(17−3−2) エレクトロ・マイグレーション

  エレクトロ・マイグレーションは金属配線で電流が流れているとき、金属イオンが電界による静電力と
 電子の衝突(電子風)により移動(ドリフト)する現象である。
  この金属イオンの移動(拡散)は電子の流れる方向におき、カソード側からアノード側に移動し、
  カソード側ではボイドが形成、成長し断線にいたる。
  一方アノード側では金属イオンが流れ込みヒロックやウィスカが成長し短絡を起こす。
  これは半導体(集積回路)の配線(Al、Cu)でおきる現象だが、はんだ接合、特にバンプでも同様の現象がおきるとされる。
  拡散は粒界、表面、格子拡散などがあるが、通常は粒界拡散が主となる。

Al ヒロック




Pathak

  エレクトロ・マイグレーションの内容は
   電流誘起マイグレーションCM(移動する電子流)
   応力誘起マイグレーションSM(熱機械的応力勾配)
   温度誘起マイグレーションTM(温度勾配)
   原子的マイグレーションAM(原子濃度勾配)



  温度勾配は拡散とTMに影響を与える。
  AMは他の力と反対する抵抗的力となる。

 *広義のエレクトロ・マイグレーション、通常(狭義)には電流誘起マイグレーションCMをエレクトロ・マイグレーションとし、
 応力誘起マイグレーションSM(熱機械的応力勾配)、温度誘起マイグレーションTM(温度勾配)はそれぞれ
 ストレスマイグレーション、熱マイグレーション(熱拡散)といい、原子的マイグレーションAM(原子濃度勾配)は後方応力
 (バックストレス)と称する。

山中 はんだ接合(バンプ)の場合
  SAC305、接合部高さ約100μm、180℃、10kA/cm2
 
  カソード側でボイド形成、電極溶出しアノード側へ、アノード側でIMC形成。
  カソードは原子密度が低くなり、アノードでは原子密度が高くなり、密度差で原子をカソード側に戻そうとする
 反作用(バックストレス)が働く。

Chen

  電子風力と後方応力(バックストレス)
  エレクトロマイグレーションではエレクトロマイグレーションによって生じる原子密度差による応力勾配による
 反作用力である後方応力(バックストレス)が生じる。

   J:原子流束、C:原子濃度、D:有効拡散、Ω:原子容積、Z:有効電荷数、ρ:抵抗、j:電流密度、dσ/dx:応力勾配
  ここで後方応力Fback
     Fback=Ωdσ/dx

  有効電荷数Zは静電気力Fesと電子風力Fwdから(横川

  J=0ではマイグレーションはおこらない。すなわち
   
  ではエレクトロマイグレーションはおこらない。
  すなわち電流密度と配線長の積(臨界積)は定数となる。
   
    Δx:Blechの配線長


IBM
  エクトロマイグレーションは導電電子によって引き起こされる運動量移転に起因する導体の原子の徐々な運動を
 原因とする物質輸送。
    これは電子の流れ方向に沿っての正味の原子輸送を起こす。
    アノードに原子が蓄積し、カソードにボイドが発生する。
    エレクトロマイグレーションによる典型的破壊はカソード側に起きる。
    電流密集によりボイドはまずはんだ接合の角におきる。
    ボイドの拡大で電気的損傷が起きうる。
    エレクトロマイグレーションはまたIMC形成に影響する。
  BEOL EMと同様の機構でこの場合、形状によって促進されることはより少なくはんだ材料の低融点により多く
 促進される。
  (BEOL back end of line 配線形成工程)

 
















  要約
   エレクトロマイグレーションは2峰性(バイモーダル)型破壊分布を呈する。
     (001)粒方位は顕著な早期劣化を呈する。
     非(001)バンプは製品環境では決して故障しない
      相互接合系、製品詳細に依存
   EM性能での粒方向の理解が鍵
     性能に影響する(001)粒方位効果に対する防御が必要
     EM効果を極小化する設計・導体(配線・UBM・パッド)構造選択
      はんだ系、UBMの選択が結晶方位に影響
      はんだ接合での均一な電流の流れをもたらす電流経路の最適化




Nah
  なぜはんだではエレクトロマイグレーションが重要か?


  臨界積(JEM×L、L:ブレックの配線長)

   臨界積以下ではエレクトロマイグレーションは起きない。


   はんだでは臨界積が小さい


  はんだ接合でのエレクトロマイグレーションの特有な特徴
    1.形状(配線からバンプ)
       電流密集と局部的ジュール加熱
       ボイド形成誘起ジュール加熱とはんだ接合の溶融
    2.はんだ合金の共晶組成
       組成の関数として化学ポテンシャル勾配がない
       大きな組成勾配または再分布を引き起こす得る
    3.速いUBM溶解
       速い拡散とはんだの貴な成分と貴に近い成分の反応
    4.多様な駆動力
       熱機械的、化学的、電気的
    5.SnとSn基Pbフリーはんだは異方性導電体 
       エレクトロマイグレーションでの粒回転

   <電流密度分布>


   <共晶SnPbはんだでのボイド伝播>


    はんだ接合の抵抗変化はボイド形成と伝播に敏感ではない。

   <はんだ接合での溶融>


   <Sn−Ag−Cuはんだ接合での破壊モード>


   <PbフリーめっきバンプのUBM:界面反応とエレクトロマイグレーション>



  エレクトロマイグレーションでのUBMとのはんだ反応
   ・カソードへのSn拡散の促進
   ・厚いUBMの溶解
   ・はんだ接合での非常に多量のIMCの形成

   <共晶SnPbはんだでのエレクトロマイグレーション駆動相分離>


   <厚いUBMでのSnAgCuはんだバンプ故障>

   厚いUBMが薄いUBMより平均故障時間MTTFが長い。

   <エレクトロマイグレーションによる機械的性質の変化>

   はんだ:共晶SnPb?


   <長さ依存性>



   <Snでの粒回転>

   Pbフリーはんだで粒回転がおき得る。


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