(13−4−10) 熱疲労の関するヘルシンキ工科大のMattilaらの研究


はんだ相互接合の再結晶支援亀裂の破壊機構

2. Snリッチはんだ相互接続の凝固上がり微細組織

  SACの共晶組成はSn−3.5Ag−0.8Cu付近とされるが、最もよく使用されるSn−3.0Ag−0.5Cuは亜共晶である。
  亜共晶ではβSn(Snリッチ相)が初晶であるが、共晶近傍合金は高Sn(Sn>95%)なため凝固と生じる微細組織は
 βSnが初相であろうとなかろうと、βSnの凝固の影響を著しく受ける。
  接触する金属の溶解ははんだ組成を変化させ凝固に影響する。
  凝固部の断面でコントラストの違う領域の境は高傾角粒界(15°以上)で、一つ一つの結晶粒は一様な方向のセル状組織よりなり、
 このセル状組織は小傾角粒界(5°以下)をなしている。
  このように通常はんだ相互接合部は一様な方向のセル状組織よりなる少数個の結晶粒(通常傾角15°以上)よりなっている。

   <NESACの凝固上がり微細構造>


  セル状組織の他デンドライト形態(モルフォロジー)も生じる。モルフォロジーは凝固条件、はんだ組成に依存する。
  はんだの量は凝固で形成される微細組織に影響し、大はんだ量ではデンドライト組織が生じやすい。
  パッド金属の影響ではNiは高Snはんだへの溶解量が少なくすべて界面の金属間化合物層形成に消費されるが、Cuの溶解量は多く、
 はんだ組成を変化させ初晶をCu6Sn5に変化させ、微細組織に(六方晶)筒状あるいは丸棒状のCu6Sn5が見られる。
  この結果非整合なCu6Sn5とSnマトリクスの高傾角粒界は再結晶の核生成のよいサイトとなる。(析出誘起再結晶)
  実際の凝固は平衡凝固からずれ、過冷却により亜共晶でもAg3SnあるいはCu6Sn5が初晶として析出しやすい。
  その際、パッケージあるいはPWB側界面より溶融部の自由表面、特に液体表面の酸化物などが界面より核生成サイトとなりやすい。

   <初晶Cu6Sn5の晶出状態>



  またSnの過冷却が大きいことが相互接合部のSn結晶粒の少ない事の一つの理由である。
  更に隣り合う結晶粒は双晶であることが多く、結晶方位差(傾角)は約60°を示す事が多く、これはこれら結晶が
 共通な核から生じていることを示唆する。

  以上からわかるようにはんだ相互接合の機械的挙動は通常の多結晶材料と非常に異なる。
  Snリッチ相の顕著な異方的挙動は非常に非一様な変形と内部応力をはんだ接合に引き起こす。
  更に凝固上がり組織は高傾角粒界がないため粒界亀裂が起きない。
  応力印加で破壊が伝播する前に微細構造進展を経る。
  凝固で形成された微細構造は安定でなく製品動作中に明らかに変化する。

3. 回復と再結晶の役割

  熱サイクルでは全温度範囲がはんだの0.3〜0.4ホモロガス温度以上なので低温あるいは高温での保持時間で
 拡散クリープ過程で弾性変形が非弾性変形化する。
  微細構造変化の開始ははんだ相互接合の高度な非一様分布のため局在化する。
  応力集中部の微細組織の進展はセル状凝固組織の徐々の進展で開始しある時間で微細構造は再結晶で不連続的に
 変化する。

3.1 Snリッチはんだ合金の復旧Restoration

  高純度Snのクリープ研究によるとSnの積層欠陥エネルギーは高いので、Snリッチはんだは回復を起こしやすいと思われる。
  NESACでも回復は有効であると思われる。
  一方NESAC相互接合はパワー・サイクル条件(室温と125℃)と温度変化(−45℃と125℃)による動的負荷で再結晶する。
  NESACはんだ相互接合は回復よりひずみ硬化がより有効な動的負荷条件でのみ再結晶するように思われる。

