発光と蛍光体
【発光】
<熱放射> 白熱incandescence
加熱による発光、温度で発光特性がきまる。(黒体輻射)
単位波長幅当たりの発光効率は低い。
<ルミネセンスluminescence(広義の蛍光)>
電流、光、電子ビームなどによる励起、発光体の温度が低いが、高エネルギー(短波長)の光子を狭いスペクトル幅、高い輝度で放出。
冷発光。
○ 励起方式
カソードルミネセンスcathodeluminescence
電子線による励起。
*イオンルミネセンスIonoluminescence
イオン線による励起。電離放射線一般ではラジオルミネセンスradioluminescence。
フォトルミネセンスphotoluminescence
フォトン(主に紫外線以上)による励起。
熱ルミネセンスthermoluminescence
放射線を照射した物質が熱で発光。
エレクトロルミネセンスelectrochmemiluminescence
電圧励起による発光。
*発光ダイオード:電流励起、PN接合を通しての少数キャリア注入による再結合発光。
光輝尽発光photostimulated luminescence
短波長の光を照射した物質(放射線でもよい)が赤外線照射で可視光を発光。
*赤外輝尽発光
短波長の光を照射した物質が赤外線照射で可視光を発光。
*赤外可視変換
長波長の光を短波長に変換。
三光子遷移 非線形光学効果の利用(和周波数、高調波)
二光子遷移 レーザ光などで見られる
多段階型 複数の励起状態間での過程、特定の複数の波長による励起 Infrared quantum counter
励起エネルギーの集積(エネルギー伝達、協同励起) 励起光は一つの周波数でよい
増幅自発発光amplified spontaneous emisson(superluminescence)
ゲイン媒体gain mediumでの誘導輻射過程により光学的に増幅された自発発光。
メカノルミネセンスmechanoluminescence
トライボ(トリボ)ルミネセンス、フラクト・ルミネセンス、ピエゾルミネセンスなど。
クリスタロルミネセンスcrystalloluminescence 結晶(化)発光
ソノルミネセンスsonoluminescence 超音波発光、音響発光
化学発光Chemoluminescence
*電気化学発光electrochemiliminescence
主に溶液中での異なるイオン・ラジカル間の消滅反応による発光。
溶液中の電子移動を伴う電気化学反応による発光。
生物発光bioluminescence
*メカノルミネセンスから生物発光は下記参照。
<ルミネセンスの発光機構>
◎ 半導体中の自由キャリアや浅く束縛された電子による発光
・バンド間遷移:発光遷移の始状態が伝導帯で終状態が価電子帯
直接許容遷移形半導体、GaAs等の発光ダイオード、半導体レーザ
・エキシトン遷移:電子・正孔対(エキシトン)状態の消滅
シャープな線状スペクトル、不純物発光分析に有用。
自由エキシトン発光
運動エネルギーの分布に基づくスペクトルの広がり
束縛エキシトン発光:エキシトンが不純物中心に束縛状態
更にシャープなスペクトル
・バンド・不純物準位間遷移:伝導帯とアクセプタ準位、価電子帯とドナー準位
不純物準位エネルギーだけバンドギャップエネルギーより小さいため発光スペクトルは
吸収係数の小さい領域に存在し内部吸収の影響を受けにくい。
スペクトルの位置は不純物の種類でシフトするので不純物の種類を調べる発光分析に有用。
SiドープGaAs発光ダイオード
・ドナー・アクセプタ対発光遷移:ドナー中心に捕獲された電子と近接するアクセプター中心に捕獲された
正孔の再結合
不純物を含む対発光遷移は強く生じる。
GaP発光ダイオード
