Pbフリーはんだの金属学的基礎
(6) 低融点系
低融点のPbフリーはんだとして従来からよく知られている共晶系にSn−58Bi(139℃)、Sn−9Zn(199℃)、
Sn−52In(117℃)がある。
菅沼による比較では
(6−1) Sn−Bi系
(6−1−1) Biの凝固による体積増加
Si、Bi、Sb、Gaは凝固で体積膨張する(Bi約3.6%、Sb約0.95%、Ga約3.4%)。
合金では単純な和とはならない。
大阪帝大・高瀬によるとSn−Bi合金ではBi約50%以上で膨張となる。
Pb−Bi系では
Bi80%以上で増加する。
(6−1−2) Sn-Bi系の組織と特性
台湾成功大
10BiではSnマトリクスにBiが均一に析出している。
Sn−Bi系状態図によると約20Biまで固溶し、常温での固溶量は約3%なので飽和固溶体からの析出となる。
30BiではBiは棒状となるという。この組成では亜共晶で初晶βSnと共晶組織となるはずである。
AA:100℃x24hエージング
東海大宮沢らによると共晶組成では初晶(βSn)とSnリッチ相(βSn)とBiリッチ相の共晶組織よりなるという。
Sn−Ag Sn−Bi Sn−Pb Sn−Znの比較
Sn−58Bi Sn−36Pb
韓国成均館大
Sn−58BiとCu、Ni−P/Cu基体の反応
シンガポール
常温でのBiのSnへの固溶は約3%でSn−3BiではBi析出は見られない。
10%BiでSnリッチ相の粒界にBiが析出。50Biでは初晶Snリッチ相のの周囲に
共晶組織、57Biは共晶組織、70Biでは初晶Biリッチ相の周囲に共晶組織。
菅沼らに
亜共晶では初晶βSnの部分ととβSn+Biの共晶部分よりなる。
Biは不定形で10μmオーダーの粗大な状態。
Sn−40Biでは初晶βSnには(過飽和固溶体から析出した)多量の微細なBiがラメラ状に形成。
Sn−40Biでは状態図からは138−171℃であるが実測は142−165℃付近。
なお21Bi以下では共晶組織をもたないはずであるが、140℃付近で吸熱反応することが知られており、
偏析によるものと考えられている。
またSn−7.5Bi−2Ag−0.5CuはβSn、Ag3Sn、Biよりなり
Bi偏析により140℃付近に小さなピークが存在。
中国 Cu合金との界面
HPのhuaらによると
降伏強度は室温では高いが110℃では低くなる。
耐熱疲労性は悪い。
(6−1−3) Sn-Bi系の改善
Sn−Bi系に微量の第3成分を添加することで機械的特性が改善される事が知られている。
その代表的成分はAgである。
AgはSn系合金の機械的特性改善の代表的元素でSn−Pb系でもAg添加が行われている。
Sn-Bi-X(X=Ag、Cu、Zn、Sb)
富士通のグループによると
Li 王立大によると界面、微量添加Cr、Si、Zn、Ag、Au、Al
無電解4.1μmNi/0.9μmAu
スパッタTi−W/6μmCu(かなり強引!)
Cu添加でNi(P)に対しCu−Sn IMCが形成されNi3Sn4、Ni3Pの形成が抑制される。
Zn添加でCu基体に対しCu−Zn IMCが形成され200℃ではCu消費が抑制される。
上西
Sn−Bi−Ag
日立芹沢らによるとSn−57BiへAgを添加したときの状態図は
Cu基体
SnBiAg HP Gleason バルク
Sn−57Bi−1Ag、Sn−3.9Ag−0.6Cu
ヤング率
菅沼
粗大な初晶Ag3Snの影響から最適Agは0.5wt%。
Sn−Bi−Cu
豊田中研高尾らによるとSn−Bi系は30−45%Biで高い延性を示すようになり、
Sn−40Bi−0.1Cuで138−170℃の固液共存範囲で、Cu食われもSn−36Pbよりかなり少ないという。
清華大
Sn−Bi−Sb
富士通のグループによると
メキシコのサン・ルイス・ポトシ自治大のグループによると
http
Sn−58Bi−3Sbで固液共存範囲は138−148℃で、Sn−58Bi−6Sbで138−149℃となり、
Li
Representative SEM images showing the interfacial microstructures of the
Sn-Bi/Cu samples: (a) as-reflowed;
(b) 200 °C; (c) 220 °C; and (d) 240 °C
SEM images showing the interfacial microstructures for the different systems:
(a) Sn-56.8Bi-2Al/Cu; (b) Sn-56.8Bi-2Cr/Cu;
(c) Sn-56.8Bi-2Si/Cu; (d) Sn-57.4Bi-1Nb/Cu; (e) Sn-57.4Bi-1Pt/Cu; and (f) Sn-57.4Bi-1Cu/Cu.
SEM images showing the interfacial microstructures for the Sn-57.4Bi-1Zn/Cu samples: (a) as-reflowed;
(b) 200 °C, 12 h; (c) 220 °C, 12 h; (d) 240 °C, 12 h; (e) 200 °C, 120 h; (f) 240 °C, 48 h
Sn−Bi−RE
北京工科大のグループが
リフロー状態
エージング後 80℃、168h
Bath
チップ部品との接合状態
(6−1−4) Pb、Zn、Inの混入
低温相東芝戎谷ら
Zeng Pbコンタミ 状態図
Pbの混入により融点96℃の52Bi−30Pb−18Sn形成の可能性がある。
これにより
Pb汚染の影響
NISTによるとPb汚染によりSn−Biはんだでは接合部に空隙が生じることが大きな問題となる。
この空隙は通常熱疲労後に部品電極と基板パッドの間の狭い空間に生じる。
これはこの部分がフィレット部より後に凝固するので空隙や熱間割れが生じやすいのと、更に96℃以上の熱疲労により
3元共晶相が形成されるためである。
モトローラ
Sn−18Bi−40Pb 包晶 137℃
Sn−51Bi−32Pb 共晶 96℃
Sn−36Pb−2Ag 共晶 179℃