誘電体・
圧電体・
焦電体・
強誘電体
【誘電性・絶縁性】
電気分極(誘電分極)
絶縁体に電界をかけると物質は正電荷と負電荷のかたよりによる電気双極子を生じ、この現象を電気分極
(または誘電分極)といい、分極する物質を誘電体という。
D=ε
0E+
P=ε
0E D:電束密度(単位面積当たりの電荷量)、
P:電気分極、
E:(巨視的)電場
ε
0:真空誘電率8.854x10
−12F/m、ε
r:物質の比誘電率 ε
0・ε
r=物質の絶対誘電率
P=χε
0E χ:帯電率 ε
r=1+χ
永久双極子と誘起双極子
分極の原因
電子分極:電子雲が原子核に対し相対的に変形、紫外領域をこえると追従できなくなる。
イオン分極:イオン結晶で正イオンが負イオンに対し変位、格子振動の周波数までの領域に現れ、可視光では
追従できなくなる。
配向分極:永久双極子モーメントをもつ分子が電場のもとで向きを揃える。通常、低周波で生じ、10
10Hz以上
では電場の変化に追従しなくなる。
電子分極とイオン分極(格子振動)による分極率の周波数分散は共鳴形であるが配向分極は緩和形である。
空間分極:不均一な物質では特定の空間や界面に電荷がたまることにより分極が生じる。
ローレンツの式 分極と局所電界
局所電界
Ei=
E+γ
P、高い対称性をもつ場合γ=1/3ε
o、
Ei=
E+(1/3ε
o)
P
Clausius-Mossottiの式 誘電率と分極率の関係 分子分極(1モル当り)Pm(α:分極率)
光の領域(電子分極)では ε
r=n
2 →Lorentz-Lorentzの式:屈折率と分極率の関係(分子屈折)
配向分極 μ:双極子モーメント デバイの式
これより
Pm=A+B/T
フレーリッヒの等方的誘電体の理論、オンサガーOnsagerの式、カークウッドKirkwoodの式
オンサガー 有効電場F=空洞電場Gと反作用電場R
電界の変化に対する分極の平衡の時間的遅れ 緩和
周波数変化に伴う誘電率の減少 分散
<誘電体の応用>
・コンデンサ(正しくはキャパシタCapacitor)
面積S(mm
2)、間隔t(mm)の平板コンデンサの比誘電率ε
rの物質による静電容量C(pF)は
C=ε
rε
0・S/t
交流 誘電正接tanδ(=1/Q)に対し熱損失W=ωcV
2tanδ
セラミック・コンデンサ材料
TiO
2:ε
r=90−110
MgTiO
3−CaTiO
3系:ε
r=20、比誘電率低いが温度係数を自由に変えられる。温度補償用。
BaTiO
3系:誘電率大、損失も大、温度特性、電圧特性悪い。高誘電率系。
シフタ:ピーク温度を移動 CaSnO
3、SrTiO
3、PbTiO
3(上昇)
デプレッサ:ピークを下げる CaTiO
3、MgTiO
3
SrTiO
3、CaTiO
3系:BaTiO
3系より誘電率小さいが温度特性良く、損失も小さい。
BaO−R2O3−nTiO2系(R=Nd、Sm・・・、n=4、5・・・)
・マイクロ波誘電体
誘電体内部では電磁波の波長が1/√εrに短縮できる、
小型化のために高誘電率、低損失化のために低誘電損。
・高周波積層インダクタ
誘電体シートに導体パターンを形成し積層しスルーホールで層間接続。
・光学用誘電体膜
無反射コーティング、ビームスプリッター、誘電体ミラー、フィルター
ε
r=n
2
◎絶縁基板と熱伝導性
絶縁基板には熱伝導性がよいことが要求されるが、絶縁体の熱伝導は自由フォノンにより行われ、
構成原子が軽く、原子間の結合が強く、結晶構造が単純、格子振動の対称性が高いことが必要となる。
現在実用の主流はAl
2O
3であるがより高熱伝導性なものとしてダイヤモンド、BN、SiC、BeO、AlN
などが考えられる。
BeOは熱伝導性はいいが毒性が強く、SiCは電気抵抗が低い。
BN、AlNはセラミックでは熱伝導率が小さく種々の改善の努力が行われている。
セラミック(多結晶)の熱伝導はフォノンを散乱する気孔、粒界、歪、転位、格子欠陥、不純物などの影響を
受け、微細構造や不純物の制御が重要であり、そのようにしてAlNの実用化がなされている。
<
絶縁体>
絶縁体は従来は電子が対になって軌道を占有するバンドモデル(
バンド絶縁体)で説明されていたが、
強相関電子系(電子のクーロン反発力の強い系)や乱れた系ではバンドモデルで説明できない種々の絶縁化が生じる。
・
Wilson型(バンド)絶縁体
通常、絶縁体はバンドモデルで伝導帯と価電子帯のエネルギー差(バンドギャップ)の大きいもの(Wilson型
あるいはバンド絶縁体)と定義される。
・
モット型絶縁体
バンドモデルでは金属であるのに絶縁体である物質があり、これは
