(11−8−8) Kikendallボイド


@ 概観

Ho 界面反応問題

   Sn−Znはんだ以外では50℃以上の反応でCu6Sn5とCu3Snが形成され、Cu/Cu3Sn界面とCu3Sn内部にボイド形成。
   Cu3SnではCuの拡散がSnより大きいためである。



  はんだへのNi添加
    Cu3Snの抑制、Cu6Sn5が厚くなりNiがCuを置換し(Cu,Ni)6Sn5形成、2層で上は(Cu,Ni)6Sn5粒子の集合。


Aspandiar

  2004年TIがSACでのCSPはんだ接合で100℃以上のベークでKirkendallボイド成長を報告。
   成長速度は温度と指数関係。
   Kirkendallボイドが接合信頼性の低下を招くと述べる。
  2005年CiscoがBGA信頼性へのKirkendallボイドの影響を報告。
   激しくKirkendallボイドが形成される場合もあるがそうでない場合もある。
   ボイド形成を制御する要因は解らない。
   125℃x20日のエージングで衝撃強度は劣化しなかった。
   Kirkendallボイドのある界面は弱い結合でなかった。

  Kirkendallボイド機構

   異なる拡散速度の2つの金属が互いに界面を通して接触しているときに形成
   Cu−Snでは
    CuとSnの相互拡散でIMC形成(Sn近くにCu6Sn5、Cu近くにCu3Sn)
    CuはSnがCuに拡散するより非常に速くSnに拡散
    界面を通しての不均衡なCu−Sn相互拡散でCu側に原子レベルの空孔が残る
    これらの空孔が合体しCu−Sn界面のIMC内にKirkendallボイドとなる

  Kirkendallボイド性質
   熱エージング(温度サイクル含む)で形成
   表面処理、リフローピーク温度、リフロー数、IMC組成に無関係
   PCBのバッチ間で変動

  Intelの観察
   SACでKirkendallボイドは見られなかった

Hermans






Henderson 熱エージングにおけるCuパッド構造とのはんだ接合での界面ボイド形成

 背景情報
  3つの難題
   リフローと熱エージングにおけるCu消費速度の大きな変動
   はんだ接合界面ボイド形成から生じるはんだ接合の脆弱性
   界面ボイド形成不在でのはんだ接合の脆弱性
 Cuパッド構造とはんだ接合でのボイド形成
  2つの場合
   高Snはんだの場合
    SnpB共晶合金
    PbフリーSAC合金
   低Sn利用の場合
  ボイド形成現象
    界面、反応的、相互拡散過程の現れのように見える 
    1つ以上のボイド形成機構が動作しているように見える
    現時点でボイド形成機構の詳細はよくわからない
 Cuパッドへのはんだ付けでの界面構造



  観察
   BGA取り付け後:Cu3Snが存在するが非常に薄い、Cu6Sn5は厚さが不規則(帆立貝殻状)
   3回リフロー後:明確なCu3Snの存在、Cu6Sn5の粗大化とはんだへの剥離
   150℃での熱エージング:固相拡散でのCu3Sn層の肥大化、Cu6Sn5相は界面で厚みがより一様化
 高Snはんだとの界面ボイド形成の概観
  界面ボイド形成はCuパッド構造とSn基はんだのはんだ接合で発生
  すべてのCuパッド構造とはんだ接合である程度のボイド形成が示される
  ボイド形成が起きないのは典型的には最初のはんだ接合リフロー後で現れる
  界面ボイド形成は熱エージング中に起きる。
  ボイド形成はKirkedallボイド形成現象の例示
   界面、反応的、相互拡散過程
   拡散過程による空隙構造での原子空孔の合体
   局部的空孔過飽和が必要
  めっきCuでの厳しいボイド形成傾向
 最近の文献・・報告、新発見・・高Snはんだでのはんだ接合脆化
  Cuパッドはんだ接合脆化が促進
   衝撃試験要求
   Pbフリーはんだへの移行
  報告はKirkendallボイド形成機構に焦点
 2004年TI報告


