非金属無機固体材料創製の科学  

[U 焼結] 

  狭義のセラミック(日本語の伝統的言い方では陶磁器)は成形体を炉()で焼結し(焼き固め
 た多結晶体である。
  セラミックは酸化物を中心に窒化物、炭化物、硼化物、珪化物等の高融点で硬くて脆い非金属
 無機物質であり、そのため金属のように溶融法で素材を得たり、塑性加工や切削加工で加工を行う
 ことは簡単ではない。
  そこで予め最終形状に近い形(ニア・ネット・シェイプ)に成形してから焼結を行う事が多い。
  焼結では体積収縮による緻密化が起るため寸法精度がどうしても悪くなる欠点がある。
  また焼結体は多かれ少なかれ空孔を有するものである。
  
(1) 焼結機構

  焼結は粉体が加熱により融点より低い温度で粒子が結合して収縮・緻密化し焼き固まる現象である。
  この過程は粉体の表面自由エネルギーを駆動力として物質移動により粒子が結合して表面積を
 減少させて緻密化していく熱力学的過程である。

  Cobleは焼結過程を初期段階、中間段階、終期段階の三段階に分けて説明した。
  初期段階は粒子間に結合部(ネック)が形成し、結合した粒子間に結晶粒界が形成され、ネック
 成長
neck growthし、粒子の中心間が接近していく過程である。
  ネック成長には物質移動が必要でその機構には蒸発・凝縮(蒸気圧の高い凸部から低い凹部へ)、
 表面拡散、体積拡散(拡散経路が結晶内部、格子欠陥が媒介)、粒界拡散、塑性流動、粘性流動が
 考えられるが一般的には拡散が主となる。

  中期段階では粒子間の空隙(空孔)が減少し多岐管状空隙を形成しやがて分断・孤立化していく。
  ネックに形成された結晶粒界の移動結晶粒成長も始まり、粒界は全体に網目を形成していく。

  初期から中期にかけて焼結体の大幅な収縮と緻密化が起る。

  最終段階では孤立した空孔が球形化し、粒界や粒内に分散し、収縮・消滅しあるものは成長し
 (オストワルド成長)、結晶粒が定常的に成長する。
  
  焼結は通常、固相焼結が主体であるが、時には液相状態が生じ液相焼結が重要な役割を果たす
 場合もある。
  液相焼結では粒子の再配列、成分の溶解・析出が起るが、固液間の濡れ性と溶解度が大きく影響し、
 適当な条件では密度の高い焼結体が得られる。

 原料粉末
   原料粉末の粒径が小さい方が、最終段階の結晶粒が小さく、緻密になりやすい。
   また表面積の大きい粗なものが焼結性が良い。
   純度の高いものは概して焼結性が悪い。
  
(2) 常圧焼結 

   焼結は通常大気雰囲気で行う。
   場合によっては真空、不活性ガス雰囲気や還元雰囲気あるいはストイキオメトリ
  制御のための雰囲気焼結を行う。
   加熱は抵抗体加熱(電気炉)が普通である。(伝統的窯業では燃料の燃焼熱)

(3) 加圧焼結

  高密度化、焼結性の向上のため種々の加圧焼結が行われている。
   
(3−1) ホットプレス(熱間1軸加圧)

  ホットプレスは数10MPaまでの1軸加圧を行いながら加熱し焼結する方法である。
  当初、PZTなどの成分が蒸発しやすく緻密化の困難な素材に適用され、PLZTなどの透明
  セラミクスに応用された。
  またBi層状強誘電体などの配向組織を得るために利用される。
  ホットプレスでは流動機構による緻密化が働いていると考えられる。

(3−2) HIP(熱間静水圧加圧)

  窒素やアルゴンなどの不活性ガス圧を利用して静水圧(等方圧)を加えながら加熱する。
  数100〜2000℃の温度で数10〜300MPaの静水圧を加える。
  粉末成形体はカプセルで加圧焼結するカプセル法を利用するが内部空孔が
 表面に貫通していない閉鎖空孔もつ試料はカプセルなしで加圧焼結できる。
  