電子相関(電子同志のクーロン相互作用が
大きい−
強相関)に起因し電子間のクーロン反発のため軌道の対占有が不可能となって絶縁体化する。
遷移金属のd軌道では電子同志のクーロン相互作用が大きく電子濃度が単位格子あたり奇数の場合でも絶縁体
となり(クーロン反発エネルギーUがギャップを支配、バンドギャップ<U<Δ電荷移動エネルギー)これを
モット・ハバード型という。
遷移金属のd軌道だけでなく酸素(あるいは陰イオン)のp軌道も関与しているものを
電荷移動型という。
(クーロン反発エネルギーUが十分大きく、バンドギャップ<電荷移動エネルギーΔ<U)
モットハバード型はTiやVなど軽い遷移金属酸化物に多くみられ、電荷移動型はNiやCuなど重い遷移金属酸化物
に多く見られる。
・パイエルス転移
低次元電子系では格子歪(電子−格子相互作用)により電子の局在化がおこる。
・
電荷秩序(ウィグナー結晶)
強相関電子系では、電子が結晶中で均一に存在しないで、電荷分布に濃淡が発生し、これが格子の変形
と結合し、電荷の秩序化現象が自発的に起こる(電荷秩序、電荷整列あるいは電荷分離)ことがあり、このため
絶縁体となる。
異なる価数の存在する物質(混合原子価、原子価揺動)たとえばマグネタイトのVerwey
転移ではFe
2+とFe
3+に
分離し秩序配列すると考えられている。
ペロブスカイト型マンガン酸化物でもMn
3+とMn
4+に分離し秩序配列する。
またニッケルや銅の層状ペロブスカイト型酸化物では,遷移金属イオンではなく酸素イオンがO
2−、O
−
となって秩序配列するいわゆるストライプ状の電荷整列が起こる。
・
アンダーソン局在
欠陥や不純物があるような不規則な結晶では電子の波が散乱されて、入射波と散乱波の干渉によって電子が
局在化し絶縁体となる。
【
圧電性】
圧電性
応力により表面に正負の電荷を生じる現象。
◎ 圧電効果と電歪効果
電界で誘起される歪は結晶構造で決定されるイオン間のバネの性質により異なる。
中心対称性をもたない結晶ではイオン間の調和項が異なるため、電界に比例した歪
x=dE (d:圧電定数)
を生じ、これを逆圧電効果という。
一方中心対称性結晶ではバネの非調和性により電界の向きによらない電界の2乗に比例する歪
x=ME
2 (M:電歪定数)
を生じ、これを電歪効果という。
電歪効果を持つ物質は必ずしも機械的応力では電気分極は生じないが逆圧電効果を示す物質は
機械的応力によって電気分極を生じこれを圧電効果という。
電歪効果は圧電効果のようにヒステリシスがなく温度特性もいいが変位量が小さいという欠点をもつ。
◎ 圧電体・焦電体の関係・・・結晶構造(対称性、点群)により決まる。
圧電性は32の結晶点群のうち対称中心のある11の点群には存在せず、対称中心のない21の点群
のうちO−432を除く(分極を生じる方向に反射面や2回対称軸があるとその方向の電気分極は生じない)
20の点群が圧電性を示す。
対称中心のない21の点群のうち10の点群が焦電(極)性(外部から電界を印加しなくても結晶内の
正電荷の重心と負電荷の重心が一致せず自発分極が存在)を示す。
焦電体で自発分極の方向が外部電界の印加で変わるものが強誘電体であり、圧電体や焦電体は結晶構造
の対称性による裏づけがあるが強誘電体の定義はあいまいさがあるといえる。
即ち
(32の結晶点群)誘電体⊃(20の結晶点群)圧電体⊃(10の結晶点群)焦電(極性)体⊃強誘電体
<
圧電セラミクス>
強誘電体のセラミクス(多結晶)を分極化すると圧電効果と等価の効果をもたせることができるので、
強誘電体セラミックスのことを圧電セラミクスと称する。
PbTiO
3−PbZrO
3系圧電セラミクスPb(Zr,Ti)O
3(PZT)は種々の添加成分による変成が可能でこれに
よる特性の制御で優れた圧電特性をもつ。
無鉛化の要請が強いが結局Pbを含むものに勝るものはないという結論がでているようである。
・主な無鉛圧電セラミクス
BaO-TiO
2系化合物
BaTi
5O
11
Ba
2Ti
9O
20
タングステンブロンズ A
XBO
3
Ba
2NaNb
5O
15(BNN)
Ba
2NaTa
5O
15 (BNT)
Sr
2NaNb
5O
15 (SNN)
K
3Li
2Nb
5O
15 (KLN)
K
2BiNb
5O
15 (KBN)
15ペロブスカイト系
(K,Na,Li)(Nb,Ta,Sb)O
3
24系ペロブスカイト系
BixNa
1−xTiO
3(BNT)
BixK
1−xTiO
3(BKT)
Bi系
BiFeO
3(混合原子価のため誘電損が大きい)、高圧合成が必要。