・等電子トラップによる発光遷移:等電子トラップの捕獲された電子・正孔の再結合
等電子トラップ:母体原子と原子価が等しいにもかかわらず電子・正孔を捕獲する、格子ひずみと
キャリアの相互作用
NドープGaP緑色発光ダイオード
◎ 非放射遷移
励起状態の平衡状態への遷移は発光を伴う放射遷移のほかに非放射遷移がある。
・(非放射)再結合中心:禁制帯の中央付近に形成される深い局在準位は伝導電子と価電子帯の正孔
の両者に大きな捕獲確率をもつことが多く、両者を順次捕獲して非放射結合を生じる。
このような局在準位は不純物原子、点欠陥、転位、界面、表面などの結晶の不完全性に付随して
発生する。
発光デバイスの劣化現象の多くは結晶の不完全性の増大による非放射寿命の短縮が原因である。
・非放射再結合にはオージェ過程もある。この過程では自由キャリアの運動エネルギーの増大が起こる。
◎ トラップ
結晶を励起したとき伝導帯や価電子帯に生じた伝導電子や正孔の多くは不純物中心や欠陥に捕獲される。
これらの再結合確率が小さいとき不純物中心や欠陥をトラップ(捕獲中心)と呼ぶ。
トラップされていた電子や正孔は熱や光の刺激で光を放出することがる。
熱ルミネセンスThermoluminescence、輝尽発光Optical(Photo) stimulated
luminescence
◎
発光中心による遷移
イオン結晶や酸化物結晶などのバンドギャップエネルギーが大きく、紫外、極端紫外域に吸収端の
ある物質の可視・赤外蛍光は局在した点発光中心で生じる。
Ub−Wb化合物、Vb−Xb化合物以外は大部分これに当てはまる。
原子の発光遷移と類似し、不純物イオンまたは複合体内の電子間状態の遷移が原因。
・アルカリハライド結晶のF中心
光吸収に対し発光では格子振動との相互作用により発光スペクトルの長波長シフト
(ストークス・シフト)が起こる。
・不完全内殻をもつ遷移金属(Fe、Cr等)、希土類元素
母体の影響を受けにくい。
直接化合物型固体レーザ結晶(ストイキオメトリック化合物固体レーザ結晶)
発光中心となる元素を構成元素とする母体結晶。
LiNdP
4O
12、NdP
5O
14
【
蛍光体】
*蛍光Fluorescenceと燐光Phosphorescence
一般的には励起をやめるとすぐ発光が消失するものを蛍光、励起後も発光が続くものを燐光。
◎ 希土類蛍光体
希土類元素の結晶中で安定な3価のイオンの外殻近くの電子配置は4f
n・5S
2・5P
6で4f殻の
電子数nは最初のLa
3+が0で以下原子番号順に1個ずつ増す。
希土類元素イオンの発光は主として4f殻によるがこの4f電子は外側の5S、5Pの8個の電子に
シールドされて外界たとえば結晶場の影響をうけない。
従って他の元素ではガスの状態でしか見られない線状の原子スペクトルが結晶中でも観察される。
・f−f遷移
f−f遷移は線状スペクトルで、温度による変化が少ない、母体による発光色の違いが少ない、濃度消光
が少なく、高濃度の付活ができる、温度消光がすくなく400〜500℃でも発光するものがある。
15種の元素の2価、3価のイオンには紫外から赤外にわたる種々の発光色があり、共付活で
それらの和の色をつくることも可能であるというような特徴をもつ。
f−f遷移は本来禁制遷移であり結晶場の影響で可能になったもので寿命は10
−3s程度である。
4f
n準位と同程度のエネルギーを持つ準位に4f
n−15d
1状態と4f軌道に隣接した陰イオンから4f軌道に
に1個の電子が移動した電荷移動状態がある。
これらは外部場の影響を受ける。
・f−d遷移
格子振動との結合が強く見かけ上非常にブロードである。許容遷移で寿命は短く10
−5s程度である。
3価のイオンでは吸収域は紫外域にあるので光励起ではあまり役たたないが、電子線励起などでは