(3−3) (超)高圧合成 

  圧縮法により数万〜数十万気圧(数GPa〜数十GPa)の高圧状態が実現できる。
  動的圧縮法は爆薬やガス銃を利用する。  
  静的圧縮法はピストン・シリンダ方式、ベルト方式、アンビル方式などがある。
  ダイヤモンドやcBNの焼結に利用される。

(3−4) ガス圧加圧

  分解、解離、蒸発等を起こしやすい物質の焼結で数10MPa程度までの雰囲気ガス加圧を
 行いながら焼結を行う。

(4) 反応焼結

  通常の焼結では、原料粉体と焼結体は同ー化学組成で、焼結で起こる化学変化は
 それほど大きくはない。
  これに対して反応焼結では出発原料と焼結体の化学組成は異なり、焼結過程で化学反応により
 物質変化が起る。

(4−1) 雰囲気焼結

   固体と気体の間の化学反応を利用するものでたとえばSiでは窒素中加熱で
     3Si+2N→Si
  のような反応が利用される。

(4−2) 固相反応

   セラミックスで複酸化物などを合成する際に各組成元素を含む酸化物や炭酸塩の粉体を混合し
  加熱し固体状態で化学反応させる固相反応法が利用されることが多い。
   たとえばBaTiOでは
     BaCO+TiO→BaTiO+CO
   この固相反応は焼結性がよいという特徴があるが収縮が大きいため通常は温度を低めにして
  焼結性を落し、これを粉砕してから成形し本焼結を行うことが多い。
   この場合最初の熱処理を仮焼Calcinationと称する。

(4−3) 液相焼結

   SiCではSiC粉体、C粉体の成形体に金属Si粉体を加えSiを溶融し含浸させ反応焼結を行う
  ようなことが行われている。

(4−4) 燃焼焼結 SHS Self-propagating High-temperature Synthesis

  化学反応熱を利用して焼結を行う方法で強制着火(通電、プラズマアーク等)により化学反応を
 起こさせる。

(5) 焼結助剤

   焼結性を向上させるために焼結助剤を使用することが多い。
   焼結助剤は結晶粒成長を抑え、空孔の消滅を容易にし高密度化を促進する。
   また焼結助剤は液相焼結を行い粒界にガラスとして偏析するなどして高密度化を促進する。
   共有結合性の強いSi3N4、SiCなどでは緻密化が困難で焼結助剤は重要である。

(6) 高速焼結

   焼結は通常、電気炉による抵抗体発熱による輻射熱と対流熱を利用しての加熱が主流で
  焼結は表面から内部に進みに時間がかかるという特徴がある。
  
   これに対し、マイクロ波、パルス通電、燃焼焼結などを利用した焼結は高速焼結が可能で
  粒成長の抑制ができ、注目されてきている。
   なかでもマイクロ波・ミリ波加熱やパルス通電加熱は内部からの加熱という特徴をもっている。
 、
(6−1) パルス通電焼結 Pulse Current. Pressure Sintering, PCPS

   パルス通電による加熱ではジュール熱を利用するものと放電プラズマを利用するものが
  考えられ、導電性物質はジュール加熱が主になると思われるが両者が同時に働いている
  場合が多いと考えられ加熱・焼結の機構はよくわかってはいない。 
   放電プラズマに重きを置く場合は放電プラズマ焼結 SPS Spark Plasma Sintering:と称す。
   パルス通電焼結ないしは放電プラズマ焼結は加圧しながら行う。

(6−2) マイクロ波・ミリ波焼結 

   絶縁体(誘電体)の誘電損失を利用した内部加熱法。
   2.45GHzのマイクロ波や28GHzのミリ波などが利用される。
   金属もマイクロ波焼結が可能といわれる。

(6−3) レーザー焼結(ラピッドプロトタイピング)

