★ 合成樹脂 ★
〔T〕熱硬化性樹脂
重合で3次元網目状化(架橋)し不溶(溶媒あるいは溶剤に溶けdissolveない)、不融(熔融meltしない)化。
1. アミノ樹脂
アミノ樹脂 はメラミン、グアナミン等のアミノ化合物(トリアジン化合物など)を(ホルム)アルデヒドとの反応により付加重合
させメチロールHOCH
2−化(一般的にアルキロール化)したものを縮重合させる。
アミノ基:−NH
2
メチロール化 ≡C−NH
2 → ≡CN(CH
2OH)
2 N−メチロール
1,3,5トリアジン(トリアジン環)

例:グアナミン樹脂、アニリン樹脂、スルフォアミド樹脂
ポリエステル、アルキド、エポキシ、フェノール等の樹脂類の架橋にも利用され、塗料、接着剤に使用。
他の樹脂と組み合わせて用いるときには相溶性をよくするため、アルキルエーテル化することが多い。
<アルキルエーテル化>
水溶性の点でメチルエーテル化メラミン樹脂あるいはメチルエーテル化尿素樹脂などのアルキルエーテル化アミノ樹脂が
主に使用されている。
アミノ樹脂は、一般にホルムアルデヒドと縮合させてアルキロール化し、分子内に水酸基を導入する事により親水化。
しかし一般に、アルキロール基が多すぎると硬化塗膜の耐水性の悪化や硬化反応に伴う脱ホルムアルデヒド量が増大し
作業性にも問題を与える事が多い。
そこでさらに、アルキロール化したアミノ樹脂を低級アルコールによりアルキロール基とアルコール性OHとの脱水縮合反応
によりアルキルエーテル化しかつ縮合度を低く抑えることで、他の樹脂類との相溶性,経時安定性を改善する。
1−1.メラミン樹脂
メラミン

メラミンC
3N
6H
6とホルムアルデヒドでメチロールメラミン化。
1−2.グアナミン樹脂
ベンゾグアナミン C
6H
5C
3N
3(NH
2)
2系,アセトグアナミン系,スピログアナミン系樹脂。
グアナミン

スピログアナミン
1−3.スルホアミド樹脂
芳香族スルホンアミドとホルムアルデヒドから合成。
可塑剤、接着剤に使用される低分子の化合物。
1−4.ユリア(尿素)樹脂
尿素結合-NH-CO-NH-
尿素CO(NH
2)
2とホルムアルデヒドCH
2Oでメチロール尿素を生成させこれを縮重合。
環状尿素樹脂は繊維の防縮、防皺などに使用。環状尿素としてたとえばヒダントイン、エチレン尿素化合物。
エチレン尿素(2−イミダゾリジノン)の化合物

ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素
*グリオキザール樹脂
グリオキザール(ジアルデヒド)OHC−CHO
尿素化合物とグリオキザールとホルムアルデヒドから合成。
木材、繊維等含浸用。
1−5.アニリン樹脂
アニリン

とホルムアルデヒド
1−6.その他のアミノ化合物
グリコールウリル
グアニジン

ジシアンジアミドH
2N-CNH-NH-CN
イソシアヌル酸
2.シアネート樹脂(シアン酸エステル樹脂)
分子内に2個以上のシアネート基−OCN(シアン酸エステル)を有する化合物。

一般に

を重合
3量化でトリアジン環を生成して重合 。

シアネート樹脂は、極性の強いシアネート基を有していながら硬化時には対称性かつ剛直なトリアジン構造を
生成するので、熱硬化性樹脂としては最も低い誘電率及び誘電損失の硬化物が得られる。
ノボラック型シアネートはノボラック樹脂とハロゲン化シアンから合成。
ノボラック型

硬化剤として、活性水素を有するアミン、ポリオール等使用。
3.イソシアネート樹脂
分子内に2個以上のイソシアネート基−N=COを有する化合物。
多官能(ポリ)イソシアネートは、フェノール類とハロゲン化シアンとの脱ハロゲン化水素反応で得られる。
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネートなど。
MDI
クルードMDI

イソシアネートはOH基(一般的に活性水素をもつ基)の架橋用に使用。
ブロック(ト)・イソシアネート樹脂は硬化前に反応させないために、遊離のイソシアネートをフェノール等でブロックしたもの。
ブロック剤としてフェノール、アルコール、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン、オキシム>C=N−OH、
ε−カプロラクタム等
ε−カプロラクタム

マロン酸ジメチルCH
2(COOCH
3)
2 アセト酢酸エチルCH
3C(=O)CH
2COOC
2H
5
このブロック剤を加熱揮散させることにより、硬化させる。
活性メチレン:2つの電子吸引基(カルボニル基、エステル基等)にはさまれたメチレン基−CH
2−
このようなブロックトイソシアネートは反応時に揮発性有機物VOCが生じる
→内部ブロック型イソシアネート
ウレトジオン結合 2量化
カルボジイミド 脱CO
2による2量化
2RCON → R−N=C=N−R + CO
2
ウレトンイミン結合 カルボジイミド結合とイソシアネート基から
オキサジアジントリオン環

ジイソシアネートとCO
2から
ブロックトアミン アルジミン、ケチミン、エナミン、オキサゾリジン等、水分(湿気)でアミン放出。
アルジミン
その他のイソシアネートの反応
イソシアヌレート結合 3量化、耐熱性向上

イソシアヌル酸(1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン)
イミノオキサジアジンジオン

イソシアヌレートの異性体
オキサゾリドン環 イソシアネートとエポキシから脱アルコールで生成、加水分解で炭酸ガスが発生しない。

3−1.ウレタン樹脂
ウレタン結合R−NH―COOR’
イソシアネート基−N=COとアルコール基が縮合してできる。

ジイソシアネートとジオール(あるいは水酸基の代わりにアミン、カルボキシル基等の活性水素を含有する化合物)、
一般的にはポリイソシアネートとポリオールから生成。
熱可塑性ポリウレタンのポリオールとしてはポリエステル系(アジピン酸エステル系、ラクトン系)、ポリエーテル系
(エラストマー)、ポリカーボネート系、ポリエーテル・エステル系などがあるがポリカーボネート系は耐熱性良好。
水(反応しやすい)やカルボキシル基との反応ではCO
2を発生し発泡。
ウレタン結合のほかに尿素結合(アミン、水等)、イソシアヌレート結合(3量体)なども形成される。
組み合わせで硬質と軟質(たとえばポリオールの分子量が大きく官能基が少ないと軟質化、その逆では硬質化)。
あるいはポリオールより成るソフトセグメントとウレタン結合を含む部分よりなるハードセグメント(鎖状間が水素結合)
よりなる構造をもつ。
分子の修飾性に優れる。
架橋(熱硬化)したものとしないもの(熱可塑)がある。
架橋反応
ビュレット結合 ウレア結合に−NCO基が反応

アロファネート結合 ウレタン結合に−NCO基が反応。
*カルバメート基
カルバメート基

ウレタン結合はイソシアネートと水酸基のほかにカルバメート基とアミノ樹脂、環状カーボネートとアミノ基からも形成。
カルバミン酸H
2NCOOHとアルコール類またはフェノール類から生じるカルバミン酸エステルもウレタン。
カルバミン酸エステル

その他のジイソシアネート以外のウレタンとして環状ウレタンの開環重合、イソシアネートアルコール、環状カーボネート
と環状尿素など。
環状尿素 2−イミダゾリジノン(エチレン尿素)

環状カーボネート ポリトリメチレンカーボネート(ポリ−1,3−ジオキサン−2−オン)

→ーO-(CH
2)
3-O-CO-
二酸化炭素と環状アミンからの環状ウレタン
アジリジン

から五員環の環状ウレタンである2−オキサゾリジノン

アゼチジン
2液硬化型
ポリオールとポリイソシアネート
1液熱硬化型
ポリオールとブロックポリイソシアネート
ブロック剤はフェノール、アルコール類
1液湿気硬化型
ポリイソシアネートと水分→発泡(CO
2発生)
潜在硬化型 潜在硬化剤は水分と反応しアミン生成。発泡しない。
オキサゾリジン化合物 オキサゾリジン環

ポリケチミン R’RC=N−
ポリエナミン R’RC=CR”−N=
3−2.ポリウレア樹脂
ポリアミンとポリイソシアネート、尿素結合―NH−CO−NH−
塗装など。
3−3.チオウレタン樹脂
ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物を原料。
チオール(メルカプタン)R−SH
ポリチオールとしてたとえばペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等のポリオールとメルカプトプロピオン酸、
チオグリコール酸等のメルカプトカルボン酸とのエステル。(→エン・チオール樹脂)
高屈折率レンズ、Sの含有量を多くする。
4.ポリイミド
イミド結合 −CO−NR−CO−

ポリイミド樹脂は分子主鎖中にイミド結合(通常は環状イミド結合)を有する。
R,R‘が芳香族 芳香族ポリイミド
ポリイミドは、主鎖中に熱的・化学的に安定なイミド環(複素環)や芳香環等の分子構造を有する高分子であり、
耐熱性や機械強度、電気絶縁性、耐薬品性に優れている。
耐熱性に優れるとともに絶縁性、誘電性(低誘電率)にすぐれているため特に電子材料としても利用される。
ポリイミドとして芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとから得られるポリアミド酸の段階で賦形し、
その後に熱処理して、イミド閉環を行わせることにより得られる熱硬化性の縮合型ポリイミド樹脂がある。
非常に高い耐熱性を持っているが、成形途中で不溶不融になるため、成形等の取り扱いが困難である。
成形性を改善したものにはエーテル結合を導入した熱可塑性のポリエーテルイミド、多官能不飽和イミド
(ビスマレイミドなど)を重合、熱架橋させることにより得られる付加重合型の熱硬化型ポリイミド樹脂がある。
ビスマレイミドを用いたものは、非常に脆いという欠点を有するため、靱性、加工性、耐衝撃性に問題がある。
そこで、耐熱性は多少劣るが、このビスマレイミドモノマーを種々の架橋剤で変性したものを使用している。
そのようなものとしてはアセチレン末端ポリイミドプレポリマー、ナジック酸末端ポリイミドプレポリマーなどの反応性
多重結合化合物とジアミン、ジイソシアネートなどとの反応を利用する熱硬化性ポリイミド樹脂がある。
その代表的なものとしては、芳香族ビスマレイミドと芳香族ジアミンとを利用するポリアミノビスマレイミド樹脂が
挙げられ、ケルイミド、キネル等がこれに属する。
架橋剤としてジアミンの代わりにポリシアネート(ポリシアン酸エステル)化合物を用いることにより得られるもの
としてビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)がある。
4−1.全芳香族ポリイミド
芳香族テトラカルボン酸無水物(一般に酸ニ無水物)と芳香族ジアミンを重縮合。
ベンゾイミド環やピロメリットイミド環の幾何学的平面性と強い分子間相互作用のため安定な秩序構造を形成し、
Tgを越えても分子運動が抑制され普通の高分子のように軟化して低粘度とならなく非可塑性で成形性が悪い。
デュポン社のカプトンはピロメリット酸二無水物と、4,4'-ジアミノジフェニルエーテルを重合、その他ビフェニルテトラ
カルボン酸二無水物など使用。
ほとんどの溶剤に溶けないため、コーティング材料、フィルム等の用途に使用する場合、前駆体であるポリアミド酸
(溶剤可溶)を高温(300℃程度)下で処理する加工法を必要とする。
アミド酸(可溶) ポリイミド(不溶)
主なテトラカルボン酸二無水物
PMDAピロメリット酸二無水物

