Pbフリーはんだの金属学的基礎
〔\〕 基板実装(アセンブリ:組立)とPbフリーはんだ接合
(18) 高温リフロー及び外観問題とPbフリーはんだ接合破壊モード
(18−1) 高温リフロー問題
共晶Sn−Pbの融点183℃に対しPbフリーはんだの主流の共晶近傍SnAgCuでは融点は220℃近辺と40℃近く高くなっており、
そのためリフロー温度もかなり高くなり、基板や部品に対しての耐熱性の要求も厳しく、一方、部品の耐熱性の限界から、
プロセス・ウィンドウ(リフロー温度範囲)は小さくなり、厳しい温度管理が必要となる。
(18−1−1) Pbフリーはんだの融点とリフロー
<各種はんだの融点>
Frear
<プロセス・ウィンドウ>
MANHATTAN計画 Phase1 2009
プロセス・ウィンドウがPbフリーでは狭まる。
IBM
KURTZ
<リフロー・プロファイル>
JEITA
富士通テン
<フロー(ウェーヴ、噴流式)・プロファイル>
横河
プリヒートから1次噴流への移行時の温度低下を抑制する。
ウェーヴでのTH部品の基板裏表での温度差
Henkel
Alpha−Fry
TI
ディップ、ウェーヴ、リフローの温度プロファイル比較
MANHATTAN計画 Phase1 2009
リフロー
気相はんだ付け
レーザーはんだ付け
(18−1−2) 基板と部品あるいはパッケージ材料の耐熱性
@ 回路基板材料
<NEMA規格>
回路基板のグレード呼称はNEMA(ANSI)規格(積層板の規格)を使用するのが一般的である。
JISやIPC、IEC、MIL、ASTM、ANSIなどもあり、ASTM、ANSIはNEMAと呼称・グレードは類似しているがJISやIPC、
IEC、MILは全く異なる。
NEMA規格にはポリイミドやフッ素樹脂の規格はない。
NEMA規格 |
基材(強化材) |
樹脂 |
備考 |
X、XX、XXX |
紙 |
フェノール |
・Xが増えるほど(樹脂量多くなり)電気的特性向上、機械的特性低下。
・後付のPは熱間打抜加工性、PCは冷間打抜加工性を意味する。
・安価で加工性がよいが耐燃性、耐湿性に劣る。
・色は黄褐色から褐色。 |
ES−1、2、3 |
紙 |
メラミン |
・ES−1 表面−黒・灰、芯−白
・ES−2 表面−黒・灰、副芯(メラミン)−白、芯−黒(フェノール)
・ES−3 表面−白・灰、芯−黒(フェノール) |
C、CE、CF |
キャンヴァス布 |
フェノール |
・CE、LEは電気的特性でそれぞれC、Lより優れている。
・L、LEは電気的特性、吸湿性でC、CEより優れている。
・CFはCの難燃性のグレード。
・色は黒、黄褐色、赤、黄色。
*キャンヴァスcanvas(太糸コットン布)、リネンlinen(細糸コットン布) |
L、LE |
リネン布 |
G2、G3 |
ガラス布 |
・同じ樹脂では数字が大きくなるほど特性がよくなる。
・G7(シリコン系)はクリーム色か白色。G5、G9(メラミン系)は灰色から褐色。 |
G5、G9 |
メラミン |
G7 |
シリコン |
G10、G11 |
エポキシ |
(GPY) |
ポリイミド |
・ANSI規格 |
N-1 |
ナイロン布 |
フェノール |
|
FR−1、2 |
紙 |
フェノール |
・XXXPCの難燃性のグレード。 |
FR−3 |
エポキシ |
|
FR−4、5 |
ガラス布 |
エポキシ |
・G10、G11の難燃性のグレード。
・色は黄色から緑色。 |
FR−6 |
ガラス不織布 |
ポリエステル |
|
CEM1、2 |
表面−ガラス布
芯−紙 |
エポキシ |
・複合材
・CEM−1、3、CRM−5が難燃性のグレード。 |
CEM3、4 |
表面−ガラス布
芯−ガラス不織布 |
CRM5、6 |
ポリエステル |
GPO−1、2,3 |
ガラス不織布 |
ポリエステル |
・後付のPは打抜加工性
・難燃性
・色は黄褐色から赤色。 |
ガラス:Eガラス(無アルカリ)
FR:flame rsistant
ガラス布:織、クロス、ガラス不織布:マット
*PTFE樹脂ではガラス布基材でGT、GX、GY、ガラス不織布基材でGP、GRがMILの呼称。
その他アラミド不織布基材でエポキシ樹脂やポリイミド樹脂(IPC-4101/55、IPC-4101/56)
ガラス布基材ではPPE樹脂(IPC-4101/90:難燃性、IPC-4101/91)、シアネートエステル樹脂(IPC-4101/70:難燃性、
IPC-4101/71)などがある。
*プリプレグprepreg:ガラス織や紙などの基材に樹脂を含浸させたもので、樹脂はBステージという半硬化状態。