Bi層状ペロブスカイト(Aurivillius相)→粒子配向
SrBi
2Ta
2O
9(SBT)
Bi
4Ti
3O
12
Bi
4―xLa
xTi
3O
12(BLT)
SrBi
2Nb
2O
9(SBN)
Bi
2WO
4(BWO)
・圧電効果の応用
可聴周波数音響素子 マイクロフォン、ブザー、ピックアップ
水中音響素子 ソナー・魚群探知機
固体音響素子 非破壊検査、アコーステック・エミッション・センサ
医療用 超音波診断装置(CT、骨密度、血流・・・)
応力測定 g(加速度)センサ、ジャイロ・・・
通信用 フィルタ、発振子、SAW素子
強力超音波 超音波加工、超音波洗浄、超音波加湿
微小変位 超音波モータ、アクチュエータ(ポジショナ、スタイラス)、インク・ジェットカートリッジ
その他 圧電トランス、圧電着火
バイモルフ:圧電セラミクス同志あるいは圧電セラミクスと金属を張り合わせたバイモルフは種々の特性の
改善が可能なため有用である。
・圧電結晶
発振子用水晶が有名である。発振子用としてはその他LiNbO3、LiTaO3なども研究されたが温度係数に
関して水晶の位置を奪うことはできず、SAW基板としての用途がみいだされている。
その他結晶で圧電セラミクスの地位を奪うものはないようである。
・表面弾性波SAW
三次元的に無限な広がりをもつ弾性体中にはバルク波の弾性波としての縦波、横波が存在するが、
表面にエネルギーを集中して表面に沿って進む表面弾性波も存在する。
有名なのはレーリー波である。その他に板を伝わる波としてラム波がある。
表面弾性波は伝播速度が電磁波の10万分の1ほどで、波長が短く、従来の電磁波デバイスの小形化が
可能であることや、表面にエネルギーが集中しているため外部からの波の制御が可能であるなどの特徴が
あり、高周波用フィルタや発振子への応用が展開されている。
この表面弾性波の励起・検出には圧電効果が利用され、有名なのがすだれ状電極変換子IDTである。
【焦電性(極性)】
焦電体は結晶内の正電荷の重心と負電荷の重心が一致せず、応力や電界がない状態でも電気分極
(自発分極)が存在するが、この自発分極による表面電荷は通常は表面に付着したイオンや、電気伝導、
双晶などのため観測できないが、自発分極は温度の関数であるから温度変化による分極の変化分は
表面電荷が消滅する前であれば観測できる。
このようにして結晶の温度をかえたときに自発分極の温度依存性に由来してその変化分に相当する電荷が
結晶表面に現れる現象を焦電性という。
強誘電体は焦電体のうち外部電場で自発分極を反転できるものをいうが、これは単一分域化して焦電効果を
最大にしやすいので優れた焦電材料となりやすい。
・焦電材料
焦電材料は入射線の熱エネルギーによる温度変化を大きくするため体積比熱cが小さく、出力を大きく
するため焦電係数pが大きく、誘電率が小さいことが望ましく、キューリー点Tcはある程度高いほうがよい。
(高すぎると分極が困難になるが、低すぎると、pの変化が大きく感度が変化する)
性能指数はP/cεで示され10
−10前後である。
TGSは優れた材料であるがTcが49℃と低く、水溶性であるという欠点がある。
PbTiO
3やSr
0.5Ba
0.5Nb
2O
6が赤外線温度計に使用される。
・焦電形検知器
焦電材料は赤外線の熱的検出に有効であり、常温動作が可能でありことと、感度が波長に関係ないという
特徴をもつ。焦電現象は温度変化のみに感じるのでチョッパで光を断続させる等の工夫が必要である。
【
強誘電性】
強誘電性と自発分極
自発分極をもつ結晶(極性結晶、焦電結晶)に外部から自発分極と反対方向に電界を加え自発分極の方向
が反転する場合、強誘電体という。
履歴曲線(ヒステリシス曲線)
強誘電体に電界を印加し正負に変化させたときの分極の変化を示す曲線をP-E履歴曲線あるいはヒステリシス
曲線といい、強磁性体のヒステリシス曲線と同様の曲線を描く。
キューリー・ワイスの法則
常誘電体・強誘電体の相転移では通常、常誘電体で転移点(キューリー点Tc)に向かって温度が下がる
に従い誘電率はキューリー・ワイスの法則に従って上昇し転移点で発散する。
キュリー・ワイスの法則 ε=C/(T-T
o)+ε
o C:定数、T
o:転移点、ε
o:温度に依存しない部分
C∝μ
2
キュリー・ワイスの定数と強誘電体
変位型 キュリー・ワイスの定数10
5 酸化物? 自発分極 数10μC/cm
2
規則・不規則型 10
3 塩類 数μC/cm
2
硫安(フェリ) 10 0.数μC/cm
2
間接型(反強磁性・強誘電体、非共線磁気)? 1?
0.0数μC/cm
2?