BPDAビフェニルテトラカルボン酸二無水物
芳香族ジアミン
PPDパラフェニレンジアミン

ODAジアミノジフェニルエーテル
テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネートでは1段階でポリイミドが得られる。
4−2.熱硬化性ポリイミド樹脂(付加重合型ポリイミド)
成形加工性を改良したポリイミド樹脂としては、ビスマレイミド化合物、アセチレン末端ポリイミドプレポリマー、ナジック
酸末端ポリイミドプレポリマー(環状脂肪族酸無水物)などの反応性多重結合化合物とジアミン、ジイソシアネートなどとの
反応を利用する熱硬化性ポリイミド樹脂がある。
これらの樹脂は比較的低温で溶融し、速やかに硬化するため成形が容易であり、また硬化反応が付加反応であるため
副反応生成物がなく、ボイドのない成形体が容易に得られる。
これらの中で芳香族ビスマレイミドと芳香族ジアミンのモノマーまたはプレポリマーとを利用するポリアミノビスマレイミド
樹脂はよく知られており、熱硬化性ポリイミド樹脂として最も一般的である。
しかし、このような熱硬化性ポリイミド樹脂は架橋密度が高くなることから脆くなり、耐衝撃性および可とう性に劣るという
問題点がある。
4−3.マレイミド
無水マレイン酸とジアミン→アミド酸→脱水閉環反応
N−メチルマレイミドは無水マレイン酸とメチルアミン
無水マレイン酸

マレイミド

N―フェニルマレイミド

マレイミド系共重合体は高い耐熱性を有し、N−芳香族マレイミドとメタクリル酸メチルやスチレンなどの共重合体に利用。
N−芳香族マレイミドが多くなると耐熱性は向上するが脆くなり成形性も悪くなる。
フェニルマレイミドとスチレン

マレイミド・オレフィン共重合体からなるフィルムは、透明性、耐熱性等が優れる。
イソブテンなどのオレフィンとN−メチルマレイミド

などのマレイミド。
4−4.ビスマレイミドBMI
ビスマレイミドはマレイミド基を2つもつ(ジアミンと無水マレイン酸を反応させてビスマレアミド酸を得、これを脱水閉環する)
4−5.ポリアミノビスマレイミド樹脂
ビスマレイミドとジアミン(ポリマレイミドとポリアミン)との反応による。
耐熱性は非常に高いが、耐衝撃性が小さく、炭素繊維やガラス繊維を加えて用いる。
4−6.ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジン)
ビスマレイミドとトリアジンを架橋結合した共重合体。
ビスマレイミドとジイソシアネート化合物から生成。
4−7.反応性多重結合末端化合物(付加硬化型)
・ナジック酸無水物末端(ナジイミド) PMR15

ナジック酸無水物

反応がナジック酸の開環反応のため反応に伴う揮発成分が発生しない。
・アセチレン末端 PETI ―C≡CR
4−8.ナジイミド
ナジック酸無水物とアミン類より得られ、ノルボルネン環をもつ。
耐熱性の高い付加型ポリイミド樹脂原料。
融点が高く、溶媒に対する溶解性も加工性もよくない。
ナジイミド

アリルナジイミド
・アルケニル置換ナジイミド
アリルナジイミドのようなアルケニル置換ナジイミド。
アリル基を導入することによって原料イミドの融点が下がり、溶媒に対する溶解性が増加し、硬化温度をある程度
下げることができるとされる。
・重合性モノマ反応体(PMR)
従来のポリイミドがアミド酸プレポリマを高沸点溶媒に溶解するのに対しPMR型ポリイミドは芳香族ジアミンと
ナジック酸無水物および芳香族二無水物をベースとするエステルとの重合性モノマ混合物を低沸点溶媒に溶解させる。
縮合重合型ポリイミド樹脂は、重合度が大きくなると有機溶剤に溶けにくくなるため、脱水開環前のアミド酸プレポリマーの
状態で、高沸点溶媒に溶解させる。
この場合、高沸点溶媒が成形物中に残存して、ボイドが発生するといった問題点があり、また、硬化物が硬すぎて靱性に
問題があった。
付加重合ポリイミド樹脂も、縮合重合型ポリイミド樹脂同様、高沸点溶媒にしか溶解せず、ポリイミド樹脂の溶解性を
向上させる研究が進められ、PMR型ポリイミド樹脂が開発された。
4−9.ビスマレイミドとアルケニルフェノール
ジフェニルメタンビスマレイミドとジアリルビスフェノールA
ジフェニルメタンビスマレイミド

ジアリルビスフェノールA
4−10.脂環式ポリイミド
脂環式テトラカルボン酸二無水物とジアミン、脂環式ジアミンを利用した全脂環式ポリイミドはその強い反応性の
ため合成は困難。ジアミンのかわりにジイソシアネートを使用しポリアミド酸を形成しないでポリイミドを合成する方法もある。
脂環式テトラカルボン酸二無水物

1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
脂環式ポリイミド
耐熱性は劣るものの、着色性がない、溶剤溶解性がある、誘電率が低いなどの点で芳香族ポリイミドよりも優れる。
低誘電率化にはポリイミド構造中へのフッ素基の導入あるいは芳香族単位を脂環族単位に置き換えてπ電子を減少する
ことにより、分子内共役および電荷移動錯体形成を妨害することが有効である。
*透明ポリイミド
全芳香族ポリイミドは芳香族基により紫外から可視域に電子吸収があり透明性にかける。そこでポリイミドの透明化には
酸二無水物あるいはジアミンを脂肪族または脂環族に置き換えることが行われる。
ブタンテトラカルボン酸

脂肪族は耐熱性が低下する。
代表的な脂環族テトラカルボン酸(二無水物)は
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸

酸二無水物

1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物

そのほか
ビシクロ[2.2.2]オクタンテトラカルボン酸二無水物

スピロ化合物、アダマンタン誘導体なども。

脂環族アミンとしては
4,4−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン
1,4−ジアミノシクロヘキサン

イソフォ(ホ)ロンジアミン

などがある。
芳香族ポリイミドで透明なものとしては
ビフェニル・テトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’−)

あるいはオキシジフタル酸二無水物(3,3’,4,4’−)

などと
4,4'-オキシジアニリン(4,4−ジアミノジフェニルエーテル)

などとからなる芳香族ポリイミド。
4−11.芳香族ポリカルボジイミド樹脂

ジイソシアネ−トの脱二酸化炭素を伴う縮合反応で合成。
芳香族ポリカルボジイミド樹脂は、耐熱性、耐薬品性は高いが、各種溶媒に溶け難く、かつ熱流動性が悪く、成形加工が困難。
ポリカルボジイミド樹脂は−N=C=N−R−の繰り返し単位を有し耐熱性等に優れるところから、成形材料、樹脂の改質剤や
接着剤等にカルボジイミド基の反応性が利用され、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素基を持つ化合物と高い反応性を有する。
R−COOH + −N=C=N− → −NH−C(O−CO−R)=N−
芳香族ポリカルボジイミド樹脂はまた高屈折率を有し、光学材料として利用される、なかでもナフタレン基を含有する芳香族
ポリカルボジイミド樹脂が、高い屈折率を有し、しかも熱安定性・加工性、成形性に優れる。
4−12.熱可塑性ポリイミドTPI →熱可塑性樹脂
ポリイミド分子の剛直性が増すと、ポリイミドの分子量が高い場合、溶剤溶解性が不十分になる、そこで自由回転が
可能な−CO−、−O−、−CH
2 −、−C(CH
3 )
2 −などの基で芳香環が相互に連結された柔軟性のあるベンゾ
フェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸化合物およびジアミンを用いる。
4−13.ポリエーテルイミド →熱可塑性樹脂
芳香族ビスエーテル(−O−、−O−R−O−)とジアミン。
熱可塑性ポリイミド樹脂としては、ビスフェノール骨格を導入したポリエーテルイミドが射出成形も可能なポリイミド樹脂
として利用されている。
4−14.含フッ素ポリイミド
ベンゼン環をヘキサフルオロイソプロピリデン基ーC(CF
3)
2ーで結合する酸無水物6FDAから得られるポリイミド。
透明で溶媒に溶ける。
6FDA
4−15.溶剤可溶型(ワニス)ポリイミド
(全芳香族)ポリイミドはほとんどの溶剤に溶けないため、コーティング材料、フィルム等の用途に使用する場合、前駆体
であるポリアミド酸(溶剤可溶)を高温(300℃程度)下で処理する加工法を必要とし使用上の制約が多かった。
そこで溶剤可溶型(ワニス)ポリイミドの開発研究がなされている。
溶剤可溶型ポリイミドはγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの高沸点溶剤
(沸点200℃以上)にしか溶けにくく、
・溶媒の沸点が高く、キュア温度が高い、溶媒を除去しきれないことに起因する欠陥が発生しやすい。
・これらの非水溶媒を使用したポリイミド ワニスは相対湿度が50%を超える環境で使用すると、溶媒の吸湿により膜質、ワニス
劣化し、得られる膜の表面が白化なども発生。
・溶剤への溶解度が小さいため固形量が30%程度で膜厚も10μm程度が限度。
・柔軟性が向上するが耐熱性が低下。
などといった欠点がある。
溶剤可溶化には
・脂肪族、脂環式の導入
脂環式ポリイミドは、着色性がない、誘電率が低いなどの利点がある。
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物、
1,2,4,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸
二無水物などの脂環族テトラカルボン酸二無水物など。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いて得られたポリイミド の耐熱性は低くく、一方、脂環族テトラカルボン酸二無水物を
用いると脂肪族のものに比べて耐熱性は向上するが可とう性が低い。
・シロキサン構造の導入
ジアミン成分としてポリシロキサンジアミンを原料、溶解性と接着性が改良、柔軟性の向上や低吸湿率化効果があるが、
高温下で、多量のシロキサン系のアウトガスが発生する等の問題あり。