母体からのエネルギー伝達の過程に関与している可能性がある。
3価のイオンではf−dよりf−f遷移が低エネルギーなのでCe
3+以外ではf−d遷移による発光は
みられない。
2価の希土類イオンはf−d遷移による発光が可視域にある。
5d電子は4f電子より結晶場の影響を受けやすく母体結晶により大分変わり、2価イオンではf−f遷移と
f−d遷移のエネルギーの大小関係が母体で変わる。
2価イオンは4f電子の数が3価より1個多く、したがって次の原子番号の3価と同じ電子配置をもち、
Sm
2+とEu
3+、、Eu
2+とGd
3+、は類似のエネルギー準位を示す。
・2価と3価の間の光による電荷移動による蓄光、着光
Eu
2+とSm
3+を共付活したSrSを紫外で照射するとEu
2+は3価にSm
3+は2価に変わる。これを更に
近赤外で照射すると元に戻りそのときEu3+の発光が観測される。
またSm
3+とY
3+を共付活したCaF
2を270mm以下の紫外で照射するとY
2+が生じ青色に着色する。
・非放射遷移
非放射遷移は格子振動としてエネルギーを放射する過程、エネルギー間隔が大きい準位ほど非放射遷移
が少なく発光効率が高い。非放射遷移は温度依存性があり温度消光や線幅の原因となる。
Eu
3+、Gd
3+、Tb
3+のようにエネルギー間隔の大きい場合は放射遷移の効率が高く、温度消光も
少なく500℃でも発光する。
・バイブロニック・スペクトル(バイブロニック・サイド・バンド)
電子遷移のそばの複雑なスペクトル。格子振動が関与する。
(母体結晶構成元素)
付活剤の希土類元素を置換固溶しやく、可視光領域に発光準位をもたない元素がよく希土類元素
などを構成元素とした母体結晶が使用される。
Sc、Y、In、La、Gd、Luが候補となるがY化合物が多い。
Sc,In、Luを主成分とする化合物には高効率のものはない。
Laは若干加水分解性があり、Gd
2O
3はY
2O
3より原料が若干高価である。
ただし原子番号の大きいGd、LaはX線吸収能にすぐれているのでX線検出用に向いている。
・赤外可視変換蛍光体
励起状態にあるイオンが更に光を吸収してより高い励起準位に上がる多段階励起現象が
Er
3+、Tm
3+、Ho
3+で見出される。
この二(多)段励起で赤外を可視光に変換できる。
この現象はYb
3+で増感される。
母体LaF
3、GdF
3、YF
3、YOCl、Y
3OCl
7,YAO
3,BaYF
5
付活剤 Yb−Ho 0.55μm 緑
Yb−Tm 0.47μm 青
Yb−Er 0.54μm 緑 、0.66μm 赤
◎ 遷移金属
Fe族イオン 最外殻3dを3個(Cr
3+、Mn
4+)あるいは5個(Mn
2+、Fe
3+)
固体中ではエネルギー準位や遷移確率が自由エネルギーと異なる。
結晶場理論、配位子場理論で説明
Cr
3+ 多くの母体で680−720nmに線状スペクトル
Al
2O
3:Cr
3+ ルビー固体レーザ
Mn
4+ 620−700nm
Mn
2+ 490−750nm 鉄族の代表
254nm紫外吸収はイオンや母体からのエネルギー移動を利用
◎ 錯イオン
WO
42−、MoO
42−、VO
43− 青から緑のブロードな発光
◎ ハロゲン化アルカリ
色中心:電子または正孔を捕獲した格子欠陥
シンチレーション用
NaI:Tl、CsI:Na、CsI(Tl)
*主な色中心
電子捕獲中心
F中心:負イオン空格子点に電子が1個捕獲、水素原子と同等。発光は一般に赤外部
F
A:負イオン空格子点・1価金属イオン対に電子が1個捕獲
F
−:負イオン空格子点に電子が2個捕獲
F
2+:2個の負イオン空格子点が電子が1個を共有
正孔捕獲中心
X
2−(V
k):ハロゲンイオンに局在化された負イオン格子点を占める正孔、一般に紫外部
H中心:1個のX