鏡像的(対掌的)Enantiomorphous
強誘電相では結晶構造として同一あるいは鏡像的な二つの状態(特殊には多数)が存在し全く等しい自由
エネルギーをもつが、原子配列の方向は異なり、逆向きの自発分極をもつ。
この異なる状態を適当な電界で遷移させることができるものを強誘電体という。
分域
強誘電体の分域は異なる方向の分極が双晶構造をしている。
強誘電体の分域構造生成の理由は強磁性体ほど簡単ではない。
強誘電体の相転移
Devonshireの現象論
Landauの相転移の現象論では自由エネルギーは秩序係数の関数、対称性に着目。
Devonshireは分極Pを秩序係数として(双極子間相互作用により)強誘電体の相転移を説明。
臨界現象
相転移温度近傍ではLandauの相転移の現象論が適用できなくなる。
応答関数→秩序係数order parameterの導関数→圧縮率、帯磁率、帯電率・・・
臨界指数 α、β、γ・・・
ランダウ理論では
秩序係数 η∝(Tc−T)
β、応答関数 χ∝|Tc−T|
γ、等圧比熱 Cp=|Tc−T|
α・・・
スケーリング則 秩序係数は(Tc−T)のベキ乗で記述できる
α=0、β=1/2、γ=−1・・・
ユニバーサリティ 臨界指数は系に特徴的な共通した値を持つ
臨界指数には関係式があり独立なのは2つ
自発分極の起源
弾性的には本来極性をもたないほうが安定な結晶がなぜ自発分極を生じるか。
弾性エネルギー(の非線形性)と双極子相互作用エネルギーの関係(格子力と静電力)
4π/3破局(スレーター理論)
局所電界
Ei=
E+γ
P、
P=Nα
Ei、α:分極率(分子)
P/E=Nα/(1−Nαγ)=ε
oχ
1−Nαγ=0 で破局が訪れ相転移、(γはcgs・emuで4π/3)
Lyddane-Sachs-Tellerの関係式 光学的振動と誘電率の関係
静的な誘電率/高周波での誘電率=縦波光学型格子振動のω
2/横波光学型格子振動のω
2
Cochran ソフト・モード凍結説
温度相転移、電界誘起相転移、応力誘起相転移
常誘電体・強誘電体の相転移は最も一般的な温度によって起こる温度相転移であるが、強誘電相での
自発分極の反転は一種の電界誘起相転移であり、応力によって起こる相転移、応力誘起相転移もある。
・強誘電体の非線形性(ヒステリシス)の記憶FeRAMへの応用
・誘電体、圧電体、強誘電体、焦電体と発電
誘電体、強誘電体は
Q=ε
r(t)ε
0S/tで
誘電体では機械的にS、tを変えることで発電。
強誘電体では誘電率の温度変化を利用。
圧電体は機械的運動を圧電効果で変換。
焦電体は自発分極の温度依存性を利用。
◎ 秩序・無秩序(整列・不整列)型相転移
永久双極子を有する物質では双極子能率自体はほとんど温度に依存しないで永久双極子の配向によって
相転移が生じる。永久双極子の配向度合いの温度依存性が自発分極の温度特性をきめる。
KDP(KH
2PO
4) 水素結合型強誘電体
スレーター理論 統計理論、プロトンの秩序・無秩序型
プロトン・トンネリング・モデル 同位体効果(重水素化によりT
c上昇)をもとにプロトンの量子力学的な
トンネリング運動
ラマン散乱実験によりPO4四面体の秩序・無秩序型
ロッシェル塩C
4H
4O
6NaK・4H
2O
−18℃と24℃で相転移をし、この温度間で強誘電体となる。
反転可能な二つの双極子があり、低温では反平行となり自発分極は生ぜず、高温では熱擾乱のため
自発分極が生ぜずこの中間で双極子間の相互作用が有力となり自発分極が生ずる。
・コメンシュレート・インコメンシュレート相(転移)
超格子構造が基準構造の整数倍になっているコメンシュレート相(整合相)に対し超格子構造が基準構造の
整数倍になっていない構造をインコメンシュレート相(非整合相)という。
あるいは相転移の結果生じる構造の周期が、相転移前の基本構造における周期の簡単な整数倍では表せない
構造の場合コメンシュレート・インコメンシュレート相転移という。
誘電体以外の物質でもひろく出現し、X線散乱で衛星反射がみられる。
NaNO
2、(NH
2)
2CS、K
2SeO
4など。
◎ 変位型相転移
成分イオンの相対的変位により相転移が生じる。双極子能率の温度依存性が自発分極の温度特性をきめる。
・ソフト・モード
変位型の強誘電体では常誘電相の赤外活性格子振動モードに周波数の非常に低いもの(ソフト・モード)
が存在し、転移点に近づくと振動数が更に減少し、その振幅が増大しやがて振動が凍結し相転移が起こると
解釈される。
・
構造相転移
原子の拡散を伴わない結晶構造のわずかな変化による相転移。
・逐次相転移
強誘電体とその関連物質は次々に多数回の相転移を示すことが多く、このような状態を逐次相転移という。
これらの相転移は密接関連し、最高温相の縮退モードが次々に凍結するとして説明される。
この場合最高温相の結晶対称性がわかっていると低温相の結晶対称性は群論により制約される。
一般に高温相が低温相より結晶対称性が高い。
逐次相転移の最高温相は原型相というがこれは仮想的なものである場合もある。
◎反強誘電性とフェリ誘電性
・反強誘電性antiferro
単位格子のなかに双極子能率の大きさが同じ反平行な2つの双極子が存在し、双極子能率は全体として
ゼロとなり自発分極は形成されない。
強い電界では反平行な2つの双極子がすべて平行となり強誘電性(ヒステリシス)を示す。
2重ヒステリシスを示す。PbZrO
3が有名。
・フェリ誘電性
単位格子のなかに双極子能率の大きさが異なる反平行な2つの双極子が存在し、双極子能率の差として
自発分極が形成。(あるいは双極子能率の大きさは同じだが向きが反平行でなく、合成の自発分極が発生)
低電界では普通の強誘電性(ヒステリシス)を示し、強い電界では反平行な2つの双極子がすべて平行となり
3重のヒステリシスを示す。
チオ尿素(NH
2)
2CS、ロッシェル塩の強誘電体相、(NH
