実装とは パッケージ・部品・実装・微細加工


(1) 基板実装

 電子・電気機器の実装(より正確には基板実装)とは主にプラスチックよりなる回路基板(JISではプリント
配線板)に、半導体・ICを中心にコンデンサ、抵抗等の回路素子(電子部品)等をはんだ付け等により接続、
固定することをいう。
 この電子部品の基板への実装の信頼性が製品の性能・信頼性を大きく支配する。
 実装の主目的は電子部品の機械的固定と電気的接続であるが放熱性も考慮しなければならない。
 またはんだ付け時の熱の影響や基板分割時等の機械的応力なども注意する必要がある。

 *実装は英語でどういうのだろうか、jissoを国際語にというはなしもあるが、まずはassemblyであろうか。
 ただしこの語は日本語では組立となり、実装は従来は組立と称されていた内容の一部である。
 特に表面実装化に伴い機械化・自動化が進んだことと、電子機器と電子回路の重要性が大きくなるとともに
基板実装も重要になってきたと思われる。
 アッシーassyと略す場合もあが、補修パーツで予め、主要部分が組立済になっている単位をアッシーともいう。


(2) 回路基板

(2−1) 回路基板・プリント配線板PWB・プリント回路基板PCB

 実装の母体になるのは回路基板(プリント配線板PWB、プリント回路板PCB)である。
 回路基板は絶縁体でなければならなく、材料としてはプラスチック樹脂が主であり、これには大きく
リジッド基板とフレキシブル基板がある。
 また特殊なものにはセラミック(主にアルミナ)基板があり、更に琺瑯基板や表面酸化等により表面を
絶縁体化し放熱性を向上させた金属基板などもある。
 プラスチック樹脂の回路基板は配線用導体としてCu箔が張り合わせてあり、これをエッチングにより配線
形成する。
 更にソルダーレジストにより電極以外の配線部を被覆しはんだが付着しないようにする。
 概略な工程は(プリプレグと銅箔の張り合わせ、)エッチングによる配線パターン形成、ソルダーレジスト形成、
シルク印刷、表面処理である。

 *シルク印刷:基板への文字・図形等の印刷。
 *PWB=Printed Wiring Board、PCB=Printed Circuit Board、部品が実装されたものをPCBと区別することも。

(2−2) 基板と難燃化

 リジッド基板に主に使用されるのは紙・ガラス布(編ガラス)・ガラス不織布(マット・ガラス)などの基材に樹脂
(フェノール、エポキシ、ポリエステル等)を含浸pregさせた積層板laminateである。
 重要な特性は機械的強度、加工性、電気的特性、吸湿性、難燃性などである。
 回路基板の規格のグレード呼称はNEMA(類似にANSI)規格のものを使用するのが一般的である。
 通常よく使用されるFR−4などのFRはfire retardent(resistant)で耐燃性を意味する。
 耐燃性についてはUL規格が重要である。
 回路基板には難燃化のため難燃剤が使用されており、ハロゲン系難燃剤が優れているが環境問題(特にROHS
による使用禁止物質の指定)によりハロゲンフリー化が求められている。

(2−2−1) NEMA規格

 回路基板のグレード呼称はNEMA(ANSI)規格(積層板の規格)を使用するのが一般的である。
 JISやIPC、IEC、MIL、ASTM、ANSIなどもあり、ASTM、ANSIはNEMAと呼称・グレードは類似しているがJISやIPC、
IEC、MILは全く異なる。
 NEMA規格にはポリイミドやフッ素樹脂の規格はない。*頻用されるグレードの特性概要→松下電工
 X、XX、XXX系は紙基材・フェノール樹脂でXが増えるほど(樹脂量多くなり)電気的特性向上、機械的特性低下、
後付のPは熱間加工性、Cは冷間加工性を意味する。安価で加工性がよいが耐燃性、耐湿性に劣る。
 色は黄褐色から褐色。
 C、CEは太糸布基材・フェノール樹脂、L、LEは細糸基材・フェノール樹脂、CE、LEは電気的特性でそれぞれC、Lより
 L、LEは電気的特性、吸湿性でC、CEより優れている。CFは布cotton基材・フェノール樹脂の難燃性のグレード。
 色は黒、黄褐色、赤、黄色。
 G系はガラス布基材にフェノール(G2、G3)、メラミン(G5、G9)、シリコン(G7)、エポキシ(G10、G11)樹脂を
含浸させたもので同じ樹脂では数字が大きくなるほど特性がよくなる。
 GPYはこの系のポリイミド樹脂でANSIの呼称(MILではGI)。
 G7(シリコン系)はクリーム色か白色。G5、G9(メラミン系)は灰色から褐色。
 N−1はナイロン布基材・フェノール樹脂。
 FRは難燃性のグレードである。数字が大きくなるほど耐燃性がよい。
 FR−1、2は紙基材・フェノール樹脂でXPC、XXXPCの難燃性のグレード。
 FR−3は紙基材・エポキシ樹脂。FR−4、5はガラス布基材・エポキシ樹脂でG10、G11の難燃性のグレード。
 色は黄色から緑色。FR−4は最もよく使用される。
 FR−6はガラス不織布基材・ポリエステル樹脂。
 GPO−1、2、3はガラス不織布基材・ポリエステル樹脂。色は黄褐色から赤色。
 CEM−1、2は紙・ガラス布基材・エポキシ樹脂。
 CEM−3、4はガラス不織布・ガラス布基材・エポキシ樹脂。
 CRM−5、6はガラス不織布・ガラス布基材・ポリエステル樹脂。
 CEM−1、3、CRM−5が難燃性のグレード。

 *PTFE樹脂ではガラス布基材でGT、GX、GY、ガラス不織布基材でGP、GRがMILの呼称。
  その他アラミド不織布基材でエポキシ樹脂やポリイミド樹脂(IPC-4101/55、IPC-4101/56)
  ガラス布基材ではPPE樹脂(IPC-4101/90:難燃性、IPC-4101/91)、シアネートエステル樹脂(IPC-4101/70:難燃性、
 IPC-4101/71)などがある。

 NEMA:National Electrical Manufacturers Association アメリカ電気工業会
 ANSI:American National Standards Institute アメリカ規格協会
 MIL:アメリカ軍用規格
 ASTM:American Society for Testing and Materials アメリカ材料試験協会
 IPC:Institute for Interconnecting and Packaging Electronics Circuits アメリカプリント回路工業会
 IEC:International Electrotechnical Commisson 国際電気標準会議

(2−2−2) UL規格

 UL(Underwriters Laboratories. lnc)は、米国の非営利の民間試験機関で、材料、部品、および製品の安全規格
の制定、試験、承認登録、検査などを行う。
 回路基板に関係するのはUL94 (プラスチック材料の燃焼性試験)。
 
 UL94 HB規格 (水平燃焼試験)
  短冊状試験片を水平に置いて燃焼させ、所定の距離に炎が達する時間で評価。
 UL94 V-0,V-1,V-2規格 (垂直燃焼試験)
  短冊状試験片を垂直に置いて燃焼させ、燃焼時間で評価。
 UL94 5V(5VA,5VB)規格
  UL94 V-0,V-1,V-2規格より燃焼エネルギーが10倍大きいバーナー使用。試験片は短冊状と板状。
  短冊状の試験片の試験はUL94 V-0,V-1,V-2規格と同じ、板状は穴開き試験。
  大型製品のための試験。

 耐燃性は94HB<94V-2<94V-1<94V-0<5Vと考えられ、V-0に合格すれば通常問題ない。

(2−2−3) 基板の難燃化

 樹脂の燃焼は樹脂の熱分解で生じた可燃性ガスの燃焼によって生じる。
 樹脂の難燃化は気相ではラジカル反応の抑制(ハロゲン系)、不活性ガスによる酸素遮断(窒素化合物)、
固相では炭化物(チャー)やその他の無機物による断熱・遮蔽効果、発泡層による断熱効果(インツメセント系)、
架橋・炭化による分解生成物の不揮発化、無機物では分解反応による吸熱、水酸化物では発生水分による
効果などが利用される。
 具体的には次のようなものがる。
  @ハロゲン系難燃剤(+アンチモン系難燃剤)
     ラジカル反応の抑制(燃焼反応で生じるラジカルを捕捉し連鎖反応を抑制)。
     従来最もよく利用されていたが、ダイオキシンやオゾン層破壊物質が発生するという欠点がある。
     テトラブロモビスフェノールA(C6(OH)Br2-C(CH3)2-C6(OH)Br2:TBBPA)は最も多く利用され樹脂成分と
    化合して使用される。(ROHS規制外)
     つぎによく使用されるのはデカブロモジフェニルエーテルC6Br5-O-C6Br5:DBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル
    PBDE類、ROHS規制)である。臭素含有率が高く難燃化効果が大きい。
     ハロゲン系とアンチモン酸化物との併用は相乗効果でハロゲン系難燃剤の添加量を少なくできる効果がある。
  Aリン系難燃剤
     リン酸エステル、赤リンが利用され、チャー生成、揮発性のものはラジカル捕捉効果。
     リン系は加熱でイオン性物質を生成し、マイグレーション発生の恐れがある。
  B金属水酸化物系難燃剤 
     水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど。
     吸熱反応による冷却効果、水分発生による効果、反応性生物による断熱・遮蔽効果。
  Cホウ酸塩、錫酸亜鉛、Zr化合物等
     吸熱反応による冷却効果、反応性生物による断熱、遮蔽効果。
     溶融・分解温度が低すぎず(加工に影響)、高すぎないことが要求される。
     無機化合物は多量に添加する必要がある場合が多く機械的性質等の劣化を招きやすい。
  DインツメセントIntumescent(発泡)系
     断熱・遮蔽効果(発泡による表面膨張)
     リン酸化合物(反応剤:ポリリン酸アンモニウム塩APPなど)と窒素化合物(発泡剤、アミノ化合物やヒドラジド)と
    ペンタエリスリトール等(骨格)。
  E窒素化合物導入
     メラミン、イソシアヌレートなど。NO、NOガス発生。
  Fシリコン化合物導入
     チャーの生成。

 難燃化とともに有毒ガス発生の抑制や低発煙化が課題となっている。

(2−3) 多層基板

 回路基板は片面基板、両面基板、多層基板、ビルドアップ基板と高度化してきた。
 基板の多層化はプリプレグと呼ばれるプラスチック樹脂とガラス布等との複合体を主とする絶縁層と銅箔を
積層することが基本となる。
 通常、コア基板に銅貼板を両面に貼る様なかたちで積層する。
 積層法にはピン・ラミネーション法とマス・ラミネーション法がある。
 ピン・ラミネーション法は銅貼板、プリプレグに基準穴を設け、ピンを通して位置決めし、積層を行う。
 マス・ラミネーション法は基準点(アライメントマーク)をもとに画像による位置合せを行う。
 吸湿によるリフロー時の層間剥離(デラミネーション)、ミーズリング(熱ストレスによるガラス繊維の樹脂からの剥離)、
クレイジング(機械的ストレスによりガラス繊維が樹脂から剥離)等に注意が必要。
 
 ガラスエポキシ基板は板厚方向の熱膨張が大きく、多層基板では実装時のはんだ付け加熱の際に
スルホールメッキの割れが発生することがある。
 スルホール表面で発生するものがコーナークラック、スルホール内部で発生するものものがバレル
クラックと呼ばれる。

 多層基板では(ビルドアップ基板も)層間を導通する(電気的接続を行う)層間配線接続穴:Via Holeビア・ホール
(バイア・ホール)の形態にいくつかの種類がある。
 *Through-Holesスルーホール:THDを挿入する両面を導通する穴でVia Holeビア・ホールより径が大きい。
 *スミア、デスミア
   スミアは穴あけ工程で生じたスルーホール壁面上の樹脂残渣、スミアを除去するのがデスミア。
   デスミアはウェット(薬液)やプラズマで行う。
 *スカム、デスカム
   現像処理後のパターン上のレジスト(有機物)残渣がスカムでその除去がデスカム。

(2−3−1) 貫通ビア(スルーホール・ビア)
 基板の各層の接続(電気的接続)のため表裏から基板全層を貫通する貫通穴の形態。
 不要な部分にも大きな穴があり、配線スペースが減ってしまうという問題がある。
 スルーホールビアはドリルで穴明けする場合が多いがビルドアップ基板ではビアはレーザーやエッチングで穿ける。

(2−3−2) IVH(インタースティシャル・ビア・ホール、インナー・ビア・ホール)
 特定の層間をのみを接続する表面に出ないビア・ホール。
 通常は導電物質で埋め込まれた埋め込みBuried viaビア(あるいはフィルド・ビア)となる。

(2−3−3) BVH(Blind via ブラインド・ビア・ホール)
 一方の表面から内部の層で封鎖された非貫通ビア・ホール。

(2−3−4) 各層間のビアホールの接続形態
 ・スタックト・ビア・・・1列に積重ねたビア。
 ・スタガードstaggered・ビア・・・各層ごと交互にずらしたビア。
 ・スキップ・ビア・・・途中の層の配線との接続を飛ばしたビア。
 ・コンフォーマル・ビア・・・通常の表面層だけのビア。 