   SAC、BGA、めっきCuパッドBGA構造、150℃x1000h →ロット間で大きな変動

 上:初期界面構造、下:熱エージング後

 分析結果
  SIMS
   めっきCuで典型的に C、O、S、Cl
   バルク組成差はない

 UIの発見
  すべてのCuめっき材料は高温貯蔵試験後にある程度の界面ボイド形成を示す
  試験温度でCu3SnではCuが主要拡散種らしい
  顕著な界面ボイド形成が起きないのは
   高純度組成加工材使用試験サンプル
  Cuめっきサンプルでボイド形成速度、界面ボイド量がはっきりと変化
  ボイド形成挙動はフラックス、表面処理、リフロープロファイル、はんだ合金に影響されない
  めっきCuの650℃でのアニールがボイド形成傾向を除去
  低温へのボイド成長速度のアレニウス外挿に失敗
   TIとUIとの結果で差、UIでも大きな差
  ある場合には実際条件で顕著なボイド形成が起こりうることを実験は例示

 同一条件での形態の差 空隙の大きさと分布

 Cu−Cu3Sn界面に空隙存在               Cu3Sn中に空隙存在

 偏析誘起界面ボイド形成例
  Sn−BiはんだでのBiのCu−Cu3Sn界面への偏析がボイド形成促進
 高Snはんだ合金へのZn添加効果 →Cu3Sn相形成を抑制し、ボイド形成除去

 現時点の状況
  高純度、塑性加工Cuとのはんだ接合の熱エージングは長期信頼性の危険を示すボイド形成をもたらさない
  高SnはんだとめっきCuパッドとのはんだ接合でのボイド形成は信頼問題の可能性がある

 低Snはんだ問題
  高純度蒸着BLM構造
  厚い最終Cu BLM層の使用で顕著なボイド形成
  Cu3Snがリフローで形成、リフローで高Snはんだより成長
  リフロー直後にボイドが見つかる、エージング必要ない
  Cu3Sn内にはボイドはほとんど存在しない
  Cu−Cu3Sn界面で界面近くのCu内に顕著なボイド
  Cu3Sn下の多くのボイドははんだ充填
  ボイド形成は空孔合体による(Kirkendallボイド)
  CuとPb−3Snの間の2μmのSn中間層でボイド消失


  高純度塑性加工Cuでも同様の結果

 低Sn利用性availability問題
  Sn欠乏の場合
   中央にヴィア・ボイド(フラックスと)が存在するCuパッドへのSAC305 BGAの取り付け

    DTC:(深い温度サイクル)−55〜125℃後のSn欠乏条件


 Snのヴィアへの拡散は制限(表面拡散かフラックス経由)
 ヴィア領域だけにCu3Sn形成

  リフロー3回+1000DTC+150℃x1000h




  SAC BGAが中央ヴィア、ボイド構造のCuパッド構造に取り付け
   Snの中央ヴィア領域への移動は表面拡散かフラックス残渣経由
   Cu3Snだけが中央ボイド下界面に形成
   ヴィア領域でのSn欠乏条件
   Cu−Cu3Sn界面での激しいボイド、Cu3Sn内にはほとんどない
   (場所的に)Cu5Sn5が始まり、Sn欠乏が終了するとボイド終わる

 低Sn利用性とCuパッド構造問題
 結論 
  ボイド形成はめっきCuパッド構造に限られない、蒸着Cu、高純度塑性加工Cuでも
  低Sn利用性に起因


 Kirkedallボイド成長

 リフロー上がりのIMC形態


 Cu6Sn5が帆立貝殻状でIMC層が凸凹で粗密があるとSnの拡散路が存在。

 アニール後(150℃、20日)のIMC形態


 Cu6Sn5が厚くなり、かつ一様化するとSnが拡散しにくくなる。
*写真はHermansから

 Kirkedallボイド成長の模式図


 何らかの原因でSnの供給が制限されるとCu3Sn成長が速くなりKirkedallボイド成長


A Cuパッド

 CuでのKikendallボイドはエージングでCu6Sn5の下にCu3Snが生成してくると、Cu3SnではCuがSnより
移動しやすいためにCu3Sn内部とCuとCu3Snの界面にKikendallボイドが形成されるとする。
 Cuの製法の影響を受け、圧延Cuでは発生しない、電解Cuで発生するとされる。