   <熱サイクルの相互接続部の再結晶組織>
  

3.2 初期段階:回復効果と微細構造の粗大化

  サイクル当たりの塑性変形が小さい結果、PWB側界面領域の微細構造進展がパッケージ側相互接合の進展より非常に遅い。
  破壊まで熱サイクルしても変形が少ない中間部では初期のSnリッチ相のセル構造が認められる〔(b)〕が、
 応力集中領域ではSnセルは徐々に合体しIMC粒子は粗大化することで再配列し始める。〔(c)〜(d)〕
  Snセル周辺の共晶構造は徐々に消失し、回復による低傾角粒界が出現する。
  これらの変化は熱サイクル試験の初期(50〜数百サイクル)に始まるのが観察される。
  IMC粒子の粗大化は高傾角粒界近くの領域で強く、低傾角粒界近くの領域では依然微細粒子を含む。
  これより高傾角粒界に沿っての拡散が低傾角粒界に沿ってより非常に速いと思われる。

   <熱サイクルで破壊したはんだ相互接合>



3.3 後期段階:再結晶による組織変形

  更なる熱サイクルで微細構造は徐々にこの領域が再結晶で不連続に等軸粒構造に変化するまで進展し続ける。
  この変化は最初パッケージ側のはんだ相互接合の端領域で観察される。
  再結晶開始で再結晶体積はパッケージ側界面の相互接合部を横切って徐々に端から中央に広がる。 
  再結晶の潜伏期間は同じ負荷条件でも相互接合、パッケージによって顕著に異なる。

  相互接合のパッケージ側界面の亀裂領域は高結晶方位差を示し、高傾角粒界は亀裂経路に非常に接近して位置している。
  一般的に高結晶方位差は亀裂領域から離れると小さくなる。(下図)
  亀裂は再結晶領域の外にはめったに伝播しない。

   <熱サイクルでの亀裂伝播状態>

 

4. 再結晶はんだ相互接合部の亀裂

   <熱サイクル数と亀裂長さ>


  BGAでは熱サイクルで亀裂の核生成は保持時間、昇降温速度に関係なく比較的狭い範囲、約1000〜1500サイクルで起きる。
  しかし再結晶の影響のない亀裂伝播速度は非常に遅い。
  このように熱機械的疲労の主要な破壊機構は亀裂の核生成と粒間伝播を可能とする再結晶による
 連続的粒間ネットワークの形成を含む。

   <再結晶粒間亀裂伝播>


   <破断面・・・部品側>



  再結晶粒間亀裂伝播の結果、破面は粒状外観を示す。
  疲労ストリエーション(筋)がときどき見られる。
  粒間伝播の都合が良くないと亀裂は粒内を伝播しうることを示す。
  Sn結晶の機械的異方性が粒界に沿ってのマイクロボイド伝播を促進する。
  Sn結晶の熱膨張係数は〔100〕=〔010〕方向が〔011〕方向の約2倍である。

  亀裂核生成は再結晶による微細構造変化前後に起き得るが、再結晶による粒界ネットワーク形成が
 電気的に破壊する相互接合の亀裂伝播に影響する
  Snリッチはんだ相互接合の亀裂は再結晶速度により制御されることが明白。

  以上より
   亀裂核生成は主に負荷繰り返し数に依存し、負荷条件のパラメータと構造特徴、進展に比較的非敏感。
   亀裂伝播速度は再結晶領域の拡大速度に依存。すなわちはんだ接合の寿命は主に再結晶の開始と拡大
 に制御される。


動的再結晶





熱サイクルと機械的衝撃 2005

1.序論
2.はんだ相互接合の物理的性質
2.1 はんだの塑性変形

  降伏応力以上で塑性変形、それ以下は弾性変形。
  降伏応力以上ではひずみ硬化が生じる。
  塑性変形は転移すべり、上昇か双晶で起きる。
  Snは非常に非対称的なBCT(a=b=5.83nm,c=3.18nm)で、知られているスベリ系は
   (110)〔001〕、(100)〔001〕、(10)〔101〕、(121)〔101〕
  Snのように活動すべり系が少ないと、温度が高いあるいはひずみ速度が非常に速いときスベリが起きる、
  Snの知られている双晶面と方向は{301}<03>と{101}<10>。