(2−4) ビルドアップ基板

 ビルドアップ基板ではコア基板(ベース層)に絶縁層と導体層の形成をレジストと薄膜を利用しフォトリソグラフィ
の手法で1層づつ形成し、層間接続も1層ごとに形成するビア・ホールで行う。
 プリプレグと銅箔を1層づつ積み上げる、あるは銅箔付きプレプレグを積み上げるものまで拡大されてきているが、
絶縁層の形成とともに層間接続法(ビア形成法とビア導体形成法)が重要な点である。

(2−5) リジッド基板とフレキシブル基板

 回路基板は一般的にはガラスクロスをエポキシ樹脂で複合化したガラエポ基板が主であるが、日本では
低価格なものとして紙とフェノール樹脂を複合化した紙フェノール基板が使用されている。
 基板の色は緑が普通であるが、これは画像検査がしやすいためである。
 ハロゲンフリーのものには青のものもある。紙フェノール基板は褐色である。
 フレキシブル基板は可撓性がある有機樹脂フィルムでポリイミドフィルムが一般的である。

*FFC(フレキシブルフラットケーブル)、FPC(フレキシブルプリント配線板)ケーブル
 FFCはは薄帯状の導体を並べプラスチックフィルムで挟んだフラットケーブル、FPCケーブルはFPCに配線した構造
のケーブル、可撓性があり折り曲げて使用できる。

*高周波用基板
  高周波基板はより一層の低誘電率、低誘電正接が要求され、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキシドPPO(ノリル樹脂、
 変性ポリフェニレンエーテルPPE)、BTレジンなどが使用される。

*BTレジン 三菱ガス化学のビスマレイミド・トリアジン樹脂の商品名
  高弾性・低熱膨張という特徴をもち、誘電率も比較的低い。

(2−6) サブトラクティブ法とアディティブ法

 回路基板の銅配線の形成法には大きく二つある。
 サブトラクティブ法(除去法)は従来からの一般的方法で予め銅箔が張られた基板をエッチングにより
配線パターン形成する方法である。
 この方法では配線の高密度化は水平方向へのエッチングであるサイドエッチ(アンダーカット)が従がって
銅箔厚みが規定することになり高密度化に限界がある。
 (銅箔厚みははんだ付けにおける銅食われ、電気抵抗などが規定する。)
 アディティブ法(付加法)はレジストによりパターンを形成し無電解めっきにより金属層を形成するものである。
 無電解めっきでは実際はアクチベータとして全面に薄くPdを形成する工程を含む下地めっき層の形成があり、
この下地層の除去を配線パターン形成後行う。従って実際はセミ・アディティブ法である。
 この下地層の除去が微細パターンでは困難、あるいは配線へ影響することが多い。
 従って微細化のためのセミ・アディティブ法ではまずスパッタなどにより薄膜を形成したあとパターンを形成する。
 アディティブ法は導体密着力が弱い欠点がある。

 *材料加工方法を一般的にサブトラクティブ法(除去法)とアディティブ法(付加法)に分ける場合がある。

 *ランドとパッド
  もともとTHD用のはんだ付け電極部をランド、SMD用をパッドと称していたようであるが、現在はどちらも
 ランドと呼ぶことが多い。
  ICチップ上のワイヤドンディング用電極はパッドと称すことが多い。
  QFPなど多リードのパッド群はフットプリントということが多いがパッドと同義とすることもある。

 *サーマルランド
  電源部周り、グランド等のようにパターン幅が近接したランドは熱が逃げやすく、はんだ付けしにくいため、
 サーマルランドと称する熱が逃げにくい構造のランドを形成する。
 *プリントコンタクト
  コネクタとの接続部分になる導体パターン。

(2−7) 基板の表面処理

 回路基板の電極ははんだ付け性を向上する等の目的で表面処理が実施される。
 基板の表面処理FinishingはPbはんだではSn-40%Pbのはんだめっきやレベラーと呼ばれるはんだ浴
への浸漬法、プリフラックス、無電解Ni/Auめっき、Snめっき(主にフレキシブル基板)などが使用されたが、
Pbフリー化にともないはんだめっきはなくなった。
 (Pbフリーはんだは多成分系であり、かつSn以外の成分量が少なく、めっき管理が難しい。)

 電極材料ははんだの主成分のSnと金属間化合物を形成(濡れる)しかつその金属間化合物の生成量の
多くないもの(食われにくい)が主に選ばれる。
 Snと金属間化合物を形成するものはAu、Ag、Pd、Cu、Ni、Pt、Fe、Coなどがあるが、Au、Ag、Pdは
食われ(溶解し)やすいために主にはんだ付けのための保護膜として利用され、はんだ付け電極としてはCu、Ni、
(Pt、)、(Feははんだ小手先チップ)が利用される。
 Pbフリーはんだ付け用としてはSnとの反応を考慮し、Cuで10μm以上、Niで2μm以上に厚みが必要とされる。

 *金属間化合物:金属元素同志が特定の組成で形成する非金属的結合性をもつ複雑な結晶構造の化合物、
硬く脆いのが特徴。

(2−7−1) 無電解めっき

 めっき(湿式めっき)には外部電源を必要とし電気化学反応の陰極析出を利用する電解めっきと化学反応を
利用する無電解めっき(化学めっき)がある。
 化学めっきには還元剤を利用する化学還元めっきとイオン化傾向の違いを利用する置換めっきがある。
 化学還元めっきには析出金属が触媒作用をする自己触媒型と下地金属が触媒作用をする下地触媒型がある。
  還元剤にはジメチルアミンボラン(DMAB),次亜リン酸,ホルムアルデヒド,ヒドラジンなどがあり、自己触媒
作用をする金属はNi、Co、Fe、Cu、Ag、Au、Rh、Pd、Ptなどである。
 自己触媒型無電解めっきではNi−P(還元剤は次亜燐酸塩でこれはCuは触媒性を示さない)、
 Ni−B(還元剤はジメチルアミンボラン、テトラヒドロほう酸ナトリウムなど、還元剤が高価であまり利用
されない)、Cu(還元剤はホルマリンなど)やその他Pd、Au、Agなどがよく利用される。
 自己触媒型は厚付けができる。
 下地が触媒作用を持たない樹脂・セラミクスなどにはめっき開始のためにPd吸着により触媒付与がなされる。
 Pd吸着はセンシタイジング(鋭敏化処理)−塩化Snと塩化Pdによるコロイド形成、アクチベーティング
(活性化処理)−めっき反応を妨害するSnの除去によってなされる。
 置換めっき(浸漬immersionめっき)は下地金属が露出しているときだけ析出し、表面を覆うと自動的にめっきが
停止し薄くしか付けられなく、下地を溶解する。
 Cu、Ni上のAg・Auめっき、Cu、Fe、Al上Sn(イオン化傾向からはCuでは置換めっきはできないが
錯体を利用することで可能となる)などが置換めっきで利用される。
 無電解Ni/AuめっきではAuの置換めっきにより下記のようにブラック・パッドという問題が生じるため
Auの下地触媒型めっきが開発されている。

(2−7−2) 無電解Ni/Auめっき

 無電解Niはもともと正確にはNi-P合金であり、その上にAuを無電解で付ける場合は置換めっきによりNiを
溶解しながらAuを析出させていく。
 この場合めっき管理がうまく行われないとPの析出領域が発生し(あるいは酸化が起こり)はんだ弾き、いわゆる
ブラックパッドが発生する。
 特にリフロー後のフローなどで発生しやすい。
 更にPbフリー化に伴いはんだのSn成分が増えたためSnとNiの金属間化合物生成反応が進行しやすくなり、
そのためはんだ付けによりPリッチ相が生成し、耐衝撃性の低下などが見られる。
 不必要に高いリフロー温度や長時間リフローなどは避けなければならないが、本質的な解決にはならない。
 またNiは硬いためフレキシブル基板では特にファインパターンの場合配線に亀裂が生じやすいいのでNiめっきは
フレキシブル基板では注意が必要となる。

 *上記のような無電解の問題を避けるため電解Ni/Auめっきが考えられるが、電解Auめっきはめっき厚を薄く
できない、均一性が悪いなどの欠点がありさらにS、Cl等の汚染、Ni(OH)の生成などの問題も起こりうるといわれる。
 そもそも給電が必要である。

(2−7−3) Auめっき

 表面処理でAuが増えるとはんだのSnとの金属間化合物の生成によりカーケンドールボイドとよばれるマイクロ
クラックが発生しやすくなる。
 またSnとAuの金属間化合物は脆いため、接合界面に増えると耐衝撃性等に悪い影響を与えやすいので
注意が必要である。
 PbフリーはんだではAuが溶け込むと粘性が高くなりマクロなボイドが発生しやすくなる。ただしこのボイドは
接合強度にはほとんど影響を与えないようである。

 *カーケンドールボイドkirkendall:お互いの原子の相互拡散速度の差異に基づいて形成されるボイド、金の拡散速度が
化合物の成長を上回り金と化合物の間にボイドが生成する。

(2−7−4) レベラー、HAL
 
 回路基板を溶融はんだ槽に浸漬し空気を吹き付け平滑化をはかる表面処理法をHAL(Hot Air Leveller)または
単にレベラーという。
 Pbはんだでは低コストではんだ付け性もよかったので多用された。
 微細パターンには向かない。

(2−7−5) プリフラックス

 回路基板の低コストな表面処理法としてフラックスをプリコートしておく耐熱プリフラックスが一般的である。
 最近VOC問題から水溶性プリフラックス(OSP、グリコート)が使用されつつある。


(3) フォトリソグラフィ
  レジストとエッチングを利用する加工方法はリソグラフィといい、特にフォトレジストを利用するものは
 フォトリソグラフィと称する。

(3−1) レジスト

 レジストは用途からはエッチングレジスト(ウェット、ドライ)、めっきレジスト、ソルダーレジストなどがある。
 形状からはドライフィルム・レジスト、液体レジスト(薄膜、厚膜)、電着レジスト、レジストインクなどがある。
 また現像型レジスト(フォトレジスト)には露光された部分が現像で除去されるポジ型と露光部が残るネガ型がある。
 ドライフルムレジストはフィルム状の感光樹脂をベースフルムと保護フィルムで挟んだ3層構造でラミネート法で
貼り付ける。レジスト層は厚い。
 ドライフィルムレジストは回路基板やめっき、サンドブラストのレジストなどに使用される。
 IC製造では薄くて解像度が良いため液体レジストが専ら使用されスピンコートなどが利用される。
 電着レジストは電解めっきによって形成され、導電性部に選択的に形成でき、また非平面に形成できる。
 レジストインク(非現像型)は通常、露光・現像を行わず、(スクリーン)印刷などでパターン形成され、顔料を
含むこともあり紫外硬化型や熱硬化型などがある。
 現像液はNaCO水溶液、剥離液はNaOH水溶液が一般的である。
 現像後にパターン上にレジスト残渣(スカム)が生じることがあり、これを除去するのがデスカム。
 厚膜レジストは主にめっきに利用されMEMS、LIGA、CSP等の再配線、バンプ、ハードディスク(磁気ヘッド「GMRヘッド」)、
リフトオフなどに適用される。

 *再配線
 CSPやWLPなどでチップ上の電極にインターポーザーと称する樹脂フィルムや低誘電率層を形成し回路基板に実装する
ためのバンプやハンダボールなどの外部端子を設けるためワイヤーボンディングに替わる配線層を形成すること。

(3−2) レジスト塗布

 液体レジストは塗布機(コータ)でレジスト塗布する必要がある。
 シリコンウェハーのような円板状のものは回転させながらレジストを滴下して遠心力で広げて均一膜化するスピンコート
が普通であるが、大型化に伴い、あるいは非円板状、長尺、非平面ではスピンレスコートが必要となる。
 スプレーコータ、ディップコータ、ロールコータ、カーテンコータ、ナイフコータ、ダイコータ法などがある。
 1度で多層コーティングが可能なものとしては複数のスリットをもつスライドコータ、カーテンコータ、スロットコータなどがある。