   レーザーによる加熱はバルクには適用できずまたビーム走査による限界もある。
   そのため薄層の焼結に利用され粉体を1層づつ焼結ないし溶融させていく手法が
  とられる。
   傾斜積層材や光造形の1種として立体形状を造形するラピッドプロトタイピングなどに
  利用される。 

(6−4) 燃焼焼結

(7) ゾル・ゲル法
  
  ゾルは微粒子が液体中(気体ではアエロゾル)に分散し流動性を持っている状態で、
 ゲルは分散粒子が集合して流動性を失った状態で寒天やゼリーのようなものである。
  ゾル・ゲル法はこのゾル-ゲル化の過程を利用したものである。
  一般的には金属アルコキシドの加水分解・重縮合反応を利用する。
  得られたゲルからエタノール、水を蒸発させて収縮固化させ、熱処理する。
  亀裂が入らないように脱水させるには時間がかかるのが欠点でバルクには向かない。
  低温焼結、有機物との複合化、多孔体が可能、薄膜が容易といった特色がある。

(8) プレカーサー法(前駆体法) 

   溶媒に溶ける(あるいは比較的低い温度で溶融する)前駆体(プレカーサー)を粘凋性の溶液
 あるいは融液状態からコーティングや紡糸して熱分解・焼成過程を経てセラミックを合成する方法。
   金属―窒素結合や金属―炭素結合などをもつ無機高分子ないし有機金属ポリマーがよく利用
  されSi3N4についてはポリシラザン(Si−N結合)、SiCについてはポリカルボシラン(Si−C結合)が
  広く用いられている。

(9) サーメットCermet

  金属の炭化物、窒化物などの硬質化合物をCo、Niなどで焼結したもので、そのうちWCを
 主成分とするものは特に超硬合金という。
  WC以外にはTiC、TiNを始めとしてTaC、NbCなどが利用される。

(10) 透明セラミック

   セラミック(多結晶体)は粒界、空孔、不純物・欠陥などで光の屈折や散乱が起こり不透明となるが、
  高密度化を図り空孔をなくし、原料の純度をあげ不純物の偏析をなくすとセラミックでも透明になる。
   この原理に基づき高純度、微粒粉を使用し高密度化によりアルミナ等のセラミックの透明化
  が達成されている。

(11) 溶射
   原料を、加熱により溶融もしくは軟化させ微粒子状にして対象物に吹き付け、被膜を形成する
  コーティング技術でセラミックでは通常プラズマ溶射が利用される。

(12) セラミック成形

  セラミックの成形は陶磁器ではもともと可塑性のある粘土ないし陶土を利用するが電子セラミックや
 ファイン・セラミックではそれ自体に成形能力のない粉体を利用するため主に有機物である結合剤
 (バインダー)を利用する必要がある。
  結合剤により造粒し型で加圧成形したり、泥しょう(スラリー)状態で鋳込み成形をしたり、ペースト
 状にしてスクリーン印刷を利用する厚膜印刷をしたり、押出成形、射出成形Injection Moldingも行う。
  セラミック基板、セラミックパッケージ、チップコンデンサなどではグリーンシートと呼ばれる樹脂様の
 シート状態で切断・打ち抜き・内部電極印刷・積層などを行う。
  このようにして焼結前にニア・ネット・シェイプに成形し後加工をできるだけ行わないようにする。
  金属の焼結ではニア・ネット・シェイプ加工としての射出成形(MIM)がコストダウン法として注目
 されている。
  結合剤を使用した場合、これを分解・除去させる熱処理である脱脂工程が重要となる。

(13) 粉末冶金

  金属では焼結は粉末冶金法として利用され(ニア・)ネット・シェイプ(金型成形、射出成形MIM)、
 含油軸受け、多孔質製品、硬脆材料(超鋼、サーメット、磁石、金属間化合物)、耐磨耗製品、
 難加工性金属(Ti、ステンレス)、高融点金属(W、Mo)の成形などに利用されている。



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