(13) 信頼性と疲労
(13−2) 疲労
金属は一度に過剰な応力(降伏応力、UTS、破断応力などを越える応力)を受けると機能喪失(寿命)あるいは破壊するわけだが、
これら応力以下の負荷(応力)でも繰り返しによっても劣化ないし破壊を起こし、
これを疲労と呼ぶ。
はんだにおける疲労の研究はバルクはんだでの種々の繰り返し負荷(引っ張り・圧縮あるいはねじり、反りなどの繰り返し)もあるが、
中心は相互接続、電子装置の場合は基板と部品の相互接続の特にせん断応力や基板の曲げによる疲労が重要となる。
疲労には繰り返し応力負荷による機械的(恒温)疲労の他、温度の変動による熱疲労、高温での継続的負荷によるクリープ疲労などもある。
電子装置の恒温疲労では基板実装(アセンブリ)、特に表面実装では繰り返し基板曲げ、基板振動、繰り返し衝撃などに起因する
疲労が問題となる。
日立
挿入実装部品の各種疲労破壊
DfR
挿入部品の振動によるHCF疲労
表面実装部品の基板曲げによる疲労
(13−2−1) 恒温疲労の特徴化
恒温疲労を特徴づけるのは繰り返し応力−ひずみ曲線(ヒステリシス曲線)とS−N曲線(応力−寿命曲線)である。
繰り返し応力−ひずみ曲線(ヒステリシス曲線)
負荷の性質
負荷状態
引張・圧縮、ねじり、反り曲げ、せん断
波形
規則波(三角波、サイン波、対称波、非対称波、)不規則波
周波数(Hz)、負荷範囲、振幅比・・・
現象
繰り返し硬化、繰り返し軟化
S−N曲線
S−N曲線からは高サイクル疲労と低サイクル疲労が区別される。
高サイクル疲労・・・弾性変形、低応力
応力−破断繰り返し数曲線(S−N曲線)
低サイクル疲労・・・塑性変形、高応力
ひずみ−破断繰り返し数曲線(ε−N曲線)
徳島大
剛性と疲労
NPL
森田
高サイクル疲労・・・破断繰り返し数10
4回以上
S−N曲線
低サイクル疲労
降伏応力以上で塑性変形、ヒステリシス
徳島大
*単調応力−ひずみ曲線→(12−1−1) 応力−ひずみ曲線
スラナリー工科大 金属の疲労
高サイクル疲労HCF:N>10
5サイクル
低サイクル疲労LCF:N<10
4〜10
5サイクル
疲労限:10
7〜10
8サイクル
平均応力、応力比、応力集中の影響
繰り返し硬化と繰り返し軟化
*
小山
寿命推定
低サイクル疲労LCFはCoffin-Manson equation:
高サイクル疲労HCFはBasquin equation:
亀裂破壊過程
亀裂発生
スベリ線形成、スベリ運動の前進後退で凸凹形成
スベリ帯亀裂成長
最大引っ張り応力に垂直な方向への亀裂成長
延性破壊
第1段階
亀裂発生とスベリ帯亀裂成長
突き出しextrusionと押し込みinstrusion
スベリ面の沿って亀裂伝播しやすい
その後最大応力に垂直な方向をとる
亀裂伝播速度は遅い(nm/サイクル)
第2段階
安定疲労亀裂伝播
破断面はリップル(波)模様あるいはストライエーション(筋)
亀裂成長→Parisの式
第3段階
不安定疲労亀裂伝播
疲労亀裂成長挙動
Coffin-Manson equationとBasquin equation
ASM
あるいは寿命N
f 大塚
ΔεN
fc=C
c Coffin-Manson Δε:塑性ひずみ振幅
ΔσN
fa=C
b Basquin Δσ:負荷
a、c、C
c、C
bは材料定数
1サイクルの亀裂進展速度 da/dNは
ただしホモロガス温度の考慮必要。
徳島大
疲労の微視組織的様相
Engelmaier
表面実装電子部品には種々の形状の接続(電極)端子がある。
リードレス端子
フィレットレス
BGA
フィレット有り
チップ部品、金属電極リードレス面部品(MELF)、キャスタ電極リードレスチップキャリア
リード端子
FC、BGA、CGA(カラム(ピン)・グリッド)のような一様な負荷分布のはんだ接合では下図のような破壊挙動を行う。
(粒成長→微小ボイド形成→ボイド成長・合体→微小亀裂化→亀裂伝播→マクロ亀裂化)
チップ部品、MELF、LCC(リードレスチップキャリア)その他リード付き部品のはんだ接合ではマクロ亀裂の進展に先行し、
局在化した損傷の集中を示す。