場合、
形成機構も異ならないか、周囲の反応で取り残されるのと反応で成長していくものと)
2相層はPdSn4と化学反応でPdSn4粒間に残ったPbからなる。
共晶SnBiでは2つのIMCが界面に存在。
4.多成分系でのはんだ相互接続微細構造の形成
・ SnCuNi系
Cu含有PbフリーはんだとNi基材の反応
Ni含有はんだとCu基材の反応
・ Ni(P)/Au
Ni3P形成
AuSn4再堆積
6.1 溶解とIMC形成
6.1.1 IMC形成機構
固液界面でのCu溶解とIMC形成
6.1.2 SnAgCuとSnCuNi系
Niの影響
SnとCuNi合金の反応
Cu含有SnとNiの反応
Ni合金化SnとCuの反応
・SnCuAg系
・SnCuNi系
・SnとCuNi合金の反応
徐冷による界面微細構造は平らでなく、Sn側には反応層に隣接してSn間に共晶組織が存在。
共晶組織は純Cuで界面からより遠くに、また界面近くではより多く認められる。
これよりCuの溶解速度は純Cuが高いことを支持。
・SnAgCu|NiとSnAgNi|Cu
反応層の総厚みに関しNi量に極値(10原子%付近)。
反応層はCuNi合金層に接する一様な(Cu,Ni)6Sn5反応層(1相層)とこれとSnマトリクスの
間の複雑な2または3相層からなる。
Cuが250℃では約0.4%以下では(Cu,Ni)6Sn5より(Ni,Cu)3Sn4が安定。
・Sn-Cu反応への他の添加元素の効果
Ag、Biの効果
遷移のCu臨界量に影響、減少させる。
6.1.3 SnCuNi系への追加元素効果
・P効果
無電解Ni(P)との反応
高Pの場合
Ni3P形成が抑制され、NiSnPだけが形成。
・V効果
Alajokiら
WL−CSPをSAC387と共晶SnPbペーストでNi(P)/AuとOSP
Al/Ni(V)/Cu UBMとNi(P)/Au UBM
バンプ、はんだペースト、表面処理にに関係なし
落下試験ではAl/Ni(V)/Cuは(Cu,Ni)6Sn5 IMCに沿って亀裂、Ni(P)/Auは高P層と
はんだの間のNiSnP層に沿って亀裂形成。
*V効果が不明、Ni(P)の悪影響?
6.2 固相でのIMC進化
6.2.1 Sn−Cuへの添加効果
・ボイドと不純物効果・・・Cuの製法
空隙形成は不純物に顕著に影響される。
・商業はんだの典型成分(Au、Ag、Fe、Ni)
Cu6Sn5に固溶しない・・・Fe、Ag
Cu6Sn5に固溶 ・・・Ni(〜20原子%)、Au(〜15原子%)
ボイドは認められないが、IMC成長速度に差。
・Tiの効果
TiはCu6Sn5と類似のβTi6Sn5を形成。
TiはCu6Sn5に固溶しないし、CuはTi6Sn5に固溶しない。
Tiは容易に酸化し濡れ問題となりうる。
・CuへのNi添加効果
SACとNi添加Cu
・Cuめっきからの他の不純物
Fe、Zn合金化はポイド形成に顕著な効果はないがZnと特にFeはCu3Sn成長抑制。
Laurila Niと種々のはんだ
5. Ni/Au金属化層ととZn含有はんだとの界面反応
KimらによるとリフローでAu−Zn IMCが形成され、これははがれる傾向がある。
エージングでAuZnとNi5Zn21の2層が形成される。
Zn析出粒は界面付近は非常に少なくて、離れたところが多い、これは界面付近のZnがAuZn層形成に
消費されるため。
Au量の供給制約のためAuZnはこれ以上エージングで成長せずにNi5Zn21が若干成長。
Linら(9wt%、15at%、Au:0.5μm)によるとリフロー後はAuZn4とAu7Zn18の2層、
界面IMCはリフローではがれる傾向がある。
100℃のエージングでAu7Zn18を食ってAuZn4成長、1000hでも他の反応はおきない。
150℃のエージングではNi/はんだ界面にNi4Zn21が認められる。
Changら(9wt%、Au:0.5〜0.7μm)ではAu3Zn7とAuZn3の2層がリフローで形成。
175℃エージングでAu−Zn IMCはAuZn4ついでにAuZn8+Zn(AuZn8に近接)に徐々に変化。
Ni/はんだ界面にNi4Zn21が形成され成長。
(Kimら) Au:0.5〜1.0μm、240℃ピーク、TAL:60s
6. SnBiはんだとNi金属層の界面反応
Ni3Sn4が形成され、近接してBiリッチ層が存在。
エージングでも他の相は認められない。
Ni−Bi IMCは認められない。