ポリシロキサンジアミン
・屈曲性結合基の導入あるいは共重合、芳香族系の原料よりなるハードセグメントの一部に、ソフトセグメントを導入
アルキル基(脂肪族)、ポリオキシアルキレン構造(ポリオキシアルキレンジアミン)、スルホン基、エーテル(オキシジフタル酸
無水物)、ケトン(ベンゾフェノン)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などの導入。
ガラス転移点が下がりポリイミド 本来の特徴である耐熱性が失われ、熱可塑性ポリイミド となる。
・嵩高い構造を導入
フルオレン骨格を有するジアミン、非対称ビフェニルテトラカルボン酸二無水物導入。
・フッ素等の置換基を導入
5.エポキシ樹脂
5−1.エポキシ樹脂
硬化時の体積収縮が少ない、硬化中に放出される揮発分がない、溶剤その他の薬品に対して優秀な耐性、
優秀な接着性。
1分子中に2個以上のエポキシ基(オキシラン環)を有する化合物(多価エポキシ化合物)を重合した樹脂を総称して
エポキシ樹脂という。
アミン、酸無水物などを硬化剤として用いると、エポキシ基または水酸基と反応して分子間架橋するので、硬化剤を
併用したエポキシ樹脂は熱硬化性樹脂となる。
硬化反応が開環反応で収縮が小さい、主鎖のエーテル結合が耐薬品と可とう性、親水基と疎水基があり各種物質
との接着性良好。
エポキシ樹脂には、様々な化学構造をもつものがあるが、ビスフェノール系のエポキシ樹脂が最も一般的である。
ポリヒドロキシ化合物とエピハロヒドリンとから得られグリシジルエーテル系、ポリカルボン酸化合物とエピハロヒドリン
とから得られるグリシジルエステル系、アミン化合物とエピハロヒドリンとから得られるグリシジルアミン系、炭素―炭素
二重結合を酸化することによりエポキシ基を導入したオレフィン酸化(脂環式)系などのタイプがありグリシジルエーテル
タイプが主。
エポキシ樹脂で溶剤に溶解しやすいのは脂肪族(アルキル基)やエーテル結合をもつもの、溶解しにくいのはビスフェノール。
グリシジルタイプはエピクロルヒドリンと活性水素化合物から得られる。
エポキシ樹脂は両末端にエポキシ基(3員環エーテル)をもつ。
グリシジルエーテル
グリシジルエーテルタイプには
・2官能繰り返し型(BPA型液状)

ビスフェノール、スチルベン、ビフェニルなどの2官能フェノール化合物を原料。
・多官能繰り返し型(クレゾールノボラック(ECN))

ポリフェノール、フェノールノボラックなどの多官能フェノール化合物、分子内に複数のエポキシを有する。
・多官能単量体型

ジシクロペンタジエン/フェノール重付加物
プレポリマーをエポキシ基でグラフト重合させる。
代表的なプレポリマーはビスフェノールAとエピクロルヒドリンC
3H
5ClOの共重合体
ビスフェノールA

エピクロルヒドリン

プレポリマーとポリアミンや酸無水物等の硬化剤により反応を行わせる。
グリシジルエステル型
グリシジルアミン型
脂環式エポキシ

耐熱性、透明性、誘電性に優れる。
エポキシ基はカルボキシル基、フェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などと反応する。
硬化剤
アミン(脂肪族、脂環族、芳香族)、変性アミン(アミンダクト:エポキシ樹脂と過剰のアミンで残留アミノ基の
活性水素をもつ、ケチミンR’RC=N−(ケトイミン、脂肪族アミンとケトンから、水分でアミンを生じる)、ポリアミドアミン
(反応性の1級及び2級アミンをもつ)、イミダゾール、ポリメルカプタン、酸無水物など。
潜在性硬化剤(室温で安定、加熱で反応性を持つ)
ルイス酸とアミンの錯体(3フッ化ホウ素BF3−アミン錯体)、ジシアンジアミドH
2N-C(=NH)-NH-CN、
有機酸ヒドラジドH
2NHN-CO-R-CO-NHNH
2(カルボン酸エステルとヒドラジド)など。
フェノール性水酸基との反応

アミンとの反応
7−2.フェノキシ樹脂
フェノキシ樹脂はビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される高分子量ポリヒドロキシポリエーテル(熱可塑性樹脂)。
線状高分子であり、強靭で柔軟性がある。
OH基を含有しているので、架橋することにより熱硬化性樹脂。
フェノキシ樹脂
5−3.ビニルエステル樹脂(変性エポキシ、エポキシアクリレート樹脂)
エポキシ基をもつエポキシ樹脂にアクリル酸、メタクリル酸(不飽和一塩基性酸)化合物を反応させ、エポキシ基の部分
をアクリル化(エステル結合を形成)。
6.オキセタン樹脂
オキセタン:4員環環状エーテル、エポキシより1つCが多い
光カチオン硬化性、開環重合
塗料、接着剤、各種コーティング剤
オキセタンアルコール
7.ポリエステル
ポリエステル:多塩基酸(ポリカルボン酸、一般にジカルボン酸)と多価アルコール(ジオール)との重縮合により
得られ、エステル結合を主鎖にもつ
R−COO−R‘ エステル結合
多価カルボン酸としてはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸のような芳香族多価カルボン酸とコハク酸、アジピン酸
のような脂肪族飽和多価カルボン酸とグリコール類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような多価
アルコールが用いられる。
フタル酸とグリセリンを主原料とする熱硬化性のアルキド樹脂、ジカルボン酸とグリコールを主原料とする熱可塑性
の飽和ポリエステル、マレイン酸とグリコールを主原料とし、得られた不飽和基をもつポリエステルをスチレンなどの
ビニル系化合物で架橋反応させる熱硬化性の不飽和ポリエステル樹脂がある。
7−1.アルキド樹脂
多塩基酸と多価アルコールとの縮合によって得られる樹脂をアルキッド樹脂と言い、酸基とアルコール基とが反応
してエステル化(酸とアルコールから水が取れて出来る化合物)することにより縮合。
脂肪油や脂肪酸で変性、塗料などに利用。
7−2.フタル酸樹脂
多塩基酸として無水フタル酸を用いた樹脂がフタル酸樹脂。多価アルコールとしては、グリセリンが多く使われる。
グリ(セリン)とフタル(酸)から出来るので、グリプタル樹脂ともいう。
無水フタル酸

グリセリン
7−3.熱可塑性の飽和ポリエステル →熱可塑性樹脂
PET、PBT、PEN、PBN、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)などがありテレフタル酸(芳香族ジカルボン酸)、
2,6−ナフタレンジカルボン酸とジオールから生成。
テレフタル酸
7−4.不飽和ポリエステル樹脂
不飽和脂肪酸(フマル酸,無水マレイン酸など)と2価アルコール(エチレングリコールなど)との不飽和ポリエステル
の主鎖中の2重結合にスチレンなど(一般にエチレン性不飽和結合)を共重合。
無水マレイン酸、フマル酸などとグリコール類を反応させて合成したポリエステルを、スチレンなどの付加重合性モノマー
に溶解して硬化。
無水マレイン酸

HOOC−CH=HC−COOH フマル酸
HO−CH
2−CH
2−OH エチレングリコール
エチレン性不飽和結合をもつものとしてスチレン系(ビニルベンゼン系)、アクリル系、マレエート系、酢酸ビニルなど。
硬化剤としては有機過酸化物≡C−O−O−C≡(過酸化ベンゾイルやメチルエチルケトンパーオキサイドなど)。
*熱硬化性粉体塗料
有機溶剤や水などの溶媒を用いない粉体塗料を使用する静電塗装法が注目されている。
利用されるのは熱硬化性樹脂ではエポキシ系、アクリル系、ポリエステル系で特にポリエステル系。
カルボキシル基あるいは水酸基含有ポリエステル樹脂と硬化剤。
カルボキシル基と反応する硬化剤:グリシジル基(エポキシ基)、水酸基、アミノ基を有する化合物など、なかでも
従来はトリグリシジルイソシアヌレート系硬化剤、最近低温焼き付けが可能で、焼き付け時に有機系揮発分が全くない
β−ヒドロキシアルキルアミド(プリミド)(HO-CH
2-CH
2)
2N-CO-(CH
2)
4-CO-N(CH
2-CH
2-OH)
2に注目。
水酸基と反応性を有する硬化剤:ポリイソシアネート化合物、アミノ化合物、多価カルボキシル基含有化合物。
特にブロック化ポリイソシアネート化合物たとえばラクタム、オキシムなどでブロック化、分子内にウレトジオン結合を
有するセルフブロックタイプの化合物。

ウレトジオン基:イソシアネート基2個より形成
ヘキサアルコキシメチルメラミンあるいはテトラアルコキシメチルグリコールウリル類。
テトラメトキシメチルグリコールウリル
7−5.マレイン酸樹脂
無水マレイン酸とロジンの付加物と多価アルコールから得られるポリエステル樹脂。
8.アリル樹脂
アリルアルコールCH
2=CHCH
2OHと2塩基酸(無水フタル酸等)の反応によるようなアリルアルコールの誘導体
(主としてエステル、ジアリルフタレートなど)から得られる樹脂。熱硬化性エステル。
アリル基 −CH
2CH=CH
2
金属に対する接着性劣る、靭性劣る。
耐湿性、寸法安定性に優れる。
レンズ用。
(*allylアリル基とarylアリール基(芳香族)の混乱)
・ジアリルフタレート樹脂
アリルアルコールと無水フタル酸(アリルクロライドとフタル酸ソーダ)によるジアリルフタレートを主成分。
・ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)
ジエチレングリコールビスアリルカーボネートを主成分。
9.フェノール樹脂(ベークライト、石炭酸樹脂)
フェノールC
6H
5OHとホルムアルデヒドCH
2=O
一般にフェノール類(OH基をもつ芳香族)とアルデヒド類RCH=O
フェノールおよびその誘導体とアルデヒド(主としてホルムアルデヒド)の縮合によってえられる熱硬化性樹脂の
総称であるが、キシレノール−ホルムアルデヒド(キシレノール樹脂)、クレゾール−ホルムアルデヒド(クレゾール樹脂)、
レゾルシン−ホルムアルデヒド(レゾルシノール樹脂)の各樹脂がある。
・ノボラック樹脂とレゾール樹脂
フェノールでは初期反応で使用する触媒が酸性物質の場合とアルカリ性物質の場合では、反応の進行が相違し、
前者の場合、可溶可融性のノボラック形樹脂を、後者の場合、加熱または酸によって硬化する性質をもつレゾール
形樹脂(メチロール基を多数もつ)を生成する。
ノボラック形樹脂は硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンなどを併用して、主として成形材料および結合剤などに
使用し、レゾール形樹脂は主としてそのまま積層品、接着剤、塗料などに使用。
ノボラック(酸触媒):鎖状ポリマー、固体。熱可塑樹脂、硬化剤で熱硬化。
レゾール(アルカリ触媒):2量体、未反応のメチロール基が多い、液体。熱硬化樹脂
ノボラック