4)SO
4など。
ある結晶軸方向では強誘電的で他の結晶軸方向では反強誘電的 NaNbO
3
・強誘電体と自発分極
<酸素8面体族>
6個の酸素の作る8面体の中央にかなり小さい金属イオンが存在し、それが中心からわずかに変位するに
伴いO
−イオンも変位し、自発分極を生じている一群の物質。
◎ペロブスカイト:ABO
3で示され、比較的イオン半径の大きな金属イオンAが立方体の角に、体心の位置に
イオン半径の小さな金属イオンB、面心に酸素イオンが配置している。
寛容度に富む構造でA−Bの原子価は1−5、2−4、3−3の組み合わせがある。
二つ以上の化合物は擬多元系として相互に広い範囲で固溶する。
ペロブスカイト型強誘電体としてはBaTiO
3が有名であり、その他PbTiO
3がある。
一般的にはABX
3で隅共有BX
6八面体のフレームネットワークの、BはXの八面体空隙(6配位)、Aは12配位、
X:O
2−、S
2−、Cl
−、Br
−、F
−、A:アルカリ、アルカリ土類、Y、希土類、Bi
3+、Pb
2+、Tl
+、B:遷移金属。
A+BとXの電荷の平衡が必要。
2−4型 A
2+B
4+O
3 BaTiO
3、PbTiO
3、SrTiO
3
1−5型 A
1+B
5+O
3 KNbO
3、NaNbO
3
3−3型 A
3+B
3+O
3 BiFeO
3
ペロブスカイト形成の目安はトレランス・ファクターt
rA+
rO=
t
(
rB+
rO)
理想的にはt=1、通常1.05〜0.90程度、rは通常Shannonのイオン半径(配位数を考慮したイオン半径)。
t<1ではBO6八面体がゆがみ菱面体、斜方晶、さらにはパイロクロア、イルメナイト構造となる。
・PZT:圧電セラミクスとして重要なのはPbTiO
3(強誘電体)とPbZrO
3(反強誘電体)の二元系(PZT)である。
この系ではZr:Ti=52:48付近に正方晶系から菱面体晶系への相境界(成分により結晶系が変わる
相境界:モルフォトロピック境界)があり、この近傍で優れた特性を示す。
Pb
2+の置換、不純物の添加、第三成分、特に複合型の添加(三元系化)により改善が行われる。
複合型ペロブスカイト酸化物
AおよびBに数個の原子価の異なるイオンが存在する化合物でたとえばBイオンでは
A
2+(B
1+1/2B
7+1/2)O
3、A
2+(B
2+1/2B
6+1/2)O
3、A
2+(B
3+1/2B
5+1/2)O
3、
A
2+(B
2+1/3B
5+2/3)O
3、A
2+(B
3+1/3B
6+2/3)O
3のような組合せがある。
一般式 Pb(B
mp+B
nq+)O
3 mp+nq=4
この酸化物を特徴つけているのはB位置のイオンの原子価であり電気的中性を保つ必要がある。
規則型・不規則型
上記複合酸化物B位置に異なるイオンが不規則に配列している場合を不規則型、規則的に配列し
ている場合を規則型という。
1:1型
極めて稀、
A、Bサイト同時規則配列 (Na、La)(Mg、W)O
3
Aサイト欠損型 La
1/3NbO
3、La
1/3TaO
3
1:2型
Ba
3MgTa
2O
9
1:3型
Sr
4NaSb
3O
12
・散漫相転移
BaTiO
3にBaSnO
3などを固溶させた場合や、不規則型複合型ペロブスカイト酸化物(含Pb系ペロブスカイト
ABO
3でBサイトイオンが複数の価数をもつ化合物)では誘電率の温度変化がなだらかになり、相転移が不明瞭
になっていくのが観測され散漫相転移とよぶ。
この散漫相転移では誘電率の経時的減少が大きくかつ、熱による回復現象が生じるなどの不安定性を示す。
強誘電性を生じるに足る最小領域(Kanzig領域:数100Åから数1000Å)の組成が各領域ごとに統計的に
ゆらいでいるために生じるという微視的組成揺動モデルがある。
・緩和型強誘電体(リラクサー)
散漫相転移では誘電率の周波数分散が大きくなり、周波数が高くなるにつれて誘電率は減少し同時に
ピークは高温側に移動する。
この緩和型強誘電体は誘電率が大きい割に温度特性がなだらか(散漫相転移)という特徴をもつので
コンデンサ材料に研究されている.。
不規則型複合型ペロブスカイト酸化物などの緩和型強誘電体は固溶体タイプと異なりナノスケールの
分極クラスター(局所的に分極が揃った領域)の存在による強誘電相と常誘電相の共存によるフラストレーション
とランダムネスによりリラクサー現象が生じるといわれる。
・2重ペロブスカイト(ダブルペロブスカイト)
AサイトまたはBサイトに価数が大きく異なるあるいはイオン半径が大きく異なる2種類の元素がはいると、これら2種類の
元素は無秩序に配列せずに、交互に占有する2重秩序構造をとることがある。
たとえばBサイトにBとB’が入ったA
2BB’O
6では−BO
6層−B’O
6層−BO
6層−B’O
6層−構造となる。
A
2BRO
6(A:アルカリ土類、B:Fe,Ln、R:Mo,Mn,W,Ru,でBとRの原子価差2以上)
Bi
2NiMnO
6ではBi−O構造歪みによる強誘電性とBサイトにあるNi
2+とMn
4+の秩序配列による強磁性が生じる。
→マルチフェロイック
Sr
2FeMoO
6 →ハーフメタル:一方のスピンが金属的で、他方のスピンが半導体的電子構造。
BaLnMn
2O
6ではAサイトのLnとBaが交互に層状に秩序化する。
・欠陥ペロブスカイト
Aサイト欠損
タングステンブロンズ:NaxWO
3、完全欠損:ReO
3型。
Ln
1/3NbO
3、Aサイトの2/3が空孔の正方晶。
Bサイト欠損
Ruddledsen−Popper相、ABO3とAOの積層。
酸素欠損 A
nB
nO
3n+1―δ(A
nB
nO
3n−1)
ブラウンミラライトBrownmilleriteA
2B
2O
5。
酸素欠陥の秩序無秩序転移が起こり斜方晶からペロブスカイト型立方晶に転移。Ba
2In
2O
5、Sr
2Fe
2O