  ホモロガス温度(T/T)が0.3−0.4以上では時間依存的に”降伏応力”以下でも塑性変形−クリープが起きる。
  臨界せん断応力以上で転移クリープが、以下で拡散流動が起きる。

  金属の塑性変形はひずみ速度依存し一般的にひずみ速度とともに強度増加。
  高ひずみ速度ではすべり系が少ないと双晶が起き易くなる。

   <変形機構図>


2.2 塑性変形構造の復旧ristoration

  塑性変形の復旧
    物理的特性が変形前へ徐々に戻る
    動的復旧(変形中に起きる)と静的復旧(変形後の昇温)
    復旧は回復recovery(粒構造の目だった変化なし)と再結晶recrystallization(粒構造のはっきりした変化)で進行
    復旧後は典型的には一様な粒成長と高度に選択的な二次再結晶が伴う

   <復旧の模式図>


  Sn基Pbフリーはんだの復旧については情報が少ない。
  NE(共晶近傍)SACは温度サイクルで再結晶することが知られている。

2.3 はんだ相互接合の破壊様式と機構

  はんだ相互接合の破壊様式(モード)は負荷条件に依存、同じ破壊機構(亀裂の核生成と進展)が
 異なる破壊モードを引き起こす得る。
  破壊は延性的ductileか脆性的brittle。
  脆性破壊は低温と高ひずみ速度でおき易い。
  基本的破壊機構はマイクロボイド合体と疲労破壊。

2.3.1 マイクロボイド合体

  塑性変形によるマイクロボイドの核生成と成長と合体による亀裂形成
  マイクロボイド合体は延性破壊の典型的機構

2.3.2 疲労破壊

  疲労は繰返し負荷による降伏応力以下での破壊
  古典的疲労破壊とはんだ相互接合の熱機械的負荷による疲労は機構が異なる。
  古典的疲労破壊は亀裂核生成、伝播の前に塑性変形、熱機械的負荷での高Snはんだ相互接合破壊は
 再結晶誘起疲労破壊で再結晶粒界に沿って亀裂核生成、成長。

   A) 室温での疲労破壊

  疲労破壊は3段階・・・亀裂核生成、亀裂成長、破壊

   <低温での恒温疲労の模式図>


   B) 熱サイクル

    再結晶による粒界網が亀裂の核生成と伝播場所で粒間破壊。
    粒界の不純物、合金成分、第2相が粒間破壊を促進。
    粒成長あるいは二次再結晶が高Sn相互接合微細組織を粗大化させると破壊は粒間と粒内の
   混合モードで起き得る。
    粒内破壊の破壊面はファセット的。

3.熱機械的及び機械的負荷での部品基板の信頼性試験

  携帯電子製品の信頼性
   温度変化での基板の諸材料の熱膨張率CTE差による熱機械的応力による疲労破壊
   落下などの機械的衝撃による破壊

 3.1 熱機械負荷でのSAC相互接合

  CTEミスマッチ
    変形度:Δγ、CTE差:Δα、相互接合高さ:h、中立線からの距離:L
      Δγ=ΔαxΔTxL/h

   <応力−ひずみヒステリシス曲線、面積は塑性仕事>


  等温(低温)サイクル負荷→対称ヒステリシス
  温度サイクル→非対称
   温度とともに強度低下、高温で大きな変形、低温で小さな変形

  高Snはんだ 
   同ホモロガス温度でも強度は共晶SnPbより高く、靱性が低い。
   熱サイクルでクリープが起きる。
   熱サイクルでの相互接合微細構造の進展。

  初期組織
   高傾角粒界で区別される2〜5個の少数の大きなSnコロニー。
   コロニー粒界内部には一様結晶方向のセル状凝固構造のSn。
   Snセルの周囲にはCu6Sn5、Ag3Sn粒子が分布。