レゾール

m=1〜2
レゾルシノール(レゾルシン)樹脂はゴム、繊維に対する接着性に優れる。
・DFK樹脂
フェノール、アルデヒドとウロン系化合物(尿素とアルデヒドから合成)から得られる。

ウロン系化合物
ウロン系化合物は加熱によりフェノール・アルデヒド縮合物に硬化剤として働く。
他のアルキロール基を有するウレイン、エチレン尿素、プロピレン尿素、トリアゾン系等の環状化合物またはメチロール尿素、
尿素ホルムアルデヒド樹脂、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂等よりも反応性が高い。
10.ベンゾオキサジン樹脂
ベンゾオキサジン樹脂は、フェノール性水酸基を有する化合物とアミン類とホルムアルデヒドから合成。
ベンゾオキサジン環
ベンゾオキサジンポリマー
ベンゾオキサジンモノマーのオキサジン環の開環重合で、揮発物を発生せずにフェノール核間にジメチレンアミン結合
を有するフェノール樹脂に似た構造を有する熱硬化性樹脂となり耐熱性、難燃性、低誘電率、低吸水率、低熱膨張性、
寸法安定性、低硬化収縮等優れた性能を有する。
封止材、含浸、接着剤、塗料、コーティング材、FRPおよび成形材料等に用いられる。
11.キシレン樹脂
キシレン:ベンゼンの水素のうち2つをメチル基で置換。

主に各種樹脂の改質用。
12.ケトン樹脂(ケトン・ホルムアルデヒド樹脂)
アルデヒドとケトンをアルカリ触媒下で反応。
C
6H
10Oシクロヘキサノン

アセトフェノン

シクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノンなどをアルカリ
触媒でとホルムアルデヒドとの付加縮合、アルキロール化を経る。
ラッカー、ペイントに使用される。
13.フラン樹脂
フルフリルアルコールあるいはフルフリルアルコールとフルフラールやアルデヒドとの縮重合。
フルフリルアルコール

縮重合物

フルフラールはフルフリルアルコールのアルデヒド(−CH
2OH→―CHO)

鋳型の粘結剤として使用。
フラン造型法は、砂にフラン樹脂と硬化剤(芳香族スルホン酸)の二種類の液体を混合したものを模型の中に充填し、
常温で硬化させるものである。
フラン樹脂は酸により硬化するため、硬化剤としては種々の酸性物質を用いることができる。
フラン樹脂としては単純なフルフリルアルコールあるいはフルフリルアルコールとアルデヒドの重合物の他、フェノール
や尿素により変性したものがある。
ガラス状カーボンの原料としても利用。
14.COPNA樹脂(熱硬化性の縮合多環多核芳香族樹脂)
ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ピレン、フルオレンなどの縮合多環芳香族化合物と、1,4一ベンゼンジメタノール
C
6H
3(CH
2OH)
2のような芳香環に結合した2個のヒドロキシメチル基HOCH
2-またはハロメチル基-CH
2Xを有する
芳香族化合物からなる架橋剤を、酸触媒の存在下に加熱反応させたナフタレン環が芳香環を介してメチレン結合により
結合した基本構造を有する。
ポリイミドに匹敵するような非常に優れた耐熱性を示す。
原料物質のナフタレンと架橋剤のパラキシリレングリコールとを、β−ナフタレンスルホン酸触媒で反応させたSKレジン。
ガラス状炭素の原料としても利用。
15.ケイ素樹脂 (シリコン樹脂、シリコーン樹脂)
シロキサン≡Si-O-Si≡を骨格
シロキサン結合を骨格に有する重合体がポリシロキサン、3次元の網状構造をもったものをケイ素樹脂。
一般的にはクロロシラン(RSiX
3、R
2SiX
2、R
3SiX等)、アルコキシシラン(ケイ酸エステル)R
1Si(OR
2)
3等を原料
としその組み合わせでオイル、鎖状ポリマー、3次元・網状構造のケイ素樹脂が得られる。
原料の官能基により1官能基型(M)、2官能基型(D)、3官能基型(T)、4官能基型(Q)と称す。
ポリジメチルシロキサン(PDMS)

シリコーンオイル
ジメチルシリコーンオイル

シリコーンオイルは直鎖状でメチル基がフェニル基、水素のものや側鎖、末端が種々に変性(アルキル基、反応基、
非反応基)されたものがある。
・硬化型シリコーン樹脂
硬化型には縮合反応硬化型(室温硬化)と付加反応硬化型(加熱硬化)がある。
付加反応硬化は白金触媒で≡SiHと不飽和結合の付加反応による。
(ハイドロジェンポリシロキサン(≡SiHを含む)とビニル基含有ポリシロキサン)
≡SiH+CH
2=CHSi≡ →≡SiCH
2CH
2Si≡
縮合硬化型の代表的なものはアルコキシシランの錫触媒下での水分による加水分解を利用した脱アルコール反応。
2≡SiOR+H
2O→≡SiOSi≡+2ROH)
そのほか硬化時に副生する化合物により、オキシム型、酢酸型、アミド型、アセトン型等がある。
・脱酢酸型(アセトキシシラン)
2≡SiO―CO―R+H
2O→≡SiOSi≡+2RCOOH
・脱オキシム型(ケトオキシムシラン)
2≡SiON=CR
2+H
2O→≡SiOSi≡+2R
2C=NOH
・UV硬化型
カチオン型 エポキシ基などを導入
ラジカル型
アクリロイル基CH
2=CHCOO―、メタクリロイル基CH
2=CCH
3COO―など
変性型も多くアルキド・エポキシ・フェノール・アクリル・メラミン樹脂等との変性シリコン樹脂がある。
アルコキシル基≡Si−ORは湿気(水分)により加水分解し架橋≡Si−O−Si≡するので湿気硬化の架橋に利用。
16.ジシクロペンタジエン樹脂(ポリジシクロペンタジエン)
ジシクロペンタジエンを原料とするオレフィン系架橋タイプ熱硬化性樹脂。
反応射出成形(RIM)方式により成型。
開環重合。

ジシクロペンタジエン
ペンタム(日本ゼオン)、メトン(帝人)など。
17.BCB (ベンゾシクロブテン)樹脂(CYCLOTENE樹脂)
ビスベンゾシクロブテンを重合。
ビスベンゾシクロブテン

重合に反応性の大きい極性基を利用しない(含まない)ので誘電特性に優れるが接着性に劣る。
再配線用ポジ型感光性樹脂、低応力、低誘電率、低吸水率等の特性を有する絶縁膜。
ビスベンゾシクロブテンとしてはジビニルシロキサンビスベンゾシクロブテンDVS−BCB C
24H
3OOSi
2
が著名。
DVS−BCB

4員環構造の部分が熱で開環。
18.エピスルフィド樹脂
熱硬化樹脂。
高屈折率プラスチックを得るためSの多い化合物が利用される。
その代表的なものがエピスルフィド化合物である。
エピスルフィド基(チイラン基)あるいはエピチオ基

3員環でエポキシのOがSになった形
エピスルフィド化合物は両端にエピスルフィド基をもつもので、更にスルフィド結合−S―、ジスルフィド結合―S−S―
をも含むものが好まれる。
ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド
19.エン−チオール樹脂
ポリチオールとポリエン
R(―SH)n+R(CH
2=CH
2)n
ポリエンとしては末端に反応性不飽和結合を有するビニル化合物(ビニルエーテルなど)、アリル化合物、アクリル化合物、
メタクリル化合物、マレイミドなど。たとえばトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、
マレイン酸ジアリルCH
2=CHCH
2OCOCH=CHCOOCH
2CH=CH
2など。
ポリチオールとしてはメルカプトンカルボン酸と多価アルコールのエステル類、脂肪族・芳香族ポリチオール。
メルカプトンカルボン酸としてはチオグリコール酸(メルカプト酢酸)HSCH
2COOHなど。
多価アルコール

ペンタエリスリトール C
2H
5C(CH
2OH)
3トリメチロールプロパン
ソルビトール

メルカプトプロピオン酸とペンタエリスリトールのエステル
脂肪族ポリチオール ジチオグリコール(1,2−エタンジチオール)HSCH
2CH
2SH
芳香族ポリチオール トルエンジチオール、キシレンジチオール
ラジカル重合、ベンゾフェノン等の水素引き抜き開始剤を使用。酸素による反応阻害を受けない、硬化収縮小さい。
チオールの臭気が課題。
光硬化樹脂、コーティング。デンカ・ハードロックOP。
20.ポリアゾメチン樹脂
アゾメチン結合 −CH=N−
ジアミンと芳香族ジアルデヒドから合成。
H
2N−Ar−NH
2+OHC−Ar−CHO → =N−Ar−CH=N−Ar−CH=
熱硬化性、難溶で成形性が悪い。
耐熱性、高強度、電導性。
21.ポリビニルベンジルエーテル化合物
ポリフェノールとビニルベンジルハライドを、アルカリ金属水酸化物の存在下で反応。
ビニル基による硬化反応のため、誘電特性が優れている。
ハロゲノメチルスチレン

ポリフェノール
ビニルベンジルエーテル化合物
一般に分子中に芳香環構造や脂環構造を有しアルケニル基(不飽和二重結合を一個もつ)により重合体は耐熱性や
誘電特性、吸湿性に優れ電子部品の絶縁材料として有用だが分子構造が剛直で脆いという欠点がある。
・ビニルベンジル化合物
ビニルベンジル基(スチレン)

ビニルベンジル化合物は、極性の極めて小さい構造を有していることから、重合体は、低誘電率で低誘電損失。
22.アセナフチレン
低誘電率性、低吸湿性、低複屈折性、耐熱性に優れる。
アセナフチレン
・多環芳香族ビニル化合物
多環芳香族ビニル化合物は、各種重合体に対して高耐熱、低誘電率、低誘電損失、高屈性率、難燃、及び低吸湿
などの性質付与が可能。
ジビニルビフェニル