5など。
酸素過剰 A
nB
nO
3n+2
Sr
2Nd
2O
7 ペロブスカイト・スラブ構造
酸素過剰層により分離された4単位胞(8面体)の厚みのペロブスカイト構造の2次元スラブよりなる。
Sr
2Ta
2O
7、La
2Ti
2O
7
・(ポストペロブスカイト)
MgSiO
3の高圧相、下部マントルD’’層の主要構成相と考えられる。高圧合成により発見された。
CaIrO
3は常圧でポストペロブスカイ相が安定である。
・アンチペロブスカイト
遷移金属が8面体を構成しその中心にN、Cなど。CuNMn
3など。
XNMn
3、X=Ga、Zn、Cu、磁気体積効果により室温で大きな負熱膨張。
MgCNi
3は超伝導。
・
層状ペロブスカイト
同族系列相(ホモロガス相)をなす。
Ruddlesden−Popper相
A
n+1B
nO
3n+1あるいはAO(ABO
3)
nまたはM
2(A
n−1B
nO
3n+1)
AOと(ABO
3)
nの積層。ペロブスカイト・スラブは(1/2,1/2)ずれる。
K
2NIF
4型はn=1、Ca
2MnO
4など。
この構造はペロブスカイト型相ABO
3(A-=La、Sr B=Ni)と岩塩型構造AOが交互に積み重なったAO(ABO
3)
n系構造
のn=1に相当する。
Dion−Jacobson相
M(A
n−1B
nO
3n+1)
M:1価、A:2価、B:4、5価、イオン交換反応を起こす
RbLaNb
2O
7、ACa
2Nb
3O
10 、ペロブスカイト・スラブは(1/2,1/2)ずれる。
Aurivillius相(Bi層状構造酸化物)
(Bi
2O
2)A
m -1B
m O
3m +1
酸化ビスマス層(Bi
2O
2)
2+と擬ペロブスカイト層(A
m−1B
mO
3m+1)
2−で構成される層状構造。
ペロブスカイト・スラブは(1/2,0)ずれとずれないものがある。
異方性強誘電体となる。
・関連構造
タングステンブロンズ
単位胞にBO
6八面体10個含みAイオン配位は15、12、9があり、15配位に4個、12配位に2個占めると
一般式A
6B
10O
30(filledTB)、A,Bの価数の組合わせで実現するにはA,B各一元では足りず三元以上
の系が必要。
A
5B
10O
30(unfilledTB)、6個の位置を5個のAイオンで統計的に生めたもの。
パイロクロア
一般式A
2B
2O
7、[1
10]方向に連結された八面体列と[110]方向のものが交互に積層。
Aのイオン半径が比較的小さいときにパイロクロア構造、大きいときにペロブスカイト構造が現れる。
イルメナイトFeTiO
3
Aイオンが小さい場合はイルメナイト構造となる。ABO
3でAが2価、Bが4価が多い、LiNbO3、LiTaO3などは
強誘電体。
コランダムの変形構造でOイオンの6方最密充填の8面体6配位の隙間の2/3をA、Bイオンが規則的に配列、
BイオンがOイオンに8面体6配位されていることが共通。
◎ 間接型(外性)強誘電体
転移パラメータ(秩序変数)が分極以外で、相転移は直接はこの転移パラメータで支配され、強誘電性
はこの転移パラメータと分極の結合で起こると考えられる物質。(双極子間の相互作用によらない転移)
秩序変数がどの物理量であるかはその物理量に対する応答関数の温度特性を測定することで推定できる。
(応答関数は分極に対しては誘電率、歪に関しては弾性係数・・・)
Gd2(MoO4)3が有名で誘電率はキューリー・ワイスの法則に従わず、何らの誘電的前駆現象なしに
突然強誘電体に転移する。
間接型強誘電体は一般的に自発分極が小さい。
・強弾性
応力に対し電場と同様の現象、即ち自発歪みが存在し、配向状態の異なる二つの領域S,S'があり外力に
より境界が移動する。
Gd
2(MoO
4)
3がやはり有名である。
・誘電異常を伴わない構造相転移 (staggered相転移)
SrTiO3の105Kの相転移、酸素八面体の回転角が秩序変数で誘電率が応答関数になっていない。
◎ 量子常誘電性
SrTiO
3、KTaO
3など転移温度が極低温領域にあると思われる「強誘電体」で誘電率の温度特性が低温で
次第にキューリー・ワイス則からはずれ(Barrettの式)相転移がおこらない。(極低温で誘電率は温度によらず
高誘電率で一定になる。)
量子力学的効果(フォノンの零点振動)によって、絶対零度付近でも強誘電相へ転移せず常誘電状態にとどまる
ためと考えられる。
古典的強誘電体の誘電性が双極子相互作用 vs. 温度の図式で表わされるなら量子常誘電体/強誘電体は
双極子相互作用 vs. 量子ゆらぎ(ゼロ点振動)で理解され、量子強誘電体は、温度以外のパラメーター(圧力等)
を変化させることで実現される。
あるいは光照射による局部的強誘電相化の可能性が研究されている。
◎ ダイポールグラス
双極子相互作用による長距離秩序作用とランダムポテンシャルによる拮抗によりダイポール(電気双極子)の
向きが場所によっていろいろな方向を向いている系。
双極子がほぼ同じ方向を向いている領域は結晶の大きさに比較して非常に小さい。
◎ スピンと絶縁体
・スピンホール絶縁体
バンド絶縁体でスピンホール効果、すなわち外部電場によって(磁場や磁性がなくても)それに垂直方向にスピン流
が生じる。
・スピングラス絶縁体
スピングラス:磁気的原子が全くランダムな方向を向いて凍結。
◎ トポロジカル絶縁体
系の端にギャップレス・エッジ状態が存在する絶縁体、量子スピンホール絶縁体など。
◎
電荷秩序化による誘電性(電子誘電性)
双極子の起源が、イオンの変位ではなく結晶の中の電子の密度分布にあるもの。
三角格子電荷フラストレート系RFe2O4では電荷のフラストレーションを起源として、電荷の秩序配列が存在する
ことにより誘電性が生じるとされる。
混合原子価ないし価数揺動での電荷分離と電荷整列(電荷秩序)による強誘電体化。
◎ 超誘電体?