 ・ディップコータ・・・液体レジスト中に浸漬し引き上げる
 ・塗布にロールを使用
   ロールコータ・・・印刷ロール(アプリケータ)と別のロール等で液溜りを形成し印刷ロールで転写。
   グラビアコータ・・・ロールの凹部にレジストを溜め転写。
   キスコータ・・・下方の液溜りからロールにレジストを塗布し転写。
 ・ダムプレートと被塗布物で液溜りを形成し、出口側で塗布量規定
   ナイフコータ・・・ナイフ(ドクターブレード)により塗布量規定。
   コンマ(ロール)コータ・・・ナイフをロールにしたもの。
   リップコータ・・・ノズルヘッドにドクターエッジ(リップ)を配しレジストを噴射。
   ショートドウェルコータ・・・ブレード部に液溜めを設ける。
 ・ノズル・スリットから吐出
   スプレーコータ・・・スプリンクラーのようにシャワー状に噴出・散布、静電力を利用した静電スプレーもある。
   ダイ(スリット、スロット)コータ・・・幅広ノズル(スリット)から吐出、被塗布物との間隔は1mm以下と狭い。
   ファウンテンコータ・・・ノズルからレジストを噴出。
   カーテンコータ・・・レジストをフィルム状に上方(リップ間)より流れ落としガイドにより塗布物のカーテンを形成、
             カーテン高さは数cmとなる。
   キャピラリーコータ・・・レジストパンからキャピラリー効果でヘッドに供給。
   スライドコータ・・・スライド面上の単数または複数の細長い孔(スリット)からレジストを吐出させ、スライド面上に
           単層または複層のレジスト流を形成。
 ・ ロールコータなどで1度塗布した塗布物を再度厚み調整
   ブレードコータ ・・・ブレードで調整。
   エアドクタ(エアナイフ)コータ・・・ブレードの代わりエアー使用。
   ロッド(バー)・・・ステンレス線等を巻いたロッド(バー)で余分な塗液を削落す。
 ・パターン印刷
   スクリーン印刷
   吐出法(インクジェット、ディスペンサ)・・・描画法
   グラビア印刷

*印刷法
   印刷には凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、吐出印刷、静電印刷などがある。
 ・凸版印刷
    凸部にローラでインクを着け転写。活版印刷など。
    フレキソ印刷・・・弾性のある版を使用。
 ・平版印刷
    印刷部、非印刷部は同一平面状で疎水部と親水部、親水部にインク塗布し転写。
    オフセット印刷・・・インクが版からゴム版に一度転写。
 ・凹版印刷
    印刷部がくぼんでいる版、全体にインクを塗布し、余分なインクをふき取り、くぼみのインクを転写。
    グラビア印刷など。
    たこ(パッド、タンポ)印刷・・・凹版にあるインクを弾力性のあるパッドに付着させ転写。
 ・孔版印刷
    インクの通過部と非通過部形成、孔版(ステンシル)法、シルクスクリーン法など。
 ・吐出印刷
    インクジェット法、ディスペンサ法など。

(3−3) 露光装置(マスク・アライナー)

 マスクとワークピースの位置合わせ(アライメント)と露光(A&E)を行う露光装置にはマスクとワークピースを
コンタクト(密着)させるコンタクト(密着)露光、平行光を利用してマスクとワークピースを若干離すプロキシミティ
(近接)露光(PLA)(以上は等倍露光)、マスクとワークピースの間に投影光学系(ミラー、レンズ)を挟む
投影露光方式(拡大、縮小、等倍露光)がある。
 また露光方法には全面(一括)露光法と走査(スキャン)露光法(→ミラー投影露光)、分割露光法がある。
 (レーザー、電子線などによりマスクを必要としないビーム露光も提案されているが量産では例はない。)
 反射(鏡)を使用する投影露光(MPA)は等倍で円弧状の光ビームを走査する。
 レンズ投影露光は縮小投影により分割(部分)露光を繰り返す(ステップ&リピート)露光装置でステッパーといい
半導体の主流である。
 ステッパーはウェハーだけを移動するが、マスク(レチクアル)とウェハーの両方を同時走査(移動)するものを
スキャナーと呼ぶ。

 液体レジストを例にとるとレジスト塗布→ソフトベーク→A&E→(Post Exposure Bake)→現像→ベークという
工程でレジストパターンが形成される。

 解像度は波長、レンズの開口数、レジストの性能などで決まるが、高圧水銀ランプが光源のg 線(波長:436nm、
解像度0.5μm)、 i 線(波長:365nm、解像度0.5〜0.25nm)、KrF エキシマレーザ(波長:248nm、解像度150nm) 
と向上してきている。
 更にはArF エキシマレーザ(波長:193nm)、F2レーザー (波長157nm)が検討されている。

 *PLA:Parallel Light Mask Alighner
 *MPA:Mirror Projection Mask Alighner

 * EUV 露光
  極めて波長の短い紫外線(波長:13.5nm)を用いた縮小投影露光で、EUVL(Extreme UltraViolet Lithography)とも。
 *電子ビーム露光(描画)
  微細パターンの形成を光露光で行う場合、光の波長が限界となる。
  波長を短波長化するため紫外線(エキシマ、EUV)、X線(放射光)の利用が行われている。
  光で解像度を向上させるためには短波長化のほかに位相シフト法や液浸法(投影レンズとウェハの間に空気より屈折率
 の大きい水を満たし開口数を大きくする)なども検討されている。
  電子ビーム露光は光露光用の微細マスクパターン形成(電子ビーム描画)や電子ビーム投影露光EPLなどに利用されるが
 マスクを使用しない直接描画(電子ビーム直接描画)でより微細なパターン形成も行われる。
  ビーム描画(1筆描き)でビーム径を数10nm以下のスポットに絞り微細なパターンが形成できるが、面露光でなく1筆描き
であることやビームを絞っているためエネルギー量が小さい等により時間がかかる、また真空中でしか使用できない。
 *電子ビーム投影露光
  マスク(ステンシル:開口部を有するマスクで開口部分だけを電子ビームが透過)に矩形電子ビームを照射して発生する電子
 ビームパターンを電子レンズで縮小して露光。

 *イエロールーム
  露光あるいはフォトレジストや紫外硬化樹脂を扱う部屋は紫外線を遮断するため黄色の照明を使用する。
 *HEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)フィルター
  クリーンルームで空気中のチリ・ゴミを取り除く空気フィルター。
  クリーンルームは外からゴミ・チリ等が入りにくいように陽圧(外部より気圧を高めにすること)にしている。
  クリーンルームに入る時は防塵着とマスクを着用し入室にはエアシャワーでチリ・ゴミを取り除き、筆記用具も無塵紙と
 ボールペンを使用するなどの注意が必要である。
  物品の出し入れは通常パスボックスを利用する。

(3−4) マスク

 マスクにはフォトリソグラフィで使用するフォトマスクとスクリーン印刷で使用するマスク(版)がある。
 フォトマスクはガラス(主に石英ガラス)にクロムでパターン形成したものが主であるが、ソーダライムガラスに
銀塩ゼラチン乳剤を使用したエマルジョン・タイプ、さらにポリエステル・フィルムに銀塩ゼラチン乳剤を使用した
ものなどもある。
 ステッパーで使用するフォトマスクをレチクルというが、縮小投影露光を行うステッパー以前はレチクル(原版)
からマスクを作成しマスクで露光を行っていた。
 ペリクルはフォトマスクに貼ってゴミの影響を防ぐ保護膜でパターン面から離れた位置にあるため焦点の関係で
ウェハへのゴミの影響を低減できる。
 電子ビーム露光ではステンシル(開口マスク)を使用する。
 
 *マスクリペア
 ホトマスクの欠陥を修正することで、突起等は収束イオンビーム装置(FIB)、レーザー、電子ビームなどで削り、
欠け等はイオンビーム、電子ビームあるいはレーザー支援CVDで修正する。

 *ハードマスク
 ICの層間絶縁膜に利用される有機高分子はレジストと材料的に近いためエッチングにおける選択比に差が小さく
そのためこれらとエッチング性が異なる層を設け、これをハードマスクといい、Si酸化膜・窒化膜などが利用される。

(3−5) エッチング

 エッチングにはエッチング液を使用するウェットエッチングと反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカル
によって材料をエッチングするドライエッチングがある。
 脆性材料の加工にはブラスト加工が利用されることもある。
 レーザービーム加工などのビーム加工ではマスクレスの加工ができる。

 *リフトオフ
 リフトオフはレジストパターンを形成してから薄膜を形成し、その後レジストを除去することで薄膜を除去しパターン
形成する方法。

 *犠牲層エッチング
 部分的に中空構造を形成する、あるいは可動部を形成する、基板に犠牲層を形成しその上に別の膜を形成し、
犠牲層をエッチングする。

 *アスペクト比
  縦横比、凸凹では溝の幅と深さの比

 *L/S(ライン&スペース)
  パターン精度、解像度などの表示法、等しい寸法のラインL(パターン)とスペースS(空間)で表示。

(3−5−1) ウェットエッチング

 ウエットエッチングは通常、等方的に進行し、サイドエッチが生じるために、微細パターンには利用できない。
 回路基板では主にCuのエッチングでFeCl塩化第二鉄が利用される。
 塩化第二鉄は金属用エッチングの主流である。
 ICでは金属はAlに燐酸・硝酸・酢酸混液系、Siや酸化膜は弗酸系、異方性エッチング(結晶面によるエッチング
速度が異なる)ではKOH、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)など、窒化膜では燐酸などが使用される。
 Si、酸化膜、窒化膜等のエッチング速度とどの層を選択的にエッチングしたいかなどを考慮してエッチング液が
選定される。
 その他ITOでは塩酸や塩化第二鉄、Auではよう素系、王水系、シアン系のエッチング液が利用される。

(3−5−2) ドライエッチング
 
 ドライエッチングにはガスエッチング、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、イオンエッチングなどがあり、
プラズマエッチングと反応性イオンエッチング、特に反応性イオンエッチングは現在のIC製造の主流となっている。
 反応生成物が揮発性となりやすいためエッチングガスはハロゲン化物が主。
 プラズマエッチングはバレル(樽)型真空容器内にガスを導入し、ガスを高周波、マイクロ波などにより励起し、
プラズマを発生させラジカルを生成し化学的にエッチングする。
 反応生成物は揮発性ガスとして除去される。
 反応性イオンエッチングは平行平板電極で試料台の電極に高周波を印可し対向する電極をグランドにする。
 これによりイオンの物理的なスパッタ効果と、ラジカルの化学的なエッチング効果の相乗効果によって、
異方性と寸法制御性に優れ高い生産性が得られることから、LSI製造工程のエッチング法として普及している。
 その他 ガスエッチングはHF、HCl、XeFなどをキャリアガスとともに気体として導入するしエッチングを行う。
 イオンエッチング(イオンミリング)はArイオンや液体金属イオン源(主にGaイオン、FIBとも)などが利用され反応を
伴わなずスパッタ効果で加工する。
 ドライエッチングではレジストもエッチングされる。
 またレジスト端がエッチングされやすく(レジストの後退)テーパがついてエッチングされる。
 エキシマレーザーではマスク投影によるエッチングが行われる。

 *ドライエッチングではレジストもマスクと称する。

 *DeepRIE(深堀り反応性イオンエッチング)
   アスペクト比の高い(狭く深い)反応性イオンエッチング。
   フッ素系ガスをエッチングガスとして用いたICP(InductivelyCoupled Plasma)RIEが注目されている。
    ICPは,コイル状のアンテナ(反応室の外部コイルに高周波電力を供給する)とそれをプラズマから絶縁する誘電体
  からなるプラズマ源でプラズマ生成用電源とバイアス用電源のパワーを独立に制御でき、低圧で高プラズマが形成される。

 *ボッシュプロセス
   六フッ化硫黄(SF6)を用いての等方エッチングとテフロン系のガス(C4F8など)を用いて側壁への保護膜のデポジッション
  を交互に繰り返しアスペクト比の高いエッチング(深堀りエッチング)を実現。

 *ローディング効果とマイクロ・ローディング効果
   エッチングではもともと温度やエッチング液濃度あるいはプラズマ濃度の不均一性等によりエッチング速度が局所的に
 異なることがあるが、ドライエッチングではエッチングパターンによってもエッチング速度が異なることがあり、その傾向は
 パターンのスケールによって異なる。
  ウェハー・レベルではパターンの粗密によってエッチング速度が異なる。すなわち、疎の部分はその部分に対し
 エッチングされる部分の面積が少なく、エッチング速度が速くなるのに対し、密の部分はその逆となる。
  つまり被エッチング部の面積の減少に伴ってラジカルが相対的に過剰となり、エッチング速度が速くなる。
  これをローディング効果という。
  一方、微細パターンではパターン幅(エッチング溝幅)が狭くなるほど、あるいは開口面積が小さくなるほど、
 (あるいはアスペクト比が大きくなる、溝が深くなるほど)エッチング部の底面にイオンやラジカルが到達しがたいなど
 の理由でエッチング速度が遅くなり(ウェッ・トエッチングではよく起こる)これをマイクロ・ローディング効果という。
  即ち、スケールやアスペクト比などにより同じく開口の(相対的)大小でももエッチング速度の速い・遅いは異なる。

 *異方性エッチング
   単結晶のウェットエッチングでは結晶方向によるエッチング速度の違いにより結晶に特有の特定の方向がエッチング
  されやすい異方性エッチングが生じ、ドライエッチングにおいてはイオンはその直進性により、ラジカルではエッチングガス
  が分解し生成したポリマが側壁を保護することにより異方性エッチング(垂直方向優先のエッチング)が生じる。

(3−5−3) ブラスト加工(サンドブラスト)