   <偏光像によるSn粒構造>


  応力で亀裂核生成の前に微細組織進展を経る。
  はんだ接合の熱サイクルによる応力分布は不均一で局部変形が起き、そこでは再結晶が生じる。
  再結晶粒の熱異方性で粒界にマイクロボイドの核生成、マイクロボイドの合体とマクロ亀裂化、亀裂の伝播が起きる。

   <再結晶構造>


   <再結晶粒界に残ったCu6Sn5、Ag3Sn粒子>


*セル状組織は成長方向に直交する断面で見ればセル(細胞)状模様だが、成長方向に平行な方向は
 長く伸びた形状となる。
 Kang IBM (参考図)
 


3.2 機械衝撃負荷でのSAC相互接合

  携帯電子製品の落下で衝撃は筐体から基板に伝達し基板の大きな曲げと振動を引き起こす。
  JEDEC JESD22−B111に基板レベル落下試験が標準化。
  基板は支持ジグで支持されガイド・レールに沿って制御されて落下。基板は自由に曲げうるので
 種々のモードの自然周波数の曲げ発生。

   <落下試験による3つの顕著な自然モード>


   <基板の縦ひずみ波形>

 (a)落下後のひずみ波形、(b)高周波数の自然モードによるひずみ波形

  巨視的振動は低周波数の自然モードにより、高周波数振動は大きなひずみに埋もれている。

 熱機械的負荷と機械的負荷の違い
  温度と変形速度
   熱サイクルでは変形速度10−4〜10−2/s
   落下試験では約10/s

   <歪速度応答性>


  落下試験でのはんだの流動応力は熱サイクルより2,3倍高い。
  高変形速度でははんだ相互接合の強度が増加し、界面での応力が脆いIMC層破壊強度を超える。
  バルクはんだは顕著には塑性変形せず、再結晶は観察されない。
  ひずみ速度が増加すると双晶機構が活発となり、相互接合領域の高応力部に双晶が観察される。


金属学的因子 

3. 相互接合微細構造とその進展
3.1 凝固

  多くのPbフリーはんだは2,3の主要および少量の添加成分からなる高Sn合金なので凝固挙動は
 Snに支配される。
  凝固の始めに初粒が形成されその形態が強く凝固構造に影響する。
  SACでは初晶は組成によりβSn、Cu6Sn5あるいはAg3Snのどれかでありうる。
  凝固は多くは部品かPWB側界面から始まるが、溶融はんだ表面の酸化物層や不純物粒子もまた核生成
 場所として働く。
  通常、凝固で成長条件によりセル状あるいはデンドライト構造が形成される。

  Sn0.5Ag0.5Cuの例


  Snのセル状構造で異なる結晶方位の2,3のコロニーより形成。(コロニー間は高傾角粒界)
  コロニー領域自体はその粒界が低傾角粒界のセルからなる。
  他の注目すべき点は少量成分の挙動である。
  最後に凝固する液体部分はコロニー間の高傾角粒界で、そこにはほとんどの不純物が存在する。
  Auが保護層として形成されると高傾角粒界に小さな針状AuSn4IMC粒子として富化する。