横浜国立大学工学部の菅原昌敬教授の提唱になる超誘電体は超伝導からのアナロジーで<内部電束密度Dがゼロと
なる>完全誘電性(完全反電性)を示す。
すなわち試料に注入された「外部電荷」変位De は「内部電荷」変位(「分極」)P
P で打ち消される(De +P
P =0)。
これは2次元性を有するLa
2-x Sr
x CuO
4 などで実現するだろうとする。
電子スピンの秩序配列で形成される強磁性特性に対し超伝導体では電子対の巨視的電流が反磁性を維持しているように、
原子分子の電気分極の秩序配列により形成される通常の誘電性に対し、c軸方向のマクロな正孔対電荷変位が「反電性」を
維持する状態 を考えれば「ノーマルキャリア」の導電性と正孔対系の示すスーパー誘電性は矛盾せず併存できると主張。
この超誘電体は誘電率が実質的に負、直列容量が個々の容量より大(すなわち高誘電率を利用するには超誘電体層と
通常の誘電体層の2重層を挟んだ構成とする必要がある)、小定常電流下でDe は単調増加するが、PP の上限において
異常「分極」状態が周期的に破壊されるので、電極界面などの高抵抗部分に蓄積された電荷が周期的に放電される結果
「負抵抗」が観測されるなどの特徴があるとする。
【マルチフェロイック】
強誘電性、強磁性、強弾性等のフェロ性(秩序)を同時に発現すること。
(フェロ性の本質をドメイン形成として第4のフェロイック秩序としてフェロトロイディシティferrotoroidicity(磁気渦の秩序)が
議論となっている。)
更にはこれらフェロ秩序の結合、特に強誘電性と磁性に秩序の結合があることが重要視されてきている。
また結合という観点から広く強磁性だけでなく反強磁性も含められるようになってきている。
この結合によりマルチフェロイックな強誘電体は間接型強誘電体となる。
◎磁性強誘電体
<強誘電性と磁性が独立>
・ボラサイト
Me
3B
7O
13X Meはイオン半径0.97Å(Cd
2+)〜0.66Å(Mg
2+)、X:ハロゲン
N−Iボラサイト Ni
3B
7O
13I
・Aサイト:Bi
3+、Pb
2+(6s
2孤立電子対)−Bサイト:3d遷移金属ペロブスカイト(磁性:3d
n ヤン・テラー効果)
常温で合成されるのはBiFeO
3、他は高圧合成(BiMnO
3等)。
BiFeO
3 T
FE=1100K、T
M=650K、混合原子価による誘電損失
・混合ペロブスカイト d
0(Ti
4+、Zr
4+、Nb
5+、Ta
5+、Mo
6+、W
6+・・・)とdn(Fe
3+、Mn
3+、Co
3+、Co
2+・・・)
Pb
2(Co
1/2W
1/2)O
3、Pb(Fe
1/2Nb
1/2)O
3
ペロブスカイトではBサイト(遷移金属) 強誘電性:d
0(空d殻)、磁性:dn(不完全充填d殻) →相反する
・ダブル・ペロブスカイトA
2BRO
6(A:アルカリ土類、B:Fe、Ln、R:Mo、Mn、W、Ru、BとRの原子価2以上)
Bi
2NiMnO
6 Bi−O構造歪による強誘電性と磁性サイトがKanamori-Goodenough則(K−G則)で反強磁性化
・幾何学的強誘電体
六方晶RMnO
3 YMnO
3、YbMnO
3、HoMnO
3・・・
RとOの相対変位による自発分極
高いT
FE(〜900K)、低いT
AFM(<100K)
ペロブスカイトRMnO
3 R=La〜Dy:斜方晶、イオン半径大(ペロブスカイト) R=Y、Sc、Ho〜Lu:六方晶、イオン半径小
BaMF
4 M=Mn、Fe、Ni、Co
MF
6八面体
・電荷秩序(電荷整列) 混合原子価(荷電子揺動)と電荷分離
RFe
2O
4 層状三角格子構造 R=Y、Lu
2組の鉄(Fe
2+とFe
3+)の三角格子の2重層(三角格子面が2枚)と、希土類の層が積層。
Fe
2+とFe
3+がフラストレーション、フラストレーションを安定化させるため三角格子間で分極発生。
<磁気秩序による強誘電性(間接強誘電体、T
FE=T
AFM)>
フラストレーション構造を原因とするスパイラル磁気構造 →対称性の破れ
40K以下と低い、自発分極小さい0.0数μC/cm
2
・斜方晶(ペロブスカイト)RMnO
3
サイクロイド型スパイラル磁気構造で自発分極発生。
TbMnO
3、DyMnO
3、
・六方晶フェライト(フェロックスプレーナ)Ba
2Mg
2Fe
12O
22
円錐型らせん磁気
・CuFeO
2(デラフォサイト)
磁性サイトが2次元三角格子構造でc軸方向に周期的に積層、らせん磁気でab面内に分極、フラストレーションを
安定化させるため結晶が歪み分極発生。
・カゴメ階段格子
Ni
3V
2O
8
・LiCu
2O
2
Cu
2+が磁性を支配、Cu
2+はb軸に1次元鎖
・スピネル AB
2O
4 Bサイトが正4面体頂点を共有した3次元ネットワークのパイロクロア格子 B=V、Cr
CoCr
2O
4 円錐型らせん磁気
・パイロキセン(輝石) AMSi
2O
6 A=Li、Na M=Fe、Cr
c軸に沿って辺共有MO
6八面体と頂点共有SiO
4四面体の1次元ジグザグ鎖
・MnWO
4
ウォルフラマイト 辺共有MnO
6八面体1次元ジグザグ鎖
<磁気歪によるマルチフェロイック>
・斜方晶RMn
2O
5 R=Tb、Dy、Ho、Y
反強磁性長距離秩序の形成がMn3+と酸素イオンとの相対変位を引き起こし自発分極発生。
・RbFe(MoO
4)
2
<その他フラストレーション系> マルチフェロイック?