 ブラスト加工(サンドブラスト)は研磨材等の粒を、圧縮空気で材料の表面に吹き付け除去を行う加工方法で、
(湿式もある)主に脆性材料の加工に利用される。

(3−6) レジスト剥離

 目的を終えたレジストは剥離液(ウェット)か酸素プラズマ分解(ドライ→アッシング(灰化)という)により除去される。
 剥離液による剥離には膨潤剥離型と溶解剥離型がある。

(3−7) MEMS

 MEMS(Micro Electro Mechanical System)あるいはマイクロマシン(加工方法はマイクロマシニング)は
シリコンベースのフォトリソグラフィを主とする微細加工技術を駆使して作製された微小電気・機械システムで、
終局的には機械要素部品、センサー、アクチュエータ(作動制御素子)と電子回路を一つのシリコン基板上に
集積化したデバイスを目指す。
 ただしICが平面を加工するプロセスで作製されるのに対し、MEMSでは立体形状(アスペクト比:深さ・高さ
と幅の比の大きい形状)を形成する必要があるという大きな違いがある。

(3−8) LIGAプロセス

 LIGAはリソグラフィ、電鋳、モールデイングを意味するドイツ語の頭文字で、シンクロトロン放射(SR)による
X線リソグラフィで基板(シリコンなど)上にレジスト(PMMA:アクリル樹脂あるいはSU−8:エポキシ樹脂などの
厚膜レジスト:液体で厚く塗布できる)で原型の構造体(雌型、マスター型)を形成し、これを型として電鋳を行い
金型(Ni製、雄型)をつくりこれを鋳型としモールド(鋳込み成形−射出成形等:材質−金属、樹脂、セラミック)
あるいはエンボス加工を行い超微細な立体構造物(3次元形状部品−アスペクト比の大きな形状)を製作する。
 SR露光は使用が容易でないので紫外線露光(UV−LIGA)などの変形プロセスがある。
 一方、ナノインプリントという微細パターン(凸凹)を形成した金型(スタンパー、Si、SiO2またはNi)でスタンピング
(プレス方式)により樹脂(熱可塑、熱硬化、紫外硬化)に形状を転写する方法があり、これは金型は電子線露光
によるリソグラフィ(+電鋳)で製作するのが普通であるが、LIGAとの基本的違いは電鋳型をレジストにするか、
Si等にするかの違いであると思われる。
 シリコン(Si)を高アスペクト比ドライエッチングした構造体から電鋳転写することで金型を形成する方法では
エッチング壁面の面粗さが荒い、壁面が逆テーパーになる等の問題が生じるといわれる。

(3−9) 薄膜プロセス

 主に気相を経由して基板上に形成するせいぜい数μmの薄い膜を薄膜というが代表的なものは
PVDCVDである。

(3−9−1) PVD (Physical Vapor Deposition 物理蒸着、物理的気相成長法)

 PVDには真空中で原料を加熱し蒸発させる真空蒸着、真空蒸着で蒸発した蒸気をイオン化させる
イオンプレーティング、イオンの固体衝撃による粒子の放出を利用するスパッタなどがある。
 MBE(Molecular Beam Epitaxy)は蒸着で多元系で構成元素を別々のルツボから蒸発させ、かつ温度制御を
高精度化する、高真空度化をはかり膜への不純物の混入を抑えるなどの工夫をしている。
 レーザーアブレーションはレーザーで原料を蒸発させる方法で蒸発・気化によりクラスター・イオンなどが
生成し複雑な現象を呈する。

(3−9−2) CVD (Chemical Vapor Deposition 化学的気相成長法)

 CVDは金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスの化学反応を利用し薄膜を
基板に堆積させる方法である。


(4) 電子部品

(4−1) 挿入実装(部品)と表面実装(部品)

 回路素子あるいは電子部品には電極端子の構造から挿入実装部品(リード部品)と表面実装部品がある。
 挿入実装部品(THD)は電極端子がピン構造になっており、基板には裏表貫通穴(スルーホール)
があいていてピンを穴に挿入してフローではんだ付けし固定、接続する(挿入実装)ものである。
 表面実装部品(SMD)は主にチップ構造(コンデンサ、抵抗等)になっており、基板電極にはんだペーストを
印刷し、その上に電子部品を置き(マウント)、リフローはんだ付けし固定、接続する(表面実装)ものである。

 *THD=Through Hole Device、SMD=Surface Mount Device
 *表面実装部品のはんだこて作業は簡単ではない。一方表面実装は高速大量生産に向いた高密度実装である。
 したがって携帯電話のように高密度で大量生産しかつ修理が問題とならないような製品は表面実装となる。
 一方産業機器などのように少量生産で、基板の大きいのが比較的苦にならず製品自体が高価で修理が問題と
なる、あるいはROMなどの交換が普通で、使用条件の厳しいものでは人手を利用した挿入実装にメリットが
生じてくる。
 *回路素子(部品、デバイス)には電源により機能する半導体、ICなどの能動素子、電源を必要としないキャパシタ、
抵抗などの受動素子、スイッチ、リレーなどの機械的動作がある機構部品、コネクタなどの接続部品などがある。

(4−2) シリコンウェハwafer

 ウェハの原義は薄いケーキのことらしいが円柱状のインゴットから切り出した薄い円板状のシリコンをウエハ、一般に薄い
円板状の材料をウェハという。
 シリコンでは直径6インチ(150mm)は厚み0.625mm、8インチ(200mm)で0.725mm、12インチ(300mm)で
0.775mmとなっている。
 回路を形成したウェハは50〜200μmに裏面を研磨(バックラップ)され、砥粒を貼り付けた円板状の砥石(ブレード)で研削
により切断(ダイシング)されチップとなる。
 単結晶のインゴット(鋳塊)スライシング(円盤状の切り出す)されラッピング(研磨で平坦化、厚み調整)される。
 更にエッチングにより加工変質層を除去し更にポリッシングで鏡面研磨される。

 *オリフラ
   円板状のウェハに結晶方位を示すために形成されたフラットな切り欠き。orientation flatの略。
 *SOI Si on Insulater
   ICや半導体は大部分平面構造でシリコンの厚みはほとんど必要としないかかえってバルクは機能を低下させる場合がある。
  そのため薄いシリコンの半導体層を形成するため誘電体層(SiO)の上にシリコンの半導体層を形成する。
  方法としては表面酸化したSi上へSiを張り合わせる張り合わせ法と酸素をイオン注入して酸化層を形成しその上に薄い
 Si層を残すSIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)がある。
  張り合わせ法では表面酸化したSiにSiを張り合わせ機械研磨する方法で数μmまで可能で、それ以下はプラズマエッチングで
 薄くするPACE(Plasma Assisted Chemical Etching)法、水素イオン注入によるSiの剥離を利用するUNIBONND法(Smart Cut、
 水素イオン分離法)、ポーラスSiを剥離に利用するELTRAN法などがある。
 *CZ法とFZ法
   シリコン単結晶の合成は主に種子結晶をるつぼ中の融液につけ回転しながら引き上げるCZ法(回転引き上げ法、
  チョクラルスキー)で行われるが高抵抗のシリコンは焼結体の棒を誘導加熱などによる加熱し溶融帯を形成しこれを移動させる
  FZ法(フローティング・ゾーン法、浮遊帯溶融法)で合成されるが大形の結晶は合成できない。
 *ベベル
  主に割れ欠けを防ぐための外周の面取り。
 *CMP Chemical Mechanical Polishing
  化学的機械的研磨、砥粒の機械的研磨と研磨液の化学的研磨効果を併用。
 *ダマシン 
  原義は象嵌細工、Cuを埋込配線する方法。微細化に伴い、低抵抗化のためCuを配線材料に使用するようになったが、
 Cuはエッチング困難、拡散しやすいなどのため、配線パターンとして溝を形成し、そこに拡散防止膜(バリアメタル)を形成し
 めっきでCuを充填しCMPで平坦化する。

(4−3) スライシングとダイシング
 脆性材料であるシリコン等の加工には主に研削加工が使用される。
 塊状のシリコンインゴットからのウェハー切り出しはスライシング、ICウェハの切断、チップ(=ダイdie::サイコロ)化はダイシングと
呼ばれる。
 ダイシングは通常50から200μm程度の厚みの円板状の細かい砥粒を接着したブレードに水を流しながら
回転させて行う切断方法である。
 回転円板つまり回転刃(ブレード)には外周刃と内周刃がある。ブレードは径の大きいものの加工に不利である。
  外周刃  ウェハのダイシング
  内周刃  インゴットのスライシング(ウェハー化)、8インチ(200mm)以上はワイヤーソー
 ワイヤーソー  ワイヤー(百数十μmのピアノ線)と研磨液。
 バンドソー 帯鋼の1辺に砥粒を電着。
 などが利用される。
 ガラスなどの切断には割断(スクライブ)法も利用される。
 割断(スクライブ) 罫書き(溝、傷形成)し応力で割る、主にガラス切断、基板分割などに利用。
  レーザー割断法
   レーザーアブレーション 熱の影響が小さい、アブレーション効果で溝形成。
   サーマルブレーキング 熱応力を利用
   溶融切断
   ステルスダイシング(浜松ホトニクス@、レーザー光で加工対象物内部に応力発生)
  ダイヤモンド割断法
などがある。
 スクライブ法は生産性が良い、カーフロス(切断代)がいらないなどの長所がある。
  
(4−4) パッケージ

 回路素子(電子部品)の中心になるのはICであるが、ICは実装のために通常樹脂封止(パッケージング)
される。
 パッケージ化の目的は素子の保護と電極接続を容易にすることである。
 リードフレームや基板などにダイボンディングによりICチップを固定し、ワイヤボンディングにより外部用電極
と接続する。
 ダイボンディング(ICチップの基板、リードフレーム等への固着)は接着剤やはんだ、Au-Si共晶接合等で行う。
 高信頼性のものにはセラミック・パッケージが使用される。
 概略工程はダイボンディング、ワイヤボンディング、樹脂封止である。

(4−5) ワイヤボンディング

 ICチップ上のAl電極と外部電極を接続するために主として使用される配線方法である。
 Au細線を使用する方法が主であるがAl細線も使用される。
 溶融を伴わず固体同志の接合を熱と超音波を併用し短時間で行う。
 ワイヤボンディングにはボール・ボンディング(通常Au)とウェッジ・ボンディング(通常Al)がある。
 Alは主に大電力、高温動作の部品に使用する。
 今後はCuワイヤの使用が増えていくと考えられる。Cuは窒素ガス雰囲気での操作となる。
 ボール・ボンディングの手法はワイヤバンピング(スタッド・バンプ)にも利用される。

(4−6) 樹脂封止

 ICのパッケージング(樹脂封止)は部分的に反応を進めペレット化したエポキシ樹脂を加熱し金型に押し出し
成形するトランスファーモールド法が利用されることが多い。
 一方電子部品などでは型に液状の樹脂を注入する注型法が利用される。
 またベアチップやフリップ・チップでは液状の樹脂をオーバーコート(ポッティング)、アンダーフィル(サイドフィル)などとして
使用することが多い。
 封止樹脂は熱膨張率の調整、耐熱性、耐湿性向上などの目的でアルミナ、シリカなどのフィラー(充填材)が添加される
ことが多い。
 また基板用や封止用の樹脂には難燃化のためハロゲン、アンチモン化合物が添加されているが、環境問題から
脱ハロゲン・アンチモン化が検討されている。

(4−7) リードフレーム材料

 リードフレームは樹脂封止タイプのパッケージで半導体チップから外部電極端子(リード)形成の役目をする。
 Cu合金とFe-42%Ni合金(42アロイ)が使用されている。
 42アロイは樹脂との密着性がよいという長所がある。
 一方Cu合金は導電性、熱伝導性の点ですぐれ、非磁性であるのも長所である。
 リードフレームはダイボンディング部及びワイヤボンディング部はAgめっきが施される。

(4−8) ペリフェラル・パッケージとエリア・アレイ・パッケージ

 多端子構造を要求されるICにはペリフェラル(周辺)・パッケージとエリア・アレイ(面)・パッケージがある。
 ペリフェラル・パッケージはパッケージ本体の外側にリード端子が出ている構造のもので挿入実装部品ではDIP、
表面実装ではSOP、QFPなどがある。
 リード端子のないタイプ(あるいは外側に出さないで母体側に折り込んだもの)も出てきている。(SON、QFN
 エリア・アレイ・パッケージはパッケージ本体の腹に電極端子が出ているもので挿入実装部品ではPGA、
表面実装部品ではBGAなどがあり、更にはチップサイズパッケージCSPなどが検討されている。
 エリア・アレイ・パッケージは実装面積が小さいという利点があるが、電極接合部が見えず、部品の基板への
マウント、接続状態の確認・検査が難しい等の問題がある。

 *キャスタレーション電極
  キャスタレーションcastellationとは基板やパッケージ側面のくぼみ(凹)を指し金属層を形成し主にキャスタレーション
 電極として利用する。すなわちキャスタレーション電極とは側面の窪みに設けられた縦溝状電極で下面の電極と一体に
 なっている場合が多く、スルーホール電極を半分割した構造で下面電極だけの場合にくらべはんだ接合を強化し、
 フィレット観察可能となる。

