Pbフリーはんだの金属学的基礎


〔W〕 はんだ接合界面と金属間化合物IMC 

    接合界面joint interface 電極|はんだ
    相互接続interconnect 部品|はんだ|PCB

(10) Pbフリーはんだと相互接合

(10−1) Pbフリーはんだと金属間化合物IMC

 概観

(10−1−1) Pbフリーはんだに関係する金属成分間での金属間化合物形成

 Pbフリーはんだは、主成分のSnの他に、添加成分(Ag、Cu、Bi、Zn、In、Sb、Ni、Co等)、接合金属(電極:Cu、Ni/Au、
42アロイ、Pt等)、表面処理あるいははんだめっき成分(Au、Ag、Pd等)などの多くの金属成分と金属間化合物を形成する。
 主なはんだに関係する金属成分間のIMC形成の様子は下表の通りである。
 →はんだ添加成分と接続金属(電極)の状態図

 Snおよびその他はんだ関係金属間での金属間化合物形成(◎:IMC形成)
Au Ag Cu Pd Pt Sn Bi Zn In Al Sb Ni Co Fe Ti Cr
Au ss ss ss ss ss eu eu eu
Ag ss eu ss ss? eu eu eu eu eu
Cu ss eu ss ss eu ss eu eu eu
Pd ss ss ss ss ss ss
Pt ss ss? ss ss ss ss ss
Sn eu eu eu eu?
Bi eu eu eu eu eu ss eu eu eu
Zn eu eu eu eu
In eu eu eu
Al eu eu eu eu
Sb ss
Ni ss eu ss ss ss ss eu
 ss:固溶、eu:2相

 これらのうち、はんだバルクで特に重要なIMCはAg3Sn、Cu6Sn5、Au4Snなどである。
 接合界面ではCu電極ではCu6Sn5、Ni電極ではNi3Sn4が主に形成される。
 Sn−ZnはんだではCu−ZnあるいはNi−Zn系IMCが界面に形成される。

(10−1−2) はんだに関係する主なIMCの特性

(A) 物理的特性

 NISTのCu6Sn5、Cu3Sn、Ni3Sn4のデータ
 


Boesenberg
 Cu6Sn5には多形がある。η(六方)、η’(単斜)


Tsai


Leeによるデータ



Chromikによるデータ


Cech


Albrecht


Song




Klesper













DfR Solutions 




高尾
  
 はんだ:Sn-37Pb

Bergmann
 

Wang



Galyon


Zhou


(B) 結晶構造

Li

   Ag3Snでは147.92/6=24.65(unit cellにAg6個)、24.65/10.28=2.4
   PdSn4では262.86/4=65.71(unit cellにPd4個)、65.71/8.85=7.4
Lee




An

these

Nylen

 (a) Building block of the PtSn4 (b) and the β-IrSn4 (c) structure. (d) Building block of the PdSn4
(e) and the β-CoSn3 (f) structure. (g) Building block of the CoGe2 (h) and the PdSn2 (i) structure.
(j) Effect of a (0,1/2) shift and a (1/2,1/2) shift (k) between two adjacent 32.4.3.4 nets.



Mun

Downing


Nial
FeSn2
hexagonal a=5.317c=9.236 unit cell 4FeSn2 (12atoms) 226.1
       a=6.52c=5.31 225.8
FeSn
hexagonal a=5.292c=4.440 unit cell 3FeSn(6 atoms)

CoSn2
tetragonal
a=6.348c=5.441 4CoSn2

Ni3Sn4
monoclinic a=12.2 b=4.005 c=5.215β=105°2′unit cell 2Ni3Sn4




Song

*Cu3Snについては密度は8.9というものと11.3といものが混在

 体積 
  Cu3Sn: 27.30/3=9.1  Cu3SnでのCu1個についての体積
  Cu6Sn5:118.01/6=19.67 Cu6Sn5でのCu1個についての体積
        19.67/7.1=2.77倍

 Hare 
  AuSn4 75.0
        AuSn4/Au=7.4
  AuSn2 42.8
        AuSn2/Au=4.2
  Ag3Sn  
        24.65/10.28=2.4

