(15−3) 日本での研究

(15−3−1) JEITAの報告

JEITA2003 英文
1.定義:Snの再結晶によって起こり、めっき皮膜に働く圧縮応力によって成長する現象。
     圧縮応力としてめっきの内部応力、Cu6Sn5の拡散(形成?)、Snの酸化、母材の膨張収縮、商品形状により発生する応力
     Cu3Snの拡散(形成?)は応力を減少、めっき表面の薄い酸化皮膜はウィスカ発生を阻害する場合がある、亜鉛の表面拡散は
    酸化皮膜に欠損を作ることができる。

2.母材(Cu)の拡散による成長メカニズム
   高温高湿より常温で成長しやすい。
   Snめっきに拡散したCuがCu6Sn5を形成、Cu6Sn5は体積がCuより大きく、Snより小さく、この体積変化が
  ウィスカ成長の圧縮応力。
   高温ではCu6Sn5、Cu3Snの2種類が生成、Cu3Snは体積が小さく、CuSn5の体積膨張によるウィスカ生成
  を抑制する因子となる。

 

 SnA:光沢、SnB:マット(硫酸)、SnC:マット(MSA)、


3. 母材(Cu/Zn)の拡散と表面酸化による成長メカニズム
   Cu母材では室温で最も成長、黄銅素材では50℃、50%RHで最も成長、50℃、85%は少ない。
   めっき表面は湿度が高くなるとOが増え、温度が高くなるとZnが増える。
   Snの表面に酸化皮膜があるとウィスカが発生しにくい、Znは酸化皮膜に欠損を生じさせウィスカを発生しやすくする。

4.母材が拡散しない場合(Ni下地など)の成長メカニズム
   Snの表面酸化(高温高湿)によるウィスカ成長が見られた。

5.温度変化による成長メカニズム
   銅母材よりセラミック母材においてウィスカ成長が見られた。
   温度変化による膨張収縮の繰り返し、部品端子の線膨張係数の影響で発生。


*わかりにくい実験である。

JEITA 2008年では
 ウィスカ発生原因の種類と現状技術課題
ウィスカの種類 技術課題
内部応力型ウィスカ ・ほぼメカニズムは理解されているが矛盾する現象も発生
・対策は純Snで150℃熱処理を欧米が提唱するが、完璧ではない
・日本はSn−Biなどの合金を推奨するが、現象が矛盾する場合がある
・成長速度の予測はできていない
温度サイクルウィスカ ・ほぼメカニズムは理解されている
・合金化の効果は不明
・車載機器では厳しい温度サイクル環境が課せられるので評価技術と基準が必要
・100μmピッチ接続は可能だが、よりファインピッチ化で問題になる
腐食ウィスカ(はんだウィスカ) ・原因は予測はされているが、検証はされていない
・対策が不明
・成長速度の予測ができていない
・車載機器で特に問題になるが、信頼性評価技術が確立されていない
外部応力型ウィスカ ・原因は理解されているが、成長予測ができていない
・ファインピッチフレキシブル・コネクタが最大の対象であるが課題が多い
・抑制は困難であるが、可能性の高い技術が開発されている
・信頼性評価技術が確立されていない
エレクトロマイグレーション・ウィスカ ・メカニズムは理解されているが、成長予測ができていない
・超高密度のハイパワー電子部品で問題になる


電子実装の信頼性向上のためのウィスカ防止技術の開発 2009年

 1.外部応力型ウィスカ
   外部圧縮応力で圧縮部から離れた歪の少ない部分で粒移動、回復・粒成長が起き、加圧部周辺の歪の大きな領域で
  再結晶が発生、再結晶粒はウィスカに成長。

 2.内部応力型
 2.1 室温放置環境でのウィスカ抑制
      SnBi、SnPbめっきが抑制。(化合物の形状を変える、化合物成長を抑制)
 2.2 温度サイクル環境のウィスカ抑制
      42アロイよりC194(Cu主成分)が良い。
 2.3 溶接部ウィスカ(アルミニウム電界コンデンサでAlリードと外部リードの溶接部にウィスカ発生)
     高温洗浄処理(Al溶出)の効果が大きい。
     SnBiはSnより抑制効果。
     高温高湿は室温放置より加速効果。
     機構:Snの周囲のAlが関与が有力(硬いAlのため内部の応力解放の方向がSn表面側に集中)

 3.はんだウィスカ(高温高湿)
   スズの不均一な酸化層の影響、高温では薄い酸化層が比較的均一に形成、高湿で不均一な酸化層形成。
   フラックスの臭素系活性剤が酸化層を促進。Cu、NiとSnのガルバニック腐食。
   SAC305では1%Zn、In、Biに抑制効果→Zn、InはSn酸化緩和、BiはSnと固溶し抑制。

(15−3−2) 阪大の報告

菅沼 2008年
 5つのケース

1.室温ウィスカ
  Snめっき/銅界面に形成されるCu6Sn5 IMCによる圧縮応力が原因。
  Cu6Sn5は界面全体でなく、Snめっき粒界に成長。
 

 Ni下地ではNi−Sn IMC形成しにくいので、ウィスカ成長も遅い。
 42アロイはNiより安定、黄銅は室温ウィスカには効果があるが、高湿ではZnがSn中へ拡散し酸化し体積膨張による圧縮応力
でウィスカ助長。
 熱処理でIMC層を界面全体に層状化するとウィスカ抑制。
 酸化膜の影響は論議がある。
 結晶粒の方位が関係あるともいわれる。(そろった方位のなかで周りと異なる方位の粒があるとウィスカの核となる。)