*ICパッケージの略称は半導体メーカの情報で確認して下さい。

(4−9) チップ部品

 コンデンサ、抵抗などの表面実装部品はその形状からチップ部品と呼ぶことが多い。
 部品と基板のなすはんだ盛り部はフィレットと呼ばれる。
 電極が部品の側面になくフィレットfilletを形成しない表面実装部品はフィレットレス部品と呼ぶ。
 その寸法をもとに3216(サンニーイチロク、3.2mmX1.6mm以下同様)、2012、1608、
1005、0603、0402などと呼称する。
 チップコンデンサはセラミック積層のものが多く、チップ抵抗はアルミナ基板に薄膜等で抵抗を形成した
ものが多い。
 チップ部品の外部電極は厚膜電極にはんだめっきしたものが多い。
 厚膜電極は貴金属粉とガラス粉(フリット)よりなる厚膜電極ペーストを塗布、焼成することにより形成する。

 *フィレット:正確には基板電極と部品電極のなす隅部の隅肉というべきか。
 
(4−10) 中実封止と中空封止

 封止には内部に空間を形成する中空封止と内部空間を生じさせずすべて充填してしまう中実封止がある。
 ICチップの樹脂封止が中実封止の代表であり、この場合は容器(ケース)を使用しない中実封止であるが
容器(ケース)を使用する中実封止もある。
 中空封止の代表はセラミック・パッケージである。
 中空封止は通常、蓋(リッド)と容器(ケース)から構成され主にセラミックのケースに金属やガラスのリッドが
シーム、レーザーや電子ビーム溶接あるいはAgろう付け、低融点ガラス、Au−20%Sn高温はんだなどで接合される。
 水晶振動子、SAWフィルター、光通信デバイス、MEMSセンサー(加速度、圧力等)など可動部分があるもの
は中空封止となる。

(4−11) 水晶振動子と気密封止

 気密封止Hermetic Sealの目的は水分等の腐食性成分からの隔離であるが、水晶振動子では真空化が
要求される。
 このためには樹脂封止では不十分でセラミックや金属の容器が使用される。
 この容器と蓋(リッド)の接合は金属同志の溶接、はんだ付けやガラスによる融着が利用される。
 金属とガラスの融着ではコバール合金などの低膨張率合金と低融点ガラスが多く利用される。
 ガラスやシリコンでは陽極接合も利用される。

 *Sn−80重量%Auはんだ
   フラックスを必要とせず、Ni/Au電極でクリーンなはんだ付けが可能で真空封止や光部品の封止に利用される。
   金属間化合物同志の共晶で脆い。

(4−12) セラミックパッケージ・基板

 原料粉末と有機バインダーと可塑剤や溶剤を混合し、スラリー(粘性状物)を作り、ドクターブレード成形機という
装置で成形する可撓性のあるグリーンシートと呼ばれるプラスチック様のシートにMo、Wなどの厚膜ペーストを
印刷し積層、プレスで打ち抜き成形したものを焼結して製造する。
 (積層チップコンデンサも同様な方法で製造される)
 高価ではあるが気密性に優れている。
 セラミックの容器(ケース)に振動子、ICなどどを入れ、ガラス、金属、セラミックなどの蓋(リッド)をする。
 ケースとリッドの接合は溶接、はんだ付け、低融点ガラスなどで行う。
 はんだ付け、溶接ではセラミック、ガラスでは金属層形成(メタライズ)が必要となる。

(4−13) マルチ・チップ・モジュールMCM

 マルチ・チップ・モジュールは複数のICチップ・部品等を一つのパッケージに搭載したもの。
 特定の機能を行うシステム化されたものが多い。

 *IDTinterdigital transducer
   SAW素子などで使用する櫛歯状(すだれ状)電極。

(4−14) 厚膜プロセス

 厚膜プロセスでは厚膜ペーストでスクリーン印刷法によりセラミック基板等に回路等を形成する。
 厚膜ペーストは金属(主に貴金属)、セラミック、ガラス粉末等と印刷性をよくするための有機成分である
ビヒクル、溶剤等を混ぜたもので導体、抵抗、絶縁体、誘電体、グレーズ(ガラス)などのペーストがある。
 厚膜成形では焼成温度が高く有機混合物は分解してしまうのでバインダーにはガラス・フリット(ガラス粉)が
使用される。

(4−15) スクリーン印刷法

 ペーストによるスクリーン印刷法はセラミック製造の厚膜プロセスで一般的な方法であるが、精度の必要としない
エッチング・レジストの形成などにも使用される。
 マスクを使用したペースト(インク)によるリフロー用ペーストはんだのスクリーン印刷による回路基板への
形成が一般的である。
 点や線での印刷にはディスペンサー法を利用することもある。更にインクジェット印刷を利用することも考えら
れている。
 マスクはスクリーン印刷ではシルクマスクが一般的であるが、はんだ印刷では高精細密化のためメタルマスクが多い。
 メタルマスクは通常100μ〜150μmの厚みであるが、細密パターンではもっと薄い場合もある。
 ペーストはスキージとよばれるへらで供給される。
 ペーストはスキージの移動により回転(ローリング)することにより、マスクの開口部に供給される。
 マスクはスキージにより湾曲して基板と接触し、スキージの移動によりマスクが基板から離れペーストが基板に
転写される。
 このペーストのローリングが印刷のポイントとなる。

(4−16) スクリーン印刷用マスク(版)

 スクリーン印刷用マスクはメタルマスクのほか、メッシュ(織網)状の幕(スクリーン=紗)に感光性樹脂でパターン
を形成したものがある。(本来のスクリーン:シルクスクリーン、それに対しメタルマスクはステンシル
 メッシュはポリエステル、ステンレス、Ni電鋳などで製作される。
 スクリーン印刷用マスクは枠に取り付けられ版となる。
 メッシュのスクリーンマスクはメッシュの間からインクがでるので精度に欠けるし、きれいな形状に印刷はできないし、
印刷インク厚はスクリーン厚にはならない。(開口率に依存)
 ステンシルタイプであるメタルマスクは孤立したパターン(たとえばドーナッツ状)は1枚のマスクでは形成できない。
 フォトリソグラフィーにメッシュのスクリーンマスクは使用できないし、フォトマスクはスクリーン印刷に使用できない。
 (当然であるが)
 しかしステンシルはフォトマスクにもスクリーン印刷にも使用できる。
 ステンシルは印刷用マスクの他に、スパッタマスク、露光マスクにも使用可能であるし、電子ビーム露光では
ステンシルを使用する。
 印刷法は精度に欠けるが、フォトリソグラフィーに比べて極めてコストパフォーマンスが良い。

 *スクリーン印刷は孔版印刷の1種で元来スクリーン(紗:生糸を用いた搦み織りのひとつで織り目が粗く、薄い)
 に絹を使用していたのでシルク印刷と称していた。
 *ステンシルは元来スクリーンに抜き型を貼り付けたものをいう。

(4−17) 部品端子のめっき

 電子部品の電極端子でもはんだ付けを容易にする等の目的でめっきが実施される。
 部品の場合ははんだめっきと称するSnを主成分とするめっきが多い。
 Pbはんだでは部品はSn-10%Pbであったが、PbフリーではSn、Sn-Bi、Sn-Cu、Sn-Agなどが、
非Sn系ではNi/Au、Ni/Pd/Auなどがある。

(4−18) Pbフリーはんだめっきのウィスカー

 Sn、Pb、Znなどのように融点の低い金属は再結晶化温度が常温付近にあるためウィスカーwhisker
(ひげ状単結晶)が発生しやすい。
 電子機器で問題になっているのははんだめっきのSnと亜鉛めっきのZnである。
 はんだめっきでは従来Pbとの合金化で解決していたが、Pbフリー化で問題が再燃している。
 Snのウィスカーの原因は内部圧縮応力とされている。
 Bi合金化が有効であるとされているが、Bi使用には色々の問題が指摘されている。また一度熱処理する
ことが有効とされているが、コネクターのように使用で絶えず応力が新規に発生するものでは解決手段とは
ならず決定的対策法はみいだされていない。

(4−19) ヒートシンク(放熱板)

 ICやレーザーダイオードなどの発生する熱の放出のためIC、パッケージや基板にヒートシンクを取り付けことがある。
 熱伝導率を大きくし熱膨張率を合わせるためCu−W、Moなどがよく利用される。

(4−20) 部品装着(マウンタ)

  電子部品を基板に装着(搭載)するマウンタはヘッドにとりつけられた吸着ノズルが部品供給装置(フィーダ)
から部品を受け取り、基板の決められた位置に部品を移載する。
 部品供給は部品をテープに収納しリール状にしたカートリッジを使用するテープ供給方式、ケース(トレー)に
部品をばらばらの状態で収納したものを整列させて供給するバルク(トレー)供給方式、筒状のスティックに部品
を収納するスティック供給方式などがあるが、テープ供給方式が主になっている。
 マウンタは吸着ノズルを取り付けるヘッドによって、水平に回転するヘッドに吸着ノズルを取り付け、フィーダを
移動して部品を供給するロータリー・マウンタと、フィーダを固定し、XYのリニア移動をする複数のヘッドに吸着
ノズルを取り付けたモジュラー・マウンタがある。
 ローターリ・マウンタは部品吸着と部品装着が同時に行うことができ高速・大量生産に向いているが装置が
大きく、高価である。またフィーダが移動することによる欠点もある。
 一方モジュラー・マウンタは小形、低価格である。
 以前は高速・大量生産のロータリー・マウンタが圧倒的であったが、最近は多機能で多品種、小ロットなどの
フレキシブルな生産に向いたモジュラー・マウンターが増えつつある。


(5) はんだ接合

(5−1) はんだ付け法

 挿入実装部品のはんだ付けは量産的にはフロー法によって行われる。
 表面実装部品のはんだ付けは量産的には主にリフロー法によって行われる。
 両面基板では基板をひっくり返しながらリフローを2回行ったり、挿入部品と表面部品の混載ではリフロー・フロー
の2回のはんだ付けを行うなど複数回のはんだ付け作業を行うことが多い。

(5−2) リフロー法

 リフロー法のはんだ付けはまず基板へはんだペーストのスクリーン印刷を行い、そのあと部品を基板上へ搭載
(マウント)し、リフロー炉に通してはんだ付けする。
 リフロー炉はコンベヤ式の連続加熱炉である。
 熱源は赤外線や熱風加熱が主であるがヒータからの熱をいったん遠赤外にするパネルを取り付けた遠赤外併用
型もある。
 Pbフリーはんだはプロセスウィンドウが狭い(温度管理が厳しい)ので均熱加熱性の優れた熱風加熱型が主と
なっている。
 概略工程ははんだ印刷、部品マウント、リフローである。

(5−3) フロー法

 挿入部品のはんだ付けはフロー炉と呼ばれる溶融したはんだが入っているはんだ槽から噴流を起こし基板
に溶融はんだを供給するフローはんだ付け(ウェーブWave法)が主である。
 Pbはんだでは静止はんだ浴槽に基板を浸漬させるディップ法などと称される静的フロー法も利用されていたが
Pbフリーはんだではドロス(金属酸化物などの浮き滓)が生成しやすいためほとんど使用されない。
 Pbフリーはんだは反応性が強くフロー槽の溶食が問題になっている。
 概略工程は部品挿入、フラックス塗布、フローである。
 挿入部品と表面実装部品の混載基板においては,一次面に挿入部品を挿入した後,二次面に表面実装部品を
接着剤を用いて固定し,フロー漕で一括はんだ付けが行われる。

 *フローは噴流式が主のため欧米ではWaveという呼び方が一般的、フロー法を一般的にディップと呼ぶ人もおり
それがウェーブなのか静的フローなのか区別されない場合もある。

 *フローと捨てランド
 フローではブリッジ・はんだ過多防止のため連なったランドの川下に捨てランドを設ける。
 QFPでは45度傾け、各辺の川下側にそれぞれ捨てランドを設ける。

(5−4) 手はんだ付けとリワーク、リペア

 フロー、リフロー法などを利用する場合でも、はんだ付け不良品の修正や、部品交換などではんだ小手を
使用する手はんだ付け(マイクロ・ソルダリング)が利用される場合が多い。
 はんだ供給はヤニ入りはんだが使用されるが、ディスペンサを使用する場合もある。
 BGA、CSPは専用の装置・治工具がないと難しい。
 BGA、CSPのリペアはアンダーフィル剤にもリペア性が要求される。

(5−5) その他のはんだ付け法

 全体加熱法としてはVPS法、部分加熱法としてはパルス・ヒータ加熱ホット・エア加熱、レーザー加熱、
赤外集光加熱法などがある。
 VPS法は特殊な不活性液をヒータで加熱、蒸発させ、その蒸気で加熱するはんだ付けする方法である。