      Au 10.21
      Ag 10.28   
      Pd 8.85



Miler


Au system




  γ:Cu5Zn8、Cu9Al4、Ag5Zn8、Co5Zn21、Fe5Zn21、Ni5Zn21、Pd5Zn21、Pt5Zn21
  β:CuZn、Cu3Al、Cu3In、AgZn、Cu5Sn、AuZn

Jee


MnSn2

Cu6Sn5
Cu3Sn
Ni3Sn4
Ag3Sn
AuSn4
FeSn2
CoSn2
PdSn4
PtSn4
Cu5Zn8(γ)
Ni5Zn21(γ)
AgZn3
Ag5Zn8(γ)
AuZn3
AuZn



(10−1−3) はんだ中のIMC


 Pbフリーはんだの中心となる、Sn−Cu系、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系はSnとAg及びCuとの間でIMCが形成され、これがはんだの
機械的特性に大きな影響を与える。
 この点がSn−Pbはんだとの大きな違いである。
 はんだ中のIMCは初晶、共晶、過飽和固溶体からの析出(時効)として形成される。
 βSnの過冷却が大きい場合や過共晶(共晶組成よりCu、Agが多い)では初晶として大きなIMCが形成されやすい。
 Sn−Cu系、Sn−Ag系、Sn−Ag−Cu系ではAg3Sn、Cu6Sn5の大きなファセット相が形成されることがある。

 はんだと電極との相互接合では接合金属(電極)つまり回路基板のパッド、表面処理・部品の端子めっき、特にCuやAu、Agの
溶解の影響が見逃せない。
 IMCの晶出ないし析出ははんだの分散強化ないしは析出強化をもたらす。
 しかし巨大なファセット相は応力集中源となり、疲労での亀裂発生源ともなる。 
 
 Pbフリーはんだでは共晶系はんだであってもSn−Pbのような典型的共晶組織を示すものはSn−Biなどで多くない。
 SnCu、SnAg、SnAgCuなどでは蜂の巣状組織がみられる。


(10−1−4) はんだ相互接合とIMC

 はんだ相互接合でははんだ成分同志によるIMCのほかに主にSnと接続金属(電極)、たとえばCuあるいはNiとのIMCが形成される。
 相互接合でのはんだの組織は放熱、電極成分の溶解等により界面の影響を大きく受ける。
 またエージングなどの影響を受ける。
 はんだはホモロガス温度が常温付近にあるため100℃前後の低い温度でも大きく組織が変化する。

 微量添加成分(電極からの溶解成分)の影響
   バルク
    IMC形成せず
    IMC形成に関与
     Snと新IMC相を形成
     微量添加成分同志でIMC相を形成
     既存IMCに固溶
   界面へ影響
    Cu6Sn5、Ni3Sn4に固溶(置換)
       Cu置換、Ni置換、Sn置換
    Cu、NiとIMC形成
    SnとIMCを形成し界面に堆積
          
Henshall



Cho



Choi 形態
 
 Jackson parameter αは
   α=ξΔS/R     ΔS=ΔH/T  ΔS:溶融エントロピー、ΔH:溶解熱
                     ξ:結晶学因子<=1
であり、
   α≦2  ノンファセット成長
   α>2  ファセット成長 
とされる。
 ChoiあるいはYangによると

 である。ただしξ=0.5としている。
 そのほか晶出相の形態に影響をあたえるものとして界面エネルギーがある。


Kim

Dunford
 





阪大Kim Agの影響








 脆性状破面                                 靭性破壊
 
 SAC396では大きなAg3Sn板が関係している。
 高Agは脆性と靭性破壊の混合状で大きなAg3Snが影響を与える、一方SAC305は靭性破壊を示す。

Cuの影響 Lu

 組成の影響ではLuによるとSn−3.5Ag−xCu X=0.0、0.5、1.0、2.0の場合は










IBM Kang kang

Kang IBM 
Weiqun Peng Aalto大博士論文

hartford


 Gong

 

 M.Erinc
共晶近傍SAC 387または405

参考




  Cu6Sn5








ウィスカ様IMC



 空洞でSnPbはんだで充填。

 QFPリードとPWBパッドから発生





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