ビニルナフタレン

ジビニルナフタレン
〔U〕熱可塑性樹脂
三次元架橋構造をもたず加熱により溶融し、流動性をもつため成形・加工性がよい。
高分子鎖の配向性から、結晶性樹脂・非結晶性樹脂に2分類、耐熱性から汎用樹脂、汎用エンジニアリング樹脂、
スーパーエンジニアリング樹脂に分類される。
融点、ガラス転移温度を持つ。
23.オレフィン樹脂 (ポリエチレンH
2C=CH
2、ポリプロピレンH
2C=CHCH
3)
炭素二重結合を1つ以上持つ不飽和炭化水素はオレフィン炭化水素。
PE PP ポリブテン ポリメチルペンテン
23−1.ポリエチレンPE
エチレンH
2C=CH
2
分枝の少ないものが高密度ポリエチレン、分枝の多いものが低密度ポリエチレン、分枝の少ない直鎖状低密度
ポリエチレンもある。
・ 塩素化ポリエチレン(CPE)
耐候性、耐衝撃性、難燃性、耐薬品性などに優れているため、PVC・PE・ABSなどの改質剤に利用。
・ 架橋ポリエチレン
鎖状構造ポリエチレンポリマーを部分的に架橋させ立体の網目構造にした超高分子量ポリエチレン。
耐熱性が向上する。
架橋は放射線照射やシラン基の導入による、シラン基では水分で架橋される。
・ EVA樹脂 エチレン・酢酸ビニル・コポリマー(共重合体)
・ EEA樹脂 エチレン・エチルアクリレート共重合体
エチレン−アクリレート共重体はメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートなどがある。
・ EVOH樹脂 エチレン・ビニルアルコール共重合体
ガス遮蔽性が良い。
・ アイオノマー樹脂
エチレンを主成分とするコポリマー連鎖間に、金属イオン結合を有する共重合樹脂。
23−2.ポリプロピレンPP
プロピレン H
2C=CH−CH
3
23−3.ポリブテンー1
ナフサの分解物であるブテンー1 H
2C=CHCH
2CH
3をチーグラ系触媒により重合。
分子量が100万〜300万と非常に高いことと、分子構造の特異性から、他の熱可塑性樹脂にない、抜群のクリープ特性、
耐ストレスクラック性、耐衝撃性を持っている。
HDPE、PPに比較すると弾性率が小さく柔軟。
フィラーを高濃度に充填することができる。
<ブタジエン> ゴム CH
2=CH=CH=CH
2
<ポリイソブチレン> ゴム
23−4.ポリメチルペンテンPMPC6
4-メチルペンテン-1CH
2=CH−CH
2−CH
2−2(CH
3)を主原料としてチーグラ触媒を用いて重合された樹脂。
ポリメチルペンテンは、ポリエチレンやポリプロピレンに比べ、耐熱性、透明性、離型性、ガス透過性に優れ、射出成形、
および押出成形に向く。
24.ビニル樹脂
ビニル基に塩素や酸素など電気陰性原子団が置換した構造、付加反応等を受けやすい。
CH
2=CH
2 vinyl(ビニル)、CH
2=CHCH
2 allyl(アリル)
塩化ビニル CH2=CHCl や酢酸ビニル CH2=CH-OCOCH3
* エチレン CH
2=CH
2 →PE
CH
2=CHX
X:Cl、OCOCH3、CN(アクリルニトリル)、ベンゼン環(Ph:フェニル基→スチレン)
24−1.塩化ビニル
24−2.塩化ビニリデン
CH
2=C= ビニリデン CH
2=CCl
2 を塩化ビニリデン
24−3.酢酸ビニル
エチレンと酢酸より合成した酢酸ビニルをラジカル重合
24−4.アクリルニトリル
* アクリル繊維 ポリアクリルニトリルから、共重合もある。
アクリルニトリルCH
2=CHCN
25.ポリスチレン(スチロール樹脂)
芳香族炭化水素スチレンC
6H
5C
2H
3のラジカル重合。
ベンゼンとエチレンからエチルベンゼンを合成し、脱水素したものを重合。

スチロール樹脂は、無色透明で加工性も良いが、耐衝撃性と耐薬品性に欠点があり
アクリロニトリルを加えて耐薬品性、ゴム成分を加えて耐衝撃性を改善。
<芳香族ビニル>
芳香族ビニル化合物系重合体は形状安定性、剛性に優れた材料であるが、靭性が悪く、改善のため
スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体などのようにゴム相を分散させる。
ビニルベンゼン(スチレン)PhCH=CH
2
ジビニルベンゼン

ジビニルベンゼンは構造中に極性基を有しておらず、その硬化物が低誘電率、低誘電損失であり、また熱分解温度が
350℃以上と高いが揮発性、硬化物が脆いと云う欠点がある。
多官能ビニルベンジルエーテル化合物はエーテル結合を有するためジビニルベンゼンほどの低誘電損失はもっていない。
・ SPS(シンジオタックポリスチレン)
ベンゼン環が規則的に交互に配置、結晶性。乳白色、耐熱性、耐薬品性向上。
・ AS樹脂(SAN)
アクリロニトリル、スチレンのコポリマー(共重合体)。
・ SBC樹脂
スチレン・ブタジエンCH
2=CH−CH=CH
2共重合
・ ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)
アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合
・ ASA樹脂
アクリロニトリル、スチレン、アクリレート
・ AES
アクリロニトリル、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマ)、スチレン共重合
・ SAS
シリコーン・アクリルニトリル・スチレン共重合
・ ACS
アクリロニトル、塩素化ポリエチレン、スチレン共重合
・ SMA樹脂
スチレン・無水マレイン酸共重合
・ MS樹脂
メチルメタクリレート・スチレン、アクリル樹種代替透明樹脂。
・ MBS樹脂
メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン、アクリル樹脂代替透明樹脂
・ インデン・スチレン共重合体
インデン
透明・低誘電率
26.アクリル樹脂、メタクリル樹脂
アクリル基 CH
2=CH−CO− をもつ(メタクリル基CH
2=C(CH
3)−CO−)

のエステル。
アクリル樹脂には熱可塑性アクリル樹脂、熱硬化アクリル樹脂がある。
透明性が高く、耐候性良。有機ガラスともいう。
CH
2=CR−CO−O−でR=H:アクリロイル基、R=CH
3:メタクリロイル基
26−1.アクリルシラップ
ポリマーをラジカル重合性モノマーに溶解した水あめ状の重合性液状混合物をシラップといいポリマーとして
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーを用いるものは、いわゆるアクリルシラップと称し、耐候性や外観・表面光沢に優れ、
種々の成形品の材料やコーティング剤として多用。
アクリルシラップはポリマーで固体のポリメチルメタクリレートPMMAをモノマーのメチルメタクリレートMMAに溶解させて
得られるアクリルシラップを硬化剤、硬化促進剤で硬化。
PMMAは架橋には関与せず、MMAモノマーが鎖状ポリマーとなる熱可塑性樹脂であるため良好な耐候性と良好な
外観を有する成形品を得ることができるが耐熱性や耐薬品性が劣る。
そこで多官能重合性モノマーの添加、更に優れた耐熱性、耐摩耗性、耐溶剤性、高靭性を得るためポリマーを側鎖に
重合性二重結合を有するアクリル系ポリマー((メタ)アクリル系単量体と、アクリル酸のようなカルボキシル基を含有する
単量体とを部分重合させた後、不飽和エポキシ化合物を反応させる)のような架橋型とする。
26−2.2液型アクリル樹脂
二液型のアクリル樹脂は(メタ)アクリル系モノマー、触媒(有機過酸化物)、重合開始剤(還元剤)よりなり、二液主剤型
とプライマー型がある。
二液主剤型はA剤、B剤とも(メタ)アクリル 系モノマーを主成分として含有し、有機過酸化物と、還元剤を分離し、A剤に
有機過酸化物、B剤に重合開始剤を含む。
プライマー型は二液のうちの一方は(メタ)アクリル 系モノマーを含まず重合開始剤よりなる。
26−3.熱硬化アクリル樹脂
塗料などにいくつかのタイプがある。
水酸基、カルボキシル基、エポキシ基などの側鎖官能基を有するアクリル樹脂をアミノ樹脂で架橋。
グリシジル基含有アクリル共重合体を脂肪族二塩基酸(ドデカン二酸)で架橋。
水酸基含有アクリル共重合体をブロックイソシアネートあるいはメチロール化メラミンで架橋。
カルボキシル基含有アクリル共重合体をエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートあるいはβ−ヒドロキシアルキル
アミドで架橋。
アルコキシル基≡Si−ORにより湿気(水分)による架橋。
一般的な官能基の組み合わせとして
カルボキシル基とグリシジル基(エポキシ基)、水酸基、アミノ基、 オキサゾリン基

、 アジリジン基等。
水酸基と酸無水物、イソシアネート基等。
メルカプト基とグリシジル基(エポキシ基)、オキサゾリン基等
→ポリエステルの粉体塗装樹脂
*ビニルエステル樹脂(変性エポキシ、エポキシアクリレート樹脂)
エポキシ基をもつエポキシ樹脂にアクリル酸、メタクリル酸(不飽和一塩基性酸)化合物を反応させ、エポキシ基の部分
をアクリル化。
26−4.アクリル樹脂の耐熱化
環状構造の導入。スチレン類、環状イミド(マレイミド、グルタルイミド)、酸無水物(無水マレイン酸、グルタル酸無水物)、
環状エーテル、ラクトン類(環状エステルーO−CO−)。
*グルタルイミド樹脂
環状イミド構造。

グルタルイミド

アクリル樹脂とアミン等から。
透明性、耐熱性、剛性等に優れるが脆い。
*脂環式アクリレート
エステル部分に脂環式炭化水素基を有するメタクリル酸エステル。
アクリル系樹脂の欠点である耐熱性の向上。
ガラス転移温度が高く、硬化収縮率・吸湿率が小さい。
27.環状ポリオレフィン
環状オレフィンの単独重合は立体的に困難なのでαオレフィンとの付加重合COCか開環重合COPを行う。
シクロペンテン、2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、などの環状オレフィン系樹脂は炭素と水素のみからなるため、
極性がなく、低誘電率であるという特徴をもつが、接着性が劣り、融点も低い。
27−1.環状オレフィンの開環重合COP
シクロオレフィンをモノマーとする主鎖に脂環構造をもつ樹脂。
ジシクロペンタジエンDCP

を原料に シクロペンタン

を合成しオレフィン類と反応させモノマーの
ノルボルネンを合成し、開環重合する。

ボルナン

ポリマー主鎖に二重結合をもつと酸化劣化しやすく、着色・不溶化するので水素化。
結晶質 不透明

非晶質 透明 光学用

日本ゼオンZEONEX
→ノルボルネン樹脂
耐熱性、透明性に優れるが難溶性、成型加工が悪い、靭性が低い。
27−2.環状オレフィンとαオレフィンの付加重合 COC(コポリマー)
成形性の改善。
TOPAS ノルボルネンとエチレン