(5−6) 高温はんだ

 従来Sn-38%Pb共晶はんだより融点の高いはんだを称し、Sn-3.5Agなども高温はんだと呼んでいたようで
あるが、Pbフリー化でSn-3.5Ag系が主はんだ系となったのでSn-Sb、高Pb(およそ75%以上)のSn-PbとSn-80Auが
その代表となっている。
 ダイボンディング等の電子部品の内部接続用や気密封止、BGAのはんだボールなどに利用される。
 電子部品の回路基板へのリフローはんだ付けの際、リフロー用はんだと同じものを使用していると溶融の恐れ
があるからである。
 その他Au−12Ge(356℃、共晶)などがある。

(5−7) Pbフリーはんだ 

 EUのROHS指令により従来のPb含有はんだは使用されなくなりPbフリーはんだと称するSn-Ag-Cu系
(代表組成Sn-3Ag-0.5Cu)のはんだが主に使用されるようになった。
 このPbフリーはんだは従来のPbはんだに比べ融点が高い(183℃→220℃付近)、濡れが悪い、熱応力が
緩和しにくいなどの欠点があり、使用に注意を要する。
 光沢がない、クラック状引け巣が発生する、ボイドが生成しやすい、ペースト劣化しやすいなどの欠点もある。
 また挿入部品のフローではランド剥離が、あるいはある種の組成ではフィレット剥離が生じることがある。
 更にある種の組成ではリフロー後のフローで大形SMD部品の再溶融剥離が生じる。
 融点が高くなったことによりリフローでは大形樹脂パッケージ部品でパッケージクラック(ポップコーン現象)が
生じやすくなったので吸湿には注意を要する。

 *ポップコーン現象:樹脂に吸湿された水分がリフローにより水蒸気化しパッケージにクラックを発生する現象。

* 詳しくはPbフリーはんだ付けの基本

(5−8) マイグレーション・・エレクトロ・マイグレーションとイオンマイグレーション

 マイグレーションは電極金属が移動し電極間の絶縁不良、最終的には短絡を起こすものである。
 ただし短絡しても瞬間的に溶断する場合が多い。
 マイグレーションで実装において問題になることが多いのはエレクトロ・マイグレーションとイオンマイグレーション
である。
 エレクトロ・マイグレーションは高温・高電流で生じ、電子との衝突で原子が移動することにより起るとされ、
Agで特に起りやすい。
 イオンマイグレーションは水分の影響で起る電気化学反応である。
 イオンマイグレーションは基板上の欠陥、異物に伴うことが多く、代表的な形態は表面で発生する樹枝状(dendrite)と
ガラス繊維に沿って発生するCAF(Conductive Anodic Filamennt:)である。

 *デンドライト:結晶で木の枝分かれのように成長が広がっていく状態。

(5−9) 実装検査

 実装工程での検査は基板検査、はんだ印刷後のはんだ印刷検査、部品装着後の部品装着検査、はんだ付け後の
検査が一般的に行われる。
 基板検査ではランド位置やランド外観(めっき、レジスト)の検査が、印刷検査では印刷位置、印刷状態(面積、
高さ、形状)、はんだ未供給などの検査が、部品装着検査では装着位置、欠品、傾斜装着などの検査がはんだ付け状態
検査では、位置ずれ、ブリッジ、はんだボール、未はんだ、チップ立ち等の検査が行われる。

 *チップ立ち
  チップ部品などがはんだ付けの際に部品が立ち上がる現象。
  ツーム・ストーン、マンハッタン現象などともいう。ランド間の熱、はんだ量、電極面積の不均衡等により生ずる。
 *はんだ付け欠陥としてのはんだボール
  部品やランドの周囲にはんだがボール(粒)状ではみ出ること。はんだペーストの印刷ずれ・にじみ・だれ(特に部品の
 腹の部分からキャピラリー現象で出てくることが多い)、フラックスの劣化・不良などにより生ずる。

(5−10) 加速試験からの市場寿命の推定
 
 はんだ接合では温度サイクルによる寿命が重要視され、加速試験からの市場寿命の推定に利用されるのがコフィン・
マンソンcoffin-mansonの経験式をもとにしたIBMのNorris-Landzbergの出した修正コフィン・マンソンの式(Norris-
Landzbergの式
)を利用した加速定数AFの計算方法である。
 
 f:サイクル数、ΔT:温度幅、Tmax:最高温度、o:市場、t:試験
 ここでm=1/3、n=1.9,E=0.123eVでE/R=1414とされる。
 ただしこれはPb−5Snをもとに得られた経験式である。
 この式を無条件にPbフリーはんだに適用する場合が多い。
 nは一般に2〜2.4程度とされている。
 一方HPのN.Pan やNokiaのSalmelaはPbフリーはんだSAC(Sn-Ag-Cu)についてかなり異なった式を与えている。
  N.Panの式 t:保持時間
  となり周期より保持時間が重要としている。

(6) はんだ付け以外の接合方法

(6−1) 非溶融接合法

 電子部品の電気的接続を伴う接続方法にははんだ付け以外に導電性接着剤、導電性異方膜等の
有機接着剤を使用する方法、ワイヤボンディング、共晶接合、圧接・拡散接合などがある。
 はんだ付けを基本とする金属による接合方法は接合金属の溶融を伴うが、ワイヤボンディング、
圧接・拡散接合などは基本的に溶融を必要とせず、温度負担が小さく短時間での接合が可能である。
 ただし接合部が多いような接合は難しいし、ほとんど樹脂封止等の補強が必要である。

(6−1−1) 導電性接着剤

 導電性接着剤はAg粉と有機接着剤を混ぜたものではんだのPbフリー化に伴う処理温度の高温化に対し
低温接合法として注目されているが素材が極めて高価なこと(はんだの数千円/kgに対し数万円/数十g)、
安定性・信頼性に欠けるという基本的に大きな欠点があり、さらに硬化時間が長い、印刷性が悪いなどの
工程上の問題もあり使用は限定される。

(6−1−2) 異方性導電膜ACF

 Auめっきした樹脂微粒子などの導電性粒子を分散させた接着フィルム。
 熱圧着により、垂直方向には導電性をもつが、平行方向には絶縁性をもつ接合を形成する。
 導電性粒子が柔軟性をもつためバンプなどの接合に向いている。
 フィルムでなくペースト状にしたのがACP、導電粒子の均一分散維持が難しい。

 *ACF:Anisotropic Conductive Film、ACP:−−Paste

(6−1−3) 圧接・拡散接合

 表面を清浄にし温度を上げて拡散を活発にさせると金属は基本的に固相での拡散接合が可能となるが、
Au、Al、In、Ag、Cu、Pbはんだなどの柔らかい金属では圧接により、ある程度の温度と超音波の併用
などで固相での短時間での接合が可能となる。
 これらの接合では機械的結合もあるだろうが、原子レベルでの接合状態が見られる場合が多く拡散接合
も起っていると考えられる。
 Au、Alはワイヤボンディングで使用されている。(相手の金属はAl、Au、Agである。)
 Au、(In)はバンプで使用され、フリップ・チップ・ボンディングが行われている。

 *プラズマ洗浄
 Oを用いたプラズマエッチングでは化学反応で有機物等の汚れを分解し、親水性、接着剤等の濡れを改善し、
 Arイオンを使用するスパッタ効果による洗浄では表面の酸化物等の除去によりワイヤボンディング性を改善する
効果があるといわれる。 →表面活性化直接接合
 Oプラズマ洗浄は大気圧でも行える。
 有機物の除去はUV洗浄方法もある。

(6−1−4) プレスフィット接続

 スルーホールに径より太い圧入端子を挿入し機械的接触(嵌合)で電気的接続を行う無はんだ接続法。

(6−2) 溶接

 溶接は母材の溶融を伴う融接と機械的圧力を利用し溶融を伴わない圧接と母材より低融点の接合用
金属(ろう)を使用するろう付けに分けられるとされるが通常は溶接=融接と呼ばれることが多い。

(6−2−1) ろう付け

 ろう材は融点が450℃以上を硬ろう、それ以下を軟ろう(はんだ)といい、硬ろうを使用する場合をろう付け
といい、硬ろうとしては銀ろう、銅ろう、りん銅ろう、金ろう、Alろうなどがある。
 
(6−2−2) マイクロ溶接

 電子部品や精密部品などに使用される熱や加圧力の影響の小さい微小部の接合をマイクロ溶接とすると
そのような用途で使用される溶接には電子ビームやレーザービームなどのエネルギー・ビーム溶接と
抵抗溶接がある。
 接合部の碁石状の溶融部分はナゲットと呼ばれる。
 
(6−2−3) 抵抗溶接

 抵抗溶接は加圧と通電方式、すなわち接合する2つのワークと1対の電極のとりかたによってダイレクト、
シリーズ、インダイレクトの3方式に分けられる。
 ダイレクト方式は2つの電極で溶接したい重ねた2つワークを挟み込み1点で加圧・通電する。
 シリーズ方式は重ねた2つワークの同一面上で2点で加圧・通電する、従って接合部(ナゲット)は2点生じる。
 インダイレクト方式は2つワークの重なった部分とはみ出た下のワークの2点で加圧・通電するがナゲットは
2つワークの重なった部分にしか生じない。
 以上は点状の溶接を行うスポット溶接である。
 プロジェクション溶接では接合部に突起部などのを形成し形状を利用して電流を集中させる。
 パラレルギャップ方式はシリーズ方式で電極間間隔を小さくしたもので溶接部は1点となる。
 リボン、ワイヤなどの溶接に利用される。

(6−2−5) シーム溶接

 シーム溶接は回転電極を使用し連続的に溶接する。
 気密封止に使用できる。
 スポット溶接で連続的に溶接するよりきれいに早く溶接できる。
 通常はダイレクト方式であるがシリーズ方式も可能である。

(6−2−6) 共晶接合

 共晶合金は本来融点が低くはんだ材料の基本となっているが、この共晶をなす金属同志は低温での接合が可能で、
SnとAuの共晶接合はLCD実装で実用化している。

共晶:融点の異なる別々の相をなす金属・化合物同志が両者の融点より低いある一定の温度で同時に
溶融または微細に混ざり合った状態で晶出すること。
 従来Pbはんだを共晶はんだということが多い。Sn-38Pbが共晶であるが、Sn-40PbやAg入り、高温はんだ等が
あったためと思われるが、Pbフリーはんだも基本は共晶であり、紛らわしい言い方である。

(6−2−7) 金属間化合物形成接合

 Sn(融点232℃)、In(融点157℃)などの低融点金属、あるいはSn−Bi、Sn−In合金とAu、Ag、Pd、Cuなどの
高融点金属を反応させ高融点金属間化合物を形成することにより低温で高融点の接合を形成できる。
 Sn−Cuが中心で、たとえばCu6Sn5は融点415℃。
 SnとAu、Ag、Pd、Cuは極めて溶解・反応しやすく、液相Snと固相Cuでも数μm近くの化合物層が形成できる。
 ただし金属間化合物は硬くて脆いという欠点をもつ。
 AuはSnと固相でもかなりの反応層を形成する。

*階層接合
 パッケージの内部接合やパッケージ自体の容器と蓋の接合は回路基板へのはんだ付け(Pbフリーはんだではたとえば
約220℃程度)温度より高い融点の接合を行わなければならない。(階層接合)
 従来そのために利用されていたのは高PbのPb−Snはんだであるが、Pbフリー化の流れでこの用途の高温はんだが
Au−20Snしかなくなり、階層接合用の高温はんだあるいはその代替接合材が求められている。
 Sn−Cu系などをはじめとするSn合金系はほとんどが固液共存相となり、合金化で凝固開始温度は上昇しても、凝固終了
温度は変わらないという欠点をもつ。

(6−3) エネルギービーム加工

(6−3−1) 電子ビーム溶接
  真空中で行われるのが特徴。

(6−3−2) レーザ加工
  レーザ加工で使用されるレーザはCO:10.6μm、YAG:1.064μm、エキシマー;紫外(KrF:248nm、ArF:193nm)
  YAGは光ファイバーが利用できる。
  YAGでは波長変換により高調波も利用される。(2次532nm、3次355nm、4次266nm)
  溶接のほかに切断、穴あけ、溝形成等の加工や印字、熱処理などが行われる。
  レーザー加工は通常ビーム加工であるがエキシマレーザーではマスク投影による加工が可能である。
  
(6−3−3) イオン・ビーム加工
・イオン・ミリング 
  主にArイオンを利用する。
・収束イオンビーム加工FIB 
  液体状態のGa(液体金属イオン源)をイオン源とするもの。

(6−4) 特殊な接合

(6−4−1) 陽極接合

 電圧をかけながら加熱、加圧しガラスやシリコンを接合する方法。
 アルカリ金属などの可動イオンによるといわれる。
 なおシリコンでは電圧をかけないで温度を高めにして熱圧接もSOIなどで行われる。
 また酸化と親水化処理(水酸基の形成)でほとんど無加圧での直接接合も研究されている。

(6−4−2) 表面活性化常温接合

 接合面を真空中でイオンビームやプラズマなどによるスパッタなどで表面処理し,表面を化学結合しやすい
活性な状態とし室温での接合をも可能にする。熱歪が発生しないという長所がある。

