(13−5) 基板レベルの高ひずみ速度信頼性試験
電子機器の信頼性については (13−1) はんだ相互接合の環境と信頼性 で述べたように従来の据置型の電子機器
に対し携帯型電子機器では落下による故障が重要視されてきてオリ、また車、飛行機などの輸送あるいは車載機器の
電子化にともない振動の影響が重視されてきている。
これら落下や振動は従来問題視されている温度サイクル(熱疲労)に比べ高ひずみ速度であることが特徴で、このことによる
固有のはんだ接合上の問題が、特にPbフリー化にともなって浮上してきている。
(12−2)
ひずみ速度の影響 、(12−3)
はんだ接合破壊 などで詳しく述べたようにはんだではひずみ速度硬化を示し、
高ひずみ速度ではバルクはんだ強度が増加し、応力がはんだ接合の界面、更にはパッド金属ないし配線周辺に集中し、また
Pbフリーはんだ化にともなう界面反応の促進と特有のIMCの形態morphogy、パッドCu溶解の影響、高リフロー温度の影響などにより
SnPbはんだでは見られない現象あるいは破壊モードが生じている。
このPbフリーはんだとSnPbはんだの違いについては (7−5)
SAC系とSnCuX系のまとめ でも述べた。
以下では特に基板レベルの高ひずみ速度信頼性試験の観点から基板搭載(アセンブリ)状態での基板曲げ、振動、落下および
結合試験について述べる。
(13−5−1) ひずみ速度と信頼性問題
ひずみ速度と信頼性問題の関係する事項を簡単にまとめる。
@ 各種試験(環境)とひずみ速度
小嶋
ひずみ速度は各種試験でおおよそ下記範囲である。
クリープ速度 10
−8〜10
−5s
−1
熱サイクル試験 10
−4〜10
−2s
−1
恒温疲労試験 10
−4〜10
−2s
−1 (1〜0.001Hz)
静的引張試験 10
−3〜10
−2s
−1 落下試験 約10
3/s
A はんだ接合とひずみ速度と破壊モード
Shnawah
高速ボールせん断試験FBST
CI:IMCからの亀裂発生による破壊・・・高速衝撃負荷、落下など
CS:はんだボールからの亀裂発生による破壊・・・物体の衝突
DD:はんだボールの延性変形による破壊・・・低変位速度
JEDEC JESD22−B117Aによればはんだボール試験でツールの移動速度は
低速度 0.0001〜0.0008m/s(0.1〜0.8mm/s)
高速度 0.01〜1.0m/s(10〜1000mm/s)
日立化成
*はんだボールについてはすでに (12−3−3)
はんだボール接合における破壊モード で述べた。
*はんだ接合界面強度、パッド接着強度、積層板強度は実際の強度順位、傾向を示すものではない。
(13−5−2) 基板曲げ試験
bend
引張試験やせん断試験結果と基板曲げ試験ではPbフリーはんだとSnPbはんだとの違いで必ずしも同様の傾向が
得られるわけではない。
かならずしも高ひずみ速度試験というわけではないがまず基板での曲げ試験を見ておく。
@ 基板曲げ試験方法
3点曲げ試験と4点曲げ試験がある。
EIAJ ED-4702A
TEST METHODS
001 温度サイクル
002 はんだ接合強度(ピール、プル、プッシュ)
003 基板曲げ試験(表面実装部品)
004 繰り返し基板曲げ試験(表面実装部品)
005 落下試験
・3点曲げ
1.0mm/分、反り:1.0〜4.0mm、幅90mm、ツール先端R230
・4点曲げ
JEDEC 22B113 携帯電子製品の部品の相互接合信頼性特性化のための基板レベル繰り返し曲げ試験法
4点曲げ
1(3)Hz、〜200000c、〜2(4)mm ()はオプション
支持:110mm、負荷アンヴィル:75mm、部品端とアインヴィル中心:10mm(部品は55mm以内)、アンヴィル径3mm以上