0と3個のX
−が3個の負イオン格子点を占める、F中心と相補的なFrenkel対
その他
α中心(F
+):負イオン空格子点
I中心:X
−が格子間位置を占める(X
−i)、α中心と相補的なFrenkel対
◎ Ua−Wb化合物(CaS系)
Ua(Mg,Ca,Sr,Ba)−Wb(O,S,Se,Te)
加水分解性、有毒なH
2S、H
2Seを発生
Ub−Wbと異なりドナー・アクセプタ概念が当てはまらない、イオン性が強くアルカリハライドに近い。
発光効率高いものが多い
CaS:Ce
3+、CaS:Eu
2+、Ce
3+、MgS:Eu
2+ イオン内の電子遷移
トラップの関係した現象が目立つ、蓄光、輝尽
カソードルミネセンス、エレクトロ・ルミネセンス用研究
◎ Ub−Wb化合物(ZnS系)
可視光用はEg<2eV以下のZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS
ZnSが最も重要
浅いドナー、アクセプタによる発光
吸収端発光 ドナー・アクセプタ型発光
深いドナー、アクセプタ
ZnS:Ag,Cl、青、ZnS:Cu,Al、緑
Tb(Cu,Ag)とVb(Al,Ga,In)又はZb(Ci,Br,I)の共付活
キラー効果 Fe、Ni、Coの混入で著しく発光強度低下
3d
nの電子配置をもつ2価遷移金属イオンのイオン半径がUb−Wb化合物の
陽イオン半径と近いのでよく導入されイオン内遷移を行う。
◎ Vb−Xb化合物
Vb(B,Al,Ga,In)とXb(N,P,As,Sb) GaP、GaAs、InPなど
主にダイオード、トランジスタ
BN、BP、AlN、GaNなど比較的軽い元素で構成される化合物は高融点で禁止帯幅が広く、
不純物による伝導型制御が困難、Ub−Wbと似た性質。
GaN青色ダイオード
AlSb、GaSb,Inb、InAsなど重い元素を含む化合物は低融点で禁止帯幅が狭い、赤外用。
AlP、AkAs、GaP、GaAs,InPなどは近赤外から可視域の禁止帯幅。
GaP:N、等電子トラップ
【用途】
<
カソードルミネセンスCathodeluminescence>
◎ ブラウン管(陰極線管CRT)
数kVの加速電圧の電子線により発光させる。
TV用 残光20−30msec以下
カラーTV 青ZnS:Ag、緑ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、赤Y
2O
2S:Eu
3+
白黒TV 青ZnS:Agと黄(Zn,Cd)S:Cu,Alあるいは黄としてZnS:Cu,Al+Y
2O
2S:Eu
3+
レーダー用 残光の長いもの、50msec以上
(Zn、Cd)S:CuとZnS:Agの2層、ZnS:Agの光で(Zn、Cd)S:Cuを黄色に発光
フライングスポットスキャナーFSS用 残光0.1−0.2μsec
紫外〜青のY
2SiO
5:Ce
3+ 黄のY
3Ai
5O
12:Ce
3+ Y
3(Al,Ga)O
12:Ce
3+ 515nm
◎ 低速電子線(蛍光表示管)
加速電圧数十V以下の電子線で発光、一般の蛍光体は帯電のため使用できない。
導電性を付与する必要がある。
低抵抗母体 ZnO:Zn、SnO
2:Eu、(Zn,Cd)S:Ag,Al
導電物質混合型 ZnS:Ag+In
2O
3、ZnS:Cu+ZnO、Y
2O
2S:Eu+SnO
2
不純物ドープ型 ZnS:Ag,Zn,Al
ZnO:Zn 青緑が優れている。
◎ FED(電界放出ディスプレイ)
平面状のカソード(エミッター)を使用。原理はCRTと基本的に同じ。
<
フォトルミネセンスPhotoluminescence >
◎ 蛍光ランプ
蛍光ランプは真空放電による水銀の紫外放射254nmを利用するものである。
ハロリン酸カルシウム
Ca
3(PO
4)