(6−4−3) ポリイミド等の加熱・加圧接合

 熱硬化樹脂を低分子から反応により接着させたり熱可塑性樹脂を溶融して接着(ホットメルト)する方法は
アウトガスが生じるがポリイミドなどを反応・硬化させたものを加熱・加圧することによりできるだけアウトガスを少なく
して接合することが行われている。


(7) 特殊加工法

 脆性材料や難加工材料の加工、微細加工などのためのその他のいくつかの加工方法を紹介する。

(7−1) 研削加工

 脆性材料では細かい砥粒を利用した研削加工が行われる。
 代表的なものはダイシング、スライシング、研磨などである。

(7−2) 超音波加工

 超音波振動を利用して脆性材料の穴あけ加工等が行われている。

(7−3) 放電加工・電解加工

 放電加工は、絶縁性の加工液体中で加工電極と導電性のワークの間に、微少なギャップを設け
アーク放電を発生させ、その熱によって工作物を溶融し除去する加工方法である。
 加工液は溶融部分の除去と極間の冷却の役割をもっている。
 ワイヤ放電加工と型彫放電加工があり、金型の加工によく利用される。
 電解加工では絶縁性の液体の代わりに電解液を使用し電気化学的(ワーク;陽極)にエッチングを行う。
 放電加工にように熱を発生することはなく、加工電極の消耗も小さい。
 3次元加工も可能である。

 *バレル・・・
   バレル研磨、バレルめっき、バレル型プラズマエッチング装置などという言葉がある。
   バレルbarrelとは樽のことで樽型ないし円筒型の容器での研磨、めっきをバレル研磨、バレルめっきなどと称する。

(7−4) ラピッドプロトタイピング

 CAD/CAM方式により3次元複雑形状を高速(Rapid)に試作(Prototyping)する技術で、積層造形法と呼ばれる製造
手法を使用する、即ち、製品の3次元CADデータをスライスし、これをもとに樹脂、粉体、板、紙などを材料に薄板を
重ねるように積層していき試作品を作成する金型等や切削加工・塑性加工など機械加工を利用しない造型技術である。
 光造形法、粉末焼結法、シート積層法、インクジェット法、溶融樹脂押出し法などがあり、それぞれ光硬化性樹脂、粉末、
シート、インク、樹脂などを材料として使用する。

・光造形法
  紫外硬化樹脂を入れた槽の表層にレーザを照射・走査し硬化させついで硬化部を下降させ次の層を硬化させる。
・粉末焼結法
  ワックス、樹脂、樹脂コートした金属やセラミック等の粉末によりローラやブレードで薄層を形成しレーザーを照射し溶融・
 固結させ1層を形成させるとともに下層との接合を行い、これを繰り返す。   
  ワックス等ではロストワックス鋳造の消失モデルにできる。
  金属粉末をバインダーなしに焼結させて方法もある。
・シート積層法
  シート(紙、樹脂シート、アルミ箔等)をレーザーやナイフで1層分の形状に切り抜きシートを接着して積層。
・インクジェット法
  インクジェットのノズルを走査させながらより、溶融したワックスなどを連続的に滴下させ薄層を形成し、積層を行う。
  あるいは紫外硬化樹脂をインクジェットヘッドより吐出した後、紫外光で硬化させる 
  更にインクジェットヘッドより結合剤を吐出してデンプン粉末、石膏粉、金属粉末やセラミック粉末粉末を接着させて積層する。
・溶融樹脂押出し法
  細いノズルより溶融したワックスや合成樹脂を細線状に押出し1層ずつの形状を描いていく。


(8) 高密度実装

 回路基板を搭載する製品の小型・薄型化に伴い、製品空間内の有効利用が必要たなる。
 そのひとつの例はフレキシブル基板、フレキシブルケーブルの利用による基板の折りたたみである。
 それとともに部品の小型・薄型化や回路基板の配線幅を小さくする、さらに小さくなった部品と基板の配線の接合
や放熱が重要になる。
 ICチップを重ねた三次元実装や、前述のMID基板、部品内蔵基板なども利用されるようになってきている。

 *SOC System on Chip 
    ある製品のひとつの機能を行うシステム全体をひとつのICチップ上の形成したもの。
 *SIP System in Package
    同じくシステム全体を形成する複数のICをひとつのパッケージ内に収めたもの。

(8−1) ベアチップ実装

 実装ないしはパッケージが大きく問題となるのはICである。
 ICはパッケージ化により部品自体が大きくなり、高密度化を阻害する。
 ICパッケージの進歩は小形化の道である。
 より高密度実装化のためパッケージングを行わない方法も検討されている。
 ベアチップ実装と呼ばれる方法である。
 能動面(シリコン・チップの回路が形成されてる面)が上になるフェース・アップ法と能動面が下
(基板と相対する)となるフェース・ダウン法がある。
 フェース・アップ法はICチップを基板に固定(ダイ・ボンディング)しワイヤボンデングで電気的接続を
行い、樹脂封止(オーバーコート)する。
 フェース・ダウン法(フリップ・チップ・ボンディングFCB)はICチップの電極としてバンプと呼ばれる突起
電極を形成し、これを利用して電気的接合を行い樹脂封止(アンダーフィル、サイドフィル)を行う。
 基板の場合はCOB、フレキシブル基板ではCOF、ガラスの場合(液晶、TFTなど)ではCOGともいう。
 COBはワイヤボンディング、COF、COGはバンプが主である。

 *COB等はChip On Board等の略

(8−2) TAB・TCP

 TAB(Tap Automated Bonding)はポリイミドなどのテープに形成されたリードとICチップ上のパッドを重ね合わせ
接合するICのパッケージング方法(テープ実装)であり、そのようにして製作されたICパッケージをTCP
(Tape Carrier Package)という。
 テープには開口部(デバイスホール)があり、デバイスホールにはリード(インナーリード)が空中に浮かんで
(フライイングリード)突き出ている。
 このデバイスホールにICチップを置き、フライイングリードをICチップのパッド(バンプ)に重ね合わせ接合する。
 (ILB接合) 
 このあとデバイスホール部を樹脂封止する。
 接合はチップにAuバンプを形成し、SnめっきリードTABテープにAuSn共晶接合する、AuめっきリードにAu-Au
超音波併用熱圧接するなどの方法がとられる。バンプレスもある。
 TCPは液晶ドライバーなどに使用されている。
 リードがテープに設けられており(フライイングリードでない)フリップチップ接合するのがCOF。

 *ILB:Inner Lead Bonding、対しOLB:Outer Lead Bonding
 *Sn-Au合金はSn-10Au(217℃)とAu-20Sn(282℃)に共晶があり、通常はAu-20Snを使用する。

(8−3) チップ・サイズ・パッケージCSP

 チップ(ベア・チップ)単体と同じ大きさを目指したICパッケージで、パッケージ底面にバンプないしはボール電極を
直接配置した構造で、チップの大きさより若干大きめになる。
 フェースアップ方式とフェースダウン方式がある。
 チップ上にインターポーザーという樹脂フィルム層を介在させ電極再配線と応力緩和を行いその上にバンプ
やはんだボールを形成することが多い。
 またウエハ状態で銅の再配線、電極端子形成と樹脂封止を行ないその後、チップ化するウェハー・レベル・
パッケージWLPも出現している。

 *層間絶縁膜
 Si上の多層配線での層間、層内の配線を電気的に絶縁する被覆。寄生容量を低減するため低誘電率が求められる。
 従来はSiO2が使用されていたが低誘電率化のためフッ素ドープしたSiO2が開発され更なる低誘電率化が求められている。
 無機系、有機・無機複合系と有機樹脂系がある。
 有機樹脂系ではポリイミド、PBO(ポリベンゾオキサゾール)、BCB(ベンゾシクロブテン)、PAE(ポリアリルエーテル)などがある。
 SiOでは多孔質化が検討されている。

(8−4) インターポーザー(基板)
 リードフレームの代わりにベアチップを実装する基板、回路基板との中継基板となる。
 ICパッケージがマルチ・チップ・モジュール、チップ・サイズ・パッケージ、ボール・グリッド・アレイなどのような高密度
実装形態となり、ボール、バンプ電極やフリップチップボンディングが利用されるとともに小型化・高密度化のために
利用されるようになってきた。
 Siチップと回路基板の応力緩和や貫通電極、層間配線などを利用した多層・再配線技術が重要となっている。

(8−5) MID基板 Molded Interconenect Device
 射出成形された立体形状の成形品の表面に、直接電気回路を形成した立体成形回路基板。

(8−6) 部品内蔵基板
 既存の部品を内蔵するあるいは主にコンデンサや抵抗器、インダクタなどの受動部品の薄膜部品や厚膜部品
を内蔵させた回路基板。

(8−7) 金属ナノ粒子による配線
 粒径nmの金属微粒子は通常は凝集して扱いづらいが何らかの方法で凝集を防ぐと低温焼結が可能となる。
 ナノペーストはガス中蒸発で生成した金属微粒子の表面を分散剤で保護し凝集を防ぎ安定な分散状態としたハリマ
化成の商品で印刷により低温焼結(200〜300℃)で良好な電気伝導率をもつ配線が形成できるとされる。
 Ag、Auなどのナノペーストがでている。
 その他の方法でも金属ナノ粒子ペーストが開発され低温焼結で微細配線が検討されている。
 インクジェットやディスペンサーなどの吐出法によりマスクを必要としない印刷(直接回路描写)が進められている。


(9) バンプ接合

(9−1) バンプ電極
 
 バンプ(突起電極)はベアチップ実装のフリップ・チップボンディング、CSPなどで利用される。
 ベアチップと基板電極を接合させるためには突起電極が必要となる。
 バンプ金属は応力緩和のため柔らかい金属が望ましい。
 シリコンチップに直接はんだバンプを形成するにはまずAlにバリア層(はんだ拡散防止)となり、同時にSiの
表面保護層(酸化膜、窒化膜、ポリイミドなど)とよく接合するTiW、Cr、Tiなどと、応力緩和およびはんだ接合層
としてCu(AuバンプではAu)、更に保護層としてAuというような構成のUBM:Under Bump Metalが形成される。
 Pbフリーはんだは応力が緩和されにくく特にUBMが重要である。

(9−2) バンプ形成法

 バンプ形成法としてははんだでは印刷法、めっきなどがある。
 Auではめっき、ワイヤバンピング(スタッド・バンプ)などがある。
 そのほかはんだでははんだボールを使用したボールアライメント法インジェクション法、転写法なども
考えられている。
 導電性ペースト(Ag)の印刷法などもある。
 ボールアライメント法はボール径が100μm以下になると粉体的挙動を示し扱いが難しい。
 印刷法は低コストな量産的方法であるが微細化に限界がある。
 めっきバンプの形状にはにはマッシュルーム形とストレート形がある。
 *バンプレス接合
  バンプレス接合は配線部と非配線部(絶縁部)を同一平面化、平坦化して接合することである。
  東大では表面を活性化して常温で接合材料を介しないで直接接合する方法を提唱している。
 
(9−3) バンプ接合方法

 バンプ接合法には金属接合によるものとAu-Auの機械的接触によるものがある。
 金属接合ははんだ(はんだバンプだけ、はんだバンプ+はんだ(C4)、金バンプ+はんだ)によるものと
Au-Au超音波接合がある。
 Au-Auの機械的接触は接着剤(ACF、NCP)で補強される。
 ただし金属接合でもアンダーフィルと称する樹脂封止は行うのが普通である。
 圧接、拡散接合は応力が必要なので多ピン化には向かないし、特に超音波を広い面積に均一にかけることは
難しい。

 *C4:Controlled Collapse Chip Connection
 

(10) 特殊実装

(10−1) LCD実装

 液晶デバイス、特にその中心となる液晶表示素子の実装。
 LCD実装の特徴はガラスを扱うこと、TCP(ILBはSn-Auが多い)と異方性導電膜を使用したOLBと、電極として
透明電極(ITOが主)を使用していることである。

 *透明電極(透明導電膜)
 透透明導電膜(→透明酸化物半導体)は液晶表示やプラズマ表示、ELなどの表示素子、太陽電池、タッチパネル
等の透明電極として利用されITOと呼ばれるSnドープIn2O3が主に使用され10−4Ω・cm台の体積抵抗率
が達成されている。
 その他ZnOをベースにAl3+やGa3+をドープしたAZOやGZOなどが開発されている。
 透明酸化物半導体は基礎吸収が紫外域以上(バンドギャップ約3eV以上)でプラズマ反射が可視域に入らない
程度のキャリア濃度である必要がある。(自ずから導電率には限界がある)
 不純物ドープで導電性を向上させる手法がとられる。