APEL 三井化学 エチレン・テトラシクロドデセン・コポリマー

テトラシクロドデセン
ARTON(JSR) DCPとメタクリル酸エステルを原料
1,3シクロヘキサジエン

とスチレン共重合体(水素化する)
28.フッ素樹脂(テフロン)
ポリテトラフルオロエチレンPTFE -(CF
2-CF
2)n-
エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマーETFE -(CF
2-CF
2)m-(CH
2-CH
2)n-
四フッ化エチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合PFA
ポリビニリデンフルオライドPVDF
三フッ化塩化エチレン樹脂PCTFE
・環状フッ素樹脂 テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソール共重合体
主鎖中に環状エーテル構造をもつパーフルオロ樹脂。
フッ素樹脂は一般的に不透明(結晶質の樹脂は結晶部と非結晶部で屈折率が異なり散乱を起こすため)であるが
サイトップ

非晶質、透明、溶剤に溶ける。低屈折率、低誘電率。
フッ素(C−F結合は分極率が小さい)の導入は屈折率の低下をもたらし、Sの導入は屈折率の上昇をもたらす。
29.ポリカーボネート
O−CO−Oの構造を有する化合物を一般的に、カーボネート化合物あるいは、炭酸エステルという。
カーボネート R−O−CO−O−R 環状カーボネート

ポリカーボネート(―R−O−CO−O−R−)n
一般のカーボネートは、ビスフェノールAとホスゲンCl-CO-Clから。

透明性が高い。
耐熱性の向上には、フタル酸と共重合しポリエステルカーボネート化あるいはメチル基のかわりにシクロヘキサン環導入。

あるいはアダマンタン骨格やフルオレン骨格の導入。

脂肪族ポリカーボネート
二酸化炭素とエポキシドから合成。

光弾性定数が小さい、耐熱性がないので脂環族ジオールを利用。
あるいは芳香族と脂肪族の共重合。
30. 熱可塑性ポリエステル
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオール。
脂肪族ジオールが長鎖になるほど軟らかくなる。
30−1.PET(ポリエチレンテレフタレート)
エチレングリコールとテレフタル酸を重縮合反応にすることによって得られる結晶性の熱可塑性ポリエステル。
30−2.PBT(ポリブチレンテレフタレート)
テレフタル酸と1,4−ブタンジオールから。
30−3.PEN(ポリエチレンナフタレート)
PEN樹脂は、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(NDC)とエチレングリコール(EG)を重縮合して合成される
熱可塑性ポリエステルである。
PETが,ベンゼン環が一つのテレフタル酸を使っているのに対して,ベンゼン環が二つ連結したナフタレン環の骨格を
持っているために,PETに比べて剛直性が高く機械的な特性や耐熱性に優れる。
30−4.PBN(ポリブチレンナフタレート)
2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル(NDC)と1,4−ブタンジオールから。
30−5.PCT(ポリシクロへキシレン・ジメチレンテレフタレート)
1,4−シクロへキサンジメタノールCHDM

とテレフタル酸を主成分とする。

ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレートは、PETに比べガラス転移温度、結晶溶融温度が高く、耐熱性に
優れた成形品が得られる。
30−6.PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)
1,3−プロパンジオール(PD)HO−CH
2−CH
2−CH
2−OHとテレフタル酸。
プロパンジオールはとうもろこしから製造できる。
30−7.ポリアリレートPAR(全芳香族ポリエステル)
二価フェノール(芳香族ジオール)と芳香族ジカルボン酸を原料とするポリエステル樹脂。
ビスフェノールAとフタル酸化合物を重縮合(クラレのベクトラン)
30−8.ヒドロキシ安息香酸ポリエステル
パラヒドロキシ安息香酸を主成分とした熱可塑性の液晶性芳香族ポリエステル樹脂。
ヒドロキシ安息香酸ポリエステルは最も高い耐熱性の部類に属するポリマー。
特徴としては、分子鎖が剛直で耐熱性が高い。
芳香環の比率を高めると高強度、高弾性化し融点も上がり不溶不融化。
融点を下げる試み、芳香族ヒドロキシカルボン酸類、芳香族ジオール類および芳香族ジカルボン酸類を原料として重縮合。
・融点を下げる試み
30−9.透明ポリエステル
PETにフルオレン骨格を導入。(O-PET)
30−10.ポリエーテルエステル
-O-(-CH
2-CH
2-O-)-n-CO-R-CO-
短鎖グリコールと芳香族ジカルボン酸成分からなる結晶性ポリエステル成分(ハードセグメント、PET、PBT
など)とポリアルキレングリコール(長鎖グリコール、エーテル、ポリテトラメチレングリコールなど)と芳香族ジカルボン酸
からなる非結晶性ポリエステル成分から構成。
柔軟性に優れ熱可塑性で成型加工が容易。
30−11.耐熱性ポリエステル
・トリスー(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)含有ポリエステル
耐熱ポリエステルとしてはエチレングリコール、グリセリン、トリスー(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)
を使用。特にトリスー(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを含むものが高耐熱性。

トリスー(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
・ポリエステルイミド
トリカルボン酸無水物とジアミンと多価アルコール。

ポリエステルイミド樹脂はトリカルボン酸無水物(トりメリット酸無水物)とジアミン(芳香族アミン、4,4’−ジアミノ
ジフェニルメタン)を反応させてジイミドカルボン酸を作り、イミド結合を導入し、これに多価アルコール(グリセリン、THEIC)
を反応させることによりエステル結合を導入。
ベンゼントリカルボン酸 1,2,3−へミメリット酸、1,2,4−トリメリット酸

へミメリット酸

トりメリット酸無水物

4,4’−ジアミノジフェニルメタン
イミドジカルボン酸

あるいはテレフタル酸または低級アルキルエステル(テレフタル酸ジメチル)、イミド酸、多価アルコールとを反応。
芳香族ポリエステルイミドはサーモトロピック液晶。
・ポリエステルアミドイミド
トリカルボン酸二無水物、ジカルボン酸、ジアミン(あるいはジイソシアヌレート)および多価アルコール。
熱可塑性で耐熱性、溶剤溶解性に優れ比較的低い温度での加工が可能。
あるいはテトラカルボン酸二無水物(ビス・トリメリテート二無水物)とジアミンからポリイミド、ジカルボン酸と
ジアミンからポリアミド。

ポリイミド成分

ポリアミド成分
31.脂肪族ポリケトン樹脂
エチレン等のオレフィンと一酸化炭素を交互共重合させて得られる半結晶性樹脂。
強度と摺動性に優れる。
32.ポリエーテル樹脂
ポリエーテル:エーテル結合−O−(−SO
2−、−S−)を主鎖にもつ重合体。
POM、PPO(PPE)、PEK、PEEK、PPS、ポリサルホン、PES、PEIなど。
脂肪族ポリエーテル
POM
環状エーテル
フラン樹脂
三員環
エポキシド
チイラン
四員環
オキセタン樹脂
ポリアリールエーテル
PPE
ポリアリールケトン
PEK、PEEK・・・
ポリアリールスルホン
PEI
ポリアリルエーテルニトリル
*環状エーテル
三員環
オキシラン(エチレンオキサイド、エポキシエタン)

四員環
オキセタン(トリメチレンオキサイド、1,3−エポキシプロパン)

五員環
オキソラン(テトラヒドロフラン)

六員環
テトラヒドロピラン
32−1.ポリオキシメチレンPOM(ポリアセタール)
デュポン社のデルリン、ポリプラスチック社のジュラコン
オキシメチレン (−CH
2O−) 構造をもち、ホモポリマとコポリマの2種類がある。
ホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマー([−CH
2O−]n、パラホルムアルデヒド)と、〜10モル% のオキシエチレン単位
(−CH
2CH
2O−) を含むコポリマー ([−CH
2O−]n[−CH
2CH
2O−]m) の双方の製品がありコポリマーは
トリオキサン

を エチレンオキシド(オキシラン)

等と共重合したもの。
32−2.ホルマール樹脂
−R−O−CH
2−O− ポリアセタールである。
ビスフェノール類を塩基性化合物の存在下、塩化メチレンCH
2Cl
2と縮合反応させることによって芳香族ポリホルマールが
得られる。

芳香族ポリホルマールは透明の熱可塑性樹脂。
32−3.ポリビニルアセタール樹脂
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールを塩酸や硫酸のような酸触媒の存在下でアルデヒドと反応させて、
ポリビニルアルコールの水酸基の一部又は全部をアセタール化したもの、ホルムアルデヒドによる反応物はポリビニル
ホルマール樹脂(ビニロン)、ブチルアルデヒドとの反応物はポリビニルブチラール樹脂。
ポリビニルアルコール

ポリビニルアセタール樹脂の製造法としては、ポリ酢酸ビニルを酸によって加水分解する際にその初期段階でアルデヒドを加え、
加水分解とアセタール化を同時に進行させるという一段法とポリ酢酸ビニルの加水分解により生成するポリビニルアルコールを
一度分離したのちこれをアセタール化するという二段法等が挙げられる。
ポリビニルアセタール樹脂は、ビニルアセタール基を主体としビニルアルコール基や場合により酢酸ビニル基を有する。

接着剤、インク、塗料、コーティング、セラミック・バンダー、安全ガラスの中間膜、エナメル線用ワニス、多孔体、スポンジなど。
33.芳香族ポリエーテル樹脂
ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホンなどがある
33−1.ポリフェニレンオキシドPPO(ノリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテルPPE)
フェニレンオキシド−O−(C
6H
4)−
2,6ジメチル-1,4フェニレンオキシド

2,6ジメチルフェノール
フェノール(2,6ジメチルフェノール)を酸化重合した、フェニレンオキシドがベースになった熱可塑性樹脂。
2,6ジメチル-1,4フェニレンオキシドを重合したポリフェニレンエーテル(PPE)とポリスチレン(PS)のポリマアロイ
(変性PPE)である。
エーテル結合を持ち耐熱性が高く,優れた荷重たわみ温度を示す。
PSとのポリマアロイ化で成形性改善。
(ノリルNoryl樹脂はGEの登録商標)
*熱硬化性PPE
側鎖に不飽和結合(ビニル基、アリル基等たとえばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート)を入れる、
熱硬化性のモノマー(グリシジル、イソシアネート等)、ポリマー(エポキシ樹脂等)と共重合するなど。
トリアリルシアヌレート

耐熱性と誘電特性が両立する。
33−2.ポリアリールエーテルPAE
主鎖に芳香環とエーテル結合(−O−)とを有するもの、なかでもケトン(−CO−)をも有するポリエーテルケトン
が中心。耐熱性樹脂。
ポリアリールエーテル(ケトン)は、有機極性溶媒中、アルカリ金属化合物の存在下、ジハロゲノジフェニル
(ビスフェニル)化合物と二価フェノール化合物との重縮合反応、あるいは、二価フェノールのアルカリ金属二塩を
あらかじめ合成しておいてジハロゲノジフェニル化合物との重縮合反応によって得られる。
ジハロゲノジフェニル化合物
二価フェノール