・ランガサイト
R
3Ga
5SiO
14 R=Pr、Nd カゴメ格子
NdランガサイトNd
3Ga
5SiO
14.
A
3BFe
3Si
2O
14 A=Ba、Sr、Ca B=Nb、Ta、Sb 三角格子
・パイロクロイア A
2B
2O
7
Bが6個の酸素原子に囲まれた8面体を形成し、頂点を共有し3次元ネットワーク形成、B原子は3角形からなる4面体を
形成し頂点を共有し繋がるパイロクロア格子となっている。A原子もパイロクロア格子形成。
【誘電体の光学的性質】
・複屈折:結晶中でスネルの法則に従う常光線と従わない異常光線が生じる。
・光学活性:直線偏光の偏光面が回転。
旋光電性:強誘電体で分極反転にともない旋光能が逆転
超旋光電性:強誘電体で分極反転にともない旋光能の電場微分が逆転
◎ 電気光学効果
1次の電気光学効果(Pockers効果) (2次の非線型光学)
電界に比例して物質の屈折率が変化、圧電体(対称中心のない結晶)で生じる。
光シャッター、光スィッチ、光変調素子、光偏向素子に応用
2次の電気光学効果(Kerr効果) (3次の非線型光学)
電界の2乗に比例して物質の屈折率が変化。
◎ 音響光学効果:超音波と光の相互作用
ブラッグ反射:音波の波長が短いと、ブラッグ角条件で入・反射。
ラマン・ナス回折:音波の波長が長いと垂直入射に対し多重回折、音波は光に対し、位相を変える
位相格子として働く。
◎ 非線型光学
普通分極は電場に比例することが多く、その場合、光学感受率は電場に依存せず一定で、この比例関係を
「線形性」と呼ぶ。
ところが時として比例しない場合があり、これを「非線形性」と呼ぶ。分極が外部電場に比例せずに、
電場とともに急に大きくなる場合、この性質は、 発振やスイッチング等の特殊な動作を行わせることがでる。
一般に物質に印加する電界
Eと電気分極は
P
P=χ
E(ω)
となる。
レーザー光などのように加える電界が強くなると
P=χ
1E+χ
2EE+χ
3EEE+・・・
となり第2項以降から非線型光学効果が生じ、第2項目から対称中心のない結晶で2次の、第3項目から
3次の非線型光学効果が生じる。
電界が静電界でなくすべて光学周波数ωで振動する場合は高調波、和・差周波数などが生じる。
・2次の非線型光学
2次高調波THG ω→2ω(+直流成分) 波長変換に利用
和・差周波数 ω
1、ω
2→ω
1±ω
2 波長変換に利用
・3次の非線型光学
3次高調波SHG ω→3ω 波長変換に利用
4波混合 ω
1、ω
2、ω
3の3入射光による和・差周波数、
縮退4波混合
CARS 非線型ラマン散乱の1種、分光分析に利用、ω
4=ω
1+ω
2−ω
3でω
1=ω
2
ω
1とω
2(ω
1 >ω
2 )の光の試料に入射でω
3=2ω
1-ω
2のコヒーレント光が放出される。
光双安定現象:光双安定というのは光の入力に対して、2つの安定な出力状態があること。
位相共役波:入射波と媒質との非線形相互作用により発生する波であり、元の入射波と同じ波形で
反対方向に進む波、入射した光の波面の形を変えずに元来た光路を逆進する波である。
代表的な発生機構には、誘導ブリルアン散乱と四光波混合の二つがある。
四光波混合では光非線形媒質に、対向する2つの光ビーム(ポンプ光)を照射した状態で、
側面からさらに別の光ビーム(プローブ光)を入射すると、新たに別の光がプローブ光とは
正反対の向きで出射され、この光が位相共役波。
光パラメトリック効果:光の増幅、発振。
誘導ラマン効果:入射光(レーザ)と入射光により生じる光学フォノン(結晶格子の光学的振動)との相互作用
により発生する散乱。
誘導ブリルアン効果:入射光(レーザ)によって媒質内に誘起される音波で入射光自身が回折する現象。