2・Ca(F,Cl)
2をSbとMnで付活、480nmのSb
3+と580nmのMn
2+の発光
MnとSbの濃度、FとClの割合で白色、昼光色、温白色などに。
高演色ランプ
ハロリン酸カルシウムは赤と青色が不足、3.5MgO・0.5MgF・2GeO:Mn
4+赤
(Sr,Mg,Ba)
3(PO
4)
2:Sn
2+橙、2SrO・0.84P
2O
5・0.16B
2O
3:Eu
2+青緑、
MgWO
4青、Zn
2SiO
4:Mn
2+緑などを添加し改善。
三波長型
450nm、540nm、610nmにピークをもつ半値幅の狭い発光の組み合わせ。
610nm用としてY
2O
3Eu
3+、
540nm用として(Ce,Tb)MgAl
11O
19やY
2SiO
5:Ce,Tb(544nm)
青成分として比較的半値幅の狭いBaMg
2Al
16O
27:Eu
2+(454nm)や3Sr
3(PO
4)
2・CaCl:Eu
2+(452nm)
複写機用 Se用MgGa
2O
4:Mn
2+、CdS用Zn
2SiO
4:Mn
2+やY
2SiO
5:Ce,Tb
健康用紫外線 (Ca,Zn)
3(PO)
2:Tl
+(290-320nm)
植物育成用 LiAlO
2:Fe
3+(745nm)
補虫用 (Ba,Sr,Mg)
3Si
2O
7:Pb
2+(370nm)
バックライト用(冷陰極蛍光ランプ) 三波長型
◎ 照明用白色LED
InGaN系青色LEDと黄色蛍光体(YAG:Ce)の組合せによる白色化でHgのない固体照明が実現。
あるいは青色LED+赤蛍光体+緑蛍光体、紫〜近紫外LED+R,G,Bで発光する蛍光体の組合せ。
< X線・放射線 >
X線増感紙用
CaWO4、BaFCl:Eu
2+、Gd
2O
2S:Tb
3+、LaOBr:Tb
3+など。
熱蛍光線量計
X線、γ線を照射し励起した状態に熱を加えると発光する。(Thermoluminescence)
CaSO
4:Dy
3+あるいはTm
3+、TbドープMgB
4O
7,Mg
2SiO
4など。
光輝尽発光(Photostimulated Luminescence)
放射線で励起された物質が赤外線などで発光
SrS:Ce
3+,Sm
2+、SrS:Eu
2+,Sm
2+、BaFBr:Eu
2+
蛍光体 |
励起光 |
刺激帯ピークnm |
発光帯ピークnm |
BaFBr:Eu2+ |
紫外線 |
600 |
390 |
SrS:Eu,Sm |
紫外、可視 |
1020 |
590 |
シンチレーション(Scintillation)
放射線による発光(電子線はカソード・ルミネセンス)
NaI(Tl)、CsI(Tl)、CsI(Na)
酸化物 Bi
4Ge
3O
12、CaWO
4、Gd
2SiO
5:Ce など
Bi、W、Gdなどは原子番号が大きく放射線吸収率が大きく、安定で加工しやすい。
<その他>
◎ 蓄光材料
夜光塗料には放射性物質を添加した自発光塗料と光を吸収してから発光(残光)する蓄光塗料がある。
自発光塗料は初期は
226Raのα線を、後
147Pmのβ線が使用された。
蓄光塗料は従来CaS:Bi、ZnS:Cuなどがあった。
CaS:Bi 紫青色、残光は長いが輝度は低い、潮解性がある。
ZnS:Cu 黄緑、輝度は高いが残光が短い(1−2時間)
最近これらの欠点を改善した高輝度、長残光の蓄光塗料が出た。
CaAl
2O
4:Eu
2+,Nd
3+ 440nm
Sr
4Al
14O
25:Eu
2+,Dy
3+ 490nm
SrAl
2O
4:Eu
2+,Dy
3+ 520nm
これら発光はEu
2+の4f−5dで残光には正孔が関与し、Dy
3+は正孔トラップとして働いているという。
◎ PDP
元来PDPはNeガスを主体としたガスの放電を利用したものであったが、カラー化はガス放電ではできず