(10−2) 光学部品と光学実装

 光ピックアップおよび光通信部品、光センサーなどでは光学部品、光学素子などの実装があり電気的接合と
異なった要素がある。
 特に光通信用回路部品では1μmレベルの極めて精密な実装、位置決めが要求される。
 パッケージは水分や汚れを極度に嫌うためハーメチックシールが要求される。
 はんだとしてはフラックスが使用できない場合が多く、SnAuはんだが使用されることが多い。
 温度を上げられないため低温はんだを使用することもある。
 光学要素としては光ファイバ、発光素子、受光素子のほかに従来のレンズ、ミラー、ビームスプリッター、波長板、
プリズム、回折格子等をマイクロ化したものや、屈折率分布型レンズ、ボールレンズ、導波路などの新しい要素もある。
 またSi上にフォトリソグラフィ(マイクロマシニング)を利用し作成した光学素子も利用される。
 導波路を使用した光集積回路も研究されているが実用化していないようである。
 

(11) 環境・製品安全問題と有害物質の使用禁止

 環境問題を背景に直接的にはヨーロッパにおける電子・電気機器における有害物質の禁止(いわゆるEUのROHS指令
とそれの基づく各国の禁止法制化、車に関してはELV指令)により実装業界も大きな影響を受けている。
 ROHS指令で禁止されたのはPb、Hg、Cd、六価Cr、ポリ臭化ビフェニルPBB、ポリ臭化ジフェニルエーテルPBDE
(Cdが100ppm以下、他は1000ppm以下)の6種で、特に実装業界で問題になったのはPbはんだが使用できなくなる
ことであった。
 日本では資源有効利用促進法の省令改正によるJ−Moosマーク表示(含有有無表示)にとどめられた。
 またこれら動向を踏まえグリーン調達という考え方で製品含有化学物質管理ガイドラインが発表されている。
 ROHS該当物質はここでは調査対象化学物質リストのレベルAにはいっているが、レベルBにはSb(化合物)、As(化合物)、
Bi(化合物)、Ni<外部利用>、Se(化合物)、ポリ塩化ビニルなどが入っている。(いずれも1000ppm以下)注意が必要である。
 ヨーロッパでは更にREACHと称される総合的化学物質の規制が実施される。

 国内ではその他各種環境規制、化学物質規制・管理法令があり、注意する必要がある。その主なものは以下の通りである。

化審法(化学物質審査規制法) 
  PCB問題を契機に制定、PCB類似の化学物質(難分解性の性状を有し、生物の体内に蓄積しやすくかつ人の健康を損なう
 おそれがある物質)を特定化学物質(在は第一種特定化学物質)として規制
  第1種特定化学物質 有機物、PCBその他の塩素含有芳香族と農薬類が主。

化管法(化学物質把握管理促進法)
  有害性のある様々な化学物質の環境への排出量を把握することなどにより、化学物質を取り扱う事業者の自主的な化学物質
 の管理の改善を促進し、化学物質による環境の保全上の支障が生ずることを未然に防止することを目的として制定されました。
  PRTR制度とMSDS。

労働安全衛生法
劇毒物取扱法
有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
大気汚染防止法
水質汚濁防止法
土壌汚染対策法  特定有害物質 鉛、ヒ素、トリクロロエチレン
廃棄物の処理及び清掃に関する法律


(12) 分析法

(12−1) 表面状態観察

 SEM(走査電子顕微鏡)
  電子線をプローブ(探針)として2次電子線像や反射電子線像を見る。
  照明効果が大きく(影の部分もよく見える)、焦点深度が深いのが特徴。
  X線検出器をつけてEPMAとして使用する場合が多い。

 FIB(収束イオンビーム)加工装置、SIM(走査イオン顕微鏡) 
  Gaイオンをプローブとして使用するもので加工を行いながら2次電子線像を観察できる。
  断面観察に極めて有効であり、一定の領域をGaイオンで削り、傾斜させて断面像を見る。
  Gaイオンは電子と異なった特徴を持ち、SEMより組成コントラストが鮮明、結晶粒の面方位の違い
 がわかる等の利点がある。

 SPM(走査プローブ顕微鏡)・・STM(走査トンネル顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡) 
  微小な針をプローブとして試料とのトンネル電流、原子間力などを検出しながら表面状態(凸凹)を観察する。
  検出する物理量(磁力、近接場光、摩擦力等)によって変種(ファミリー)が多い。
  AFMは絶縁体の観察や大気中観察もできる。
  触針式表面粗さ計の発展したものとも考えられる。

(12−2) 非破壊検査

 実装関係で使用されることの多い非破壊検査法はX線、超音波、赤外線である。
 X線はBGAやFCB、バンプ接合のように外観から接合部が見えない実装方法が増えており、検査用として
インライン型も出現している。
 ICパッケージの内部観察やはんだ接合部、フィレットのボイド等に使用される。
 超音波はICパッケージの内部観察、特にクラックの観察等に使用される。試料や観察条件に制約があり、解釈にも
技術を必要とする。
 シリコンは赤外線(吸収端1127nm、1.5〜7μmでよく透す)を透過するため、チップ裏面からの欠陥観察に
利用される。

(12−3) 機器分析 

 表面分析
  よく使用される表面分析法はEPMA、Auger、SIMS(、ESCA)である。

  EPMA(X線マイクロアナライザー) 
   電子線をプローブとして、SEMの機能と特性X線の検出を行う。
   表面領域の観察の最も一般的手段といえる。
   蛍光X線を利用するので情報領域はやや広い。(深さ数μm)
   検出元素はC以上で軽元素が苦手である。

  Auger電子分析装置(走査型SAM) 
   電子線をプローブとしてAuger電子を検出する。
   オージェ電子は極めて浅い領域からしか検出されず深さ方向の分解能(数nm)がすぐれている。
   H、He以外の検出ができる。
   Arイオンエッチング(ミリング)により深さ方向のプロファイルが取れる。

  SIMS二次イオン質量分析計 
   O2-、Cs+などのイオンをプローブとして2次イオンを質量分析する。 
   すべての元素を高感度で分析できる。
   深さ方向の分解能は数nmで、深さ方向のプロファイルがとれる。
   破壊分析である。

  ESCA(XPS:X線光電子分析装置) (軟X線 あるいは
   軟X線をプローブ(MgKα、AlKα)として光電効果による光電子を検出。
   光電子の脱出深さは数nm。
   H、He以外の検出ができる。
   Arイオンエッチング(ミリング)により深さ方向のプロファイルが取れる。
   化学結合状態を知ることも可能。
   プローブがX線なので微小領域の分析は苦手(数10μm)。

 定性分析

  蛍光X線分析 
   元素の定性、定量分析の最も一般的手法である。
   大気中測定可能である。
   軽元素の測定は苦手である。(通常のものでB〜、微小領域ではNa〜)
   数10μmの微小領域の測定も可能となっている。

  *エネルー分散型検出器EDX
   半導体検出器で波高分析によりエネルギーと強度のスペクトルをとる。
   (出力は入射]線のエネルギーに比例した電圧パルスに変換される)
   エネルギー分解能が優れている、波長分解能は劣るが多数元素の同時測定可能。
   
  *波長分散型WDX
   分光結晶で波長を選別、波長分解能が優れる、軽元素が可能。
   装置が大きい、時間がかかるなどの欠点。

  X線回折
   無機物質の物質(結晶構造)同定の最も一般的方法であるが、測定試料に制約がある。
   表面すれすれに斜入射させれば薄膜の測定もできる。

 TEM(透過電子顕微鏡)、STEM(走査型)
   究極の微領域観察装置であるが、試料を電子線透過可能な0.1 μm以下に薄片化する必要があり、試料作成が
  大変である。
   最近はFIBが利用できるようになり、使いやすくなったがやや敷居の高い装置である。

(12−4) 有機物の同定

  IR(FTIR)フーリエ変換赤外分光
   有機物の物質同定に一般的方法である。
   微小領域の測定(10μmφ程度)も可能になってきている。
   透過法を主に反射法も可能であるが、測定条件の制約がある。

  GC−MS ガスクロマトグラフ質量分析
   物質を気体化する必要がある。

(13) 補足

(13−1) プラズマと放電

 プラズマとは分子、原子が電離し正イオンと電子の荷電粒子となり、この荷電流粒子の混合のまま気体(電離気体)
となった状態。
 プラズマを作るには原子から電子を電離する必要があるが、これには放電や電子を照射する方法がよく使用される。

 放電とは電極間にかかる電位差によって気体に絶縁破壊が生じ、電子が放出され電流が流れることである。
 放電はまず自然に存在する電子による気体原子の電離(α作用)がトリガーとなりこの過程が繰り返されて
電子がなだれ的に増殖しやがて電離によって生じた陽イオンによって陰極から多数の2次電子(γ作用)が
たたきだされる。
 典型的な放電は気体中で起こり、低圧の気体中ではより低い電位差でおこる。(真空放電)
 真空中では分子の密度が下がり、電子やイオンは他の分子に衝突することが少なくなり、十分な速さ、エネルギーを得、
気体分子を電離しやすくなる。
 真空度が高くなるほど放電が起こりにくくなるので工夫が必要となる。
 放電を維持したり、開始させるためには電子によって分子・原子を電離することが重要でそのための電子の供給と
できるだけ長時間空間を電子が動き回っていることがポイントとなる。

 グロー放電
   低圧の気体中の持続的な放電現象で正イオンの負極への衝突の際に起こる二次電子放出(γ作用)が
  放電維持の中心となっている。
   DC(直流)スパッタや蛍光灯、ネオン管で利用されている。

 アーク放電
   グロー放電からさらに電流が増大したときの放電で電極の熱電子放出がプラズマ維持に中心となっている放電
   水銀燈, ナトリウムランプなどの放電管で利用されている。
   フィラメントによる熱電子放出が利用される。

 高周波放電(無電極放電、容量結合)
   高周波では電極が陽極と陰極に変動しそのため電子が往復運動するため電離効率が向上する。

 マグネトロン放電
   マグネトロン・スパッタでは電場と直交する磁場によるマグネトロン放電を利用している。
   磁場中では電子は円運動をはじめより多くの電離の機会を持つようになる。

 ECR(Electron Cyclotron Resonance、電子サイクロトロン共鳴)プラズマ
   磁場中電子の回転運動(サイクロトロン運動)と電磁波の周波数の共鳴を利用している。
   875Gの磁界と2.45GHzのマイクロ波を印可することによって発生させることができる。
   一般のプラズマよりも1〜2桁程度低い圧力(高真空)での放電が可能であり、10〜30eVの
   低エネルギーかつ高密度のプラズマが得られる。

* 容量結合型プラズマ(CCP:CapacitivelyCoupled Plasma)と誘導結合や表面波によりプラズマ
   容量結合型プラズマでは,電極間に発生するRF電界を用いプラズマを生成するため,イオンフラックスとイオン
  エネルギーを独立に制御できない。電子密度も低い。
   誘電体窓を通して誘導結合や表面波によりプラズマを生成するCCP以外のプラズマには,電子サイクロトン共鳴
  プラズマ(ECP:Electron Cyclotronresonance Plasma)、ヘリコン波励起プラズ(HWP:HeliconWave Plasma)、
  誘導結合型プラズマ、(ICP:InductivelyCoupled Plasma),マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)
  などがあり、これらのプラズマ源では,放電パワーによるイオンフラックスの制御と,バイアスパワーによるイオンエネルギーを
  それぞれ独立で制御でき、高い電子密度が得られる。

(13−2) 真空ポンプ

 吸着型のポンプ
  ソープションポンプ
    ゼオライトを液体窒素冷却して吸着作用を利用、粗引き用。
  クライオポンプ
    ヘリウムを冷媒とする冷却機で冷却しガスを吸着・凝結する。
    大気から使用できないので補助ポンプが必要。
    20K以下に冷却することで、10-8Pa以下にできる。
  イオンポンプ
    放電によりチタンをスパッタしチタンの吸着作用とイオンした希ガスをチタンで
    陰極面に埋め込むことでサブリメーションポンプのできない希ガスの排気をも行う。
    粗引きの済んだあとの高真空化のための補助用。
    10−9Pa程度まで可能。
  サブリメーション(ゲッター)ポンプ
    チタン蒸着により、チタンの吸着作用を利用。
    粗引きの済んだあとの高真空化のための補助用。
    希ガスは排気できない。

 油回転ポンプ
   偏心した回転体で排気する。
   油により潤滑と機密を行う、高真空は得られない(10−1Pa程度)。粗引き用
   油による汚染が生じる。

 油拡散ポンプ
   油を加熱蒸発させた蒸発噴流で真空引きを行う。
   真空室への油の拡散があるので液体窒素冷却トラップで油の蒸気圧をトラップすることが多い。
   荒引きポンプ(主に油回転ポンプ)を併用する。
   一般的には10−3Pa程度であるが10−6Pa程度まで可能という。

 ターボ分子ポンプ
   高速回転する羽根で排気を行う。
   荒引きポンプ(主に油回転ポンプ)を併用する。
   油を使用せずクリーンな高真空が得られる。(10−9Pa程度まで可能)

 メカニカルドライポンプ
   油による汚染をさけるため油を不使用のため漏れで真空度に限界がる。
   種々の構造の回転体を使用し、その構造でルーツ型、クロー型、スクリュー型、ターボ型、
  スクロール型、ドライベーン型などがある。
   その他ピストン構造の揺動ピストン型、ダイヤフラムを使用したものなどがある。





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