(13) はんだ相互接合の破壊と信頼性


(13−1) はんだ相互接合の環境と信頼性

(13−1−1) はんだ相互接合の環境と破壊

  東芝 久里らによるとはんだ接合部の破壊については、従来
   ・短期間の引張り、せん断による延性破壊(降伏)
   ・高温での定応力の継続的負荷によるクリープ破壊
   ・熱サイクルによる熱疲労
   ・繰り返し振動による機械的疲労
 があるとされ、特に熱サイクル疲労(温度サイクル試験)が重視されてきた。
  部品には挿入実装(リード)部品と表面実装部品があり、小型・高集積化の観点から表面実装部品が増えているが、
 表面実装部品は発熱による温度上昇に伴う、部品/はんだ/基板PCBの相互接合部の熱膨率差にともなう熱応力の
 繰り返し除加に伴う温度サイクル疲労がとくに厳しいものとなる。 

  東芝 久里ら
  

 

  日立



  しかし、携帯機器の普及により最近は落下などのような瞬間衝撃などに見られる高速ひずみ速度による脆性破壊が
 問題となってきている。
  また車載機器の電子化が進んできているが、その環境は高温に更に振動が負荷された複雑なものとなっている。
  温度サイクルと振動の結合試験は従来、設計あるいは工程の弱点を洗い出す強加速試験HALTとして利用されているが、車両では
 そのような環境が現実のものとなっている。

  Winterbottomによると


  Johnsonによると



  各種輸送手段では(Blattauから)


  ひずみ速度は小嶋によると

  通常試験範囲では
    クリープ          10−8〜10−5/s
    準静的           10−3〜10−2/s
    高ひずみ速度(衝撃)  1/s〜(10〜10/s)
 に分類される。

*JEDEC JESD22−B117Aによればはんだボール試験でツールの移動速度は
   低速度 0.0001〜0.0008m/s
   高速度 0.01〜1.0m/s

  Subbarayanによると



  部品についてみるとBGAにような大型なエリア・パッケージや部品自体が脆く、かつ金属端子のような応力緩和が困難な
 チップ・キャパシタなどでの故障が多い。
  OKによると


  CALCEによると

 PEM:Power electronics module

  電子装置の故障については(Blattauから)


  またはんだはホモロガス温度が実使用温度付近で大きく、クリープや組織変化に伴う劣化、更には加工軟化、再結晶
 などが問題となる。


(13−1−2) はんだ相互接合の環境と信頼性試験


@ 概要
  ここで述べるのは電気・電子装置でのはんだ相互接合の信頼性試験に関係するものであり実装信頼性
 とも称される基板レベル(搭載)試験が主であり、部品単体の信頼性試験を意味しない。
  またマイグレーション、酸化・腐食、ウィスカなどは後で別個に詳しく述べる。
  ここでは主に機械的特性への影響を主とする。

 試験環境
  環境としては雰囲気によるものと機械的なものに分けてみる。
  雰囲気としては
   温度:恒温試験(低温保持、高温保持)、温度サイクル(温度を外部から印加とパワーサイクル:通電)、温度衝撃(熱衝撃)
   湿度:高温高湿、PCT(飽和)、HAST(不飽和)
   (ガス)、(真空)
  機械的なものとして基板搭載(アセンブリ、実装)での
   繰返し曲げ
   振動
   (繰返し)衝撃
   (繰返し)落下
 などが挙げられる。
   なお負荷方法として単調負荷と繰返し負荷、連続負荷(クリープ)がある。

