(18−3) Pbフリーはんだ接合と特殊破壊モード
(18−3−1) 低融点相形成とフィレット剥離及び再溶融剥離
Pbフリー化にあたっては、はんだ接合においてBi、Pbが関係するとフローはんだ付けの挿入実装部品THDで
リフト・オフあるいはフィレット・リフティング、フィレット剥離と呼ばれる、Cuランド(パッド)とはんだフィレットの界面での
剥離現象が生じることが問題となった。
このフィレット剥離にはBi、Pbを含む低融点相の界面への偏析が関係していることが明らかにされた。
ただしこのフィレット剥離は温度サイクル試験等の信頼性試験においては剥離が進行せず信頼性の問題の原因とは
ならないとされた。
一方QFPなどの表面実装の大形部品においても、リフロー工程後のフロー工程を行うと、リフロー工程でCuランドと
はんだの界面に低融点相が形成され、これがフロー工程で再溶融により界面剥離をおこすことがありうることが明らかになった。
このように高融点であるPbフリーはんだ接合にBi、Pbなどの低融点相形成成分が混入するとこれらが凝固の最後の
部分に残存し、特にランドとの界面に偏析し問題を生じる。
@ PbフリーはんだとPb、Bi、Inにより形成される低融点相
主な2元、3元系低融点共晶
組成 |
共晶点(℃) |
Sn-52In |
118 |
In-3Ag |
143 |
Sn-58Bi |
138 |
Pb-55.5Bi |
124 |
66.3In-33.7Bi |
72 |
67Bi-33In |
109 |
|
|
Sn-52Bi-30Pb |
96 |
51In-32.5Bi-16.5Sn |
60 |
57Bi-26In-17Sn |
79 |
54.0Bi-29.68In-16.3Sn |
81 |
|
|
Sn-37Pb-2Ag |
177 |
モトローラ 各種PbフリーはんだでPb添加により形成される低融点相
Sn−18Bi−40Pb 包晶 137℃
Sn−51Bi−32Pb 共晶 96℃
Sn−36Pb−2Ag 共晶 179℃
山
Sn−10PbのSOPとSAC305、Sn8Zn0.3Bi、Sn3.5Ag8In0.5Biはんだによる低融点相の形成
加熱引張り試験
Choi
加熱SDC
Sn−Ag−In−Bi(ハリマ)
Biを多量に添加したものは偏析で低温相(約148℃)が生じる。
菅沼
以上のようにBi、Pbは偏析しやすく、このため低融点相を形成しやすい。
A 偏析と凝固組織への影響
はんだ中の低融点成分の影響・・・ミクロ偏析とマクロ偏析
はんだ融液の温度低下による凝固の開始でβSnデンドライトが生成し始め、添加成分、不純物あるいは低融点成分は
βSnデンドライ間に濃縮し、共晶組織を形成したり、ミクロ偏析したりする。不純物は遅く凝固する部分に濃縮するので特に
最終凝固部となりやすい電極との界面にマクロ偏析をもおこす。
Manhattan
低融点相形成に伴う凝固収縮ボイド。
低融点相を形成するような幅広い固液共存範囲が存在するとSn相はデンドライトとして高温領域に
成長し、液体はPb、Agなどが富化し、デンドライト間に最終的に晶出し収縮ボイドを基板側に形成。
部品端子のはんだめっき中の低融点成分の影響
SnPbはんだめっき端子にPbフリーはんだ付けした場合、Pbははんだ中に溶け込んでいき、βSnデンドライト間に
ミクロ偏析するが、Pbはやはり遅く凝固する部分に濃縮するので特に最終凝固部となりやすい電極との界面にマクロ偏析をおこす。
この低融点相領域はまた両面リフローの2回目に溶融し基板側に収縮ボイド形成。
SAC105ボールのSnPbペーストでのリペア(
Henshall)
赤線部:最終凝固し、Pb濃縮層を形成しやすい部分
Hillman
デンドライト間へのPbの偏析と収縮孔
B 挿入部品THDのフローにおけるフィレット剥離(フィレット・リフティング、リフト・オフ)
NPL Bi含有はんだ
Bi偏析により界面付近で凝固遅れが生じ、凝固収縮、熱収縮などによりフィレット剥離が発生する。
Henkel
東芝
SAC+Pb(混入)
デンソー
Suganuma
Havia
部品の表面処理はPbフリー
Handwerker
CSA SERVICE
NEC
ソルダー・ソルーション
東芝
Hillman
フィレット・リフティングは温度サイクル試験(−55〜125℃)ではんだ接合欠陥とはならない
<フィレット剥離対策特許>
再表01/069990(特許4718091) 優先日(2000.3.15) 松下電産 末次憲一郎ら
(1)表面ランド(フィレット)が裏面ランド(フィレット)より小さい
(2)はんだマスク規定SMDパッド(パッド周辺をはんだマスクで覆う)
Toh
NSMDではパッド・リフティングが生じる
Lee
C 再溶融剥離
大形表面実装部品SMDのリフロー後のフローにおけるフィレット剥離(再溶融剥離)
PbフリーはんだとSnPb端子めっき部品のリフロー工程でSn−Ag−Pb3元共晶が生じ、フロー工程で
再溶融し、基板の反りにより剥離を起こす。
NEC
日鉄住金テクノロジー 再溶融問題
東芝 前原
Sn−PbめっきでのSn−Ag−Pbの低融点相形成
SnAgCuはんだ
松下 Sn−8Zn−3BiはんだとSn−Pbめっき
界面にはSn−Bi−Pb
D 高温エージングによる拡散に伴う接合界面偏析と低融点相形成
富士通
Sn−10PbはんだめっきリードとSn−Zn−Biはんだ
150℃x100h
シャープ
Sn−10Pbめっき
Calce
SnPb HASLとSAC389の高温エージングで破壊モードがはんだバルクから界面に移行。
HASLのSnがCuと反応しIMCを形成し、弱い局在化したPb領域を形成。