非金属無機固体材料創製の科学  


[X 粉体(粉末、微粒子)の合成]

  セラミックは一般的には粉体(粉末、微粒子)を原料とし、これを成形・焼結して製造される。
  その成形・焼結過程は原料粉体の性質により大きな影響を受ける。
  原料粉体の性質は原料粉体の合成・製造方法の影響を受ける。
  ここではセラミックの原料粉体の製造方法を概観する。

  粉体の製造は液相、気相、固相からに大別され液相はまた湿式、それ以外は乾式
 と呼ぶ場合もある。

(1) 液相からの製造

  液相からの製造は融液からと溶液からに分けられる。

(1−1) 融液からの製造

  結晶と同一組成の原料を溶融meltしたものが融液であり、これを液滴にして冷却・固化
 すれば粉体が生成する。
  金属粉の製造にはよく利用されるが、セラミックでは融点が高く、分解や解離が起りやすく、
 また分解溶融や多形などの問題があり利用は少ない。

  ・溶湯噴霧(アトマイズ)法
    溶湯をガス中、水中、回転体などに噴霧させて急冷粉体を得る。
  ・回転電極(プラズマ・ジェット)法
    回転電極が高温プラズマにより溶解され遠心力で液滴として飛散する。

(1−2) 溶液からの製造

  溶媒に原料(溶質)を溶かdissolveしたものが溶液で、過飽和状態による沈殿を利用して
 粉体を生成させる。
  粉体の合成では過飽和状態は化学反応あるいは化学平衡を利用する方法と溶媒の
 蒸発(乾燥)による方法が主に利用される。
  その他、温度変化や他の物質(貧溶媒:溶質を溶解しにくい溶媒)を加えて溶解度を下げる
  (貧溶媒希釈法)などの方法がある。
  良溶媒に有機化合物を溶解させておき、この有機化合物に対して溶解度の低い溶媒(貧溶媒)
 に滴下して沈殿を得る方法を再沈法と称している。

(1−2−1) 溶液沈殿法
 
(a) 溶液混合法
     
(a−1) 化合物沈殿法
       易溶性塩の溶液に難溶性塩を生成する酸等を加え難溶性塩として沈殿させる。
       一般的にはカルボン酸(シュウ酸、クエン酸等)塩が用いられる。
       カルボン酸による沈殿生成は複酸化物に対応する複塩の沈殿生成が可能である。

(a−2) 溶解度積の利用
       溶解度積をもとにpH調整により水酸化物として沈殿させる。
       pH調整はできるだけ金属元素を含まないアンモニアなどがよい。

    ・同時沈殿
       複数の金属イオンをもつ水溶液でpHがその複数の水酸化物が沈殿する領域にあると
      複数の水酸化物の同時沈殿が実現する。
       錯体の利用によりpHを揃えたり、同時に複数の金属イオンに配位する配位化合物の
      利用が研究されている。

    ・共沈
       濃度が溶解度積に達しない成分も別な沈殿と一緒に沈殿することがありこれを共沈という。

(b) 均一沈殿法
     溶液混合法では溶液混合部から局部的な沈殿が生成しやすく、また沈殿物はべたべたした
    ろ過しにくい沈殿となりやすい。
     そこで適当な化学反応により溶液全体に均一に沈殿を生成させるのが均一沈殿法である。
     この方法で生成した沈殿はさらさらしたものとなり、高活性の良質な粉体となりやすい。
     陽イオン放出法(酸化還元法、錯体分解法)と陰イオン放出法(尿素加水分解法、アミド
    加水分解法、エステル加水分解法、酸化還元法)がある。

    ・尿素加水分解法
      均一沈殿法でよく利用されるのは尿素の加熱による加水分解である。
        (NHCO+HO→2NH+CO

    ・エステル加水分解法
      エステルの加水分解によるカルボン酸生成(pH調整による)を利用する。
        RCOOR+HO→RCOOH+ROH

(c) 水熱合成法

  水酸化物を原料あるいは金属塩を原料として水酸化物の生成を起こさせ水熱条件化で酸化物
 として析出させる。
  焼成せずに水酸化物から酸化物が得られるので微粒のものが得られる。