基板132x77mm、部品は55x55mm以内
NPL
NPLによれば3点曲げと4点曲げでは基板の湾曲方向が異なるが一般的ではない。
・球状曲げ試験
Celestica 球状曲げ試験
JEDEC 9707
Garner 基板曲げと温度サイクルの差異
Joyce 各種曲げの差異
球状曲げがもっとも厳しい。
Towashiraporn
動的衝撃、鋼球を落下。
4点は上:45.0mm、下:50.0mm
球状は上:7mm、下35mm
はんだ:SAC105
同じ負荷条件でパルス継続時間は4点が長い。
主な破壊モードは同じで基板側IMC
シュミレーション結果
*各最大値で規格化、4点と球状間は相対化していない。(基板長軸y)
Lammertink 抵抗モニター
基準 破壊の定義
・衝撃基板曲げ
Lee
日立
繰り返し衝撃曲げ試験:150gロッドの落下。落下高さ75〜200mm。
繰り返し衝撃曲げ試験の基板長手方向ひずみ
A 限界(単調)曲げ試験
Pbフリーはんだは高剛性、高耐力のため塑性変形従って応力緩和しにくく、バルクはんだ以外の部分、接合界面や、
基板(積層材)、部品母体などに高応力がかかりやすくなって来、そのことによりセラミック・キャパシタの本体亀裂や積層材亀裂
などの破壊モードが生じやすくなっている。
これはPbフリーはんだが高リフロー温度で大きな熱応力が生じやすくしかも応力緩和しにくいことで一層促進されている。
サンミナ
35mmx35mm 388 I/O PBGA、203x72mmPCB、PCB表面処理OSPペーストSAC405
4点曲げ、0.762mm/min
一般的破壊モード
(b)BGA側の鏡像
Sn−0.75CuとSn−3.5Agで見られた稀な破壊モード
HP
破壊モード? SACが故障を起こしやすい。
Blattau
3点曲げ
SAC305とSn37Pb、ENIG
故障:容量5%低下。
下記有限要素法結果と異なる。
Blattau
セラミック・キャパシタ
2.3mmの反りで亀裂が始まり、これは約62MPa(BaTiO3の引張強度に合う)
Bansal
Pbフリーアセンブリでの高リフロー温度がBGAパッド界面に高残留応力を引き起こす。
またSnPb合金より顕著に硬くstiff、脆くbrittle、所与の機械的負荷でより高い応力をBGAパッドに伝達する。
またPbフリー両立PCBに使用される甲Tg積層材はSnPb用より脆い。
更に高密度、高精細アセンブリでパッドは小さくなってきている。
上記事情により機械的曲げ負荷による積層材内部亀裂(パッド・クレーター)の発生が起き易くなっている。
このパッド・クレーターにより引き続く機械的応力でBGAパッドにつながる配線破壊による電気的故障が起こりうる。
しかし初期段階の損傷、すなわち樹脂と積層材間亀裂は即座に電気抵抗の変化とはならない。継続的負荷増加で
亀裂は成長し電気抵抗が変化する配線破壊となる。
ここでは音響放出によるパッド・クレーターの初期検出を紹介。
AE放出が電気抵抗より検出が早い。
(A) AE損傷も電気的損傷もなし (B) AE損傷はあるが電気的損傷はなし
(C) AEおよび電気的損傷あり
Keimasi stiffness
FR4(Tg=170℃)
4点曲げ(IPC/JEDEC std9702)
0.2mm(10秒保持し測定)で段階的に10mmまで
SAC305がSn37Pbよりかなり勝っている。
SnPbのひずみ硬化が大きいためという。
また反り亀裂はキャパシタ本体の引張り応力によるがリフローにより圧縮残留応力が生じ、これがSACの方が
大きいという。
エージング効果(各温度200h)
SnPb
SAC305
JEITA