スルホン酸基を導入することによって高分子電解質となり、例えば、イオン交換樹脂、イオン交換膜、燃料電池用
高分子電解質膜などの用途に用いられている。
ダウケミカル社のSiLKは層間絶縁膜用として有名。
33−3.ポリアリールケトンPAK
芳香環、エーテル結合及びケトン結合を含む熱可塑性樹脂。
ポリアリールエーテルケトンは、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテル
ケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)およびポリエーテルケトンエーテルケトンケトン
(PEKEKK)などの多数の近縁のポリマーを含んで成る。
・ ポリエーテルケトンPEK
・ ポリエーテルエーテルケトンPEEK
・ ポリエーテルケトンケトン PEKK
・ ポリ(アリル)エーテルニトリル(ポリシアノアリルエーテル)PEN
ジクロロベンゾニトリルとジフェノール(ビスフェノール、レゾルシン)から重合

熱可塑性樹脂では最高レベルの耐熱性、シアノ基によるガラスとの接着性
33−4.スルホン系樹脂
スルホンはスルホニル基−SO
2−をもつ化合物
スルフィド(チオエーテル)R−S−R’
・ ポリフェニレンスルフィドPPS
スルフィド R−S−R’
約280℃の融点を有する結晶性ポリマーで極めて高い耐熱性と剛性を有し、耐薬品性に優れた難燃性樹脂。
p−ジクロルベンゼンとNa
2Sなどの重縮合。
・ ポリスルフォン(ポリサルホン)PSU

ビスフェノールAのナトリウム塩と4,4-ジクロロジフェニルスルホンを重縮合させて得られる熱可塑性樹脂。
ジクロロジフェニルスルホン
・ ポリエーテルスルフォンPES

ジクロロジフェニルサルホンとビスフェノールSを原料として縮重合反応で合成。
耐熱性、耐溶剤性に優れる。
ビスフェノールS
・ ポリフェニルスルホン
33−5.ポリエーテルイミド
芳香族ビスエーテル(−O−、−O−R−O−)とジアミン。
熱可塑性ポリイミド樹脂としては、ビスフェノール骨格を導入したポリエーテルイミドが射出成形も可能なポリイミド
樹脂として利用されている。
可とう性に優れているが、耐熱性に劣る。
4.4'〔イソプロピリデンビス(P−フェニレンオキシ)〕ジフタル酸二無水物とpフェニレンジアミンC
6H
4(NH
2)
2との縮合
34.熱可塑性ポリイミドTPI
ポリイミド分子の剛直性が増すと、ポリイミドの分子量が高い場合、溶剤溶解性が不十分になる、そこで自由回転が
可能な−CO−、−O−、−CH
2 −、−C(CH
3 )
2 −などの基で芳香環が相互に連結された柔軟性のあるベンゾ
フェノンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸化合物およびジアミンを用いる。

ベンゾフェノン
35.ポリアミドイミドPAI 熱可塑
イミド結合 −CONRCO− アミド結合 ―NHCO―
ポリイミドは耐熱性がすぐれている反面、加工性が悪く高価格であるという欠点がある。この加工性を改良するため主鎖
にアミド結合を導入したのがポリアミドイミド。
トリカルボン酸とジアミンあるいはジイソシアネートから。
ポリイミドに次ぐ耐熱性。
無水トリメリット酸

とジイソシアネート(MDIなど)など。

この場合のジアミンはODA
・ポリエーテルアミドイミド
親水性のポリエーテルを導入。
ポリエーテルとしてはポリオキシアルキレングリコールHO-(R-O)n-H(あるいはポリエーテルジアミン)。
ハードセグメントとしてのポリアミドイミドとソフトセグメントのポリオキシアルキレングリコールよりなる。
ポリオキシアルキレングリコールとしてたとえばPEG HO-(CH
2CH
2O)n-H
36.ポリアミド
アミド結合 −CO−NH−
カルボン酸とアミン
合成ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の重縮合によってえられる(CORCONHR′NH)形と、ラクタムの開環重合
またはアミノカルボン酸の重縮合などでえられる(CORNH)形に大別され、直鎖脂肪族ポリアミドをナイロンPA、
芳香族ポリアミドには耐熱性高分子として使われるものが多い。
ラクタムの開環重合、又はω―アミノ酸の重縮合→ナイロン6等
ジアミンと二塩基酸の重縮合→ナイロン66等
芳香環を有するポリアミド
メタキシリレンジアミン(MXDA)とアジピン酸→ナイロンMXD6等
ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸(TPA)→ナイロン6T等
全芳香族系ポリアミド→ポリパラフェニレンテレフタルアミド等
共重合ナイロン(ナイロン6/66等)やハードセグメントとソフトセグメントを有したブロック共重合体(エラストマー)もある。
36−1.脂肪族骨格を含むポリアミド ナイロン(Nylon)
・環状ラクタム(-CO-NH-)の開環重合または、ω-アミノカルボン酸(H
2N−R−COOH)の重縮合
環状ラクタム
ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12 など
・ジアミン(H
2N-R-NH
2)とジカルボン酸(HOOC-R'-COOH)の重縮合
ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612など

アミド基を減らすと吸水性低下。
36−2.半芳香族ポリアミド系樹脂
脂肪族から耐熱性の向上。

アーレン テレフタル酸とヘキサメチレンジアミン
36−3.全芳香族ポリアミド系樹脂(アラミド樹脂)
アラミド繊維は、その分子骨格が芳香族(ベンゼン環)からなるポリアミド繊維で、ナイロン(脂肪族ポリアミド繊維)の一種。
アラミド繊維は、その分子骨格が全体に直線状のパラ型タイプと、ジグザグ状のメタ型タイプに大別。パラ系は高強度で
高弾性,低伸縮などの優れた特性を示すメタ系は耐熱性や難燃性に優れる。
36−4.ポリベンズアミド
剛直全芳香族ポリアミド、リオトロピック液晶。
ポリ−p−ベンズアミド

p−アミノ安息香酸
36−5.透明ポリアミド
・グリルアミドTR55(EMS-GRIVORY)
ナイロン12(12−アミノドデカン酸HOOC(CH
2)
11NH
2またはラウロラクタム(ラウリルタクラム)から得られるナイロン)を
ベースに脂肪族、脂環族、芳香族(イソフタル酸)ブロックをもつ非結晶性熱可塑性ポリアミドとされる。
・トロガミドCX
1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)HOOC(CH
2)
10COOHと4,4-ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンからなる
微結晶性ポリアミドとされる。
36−6 ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド
ナイロン構造のポリアミドへの柔軟性付与を目的とした脂肪族ポリエステル、ポリエーテルやポリエーテルエステル
の導入。エラストマー。
・ポリエステルアミド
ジカルボン酸、多価アルコール、ジアミニン(あるいは多価イソシアネート)から。
耐熱性、成形性。

アミノアルコールNH
2-R-OHやヒドロキシ酸OH-R-COOH類も利用。

4−ヒドロキシ安息香酸

p−アミノフェノール
芳香族よりなるものはサーモトロピック液晶。
・ポリエーテルアミド
ハードセグメント成分がアミド成分よりなり、ソフトセグメント成分がポリエーテルよりなる。
ポリアミドとポリエーテルジアミン(ポリオキシアルキレンジアミン)もしくはポリエーテルジオールから。
帯電防止性、耐熱性、成形性、柔軟性。
・ポリエーテルエステルアミド

アミド成分(アミノカルボン酸、ラクタム、およびジアミンとジカルボン酸の塩)とポリオキシアルキレン
グリコール(ポリエチレングリコールHO-(CH
2-CH
2-O)n-Hなど)およびジカルボン酸からなるポリエーテルエステル
成分から得られ分子中にアミド結合、エーテル結合、エステル結合をもつ。
ハードセグメントを構成するポリアミドとソフトセグメントを構成するポリエーテルエステル成分からなる。
熱可塑性樹脂用帯電防止剤。
ポリエーテルエステル部位が親水性、ポリアミド部位が疎水性(親水性)。
37.ポリベンズ(ゾ)アゾール(ポリベンザゾール)PBZ
ポリベンズアゾール→ポリベンゾオキサゾール及びポリベンゾチアゾール
ポリベンゾビスオキサゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾビスイミダゾールに代表されるポリベンザゾール類は、
高強度、高弾性率で耐熱性の高い繊維やフィルムに成形することができる
チアゾール環、オキサゾール環

アゾール環のS(O)がNH→イミダゾール
37−1.オキサジアゾール、チアジアゾール
PBZT ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール
PBO ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール
PBZT

PBO
ジアミノジチオール

とテレフタル酸
4,6−ジアミノレゾルシン

とテレフタル酸
37−2、ポリオキサジアゾール

ジカルボン酸とジヒドラジドH
2NHN-(O=)C-Ar-C(O)NHNH
2から。

ポリオキサジアゾールは高いガラス転移温度と熱安定性が期待されるが構造が剛直なため
一般に有機溶剤に溶けにくくフィルム化が困難。
37−3.ポリベンズ(ゾ)イミダゾールPBI

ポリベンゾイミダゾールは耐熱性、機械的強度、耐薬品・溶剤性、摺動特性、耐放射線性、難燃性などに
優れた特性を示す。
芳香族ジカルボン酸又はそのフェニルエステル化合物と芳香族テトラアミン化合物とを200〜300℃で溶融重縮合
を行わせ生成した固化反応生成物を粉砕して、固相状態で、高真空下に350〜400℃付近まで加熱し、更に
重縮合させる(固相重合法)。
フィルムまたは繊維の製造は極性・非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド)中に溶解することによって製造される。
イソフタル酸ジフェニルと3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニルから


ポリ−2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾール
37−4.ポリピリドビスイミダゾール PIPD(M5)
テトラアミノピリジンと2,5−ジヒドロキシテレフタル酸から
ピリドビスイミダゾール

テトラアミノピリジン

2,5−ジヒドロキシテレフタル酸

ポリ(2,6−ジイミダゾ(4,5−b4’,5’−e)ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン(PIPD)
(ジヒドロキシフェニレンピリドビスイミダゾール)液晶ポリマー。
37−5.オキサジノン環
チアゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環などと類似の機械的強度の優れた剛直ポリマーを、マトリックスポリマーに
分子レベルで分散させるポリマーブレンド系複合材に好適な芳香族高分子。
ポリビベンゾオキサジノン

→脱水閉環
38.キナゾリン等
38−1. ポリイミド−イソインドロキナゾリンジオン PIQ
ポリイソインドロキナゾリンジオン

誘電率低く、熱的に安定。耐熱性電気絶縁材、層間絶縁膜、光導波路など。
ジアミノアミドと(芳香族)ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から。フッ素の導入など。
ジアミノアミド