3,2 凝固構造と接触金属溶解の効果

  典型的SACの凝固構造は大きなSn初晶粒の間に小さなCu6Sn5とAg3Sn相が分散したセル状である。

  無電解Ni(P)/AuにSn0.5Ag0.5Cuではんだ付けされた相互接合部の形成された微細構造

  Cu6Sn5とAg3Sn粒子が比較的大きなSnセルの周囲の均一に分布。

  OSPを形成したCuパッドにSn0.5Ag0.5Cuではんだ付けされた相互接合部の形成された微細構造

  より多くの大きいCu6Sn5 IMCが分散。

  このような微細構造の違いはPWBのパッドと部品の金属化層が溶融はんだと接触して溶解
 することの影響による。Niは50倍以上Cuより溶解速度が遅い。

  無電解Ni(P)/AuにSn0.5Ag0.5Cuではんだ付けされた相互接合の凝固挙動

  Snが初晶。

  OSPを形成したCuパッドにSn0.5Ag0.5Cuではんだ付けされた相互接合の凝固挙動

  初晶はCu6Sn5。

  リフロー過程の冷却速度は平衡の場合より非常に速いから実際の凝固過程は平衡凝固と
 若干ことなる。

3.3 界面反応生成物

  電子機器では一般的な基材材料、被膜、金属化層はSnとはんだ/導体界面でIMCを形成する。
  界面での薄くて連続的IMC層形成は良い濡れ、結合の本質的要件だが、IMCは本質的に脆いので厚すぎる
 IMC層ははんだ相互接合の信頼性を劣化させる。
  IMC層形成は原則、溶解、化学反応、凝固の3つの連続的段階を経へ、その重要度は導体金属の溶解度による。
  溶解で接触金属付近の溶融はんだが過飽和になるとIMCが形成され、更なる接触金属の溶解を引き起こす。
  このようなIMC反応構造は2つの部分よりなる。
  基材の隣に比較的薄い単一相層がその上に時には厚い不規則な2相(あるいははんだ+IMC)層がある。
  2相(あるいははんだ+IMC)層は溶解量増加によって増加するように見える。
  アセンブリの保管中あるいは使用でIMCは厚くなり、特に動作温度が室温より高いとそうである。
  はんだの局部平衡条件は1つあるいはそれ以上の成分の枯渇で局部的に変化する。
  このため相変化が生じ新しい相互接合微細構造となる。

3.3.1 Cu導電パッドとSn基はんだ間の化合物

  Pbフリーのリフローの典型的ピーク温度の240−250℃周辺ではCu6Sn5が液体Sn|Cu導体界面で最初に形成される。
  均一なCu6sn5層(単一相層)に加えて局部的組成的過冷に励起されて2相層(Cu6sn5+Sn)層が単一相層に隣して形成されうる。
  熱力学的にはCuとCu6Sn5の間にはCu3Sn相があるはずで、多く観察されるがCu6Sn5より非常に薄く形成に長い接触時間が必要。

   125℃、1000時間アニールの電解Cu/Sn拡散対


3.3.2 使用中でのSn−Cu IMC層の進展

  CuはCu6Sn5と平衡ではないからこのIMC帯での反応は固体拡散で継続しCuパッドとCu6Sn5の間にCu3Snが形成される。
  はんだ付け中に生じるCu3Sn層はCu6Sn5に比べて非常に薄いが固体アニールでこれらの層の厚みは増加する。
  60−200℃ではCu6Sn5の成長速度はCu3Snより速いが部分的にCu6Sn5を犠牲にしてCu3Snは成長する。
  Cu3SnでのCuの拡散速度はSnより3倍速いので固体アニールでKirkendallボイドがCu|Sn反応対で生じると報告されている。
  ボイド量はCuの種類による。
  高純度Cuでは非常にまばらなボイドが観察され、電解、無電解Cuではボイドは容易に見られる。

3.3.3 他の金属化層系

  Cu以外にNi,Au,AgなどがPWBや部品金属化層として使用される。
  250℃付近では液体Sn|Ni導体界面ではNi3Sn4が最初に形成される。
  Niの液体Snへの溶解速度はCuより非常に小さく、はんだ付け中に形成されるNi IMCは一般的にCu IMCより非常に薄い。
  特に(Ni3Sn4+Sn)2相層は通常存在しないか非常に薄い。
  以上はCu非含有はんだだが、Cu含有はんだでは状況は変わり、(Cu,Ni)6Sn5が最初に形成される。
  はんだのCu量が約1原子%に低下すると(Ni,Cu)3Sn4+(Cu,Ni)6Sn5+Sn 3相領域となるので両IMC相が形成される。
  約0.7原子%のなると(Ni,Cu)3Sn4が最初に形成される。
  Cu量によりNi上には(Ni,Cu)3Sn4、(Cu,Ni)6Sn5あるいはその両方が形成されうる。
  固体反応ではNi3Sn4だけが形成され、長時間アニールでも他の層は検出できない。
  Auの場合、溶解は最も速い。
  2相層(Au−Sn IMC+Sn)は単一相IMC層より非常に厚い。
  Au層が薄いと完全に溶解し、AuSn4がはんだ中に針状相として無秩序に分布。
  Agも溶解速度は高い。
  IMC相はAg3Sn。
  Ag基体が厚いとIMCは元の表面に連続層として形成され、2相層(Ag−Sn IMC+Sn)は単一相IMC層より非常に厚い。
  表面処理のAgはバルクはんだ中にAg3SnIMCとなる。Ag IMCは比較的大きな薄片状となる。



