(11−10) AuSn4再堆積問題
再堆積redepositionとは電極(パッド)から溶解し、はんだバルク中に分散した成分がエージングで電極付近に
層状のIMCとして偏析していく現象。
界面に層状(帯状)に形成されるために、脆い破断面となりやすく、信頼性上の問題となる。
Ni/AuのAuで見られ、Niとの親和力によるとされる。
Cuがはんだ中に存在すると(電極からの溶解も含め)、Auは(Cu,Au,Ni)6Sn5として消費され((Cu6Sn5に固溶)、
再堆積はおきにくい。
AuはAuSn4化(Pdも同様構造のPdSn4を形成)による体積増加がCu6Sn5、Ag3Snなどより大きいので
一層問題となりやすい。
Ni表面へのCu6Sn5形成もその速い現象ともみられ、AuのほかにAg、Pdなどでも起こりうるかが問題である。
Ag3Snは層状でなく突起物状に電極面に堆積するともいわれる。
(11−10−1) Ni/Auとのはんだ接合におけるAuSn4の再堆積
リフローでNi上に形成されるAuSn4層は速やかにはんだバルク中に分散する。
しかしエージングによりNi3S4上に連続層として再堆積する。
最初Sn−Pbで見られた。Pbフリーはんだでは組成により見られたり、見られなかったりする。
Kao spalling Kao2
Sn−PbはんだとNi基体(Ni/1μmAu)の反応によるAu脆化。
→エージングによりせん断強度が大きく低下。
界面の微細構造
エージングで接合界面へ(Au,Ni)Sn4が層状に偏析
はんだへのNi添加効果
はんだ中へのNi添加により接合界面への(Au,Ni)Sn4再堆積は抑制される。
(Au,Ni)4Sn3の再編制の駆動力はNiへの親和性
Auの高速拡散
(Sn中の拡散)
はんだへのCu添加効果
Cu添加により(Cu,Au,Ni)6Sn5が形成されAuSn4再堆積は抑制される。
Minor
共晶Sn−Pb、電解Ni/1.5μmAu
HUT
Ni/Auと各種はんだ
Laurila
電気化学Ni/5μmAu(!)、150℃エージング
*150℃エージングの写真と上記写真が全く同じ(!)
(11−10−2) 電極間交互作用と再堆積
現実のはんだ相互接合は電極|はんだ|電極のサンドイッチ構造となる。
この場合、主要な組み合わせはCuとCu、CuとNi、NiとNiで、主にNiがNi/Auの構成をとる。
このようなはんだ接合ではNi/AuからのAuとCu電極からのCu溶解が大きな影響を及ぼす。
電極からの溶解などによりCuをはんだ中に含有すると、はんだ中のCu同様にCu6Sn5にAuを固溶し、
再堆積しにくくなる。
従って基板がNi/Au表面処理で部品がNi/Auめっき(リードめっき、セラミック・チップ・キャリアなど)、
Ni/Snめっき(チップ部品)、Ni UBMなどの場合で主に問題となる。
Power
QFN、TOPS、FP
SAC305
CuとNi/Au <1wt%Au
CuとNi/Au 3〜7%Au
Ni/AuとNi/Au 2〜3%Au
Ni/AuとNi/Au 4〜7%Au
Ni/AuとNi/Au >10wt%Au
Cuがはんだ中に存在すると(電極からの溶解も含め)、恒温エージングで(Au,Ni)Sn4は界面に再堆積しない。
→(Cu,Ni,Au)6Sn5を形成。
部品と基板の両者がNiだと恒温エージングで(Au,Ni)Sn4が界面に移動。
香港市大Chan Cu/Au 共晶SnPb
部品:Au1μmのCu/Au、PCBパッド:Ni/Au Au<0.1μm
AuのIMCの再堆積がみられていない。
Chen はんだ中Cuの枯渇の影響
SAC305、電解Ni/1μmAu、無電解Ni-10P/0.03μmAu
Cuの(Cu,Ni,Au)6Sn5としての消費にともない(Au,Ni)Sn4の再堆積が起こる。これにははんだの体積効果が
影響する。
Alam Ni層枯渇の影響
Sn−37PbBGA、電解Ni/Au
破壊表面
薄い0.1μm、厚い1.3μm
界面IMCの形成
Niが薄いと完全消費し、CuとSnが反応し(Cu,Ni)6Sn5が形成される。
(Cu,Au,Ni)6Sn5が存在すると層状のAuSn4は形成されない。
Niが厚いと(Au,Ni)Sn4が再堆積(界面に層状の偏析)
Niが薄いとSnがCuと(Cu,Au,Ni)6Sn5を形成しAuSn4の連続層は形成されない。
(11−10−3) Au厚み、Au量の影響
AuSn4が連続層を形成するかどうかはAu量も影響する。
Au量の行方
バルク、表面、界面(再堆積)、
固溶 (Cu,Au,Ni)6Sn5
トラップ
Ni
Agilent Pan
SACとAu量
SnPbの電解Ni/Auとのはんだ接合が凝固すると脆いAuSn4ないし(Au,Ni)Sn4がはんだバルクに形成される。
エージングでAuSn4はNi界面に移動しNi3Sn4の上に(Au,Ni)Sn4連続層を形成する。
(Au,Ni)Sn4とNi3Sn4の脆い界面は脆性界面破壊をもたらす。
Niの薄い層はCuのはんだと(Au,Ni)Sn4の界面へ拡散を促進し(Au,Ni)Sn4を(Au,Cu,Ni)6Sn5層に変え良い結果
をもたらす。(薄いNiはPCBシェルフ寿命やはんだ付け性に限界)
アニールではんだバルクのAuSn4が成長すると破壊はAuSn4 IMCを通る破壊となる。
*機械的振動や落下などの高速ひずみでは脆くなった界面で生じ、熱疲労では亀裂はバルク中の大きなIMCを伝播する。
Pbフリーはんだは共晶Sn−Pbより多くAuを固溶
CAu=1.42x10
3exp(−0.61/(kT))
10wt%以上は不可
Cuがはんだ中に供給されるなら5%以下は顕著な信頼性劣化はない。
両側(PCBと部品)がNiでCu供給がないと3%以下が受容される。
QFN、TOPS、FP
(薄いAu:0.5μm以下、厚いAu:1μm以上)
はんだ中のAu量についてSAC305では10%以上は受け入れられないとする。
Cuがはんだ接合に溶解する場合はAuは5%以下なら問題なし、Niが存在する場合、Cuの溶解
が制限され、Auは3%以下とする。
Ni/AuでのAu再堆積 Silk Ni/Au|solder|Au/Ni SAC305
もしCuが存在し接合に溶解するとAuSn4はエージングで界面に移動しない。界面に連続層を形成しない。
Ni-Niではエージングで(Au,Ni)Sn4層成長。
Cu-Niでは(Cu,Ni,Au)5Sn6が成長しAuSn4は存在しない。
薄いAu:0.08−0.38μm、厚いAu:2−2.54μm
QFN、TOPS