 試験方法
  疲労試験
   恒温疲労試験 
     繰返し応力(ヒステリシス)
       塑性変形領域あるいは高ひずみ領域
       弾性変形領域あるいは低ひずみ領域
      の2領域が区別される。
     応力としてはせん断、引張り、引張り・圧縮(振動)、曲げなど
      *例外的にバルクはんだ、基板はどちらかというと振動試験あるいは繰り返し曲げ試験、場合によっては衝撃試験。
   熱疲労試験
    温度サイクル(強制加熱、外部加熱)
    熱衝撃(急冷・急加熱)
    パワー・サイクル(通電試験、自発加熱)
   クリープ試験
  基板曲げ試験
     3点曲げ、4点曲げ、球形曲げ
   (基板限界曲げ試験)
   繰返し基板曲げ試験
  高ひずみ速度試験 
    機械的衝撃試験
     破壊試験
      振り子衝撃(シャルピーなど)
      高速移動ツール(はんだボール)
     衝撃試験
      物体衝突試験(鋼球、ロッドなど)
   振動試験(自然振動数の存在、複数の振動モード) 
     周期波(正弦波、SIN波など)
     ランダム振動
     共鳴振動数での振動
   衝撃・・・短時間に大きなパルス状加速度波形、規定のピーク加速度、作用時間の標準パルス波形
       10000g〜5g、30〜0.2ms
   落下衝撃試験
     ジグに固定し自然落下させるのが主である。高さが規定される。

 評価項目 
  破壊強度(接合強度)
   せん断強度
   引張り強度
   引き剥がし(ピール)強度
  破壊モード  バルクはんだ、接合界面、部品電極(端子、厚膜)、部品母材・パッケージ、パッド金属層(パッド剥離、配線亀裂)、
            積層板(パッド・クレータリング)
  電気的特性(抵抗) 
  亀裂進展度
  →寿命定義

 加速試験
   加速係数と寿命推定
   構成式 
   ワイブルプロット   故障頻度(累積故障率)と寿命(時間、サイクル数)
     特性寿命characteristic lif η 63.2%寿命
     β(m) 傾斜(形状)パラメタslope parameter
     r2(ρ) deviation 

ルネサス



   設計のための弱点洗い出し試験(HALT、MEOST)
   スクリーニング試験(HASS)


A 規格

 RCJRCJ



EIAJ ED-4702A
 TEST METHODS
   001 温度サイクル
   002 はんだ接合強度(ピール、プル、プッシュ)
   003 基板曲げ試験(表面実装部品)
   004 繰り返し基板曲げ試験(表面実装部品)
   005 落下試験





  JEDEC JESD22−B111 基板レベル落下試験 
  IPC/JEDEC 9703
    JEDEC 条件B要求(1500Gs、0.5ms、半SIN波)

 JESD22−B104−C 機械的衝撃
 JESD22−B110 サブアセンブリ機械的衝撃

 MIL−STD−810G
 501.5 高温 
 502.5 低温 
 503.5 温度衝撃
 513.6 加速
 514.6 振動
 516.6 衝撃
 520.3 温度、湿度、振動、高度

 加速 Method 513.6
   遠心力
 振動       514.6
 衝撃       516.6
  衝撃装置 自由落下、弾性反発、非弾性反発、油圧、圧縮ガス、電動、電動油圧



湿度
  40℃/85RH%、60℃/85RH%、80℃/85RH%


B 結合環境試験CETあるいは高度(超)加速応力試験HALT

 CET HALT 
 結合環境試験CET
   HALT(Highly Accelerated Life Test)高度加速寿命試験 GMW8287
     定性的、振動と温度サイクル(高温、低温と熱衝撃:急冷、急熱)の結合
     設計、工程での弱点の調査
    〜スクリーニング(Screen)HASS、〜検査(Audit)HASA

 MEOST(Multi Environment Over Stress Test:多環境オーヴァーストレス試験)
  MEOSTでは破壊failureによって設計の弱点をいぶしだす。


  *HAST(Highly Accelerated Stress Test)高度(超)加速応力試験 JESD-22-A110
     圧力、湿度と温度、不飽和加圧水蒸気圧 


     PCT(Pressure Cooker Test圧力容器試験) 飽和加圧水蒸気圧 JESD22 A102
        121℃、100%RH、29.7psig/205kPa、24、48、96、168、240、336hs
           *結露の影響
     →主に樹脂封止半導体パッケージの吸湿試験   高温高湿→PCT→HAST


(13−1−3) 国際組織の信頼性調査プロジェクト

(A) 概観
  はんだ合金選択に引き続く信頼性調査の国際プロジェクトとしては2000年代に
   欧州では
    ELFNET(2002−2006年)
     最終報告 DB

