Pbフリーはんだの金属学的基礎
(9) 異種はんだ合金の混合
(9−1) 低融点成分の影響
(9−1−1) Snはんだ合金系の低融点相
Sn合金で低融点相を形成する元素で利用されることの多いのはPb、Bi、Zn、Inである。
@ Pbフリーはんだで考えられるPb、Bi、Zn、Inとの主な低融点相
主な2元、3元系低融点共晶
組成 |
共晶点(℃) |
Sn-52In |
118 |
In-3Ag |
143 |
Sn-58Bi |
138 |
Pb-55.5Bi |
124 |
66.3In-33.7Bi |
72 |
67Bi-33In |
109 |
|
|
Sn-52Bi-30Pb |
96 |
51In-32.5Bi-16.5Sn |
60 |
57Bi-26In-17Sn |
79 |
54.0Bi-29.68In-16.3Sn |
81 |
|
|
Sn-37Pb-2Ag |
177 |
A 主な3元系状態図
Mei
Sn−Pb−Bi、Sn−Bi−In、Sn−Pb−In、Pb−Bi−In
Moelans
Moelans
NIST
136℃(包晶):L+Pb→Sn+Pb、Sn−47.6εPb−30.5Bi
98℃:L→Sn+Pb+Bi、Sn−32.5εPb−51.6Bi
NIST
177℃:L→Ag3Sn+Pb+Sn、Sn−36.3Pb−1.5Ag
低温相東芝戎谷ら
Zeng
B 低融点相の形成
モトローラ 各種PbフリーはんだげのPb添加により形成される低融点相
Sn−18Bi−40Pb 包晶 137℃
Sn−51Bi−32Pb 共晶 96℃
Sn−36Pb−2Ag 共晶 179℃
山
Sn−10PbのSOPとSAC305、Sn8Zn0.3Bi、Sn3.5Ag8In0.5Biはんだによる低融点相の形成
加熱引張り試験
東芝 前原
Sn−PbめっきでのSn−Ag−Pbの低融点相形成
SnAgCuはんだ
Choi
加熱SDC
Sn−Ag−In−Bi(ハリマ)
Biを多量に添加したものは偏析で低温相(約148℃)が生じる。
菅沼
Sn−Bi系は21%Bi以下では共晶組織がないはずだが実際は偏析によると思われる140℃付近のピーク発生。
(9−1−2) Pbフリーはんだでの低融点相形成の影響
@ 偏析と凝固組織への影響
はんだ中の低融点成分の影響・・・ミクロ偏析とマクロ偏析
はんだ融液の温度低下による凝固の開始でβSnデンドライトが生成し始め、添加成分、不純物あるいは低融点成分は
βSnデンドライ間に濃縮し、共晶組織を形成したり、ミクロ偏析したりする。不純物は遅く凝固する部分に濃縮するので特に
最終凝固部となりやすい電極との界面にマクロ偏析をもおこす。
電極との界面の最終凝固部では凝固収縮ボイドも形成される。
Manhattan
部品端子のはんだめっき中の低融点成分の影響
SnPbはんだめっき端子にPbフリーはんだ付けした場合、Pbははんだ中に溶け込んでいき、βSnデンドライト間に
ミクロ偏析するが、Pbはやはり遅く凝固する部分に濃縮するので特に最終凝固部となりやすい電極との界面にマクロ偏析をおこす。
Manhattan
赤線部:最終凝固し、Pb濃縮層を形成しやすい部分
A フィレット・リフティング(フィレット剥離)、再溶融剥離
挿入部品THDのフローにおけるフィレット剥離
NPL Bi含有はんだ
Bi偏析により界面付近で凝固遅れが生じ、凝固収縮、熱収縮などによりフィレット剥離が発生する。
SnPbはんだめっきでも同様の現象が発生する。
NEC
大形表面実装部品SMDのリフロー後のフローのおけるフィレット剥離(再溶融剥離)
PbフリーはんだとSnPb端子めっき部品のリフロー工程でSn−Ag−Pb3元共晶が生じ、フロー工程で
再溶融し、基板の反りにより剥離を起こす。
NEC
収縮ボイド形成
Manhattan
不純物濃縮部で両面リフローの2回目に収縮ボイド形成。
B 高温エージングによる拡散に伴う接合界面偏析と低融点相形成
富士通
Sn−10PbはんだめっきリードとSn−Zn−Biはんだ
150℃x100h
シャープ
Sn−10Pbめっき
この現象はリフロー後のフローの影響でも生じる。
松下
C SnBiはんだとPb
Pb汚染の影響
NISTによるとPb汚染によりSn−Biはんだでは接合部に空隙が生じることが大きな問題となる。
この空隙は通常熱疲労後に部品電極と基板パッドの間の狭い空間に生じる。
これはこの部分がフィレット部より後に凝固するので空隙や熱間割れが生じやすいのと、更に96℃以上の熱疲労により
3元共晶相が形成されるためである。
部品標準化管理委員会PSMC 2010 SnPb合金とBi含有Pbフリーはんだで接合で生じる問題
微量のPbがBi含有はんだの信頼性を減少させる。
Sn−58Biでは破局的・・・熱ではんだ接合は粉々になる。
(9−1−3) Sn−Ag−Bi−In系における相変態
yamaguchi
125℃以上の温度サイクルで表面にしわ
Ag−Iの形成が原因とする。
松下
InSn4の増加
−40〜110℃では変化ない。
高温放置では変化しないが熱サイクルで表面が粗くなる
北浦
8%以上Inでは125℃
βSnからγSn(hcp)への相変態とする。
Sn−3.5Ag−0.5Bi−xIn(X=4,6,8)
Kim
βSnからγInSn4への変態
Microstructures of surface morphologies of Sn-3.5Ag-0.5Bi-8In alloy before
and after heat cycle test
KOKI 温度サイクルでの相変態による収縮