  *ソルボサーマル法
  ソルボサーマル法は圧力容器中に溶媒と原料を投入し沸点温度以上まで昇温し容器内の圧力が
 大気圧以上の条件で粒子を合成する方法で水を溶媒とするソルボサーマル法が水熱合成法。
  有機溶媒ではグリコールを使用するグリコサーマル法が良く使用される。
  配位能力の高いOH基を持つ溶媒分子はキレート化剤として働き,粒子表面に配位し,粒子の成長を
 抑制する。

  *超臨界流体による粉体(微粒子)合成
    超臨界流体(気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超えた状態、水:374℃、
   22.1MPa CO2:31℃、7.4MPa)による粉体(微粒子)合成には超臨界流体を反応場とする
   方法以外に超臨界流体中で形成されるエマルジョンを反応場とするもの、溶液と超臨界流体を混合
   噴射する急速膨張法、溶液に超臨界流体を吹き込み溶解度を減少させる貧溶媒化法などがある。 

(1−2−2) 溶媒抽出法 
    溶媒抽出法は互いに混じり合わない二液間における物質の分配を利用した物質を分離する手段。
    分離したい物質を溶解している水溶液に有機溶媒抽出液を接触させることにより、その物質を
   選択的に移す。
    有機溶媒抽出液に抽出された金属イオンを酸又はアルカリ水溶液で逆抽出して水相に移し難溶性
   の塩類等として晶析させる。(晶析逆抽出)
    抽出はキレートや錯体の形成が利用され、抽出液はそのような抽出剤が炭化水素系有機
   溶媒で希釈されている。
    廃棄物を原料とした微粒子の合成に利用できる。

(1−2−3) 制限反応場法

  液相分散系(エマルション)の利用しての粒子構造制御が行われる。
  油に水滴を分散させた系をW/O(Water in Oil)分散系(エマルション)といい、水中に油滴を
 分散させた系はO/W(Oil in Water)分散系(エマルション)という。
  分散する液滴を分散相、その周囲にある通常量が多い方の相を連続相という。

(a) 逆ミセル法(マイクロエマルション法)

   微小液滴分散系である逆相ミセルを反応媒体として利用。
   炭化水素系など水と非混和性の溶媒に界面活性剤を用いて逆相ミセルを形成し油中水滴型
  (W/O)エマルションとし、このエマルション中の液滴表面で他方の水溶液(逆相ミセル)と化学
  反応させると球形粒子が生成する。
   逆相ミセルの水溶液に熱や光などを与えて反応を起こさせる方法もある。

(b) (液液)界面反応法  

   O/W型(水中油滴型)エマルションなどを利用し化学反応の場を水と油の界面に限定させる。
   利用する化学反応がふたつの原料物質の間で起こるものなら、一方が分散相に溶けるもの、
  もう一方が連  続相に溶けるものを選択することで、相界面を利用した微粒子合成ができる。
   O/W型エマルションを利用する界面反応法では多孔微粒子が生成する。

<ミセルとエマルション>

 *ミセルmicelle 
   分子が会合してできた集合体。
   界面活性剤分子は、疎水基と親水基をもち水中では内側に疎水基を、外側(水のある側)に
  親水基を向けて、集まりミセルを形成する。
   中心部が疎水性、つまり油となじみやすい性質であるので、水に溶けにくい油性の物質を、
  ミセルの内部に取り込むことができる。
   逆に疎水性媒体(油等)中では内側に親水基を、外側に疎水基を向けて集まり逆相ミセル
  を形成する。
  
 *エマルション(エマルジョンemulsion)
   液体中に液体粒子(微小液滴)が分散している状態、油と水を混ぜれば一時的にはエマルション
  になるが安定せず、安定化(乳化)するには界面活性剤が利用される。

(1−2−3) 乾燥法(溶媒蒸発法)