  SnAgPb(3.5%Ag)の凝固構造


3.4 変形構造(スリップと双晶化による)
3.5 回復、再結晶、と粒成長

4. CSPの熱サイクルと落下信頼性

 Sn0.2Ag0.4Cuバンプ



4.1 熱サイクル

   はんだペースト:SAC405、387、3575
   −45〜125℃、保持15分



   Ni(P)|Au(a)とCu|OSPの亀裂経路(b) 
*注:Ni(P)|AuはPWB側にNi(P)を使用したサンプル、Cu|OSPはPWB側にCu|OSPを使用したサンプルということで
 下図断面の接合界面のパッドを意味しない。部品側パッドはどちらも同じ。(上の図参照)


  どちらもはんだ相互接合部の亀裂。
  信頼性性能の違いはバルクはんだと微細構造進展の差。

   熱サイクル中でのはんだ相互接合の微細構造の進展


  変形で再結晶が誘起される。
  1000サイクルでネック部が再結晶。

  Cu|OSPの微細構造は多くの比較的大きなCu6Sn5初晶を含み、再結晶開始を促進。
  再結晶粒間の高傾角粒界で粒間亀裂の核生成と伝播しやすい。
  そのためCu|OSPが速く破壊。

4.2 落下試験

   はんだペースト:SAC387



   <(Cu,Ni)6Sn5経由の部品側破壊:Cu|OSP 注:界面は薄いNi/Au>


   <(Cu,Ni)6Sn5下のPWB側破壊:Ni(P)|Au>


  落下試験の破壊モードは熱サイクルと非常に異なる。




  室温は0.6Tmで塑性変形は強くひずみ速度依存。
  熱サイクル(〜10−3/s)より落下試験(〜10/s)ではんだ接合強度非常に大。
  そのためはんだ接合の応力の強度と分布も異なる。
  有限要素法によると応力が増加するだけでなく部品側に集中。
  落下試験でのはんだ相互接合の高流動応力のためIMC層は顕著に熱サイクルより高応力を経験する。
  同じ計算でPWB側のはんだ|パッド相間応力は部品側の半分より小さい。
  はんだの引張り強度はIMCの破壊強度を超えIMC層内を破壊は伝播。

   <落下試験後のバルクはんだ構造:機械的双晶>


  落下試験サンプルには再結晶は観察されない。
  落下試験でははんだ相互接合の強度が増加し顕著な塑性変形はおきない。
  ひずみ速度増加で双晶機構が活性化される。
  高応力な相互接合領域に双晶が典型的に観察される。

   <Ni(P)/Auの反応層のTEM>


  PWB側界面の応力は部品側より非常に小さいがNi(P)|Auはんだ相互接合の主要破壊モードは
 PWB側の(Cu,Ni)6Sn5の下。
  Ni(P)/Auの破壊経路はいつもCu/OSPより非常に平滑で真っ直ぐ。
  Ni(P)/Auに形成されるIMC層は複雑な多層構造となる。

   <破壊路に垂直なX線ラインプロファイル>


  破壊伝播はNiパッドと(Cu,Ni)6Sn5間のどこか。

PWB表面処理の影響
 2μmNi(P)/〜0.02μmAu、ペースト:Sn4.0Ag0.5Cu、Sn3.8Ag0.7Cu、Sn3.5Ag0.75Cu
 バンプ:Sn0.2Ag0.4Cu

  寿命は20%抵抗増、−45〜125℃、15分保持




  破壊は部品側









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