Wang Niドープと電解CuとOFHC(無酸素銅) 
 Sn2.5Ag、電解Cuのときだけ発生、はんだへのNi添加で減少。
  電解Cu


  2000hrの拡大


    Ni添加でエージングによりCu6Sn5は厚くなるがCu3Sn成長は抑制、ボイドも抑制。

  OFHC(無酸素高純度)銅


    OFHC銅ではCu3Snが成長してもボイド生成しない。
    差は不純物の影響であろう。


B Niパッド

Min
 Sn3.5Ag、Sn37Pb
 Ni3P内部にKirkendallボイド、スパッタNiには見られない。

 Ni3Sn4の形態

  リフロー後 Sn−37Pb


  リフロー後、Sn−3.5Ag


 エージング後 130℃x100hs

 (a)Sn−3.5Ag、(b)Sn−37Pb

 エージング後 Kirkendallボイド


 Sn−37Pb、170℃(a)100hs(b)625hs


 Sn−3.5Ag、216℃(a)16hs(b)225hs


 Sn−3.5Ag、190℃x400hs

 Ni3Pを通ってのNiの外への拡散を補う逆の拡散の不足がKirkendallボイドの原因。
 NiSnPがSnの拡散を阻害。NiPはアモルファスなのでNiPへの拡散困難。


C  Sn−Znはんだ

菅沼らによれば



 エージング初期にはんだ中に分散している板状ZnはCu5Zn8となり、界面のCu−Zn IMCは少し厚くなる。
 はんだ中のすべてのZnが消費されると、SnはCu−Zn IMC界面層を通ってCu基体へ拡散し、
主にCu基体とCu−Zn IMC層の間にSn−Cu IMCを形成する。
 はんだとCu−Zn界面層の界面に沿ってはKirkendallボイドが形成される。

Chang
 Sn−ZnはんだへのAg添加の影響、リフロー温度が高すぎる。



  Sn−9Zn/Cu界面には350℃、10秒リフローでは帆立貝殻状Cu5Zn8が界面に形成。
  20秒ではんだ側界面では帆立貝殻状Cu6Sn5がCu5Zn8に取って代わる。Cu5Zn8は平面状になる。
  更にマイクロボイドがCu6Sn5/Cu5Zn8層に生じる。菅沼らのSn−9Zn/Cu界面という報告と異なる。
  30秒でははんだ側界面に3.3μmの平面的IMC層形成、これはCu6Sn5。(1、2、3はCu6Sn5、4はCu5Zn8)
  エージングではCu側にCu6Sn5、はんだ側にCu5Zn8形成。
  C−Zn IMCは安定でなく、エージングでCu−Sn IMCに変態し、このときマイクロボイドが形成される。



 Sn−9Zn−3.5AgのエージングではCu6Sn5が形成される180℃、400hでマイクロボイドが存在しない。


 Sn−9Zn−1.5Ag/Cuに形成されたCu6Sn5のBF像、250℃、10秒でのはんだ付け。
 棒状相は単斜η’Cu6Sn5、マトリクスはηCu6Sn5。
 Ag固溶でηCu6Sn5はη’Cu6Sn5となる。


 Sn−9Zn−2.5Ag/Cu、180℃で1000h

 Agはマイクロボイド形成を遅延させる。
 Agで2層構造Cu6Sn5が形成される。
 Ag排除により固相反応で単斜η’Cu6Sn5から六方ηCu6Sn5に変態。


D 高Pbはんだ

石川
 無酸素銅板、Pb−5Sn(613Kピークプロファイル)、Sn−37Pb(503K)、Sn−3.5Ag、SAC305、SAC3510、後者3つは533K。
 リフロー後ではPb−5Snのみ明確なボイド、EPMAにより薄いCu3Sn。
 398K、1000hでもPb−5Sn以外明確なカーケンダルボイド見当たらず。
 Cu3Snだけが形成される場合だけにボイド発生。
 時効でCu6Sn5の下にCu3Snが形成することだけではボイド発生に不十分。

E Auとの反応

Lim Auスタッド・バンプを純Snはんだペーストでリフロー(条件?)し相互接続。
 3箇所(界面)でKirkendallボイド発生。(Al−Au、Au−Sn、Sn−Cu)












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