  ・凍結乾燥法
    溶液を凍結し減圧下で水分を昇華により乾燥させる。
    一次粒子の凝集が起らないという利点がある。

  ・噴霧乾燥法
    溶液を熱中に噴霧し乾燥・粉体化させる。

  ・エマルション法 →逆ミセル法
    油中水滴型(W/O)エマルションで反応を起こさせ脱水する。
    
  ・噴霧熱分解法
    硝酸塩などを霧化し加熱により溶媒蒸発・熱分解を行い酸化物を得る。

(1−2−4) ホットソープHot soap

   有機金属化合物等を配位性有機化合物融液中で熱分解して(反応させ)粒子を生成させる 
  ことにより配位性有機化合物で結晶の核生成および成長の過程を制御する方法である。
   配位性有機化合物が結晶に配位して安定化する状況が、石鹸分子が油滴を水中で
  安定化する状況に似ているためホットソープ法と呼ばれる。
   CdSe、CdS、ZnS等や磁気記録材料、熱電変換材料などで適用が試みられている。
   配位性有機化合物としてトリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO)等などが使用される。

(1−2−5) ゾル・ゲル法

  ゾルは微粒子が液体中に分散し流動性を持っている状態で、ゲルは分散粒子が集合
 して流動性を失った状態で寒天やゼリーのようなものである。
  ゾル・ゲル法はこのゾル-ゲル化の過程を利用したものである。
  よく行われるのは有機金属(アルコキシドなど)の加水分解法である。
  アルコキシドは加水分解、縮重合を経てゲルになるが、酸性下ではバルク状に、アルカリ性下
 では粒状になりやすい。

(1−2−6) 電解析出法、無電解析出法

  ・電解析出法(酸化還元法)
     酸化還元電位とpHにより水酸化物、酸化物が生成するものがある。

  ・無電解析出法(還元析出法)
     置換めっき
       イオン化傾向の違いを利用して金属を還元析出させる。
     化学還元めっき
       化学還元剤によって、金属を還元析出さる。

(2) 気相からの製造

(2−1) 気相反応法

  金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物などのような化合物ガスの化学反応
 を利用し粉体を合成する方法である。(CVDに同じ)
  ガスは有毒で可燃・爆発性の危険なものが多い。
  利用される反応は以下のようなものがある。

  熱分解
 SiCl→ Si+2Cl
 SiH→ Si+2H
 2Al(OR)→Al+R’・・・有機金属化合物
 W(CO)→W+6CO ・・・カルボニル化合物

  還元
 SiCl+2H→Si+4HCl

  不均等反応(化学輸送法)
 SiCl→Si+SiCl

  酸化、窒化、炭化等

   酸化
    SiH+O→SiO+2H
   窒化
    3SiCl+2N+6H2→ Si+12HCl
    3SiH+4NH→Si+12H
   炭化
    SiCl+CH→SiC+4HCl

(2−2) ガス中蒸発・凝縮法

  真空蒸着をガス中で行うもの。
  不活性ガスあるいは不活性ガスに酸素・窒素などの反応ガスを混入したガス中で蒸発させる。
  加熱方式は抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導加熱、プラズマ、レーザなどを利用。

(3) 固相からの製造

(3−1) 粉砕法

  ボールミル・スタンプミル・ジェットミル・クラッシャー等により機械的に粉砕するもので最も
 基本的方法といえる。
  他の方法で得られた粉体も凝集や焼結を起こしている場合が多く、最終的には機械的
 粉砕を行うことが多い。

(3−2) 固相での反応の利用

  ・メカニカルアロイング
    ボール・ミルにより金属粉が冷間圧着と破砕の繰り返しにより固相で合金化される。

  ・固相反応
    複酸化物などを合成する際に各組成元素を含む酸化物や炭酸塩の粉体を混合し
   加熱し固体状態で化学反応させる固相反応法が利用されることが多い。
    たとえばBaTiOでは
      BaCO+TiO→BaTiO+CO
    温度を低めにして焼結性を落し、粉砕しやすくする。
    この熱処理を仮焼Calcinationと称する。

  ・熱分解
    炭酸塩、カルボン酸塩、水酸化物等を熱分解する。

  ・燃焼合成
    化学反応熱を利用して反応を行う方法で通電、プラズマアーク等による強制着火により
   化学反応を起こさせる。




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