通常プリプレグをコア材(両面銅箔の基礎材)、銅箔と積層し加熱・加圧成形することで積層板laminate(多層基板)が作成される。
積層板laminateの区別・分類として基材(紙、不織ガラス繊維、織ガラス繊維など)と樹脂(フェノール樹脂、
エポキシ樹脂など)が使用されるためプリプレグと積層板の区別があいまいとなっている。
*PCB、PWB、PCA、CCA
プリント配線板PWB(printed wiring board):部品搭載(実装、アセンブリ)前の生の基板
プリント回路基板PCB(printed circuit board):部品搭載後の基板、PCA、CCAも同様。
PCA(printed circuit assembly)
CCA(circuit card assembly):非公式ではPCBは生、アセンブリ両方の基板に使用されるのでIPCはCCAを好む。
<代表的グレードの規格対照>
Panasonic
電子情報通信学会知識ベース
<主な樹脂の特性>
AMI.AC
<BTレジン>
綾野
BTレジン:トリアジンモノマーとビスマレイミドから合成されるトリアジン環とイミド環構造をもつポリイミド樹脂。
金原
エポキシ変性BTレジン
BTレジン(CCL−HLxxx))の特性
<積層材の構造>
本州製紙
ガラス不織布とガラス布
ガラス・マット(不織布):外観 ガラス布(
No)
UNI−OBUDA
上からレジスト、配線、積層板(ガラス布強化)
NITE
Panasonic
Oslo大
<ソルダレジスト(ソルダマスク)>
稲垣
ソルダレジストの着色
緑色:フタロシニアン
ハロゲンフリー化で青色→2色の顔料で緑色化
<Pbフリーと基板の不良>
DfR 2005
A 部品あるいはパッケージ材料
IBM
・耐熱性が問題となりやすい部品 ・・・表面実装部品SMD
アルミニウム電解キャパシタ、タンタル電解キャパシタ・・・電解液とその封止、モールド樹脂など
フィルムキャパシタ
フーズ
インダクタ、ワイヤ・コイル
非固体リレー
LED
SMTコネクタ
電気2重層キャパシタ
Visteon
耐熱性に注意が必要な部品(SMD)
電解キャパシタ
インダクタ
レゾネーター
水晶振動子
TYCO
高分子の熱性能
典型的エンジニアリング
熱可塑性プラスチックの熱変形温度HDT
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PPE:ポリフェニレンエーテル
PA:ポリアミド
SPS:シンジオタクチックポリスチレン
PPS:ポリフェニレンサルファイド
PPA:ポリフタルアミド
PCT:ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート
LCP:液晶ポリエステル
エンプラ技術連合会
熱可塑性樹脂
スーパーエンプラ
・ポリフェニレンサルファイド(PPS)
・ポリアリレート(PAR)
・ポリスルホン(PSU、PSF)
・ポリエーテルスルホン(PES)
・ポリエーテルイミド(PEI)→熱可塑性ポリイミド(TPI)
・ポリアミドイミド(PAI)
・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
・液晶ポリマー(LCP) →全芳香族ポリエステル
(
ポリオキシベンゾイルPOB)
汎用エンプラ
・ポリアミド(PA)
・ポリカーボネート(PC)
・ポリアセタール(POM)
・変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)
・ガラス繊維強化PET
・フッ素樹脂
熱硬化樹脂
・フェノール樹脂
・尿素樹脂
・メラミン樹脂
・アルキド樹脂
・不飽和ポリエステル
・ポリウレタン
・シアネート樹脂
・エポキシ樹脂
・ジアリルフタレートDAP
・シリコーン樹脂
・熱硬化性ポリイミド→
ビスマレイミド、BTレジン
電子部品パッケージの成形方法
・トランスファー(移送)法:主にBステージ状態の熱硬化性樹脂、ポット部で樹脂タブレットを溶融させランナー・ゲート
と称する通路を通してプランジャで金型のキャビティ(空間)に押し込む。ICの代表的成形法。
東芝
・コンプレッション(圧縮)法:溶融した樹脂に浸漬し加圧。
TOWA
・インジェクション(射出)法:主に熱可塑性樹脂のホットメルト法、溶融した樹脂をスクリューで型に押し込む。
KDA
・ポッティング((注入):ケース(容器)に液状の樹脂を注入し硬化させる。2液性樹脂など。ICでは利用されない。
松栄電工