   米国では
    NASAのJCAA/JG−PP(Joint Group on Pollution Prevention、Joint Council on Aging Aircraft)
    INEMのNEMIからINEMIに引き継がれたいくつかのプロジェクトなどがある。


LeeによるINEMIプロジェクト紹介

 フェーズ1 1999−2002年 合金、工程、部品、信頼性
   2000年 リフローにSn3.9Ag0.6Cuを推薦

 フェーズ2 アセンブリと大規模複雑PWBアセンブリに拡大
   Pbフリーアセンブリとリワーク、スズ・ウイスカー

 フェーズ3 5プロジェクト、サプライ・チェーン過渡期問題に対処

 フェーズ4 ウェーヴ・選択はんだ付け、混合アセンブリ、Pbフリー表面処理に対処
  環境自覚電子技術統合グループTIG Snウイスカー等に対処するいくつかのグループ

 Pbフリー合金代替プロジェクト報告 産業の状態(Henshall)INEMI報告(概要紹介)

 Pbフリー合金特徴化プロジェクト報告 2012
  Part I Henshall - Program Goals, Experimental Structure, Alloy Characterization, and Test Protocols for Accelerated Thermal Cycling
   
  Part II Parker - Thermal Fatigue Results for Two Common Temperature Cycles
  Part III Sweatman - Thermal Fatigue Results for Low-Ag Alloys
  Part IV Coyle - Effect of Isothermal Preconditioning on Thermal Fatigue Life


2012年 Benedetto



 詳しくは→低AgSACボールとSAC305ペースト 低AgSACへの微量添加の影響


JCAA/JG-PP 2004(エージング航空機ジョイント評議会、汚染防止ジョイント・グループ)とNASA DoD LF プロジェクト


プレゼン 2011
 フェーズ1 JCAA/JGPP LF プロジェクト(2003)
  Sn−3.9Ag−0.6Cu        ウェーヴ、リフロー、手はんだ
  Sn−3.4Ag−1.0Cu−3.3Bi  リフロー、手はんだ
  Sn−0.7Cu−0.05Ni       ウェーヴ、手はんだ

 フェーズ2 NASA DoD LF プロジェクト(2007) →NASAのHALT結果
  SAC305 リフロー、手はんだ
  Sn0.7Cu0.05Ni(SN100C)) リフロー、ウェーヴ、手はんだ

JCAA/JG-PP  →JCAA/JG−PPの調査結果(航空機・軍用向け信頼性試験)
 試したはんだは
  Sn−3.9Ag−0.6Cu        ウェーヴ、リフロー、手はんだ
  Sn−3.4Ag−1.0Cu−3.3Bi  リフロー、手はんだ
  Sn−0.7Cu−0.05Ni       ウェーヴ、手はんだ

 一方JPLでは
 第1フェーズ
   Sn−3.5Ag
   Sn−3.8Ag−0.7Cu
   Sn−2.5Ag−0.8Cu−0.5Sb(CASTIN)
   Sn−20In−2.8Ag (Indalloy 227)
 第2フェーズ
   リフロー用として
   Sn−3.8Ag−0.7Cu
   Sn−2.5Ag−0.8Cu−0.5Sb

   PWB ImAg、SnPbHASL

・米海軍のマンハッタン計画→マンハッタン計画報告概要

先端車両電子センターCAVE 
 IMC成長
  SAC405、Sn−3.5Ag−1.5In、Sn−3.5Ag、Sn−0.7Cu
 濡れ
 機械的特性
 接合信頼性と微細構造研究
 Snウィスカ成長

     引っ張り試験による応力−ひずみ曲線
     表面実装部品の接合強度試験
     温度サイクル試験
     セラミック部品の基板曲げ試験
     振動試験
     落下衝撃試験


 高温使用(160℃まで)用 Gayle 2001年 詳しくは→各種はんだの熱疲労





  またフィンランドのヘルシンキ工科大HUTのMattilaらの研究がある。
  Mattilaらの研究1
  Mattilaらの研究2


(B) 日本での研究

  日本では
   低温はんだ 2006  
  


 JEITA 第2世代フロー用はんだ標準化プロジェクト 2008で検討したはんだは 
 


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