Y=CO、SO
2

脱水閉環

ポリイソインドロキナゾリンジオン(n=0)あるいはポリイミド−イソインドロキナゾリンジオン。
38−2. ポリイミダゾピロロン樹脂
中空膜、気体分離膜。
テトラアミンとテトラカルボン酸二無水物を主成分として重縮合させてポリイミダゾピロロン前駆体を200〜400℃で
加熱閉環、梯子型ポリマー。

一般に

加熱閉環でポリイミダゾピロロン樹脂又はポリイミダゾピロロンイミド樹脂。
38−3. ポリキナゾロン
耐薬品性、耐熱性、機械的強度、製膜性がよい。

キナゾロン

ジアミンとビスオキサジノン

から
38−4.ポリキノリン樹脂、ポリキノキサリン樹脂

キノリン環、キノキサリン環をもつ。
低誘電率、低吸湿性等の優れた電気的特性を有する。
有機溶剤に溶解して半導体基板の層間絶縁膜等に利用。
AA型化合物(芳香核に結合したオルト−アミノカルボニル官能基を2組有する芳香族アミノカルボニル化合物)と
BB型化合物(ビス−メチレンケトン化合物)との反応、またはAB型化合物(オルト−アミノカルボニル官能基及び
メチレンケトン官能基の両方を芳香核上に有する化合物)からポリキノリン重合体を合成。
キノキサリン樹脂
39.ポリパラバン酸樹脂

イミノイミダゾリジンジオン化合物
ジイソシアネート化合物と青酸HCNを有機溶媒中で反応させ、ポリパラバン酸前駆体であるポリイミノイミダゾリジンジオン
化合物を作り、これを加水分解。
ガラス転移点が290〜350℃で、ジメチルホルムアミド(DMF)、n−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド
(DMAC)等の極性溶媒に溶かす。
40.パリレン樹脂(ポリパラキシリレン樹脂)
蒸着重合(CVD)

ガスバリア性や電気絶縁性に優れている。
ジパラキシリレン系ダイマを150℃で昇華させて気化、減圧下で650ないし700℃に加熱し、モノマラジカルを作り、モノマ
ラジカルを常温下で基板に付着させてポリパラキシリレンの高分子膜を得る。
41.特殊な骨格をもつ樹脂
41−1.カルド樹脂(フルオレン樹脂)
・カルド構造

環状構造にある4級炭素(Hがすべて置換)に二つの環状構造が結合した構造で一般的なものはフルオレン環にベンゼン環が
結合したもの。
・フルオレン樹脂
フルオレン骨格を有するエポキシ、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル、ポリエーテル、ポリアミド、及びポリイミド等の樹脂。
フルオレン
ビスフェノールフルオレン

ビスアミノフェニルフルオレン OH→NH
2
エポキシ(グリシジルエーテル)

アクリル
カルド型ポリマーは、主鎖と嵩高い側鎖が一つの元素で繋がれた構造(カルド構造)をもち、主鎖に対してほぼ垂直方向に
環状構造を有し、ポリマー主鎖の回転、主鎖及び側鎖の構造、分子間パッキングの阻害、側鎖の芳香族置換基導入による
芳香族性の増加等により高い機械的強度、高耐熱性、溶剤溶解性、高透明性、高屈折率、低複屈折率、低誘電率および
高い気体透過性等を有する。
41−2.スピロビインダン、フェニルインダン骨格含有樹脂
耐熱性、耐湿性、光学特性、誘電特性等の改善のためスピロビインダン、フェニルインダン骨格のエポキシ、ポリイミド、
ポリエステル、ポリカーボネート樹脂等への導入が検討されている。
・スピロ化合物:二つの環状化合物が一つの炭素を共有した構造をもつ。
6,6'−ジヒドロキシ−3,3,3',3'−テトラメチル−1,1'−スピロビインダン
スピロインダン骨格をもつエポキシ
カーボネート樹脂
ジアミノジフェニルインダン

-NH
2→-OH、-COOH等
*スピロアセタール
3,9−ビス(2−シアノエチル)−2,4,8,10−テトラオキソスピロ[5,5]−ウンデカン

3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキソスピロ[5,5]−ウンデカン
41−3.アダマンタン骨格
アダマンタンはシクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造、対称性が高く、安定な化合物。
光学特性や耐熱性に優れる。
ジオールをポリエステルやポリカーボネートに利用。
アダマンタン

アダマンタン化合物
アダマンタンによるカルド構造例
41−4.イソシアヌレート
イソシアヌレート

耐熱性向上
・イソシアヌレート化合物
トリアリルイソシアヌレート

トリグリシジルイソシアヌレート
41−5.ヒダントイン環
ヒダントイン環(グリコールウレア、2,4−イミダゾリジンジオン)

耐熱性向上。
ヒダントインポリマー

ヒダントインジエポキシド

ヒドロキシ化で水溶性化

あるいは

など
42. NとOの複素環
42−1.オキサゾリン樹脂
オキサゾリン環
ジカルボン酸、ビスフェノールまたはジアミンとで熱硬化性樹脂。

ビスオキサゾリン
*環状イミノエーテル -N=C-O-

5員環はオキサゾリン、6員環はオキサジン
オキサジン化合物の熱開環重合により形成するオキサジン樹脂は難燃性、寸法安定性、低吸水性、低誘電率、
耐熱性に優れ、成形加工時に副生ガスを発生しない新しい熱硬化性樹脂として注目。
→ベンゾオキサジン樹脂
42−2.オキサゾリドン環

ビスウレタンとビスエポキシド、あるいはジイソシアネートとエポキシドからオキサゾリドン含有エポキシ樹脂。
耐熱性に優れるが堅くて脆い。原因はイソシアヌレートの生成。
43.液晶ポリマーLCP
実用化されている構造材料用液晶ポリマーは、リオトロピック液晶ポリマー(溶媒に溶けたときに液晶状態)ではケブラー
に代表される全芳香族ポリアミド、ポリベンゾチアゾール、サーモトロピック液晶ポリマー(溶融時に液晶状態)ではザイダー
やベクトラに代表される全芳香族ポリエステルやポリエステルアミド、芳香族ポリアゾメチンがある。
サーモトロピック液晶は液晶状態(溶融状態)で射出成形、押出成形ができる
リオトロピック液晶はポリpフェニレンテレフタルアミド(ケブラー)、PBZT(ポリpフェニレンベンゾビスチアゾール)などでは
溶液成形による繊維、フィルム、ポリpヒドロキシ安息香酸では圧縮成形が利用される。
<リオトロピック液晶>
<サーモトロピック液晶>
44. 紫外線硬化樹脂
紫外線硬化樹脂には不飽和二重結合(アクリル基(正確にはアクリロイル基CH
2=CHCOO―、メタクリロイル基
CH
2=CCH
3COO―)、ビニル基、アリル基など:付加重合)や環状エーテル(エポキシ、オキセタンなど:開環重合)、
ビニルエーテルCH
2=CH−O−(付加重合)などの紫外線で重合反応を起こす官能基が利用される。
実際は紫外線硬化樹脂を形成するモノマーは簡単には光重合反応を起こさないので、光重合開始剤を利用し、光重合
開始剤が光を吸収し活性化し生成したラジカルやイオン(アニオンとカチオンがあるが主にカチオン:酸)を利用する。
このラジカルやカチオン(酸)がモノマーやオリゴマーを攻撃し連鎖反応により三次元的架橋反応が起こる。
不飽和二重結合(エン・チオール系も)はラジカル重合でエーテル(環状エーテル、ビニルエーテル)はカチオン重合である。
紫外線硬化樹脂はモノマー、オリゴマー、反応性希釈剤、光重合開始剤などよりなる。
光カチオン重合のモノマーや重合開始剤は種類が少ないが反応種の寿命が比較的長く、反応が開始すると重合が
継続しやすい。
ラジカル重合は酸素重合阻害を受け、表面や薄膜で硬化しにくい、湿度依存性、臭気といった欠点がある。
カチオンを発生する光重合開始剤としてはヨードニウム塩、スルホニウム塩(アリルジアゾニウム塩、ジアリルヨード
ジアゾニウム塩、トリアリルスルホニウム塩)などが利用される。
ラジカル光重合開始剤としてはベンゾフェノン系、チオキサントン系、アセトフェノン系、アシルフォシフィン系などがある。
(芳香族ケトン類)
不飽和二重結合への付加重合は体積収縮が大きいが開環重合は体積収縮が小さい。
不飽和樹脂は硬化しやすさからアクリレートが中心となっている。
変性アクリレートたとえばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどはエポキシ・オリゴマー
(低分子量重合体)などの両端にアクリル基を付加。
その他紫外線硬化樹脂たとえばポリイミド、シリコン樹脂等も両端にアクリル基を付加したオリゴマー等を利用する。
45.タッキーファイヤー(粘着性付与樹脂)
粘接着剤、ゴム、タイヤあるいはトラフィックペイント(道路面の標識用塗料)等の粘着付与剤。
一般に天然ゴムやEVA樹脂のTgは室温よりはるかに低いため粘着性が十分ではないが、Tgが高いタッキファイヤーを
混ぜることでTgを室温付近にシフトさせ、良好な粘着特性を与える。
代表的なものには脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クロマン樹脂、ロジン系樹脂、テルペン
樹脂などがある。
45−1.炭化水素樹脂
石油樹脂とも言われ芳香族系石油樹脂と脂肪族系石油樹脂がある。
ナフサクラッカーから生成するC9系の石油留分やC5系の石油留分からカチオン重合で製造。
芳香族系石油樹脂はC9系の石油留分でビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンなどである。
脂肪族系石油樹脂はC5系の石油留分でイソプレン、シクロペンタジエンなど不飽和モノマーを重合。
シクロペンタジエン
・脂環族系炭化水素樹脂
C5留分から抽出されたシクロペンタジエンC
5H
6を主原料に製造された石油樹脂。
・脂肪族系炭化水素樹脂
C5留分から抽出された1.3-ペンタジエンC
5H
8を主原料に製造された石油樹脂。
45−2.クマロン樹脂
クマロン及びインデンの重合体
46−3.テルペン樹脂、ロジン系樹脂
松ヤニなどの成分を原料。
松ヤニは揮発性のテレビン油と不揮発性のロジンを主とし、テレビン油の主成分はα-ピネン、ロジンの主成分は
アビエチン酸。
テレピン油がテルペン樹脂に利用され、ロジンは主としてグリセリン,ペンタエリスリトール等でエステル化して
ロジン系樹脂となる。
〔V〕
生分解性プラスチック