2.温度サイクル・ウィスカ

 Snめっきと熱膨張率差の大きい42アロイ電極やセラミクス部品で問題。
 高速に成長するので屈曲形状となる。成長は遅い。
 著しくは成長しない。
 

3.酸化・腐食ウィスカ

  85℃、85%では発生せず60℃、93%で最大。
  酸化にたいしてはPb効果なくSnPbでも発生。
 
 *結露がない条件

 85℃、85RH%より60℃、93RH%が成長。
 酸化にたいしてはPbも効果がない。
 部品単体で発生しても基板実装では発生しない場合がる。

 Sn合金で合金元素がSnより酸化しやすいと、合金元素が表面、界面、粒界へ拡散し酸化することがある。
 酸化による体積膨張で圧縮応力発生しウィスカ発生へ、例としてZn、In。




4. 外圧ウィスカ



 圧痕下は柱状晶から大きく変化、圧痕縁のウィスカ発生近辺では著しく再結晶。



5.対策

 キーワード
  Snや他元素の拡散
  界面や粒界の化合物形成による内部圧縮応力
  Sn表面の酸化膜状態と著しい酸化・腐食
  熱膨張ミスマッチによる圧縮応力・熱疲労亀裂
  添加元素や汚染(Bi、Pb・・)による拡散促進
  外力による拡散促進
  エレクトロ・マイグレーション
  結晶粒の配向性・形状(柱状、等軸)、粒界角度・ピンニング効果
  マット、ブライト、サテンの差→粒径と関係?
  添加元素・酸化条件・フラックスのめっき膜構造や腐食への影響

 方法
  ・拡散抑制元素?
  ・界面・粒界の化合物形成抑制 →室温ウィスカ対策
    42アロイ、黄銅、Ni下地
    150℃熱処理やリフロー
  ・圧縮応力緩和
    ソフトな相の分散?、めっき膜の2層構造化で外圧応力緩和。
  ・めっきプロセス、厚み
    厚さ2μmが最大、薄くか厚くする。
  ・酸化膜やめっき表面を制御
  ・有機膜コート
    飛散は防げる、
  ・薄いめっき
    Niを1μm以下 →室温ウィスカ、外圧ウィスカに効果的



Joから(補足) 

文献概観

・ウィスカ成長の原因
  室温・・・粒界へのIMC形成 Joら


  酸化・腐食・・・体積膨張 Oberndorffら


  機械的誘起応力 Mizoguchiら

   IMC形成によるより成長が速い。
   再結晶による粒成長で体積膨張、ウィスカ成長は粒方位と関係、大きな粒と双晶粒ができ、主に双晶粒から発生。

  熱サイクルによる熱機械的応力(Sn膜と下地のCTE不適合)

   真空中と大気中では酸化の有無で差が生じる。
   大気中では主に厚くて曲がったウィスカ、真空中では薄くてフィラメント状に真っ直ぐなウィスカ。

  エレクトロ・マイグレーション Zhuら 


   Cu6Sn5の偏析による。

(実験結果)
  Pb効果
   マットSnPbをC19400上に

   Pb添加で粒寸法減少、偏析拡大


   Pb添加のIMCは小さく均一。




   粒移動のしやすさがヒロック形成の理由。

  Bi添加






   微細化と柱状から等軸状への変化が効果の理由。

  Sn膜厚みの差
   42アロイにマットSn、温度サイクル






  真空と大気中






(15−3−3) その他の報告

宇宙応用 2010 大気中と真空中の挙動の差
  チップ・キャパシタ、Ni/Sn(8μm)、−40〜125℃、













  湾曲と筋の原因


 要約
  真空条件では薄くて真っ直ぐなウィスカが認められた。
  真空中が大気中より成長速い。
  大気中より真空中がSn粒寸法小。
  大気中と真空中のウィスカ形状差はSn酸化物層と、またはSn粒寸法によるだろう。

  ウィスカ根元に溝が認められた。
  ウィスカ表面に筋striationが認められた。筋の間隔は先端が根元より長い。
  ウィスカ長飽和はSnの欠乏によるだろう。

によると
  ブライトSnではウィスカはすべてノジュールから成長、ノジュールは複雑。
  マットSnとSn0.5Cuではノジュールからだけでなくめっき膜からも直接成長、ノジュールは頂上にウィスカ状繊維構造が存在。
  めっき膜から直接成長したウィスカは先端に粒状物体が存在、膜内部、多分界面付近から成長。
  ウィスカが薄いと側面は単純で少数のファセットからなるが厚いと側面は複雑で多くのファセットからなる。




  温度が高くなると側面はファセットが消失。


sakuyama 富士通
  基体(基材、下地):黄銅(Cu40Zn)、りん青銅(C 5191P)、2μNi
  めっき::光沢Sn、マットSn、光沢SnCu
  厚み:2μm、5μm、10μm
  曲げで外部応力印加

   SnCu粒が微細。

  りん青銅の場合

   SnCuでは24時間で成長停止、抑制効果。

   めっき後1500時間後の応力印加したものはSnCu同様潜伏期間がない。潜伏期間はめっき後開始(応力印加後でない)

   周囲の粒径の10倍の粒からウィスカ成長。粗粒内部にボイド。

  下地効果

   黄銅では数は多いが長さは短い。

   黄銅では表面にZn拡散。数が多い理由。

  温度の効果

   高温では短く、ノジュール状、低温では長い、針状。


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