(13−4−11) パワー・サイクル
ルネサスによると
パワー・サイクル(断続通電)試験
高電力(パワー)系半導体部品はオン・オフによる温度変化の影響で故障を生じる。
この故障には2つのモードがあり、
ΔT
Jモード
比較的短い時間のオン・オフ(スイッチング部品)により、パッケージ温度Tc(ケース温度)が安定した状態で
接合部温度T
Jが変化することによるもので、Siチップとその上の材料間の熱膨張の差が原因となる。
これは主にボンディングのアルミ線の接合部の劣化を引き起こす。
ΔTcモード
高電力(パワー)系半導体装置の比較的長い時間(分〜)オン・オフによるパッケージ温度Tcの変化を伴う故障で、
Siチップ以下の材料間の熱膨張の差が原因で、主にはんだ接合部の劣化を引き起こす。
Laurilaらの試験では熱衝撃試験とパワー・サイクル試験の差として
低温条件は熱衝撃よりパワー・サイクルがかなり高い
パワー・サイクルでは電流の流れがエレクトロ・マイグレーションを引き起こす
パワー・サイクルでは熱は局部的に部品から発生
とする。
その結果、パワー・サイクルでは
平均温度が高いため、熱衝撃より早く再結晶が起きる
エレクトロ・マイグレーションによりアノード側のIMC成長が促進される
こととなる。
実験は挿入型パワー・ダイオード、はんだSAC305
通電は8A、650sオン、350sオフ、約1000A/cm2
これによる温度変化は約30℃〜120℃
熱衝撃は−40℃から125℃で10分保持
<はんだ接合部と電流方向>
<凝固後組織>
高傾角粒界で区別される数個の大きなSnコロニーよりなる。
高傾角粒界は部品電極あるいは基板パッドに平行なことはほとんどない。
<パワー・サイクル 1000c>
粒構造が変化し多数の等軸粒が存在し、再結晶が起きたことを示す。
亀裂核生成、伝播に都合の良い連続的粒界ネットワークが存在。
再結晶粒間境界に沿っての再結晶構造に亀裂伝播が見られる。
<パワー・サイクル 3000c>
再結晶領域が拡大し、亀裂が更に伝播。
IMC層厚み増加。
<熱衝撃 1000c>
<熱衝撃 2000c>
熱衝撃もほとんど同様だが、破壊は少し遅く起きる。
<熱衝撃 3000c>
パワー・サイクルと熱衝撃の大きな差異はパワー・サイクルが顕著に熱サイクルより
IMC層が厚いこと。
パワー・サイクルは約30〜120℃だが熱衝撃は−40〜125℃で最低温度のはそれぞれ
0.62Tmと0.48Tmでこれが影響。
両試験とも破壊機構は同じだが微細構造変化はパワーサイクルが熱衝撃より速く起きる。
これは
最低温度の違い、それぞれ0.62Tmと0.48Tm。
電気的流れが再結晶速度論に影響。
部品の加熱がパワーサイクルがかなり局部的
なことによる。
バルクはんだの微細構造変化に加えてIMC成長に顕著な差がある。
<熱衝撃でのCu6Sn5厚さ・・・部品側と基板側>
<パワーサイクルでのCu3SnとCu6Sn5の厚さ>
熱衝撃ではCu3Snは非常に薄くこれは平均温度の低さに関係、パワーサイクル
ではより成長しやすい。
Cu6Sn5は平均温度が高いのでパワーサイクルが成長しやすい。
2つの試験の差はパワー・サイクルの平均温度が高いことによる。
Cu6Sn5はパワーサイクルではいつもアノード側が厚いがこれは電流の流れ方向の効果。
パワーサイクルでは基板側がいつもCu3Snが薄い。
<パワーサイクル 3000c>
恒温アニールではたとえば150℃ではCu3Snは総IMCと3:5、つまりCu3Snが厚い。
パワーサイクルではたとえば3000サイクルでCu3Snは総IMCと1:6、これは平均温度
が低いことによるがエレクトロマイグレーションにもよる。
SnのエレクトロマイグレーションがアノードでのCu6Sn5厚みとCu3Sn成長に影響。