Pbフリーはんだの金属学的基礎
(5−2) Sn−Ag系
Sn−Ag系はSn−3.5Agに共晶点があり、融点は221℃といわれる。
共晶を形成するIMCはAg3Snで融点480℃。Ag3Snはファセット相となる。
Sn−Ag系は高温はんだとして従来からよく知られている。
分散硬化型で機械的特性もよいがSn−36Pbに比べ融点が高いのと、高価格なのが難点である。
基本的な組織はβSnの周囲にAg3Snを含む共晶組織をもつ構造である。
ただし相互接続構造では接続金属(電極のCu、Ni、Au等)の溶解によりこれらのIMCが特に界面付近に見られる
のが普通である。
(5−2−1) Sn−Ag系の組織と性質
阪大の菅沼
群馬大荘司ら
群馬大
NASA
Sn−Ag
Ochoaの冷却速度
Hartford
(5−2−2 )Sn−Agの改善
Sn−Agへの第3成分の添加による特性改善が種々行われている。
添加成分により析出IMCが変化する。
またβSnの過冷却の低下により組織変化が生じる。(
IBM レポート)
(a) Sn−Ag−X(X=Ni、Co等微量添加)
Sn−Ag−XへのNi、Co等の添加は接合界面のIMC層の改善を目的としたものである。
これについては詳しくは 〔W〕
接合界面と金属間化合物IMCで述べる。
Ni添加による形成相については
韓国先端科学技術研究所のチョイらによると下記のようになる。
ただし、接合金属、特にCuとの接合ではCuの溶解が形成相に大きな影響を与える。
たとえば
大阪大グループによるとCuパッドとの接合では(Cu,Ni)6Sn5あるいは(Cu,Co)6Sn5が特にCuパッド近くに
形成される。無電解N(P)/置換Auパッドの場合にはSn−Ag−CoではCoSn2が形成される。
大阪大の西川らによるとCuパッドの場合の組織はSn−Ag−Coで
Agは接合界面のIMC層に関係しない。
大阪大のグループによるとCo添加で若干濡れ広がりが悪化するという。
Φ800μmのバンプ
Co添加によって
KAISTのグループによるとSn−3.5Ag粒子にCo粒子を添加した場合(合金粒子ではない)、冷却時の凝固開始温度は
Co添加の場合218℃で一方無添加は192℃、昇温時の融点はすべて221℃であるので、無添加の過冷却29℃に対し、
Co添加では3℃と大幅に低下している。
また濡れ広がりは添加で0.5Coまでは若干低下するが、1.0Coでは無添加と同じになっている。
バンプのせん断強度
IMCは針状の(Cu,Co)3Sn2とされ、Co3Sn2のCoをCuが置換したものとなっている。
フォードのグループ
IBMのグループによると
クロス偏光像
冷却速度が遅い場合、Ni添加で結晶粒が減少する。
EBSD結果
Cuに対しSACでは〔001〕に近い単粒、Ni添加したものは〔110〕、〔100〕に近い柱状粒
(5−2−3) Sn−Ag−X(X=Zn、Al・・・微量添加)
(a) Sn−Ag−Zn
SnへのZnの溶解度は
東北大のグループ
L→Sn+ζ+Ag3Sn(E1)で216℃、Sn−3.7Ag−0.9Zn
L+ε→Sn+Zn (U9:包共晶)で194℃、Sn−0.04Ag−0.8Zn
Snリッチ側液相面
Znの微量添加によりβSnの過冷却の大幅な低下が起きる。
トルコ・エルジエス大によるとSn−Ag−Znの状態図は下記のようになる。
KAISTのグループによるとSn−3.5Agでは1ZnではAg5Zn8は生ぜず3Znでは生じている。
IBMのグループによると
Lee
またZnはSnより反応しやすいため接合界面のIMC層の変化、SnのIMCからZnのIMCへの変化が起こり、
はんだ接合特性に大きな影響を与える。
これについては詳しくは 〔W〕
接合界面と金属間化合物IMCで述べる。
Handbook of Lead-Free Solder Technology for Microelectronic Assemblies
(b) Sn−Ag−Al
北大別
北大
韓国先進科学技術研究所のグループはSn−AgへのZn添加が接合界面の改善に効果があることの類推から
Al、Si、Ge等も同様の期待がもてるとしてAl添加効果を調査した。
その結果Cuとの接合でははんだバルクと界面にCuAl2が生じるとしている。
界面構造については詳しくは 〔W〕
接合界面と金属間化合物IMCで述べる。
Sn−0.1Al
反応層の成長がみられない、IMCは剥離していく?
添加
英文
バンプ
Jee SnAg-xAl
Sn−Ag−Al Jee
As−reflowed Aged at 150℃ for 500hr
(5−2−4) Sn−Ag−X(X=RE、Ti)
La
表面のSEM像
大連工科大
Sn−3.5Ag−xRE、x=0、0.25、1.0wt%、RE=Ce&La
Tiの影響
共晶Sn-Ag+1at%Ti 浴240℃
Tiの添加はIMC成長には顕著な影響は与えないが、IMCを凸凹化する。
TiはCu−Sn IMCに固溶せず大きなTi2Sn3板となる。
Cu基体にTi含有はんだを使用する理由はないだろう。
Chen
Differential scanning calorimetery (DSC) results of Sn-Ag and Sn-Ag-Ti
solders (a) during heating (endothermal) and (b) during cooling (exothermal).
DSC results of Sn-Cu and Sn-Cu-Ti solders (c) during heating (endothermal)
and (d) during cooling (e...
Optical microscopy (OM) bright filed and cross-polarized images of Sn-Ag-Ti
solders as a function of cooling rate and Ti concentration.
OM bright filed and cross-polarized images of Sn-Cu-Ti solders as a function of cooling rate and Ti concentration.
Illustration of microhardness results of (a) Sn-Ag and (b) Sn-Cu base solders
undergoing different cooling conditions.
Illustration of microhardness results of (a) Sn-Ag and (b) Sn-Cu base solders
aged at 200 °C up to 100 h.
OM bright filed images of SA0..2Ti, SA0..6Ti, SC0..2Ti and SC.6Ti solders
aged at 200 °C for 0 h, 2 h, 30 h and 100 h.
*低融点化のためのBi、Zn、Inの添加は(6−4)
Sn-Agの低融点化