ガス放電による紫外線で蛍光体を励起する方法がとられている。
主にXeの147nmの光を利用している。
青はBaMgAl
10O
17:Eu
2+、緑はZn
2SiO
4:Mn
2+、赤は(Y,Gd)BO
3:Eu
3+
◎ EL(無機型)
ELは初期は誘電体に蛍光体を分散した分散型ELであったが、その後発光層を絶縁層で挟み込んだ
薄膜型の二重絶縁層薄膜ELが主流となった。
発光の機構はトンネル放出により注入された電子が高電界によって生じたホットエレクトロンによる発光
センターの励起が支配的と考えられているがホットエレクトロンが母体に衝突し電子・正孔対を発生しこれの
再結合による発光や、この再結合で生じるエネルギーを発光センターに非放射的に伝達することなども
考えられる。
発光層はZnSを母体としMnや希土類フッ化物を添加し発光中心を形成するのが主流である。
ZnS:Mn(黄橙)は輝度、寿命の点で優れている。
カラー化は希土類フッ化物添加を中心に進められZnS:TbF
3(緑)、ZnS:SmF
3(赤)はかなりの輝度が
得られるが青(ZnS:TmF
3)はまだ低い。
ZnS:PrF
3で白色が得られるが輝度が低い。
Ua−Wb化合物(CaS,SrS)の母体への使用
CaS:Eu(赤)、SrS:Ce(青緑)、SrS:Ce,Eu(白)などが有望である。
◎ レーザ(固体)
原子が基底状態よりも励起状態に多く存在する分布を反転分布といい、
レーザはこの反転分布にある物質の誘導放出(入射光に誘起された光放出)を利用する。
反転分布は2準位より3準位、更には4準位のほうが起こしやすい。
3準位 ルビーのCr
3+ 694nm
4準位 ガラス、結晶内のNd
3+
Nd:YLF 1053nm
Nd:YAG 1064nm
Yb:YAG 1030nm
Er:YAG 2940nm
Nd:YVO4 1064、1342、914nm
Ti
3+:サファイア 660−1100nm 波長可変
高効率、高出力化
増感
Nd
3+に吸収されない波長の光をCr
3+に吸収させ、Nd
3+へ共鳴伝達させることにより効率を上げる。
ストイキオメトリック結晶
レーザ増幅物質を結晶母体の構成単位として含む結晶。
NdP
5O
12、LiNdP
4O
12、NdAl
3(BO
3)
4など
波長可変
フォノン終準位レーザ
4f希土類元素は4f電子と格子の相互作用が弱く向かない。3d電子は非局在化しており、結晶場の影響を
受けフォノンと相互作用するので向いている。
Cr
3+:BeAl2O4、700−820nm、Cr
3+:Gd
3Ga
5O
12、740−840
カラーセンターレーザ
短波長レーザ
LiYF
4(YLF)を母体とし希土類をドープするものやLaF
3がある。
<特殊な発光>
【応力発光(メカノ・ルミネッセンスmechanoluminescence】
機械的な外力(破壊、摩擦、衝撃、圧縮、引っ張り、ねじりなど)を加えることで物質が発光する現象。
破壊発光と変形発光がある。
破壊発光では岩石の破壊による発光が有名で地震による発光はこれが主原因とされる。
破壊発光の機構は圧電効果の関与が主でそのほか熱発光(赤系)などが考えられる。
有機物等では帯電の関与もある。
圧電効果や帯電では気体が放電(青系)するものも多い。
*フラクト・エミッションfractoluminescence
固体の加工や破壊の際に,材料変形部及び破断部から電子,光子,イオンなどが
放出される現象。
摩擦や摩耗の場合をトライボエミッション。
化学反応、絶縁体では電荷分離による電界放出などが原因として想定されている。
摩擦発光triboluminescenc
摩擦熱、帯電による気体放電が主、固体からの発光(主に格子欠陥が関与)も考えられる。
