(13−2−2) バルクはんだの恒温疲労・・・微細組織の影響
Shang 高Sn Pbフリーはんだ合金の機械的疲労(概観)
2.繰り返しクリープ変形
繰り返しクリープひずみは静的(継続負荷)クリープ変形より非常に小さい。
3.繰り返しcyclic軟化
組織と変形機構
組織で変形機構が異なる
デンドライト・・・・デンドライトでのすべり帯
等軸・・・・粒界すべりとマイクロ・クラック
デンドライトでは繰り返し定常応答維持
等軸では初期に繰り返し軟化
デンドライトは2000cで安定し、等軸では変化がどんどん進む。
デンドライトは強い加工硬化を示し、等軸組織は顕著な繰り返し軟化を示す。
等軸組織の軟化は最終破壊まで続く。
加工硬化速度は温度上昇、振動周波数減少とともに低下
繰り返し軟化はひずみ振幅、温度、組織に依存
繰り返し軟化はひずみ振幅に依存。
ひずみ振幅が小さい場合(<1%)、軟化ははじめゆっくりで寿命は2段階(遅い損傷蓄積段階と速い亀裂成長過程)
軟化は温度で促進。ひずみ速度ははっきりしない。
微細組織が寿命短い。
4.疲労亀裂発生
亀裂開始と組織との関係
デンドライトではβSnと共晶組織の界面かβSn内
低周波数ではβSnデンドライト外延の相界で始まり、初期は界面の個々の2〜3μmの空隙
からなる。引き続く成長、合体で界面に沿って亀裂形成。
高周波数ではβSnデンドライトで亜粒界に沿って開始するのを好む。
等軸では粒界で高傾角粒界を好む
初期は個々の微小亀裂は孤立し広く分散。
微小亀裂密度増加でパーコレーション(浸透)閾値に達し互いに結合し亀裂形成し引き続き成長し破壊に至る。
亀裂は微粒あるいは粒界密度の高い領域を好み、伸びた第2相は微小亀裂結合の障害となりえる。
5.疲労亀裂成長
疲労亀裂成長は機械的、組織的、環境的変数に依存。
応力比−周波数図では疲労亀裂成長は繰り返し(サイクル)依存と時間依存領域で特徴化される。
境界は温度とはんだ合金強度で動く。温度上昇、強度低下で時間依存領域拡大。
サイクル依存破壊亀裂成長挙動
破壊亀裂成長速度rate
時間依存破壊亀裂成長挙動
亀裂速度velocity
組織と破壊亀裂成長経路
デンドライト組織では疲労亀裂はデンドライト相の相境界に沿ってかあるいは粒内で始まり、
強い共晶混合を通って粒内を伝播する。
等軸組織では始めの微小亀裂は粒界に集中し引き続き亀裂成長は粒内と粒間の混合となる。
破壊亀裂成長が時間依存支配だと亀裂は粒間を好み(b)、サイクル依存だと粒内が好まれる(a)。
6.疲労寿命
はんだ合金の破壊寿命は一般的にCoffin-Mansonアプローチによりひずみ−寿命関係(ε−N曲線)で特徴化される。
高Sn合金は高ホモロガス温度では高延性なので定ひずみ振幅負荷では完全に破断しにくいので寿命は
ピーク応力の一定割合の減少とされることが多い。
等軸組織のひずみ−寿命曲線
Coffin-Mansonの式
で諸文献のデータは
値はかなりばらついているがSnPbに対しSn−3.5Agは優れた耐疲労性をもつ。
Sn−Ag−XではCu、In、Znは2%まででは若干の低下、
Bi添加は疲労に顕著に影響。
疲労寿命への組織、周波数、温度の影響
組織の影響
デンドライトが等軸より良い。
周波数の影響
強く周波数依存し、周波数低下で寿命低下。
周波数修正Coffin-Manson
周波数修正Morrowのエネルギー・モデル
温度上昇で耐疲労性低下。
373K以上では動的再結晶が起きる。
再結晶で粒構造が非常に微細化し、再結晶粒は低転位密度である。。
微粒構造は粒界亀裂のため繰り返し軟化しやく、低転位密度なので繰り返し変形はより容易。
Zeng
SAC387
三角波、周波数(ひずみ速度)0.002〜1.33Hz(8x10
−3〜10
−4/s)、完全反転reversed繰り返し試験
等軸組織
グラファイト炉の溶解、炉冷、250℃で再溶融30分保持、180℃予熱鋼製鋳型に鋳造し室温で3ヶ月エージング。
デンドライト組織(ある領域で方向性分布)
250℃予熱のアルミニウム製鋳型に鋳造し、鋳型ごと水冷。
等軸は継続的に繰り返し軟化、一方デンドライトは繰り返し定常。
等軸では粒界に沿って亀裂が発展。デンドライトでは変形帯が見られ、微小亀裂はこの変形帯に沿って発展。
等軸組織ではごく初期の疲労での周期的軟化が粒間亀裂の原因。
デンドライトでは粒間亀裂が存在しないので始めは周期的定常状態を示す。
富士電機