*ピエゾルミネセンスpiezoluminescence
非破壊的動的圧力による固体での発光(N.A,.Atari)、圧力変化により固体で見られる発光(IUPAC)。
変形発光deformation luminescence
弾性変形と塑性変形がある。
ZnAl
2O
4:Mn、ZnS:Mn(黄橙)、Ca
2Al
2SiO
7:Ce、SrAl
2O
4:Eu(緑)、
Sr
3Al2O
6:Euなどで、特にZnS:Mn、SrAl
2O
4:Euが発光強度大
圧電体が多く、格子欠陥が発光に関与。
圧電効果による電界発光 ZnS:Mn
欠陥による電荷トラップ SrAl
2O
4:Eu
摩擦熱 ZnS:Cu、Al
放射線照射し着色したアルカリハライドは色中心が関与。
【クリスタロ・ルミネセンスcrystalloluminescence】 結晶(化)発光
結晶生成に伴う発光。
溶融凝固では結晶の破壊とともに発光し、メカノルミネッセンスとされる。
飽和溶液からの析出、化学反応による析出でも多くの結晶がメカノルミネッセンスも
示す場合があるので関連が考えられるがそうでないものもある。
クリスタロ・ルミネセンスはアモルファス・結晶転移、多形での結晶転移、微小結晶の
微小破壊、結晶化での化学反応、絶縁破壊などで起こる。
アルカリ・ハライド、硫酸塩等で見られる。
*リカレセンスrecalescence 復熱、再輝現象
金属などで過冷度が大きくなると、凝固に伴う発光が観察されこれを
レカレッセンスという。
凝固時の潜熱の解放で説明される。
過冷却を大きくしていくと凝固潜熱の放出により試料の温度が急に上昇する復熱現象が生じることによる。
【ソノルミネセンスsonoluminescence】 超音波発光、音響発光
液体に超音波を与えると大量の気泡が発生し膨張・収縮を繰り返す(キャビテーション)。
この膨張収縮が激しくなると気泡内が高温高圧となりこの持続時間はナノ秒以下なのでナノ秒以下のパルス発光する。
超音波が弱いときは気泡内温度が1万度を超え気泡内の気体が電離し、プラズマ発光を起こし、
超音波が強いときは気泡内温度は数千度しかならず、水蒸気が化学発光(OHラジカルの310nm)するとされる。
多数の気泡による発光をマルチバブル・ルミネセンスといい、単一気泡の場合はシングルバブル・ルミネセンス
という。
シングルバブルは容器の定在波を形成しその腹に気泡をトラップさせて形成する。
気泡が安定的に収縮膨張するときの収縮ごとに発光する。
ソノルミネセンスは弱い光なのでルミノールのアルカリ溶液で強度を増加させることが行われる。
【化学発光chemoluminescensu】
化学反応で物質系が励起状態を経て低エネルギーの生成物となるとき通常は熱としてエネルギーを放出するが
光を放出する場合もある。このときの発光は冷発光である。
多くは酸化反応で代表的なものはルミノール反応。
ルミノール反応
ルミノールと過酸化水素水によるルミノールの酸化反応による。
ケミライト
シュウ酸エステルと過酸化水素水の酸化反応による。
ルシゲニンの酸化
【生物発光bioluminescence】
生物が生体内で励起物質を作り発光させる。CaイオンやATPが反応に関与することが多い。
化学発光の1種であるが生物発光は化学発光より量子効率が格段に高い。
自分で発光させる場合と共生している発光細菌が発光させる場合がある。
発光たんぱく質(各種ルシフェリン、イクオリン等)が関与する。
ルシフェラーゼ(発光酵素)、ルシフェリン(発光基質)反応
ルシフェリンはATPや酸素と反応
ホタル 560nm、効率41%。
緑色発光たんぱく質GFPが関与
オワンクラゲ
イクオリン(セレンテラジン)、Caイオンが関与。
*セレンテラジンはルシフェリンの1種
レポーター遺伝子(lux遺伝子)が関与
発光細菌