(19−2−4) はんだボール、葡萄状化(グレーピング)と未溶融
はんだボールと一般的に呼ばれている現象とそれに関連する現象について述べる。
通常はんだボールというとチップ部品の脇に形成されたものを言うが、これをはんだビードとし、
はんだボールと区別している場合が見られる。
以下のように定義してみるが厳密な区分けは難しい。
・はんだビード(はんだ玉bead)あるいはキャピラリー・ボール、サイド・ボール
主にチップ部品、リードレス部品の側面に、ほとんど1個で大きなものが、リフローで生ずる。
パッドからはんだペーストがはみ出た状態でリフローでフラックスの粘度が下がり部品の下面と
基板面間に毛細管現象で広がり、この状態ではんだが溶融すると部品の側面に出てくる。
多くははんだ量の調整(マスク開口比、開口形状)などで改善され、マスクをランドより小さくし、
特に対向部側の角を丸める、ホーム・ベース形などというのが考案されている。
弘輝
奥原電気 はんだビード発生の様子
はんだペーストが部品の腹に広がっている
フラックスが融け始める
フラックスが広がる
はんだが溶け始め、部品が沈み込む
はんだボール出現
部品が一気に沈み込んだときにフラックスとともに溶融したはんだが押し出されるように見える。
マスク形状例(特開平07-273441)
・はんだボール
リード端子やフィレット周辺あるいは部品からかなり離れて生ずるはんだ球ないし粒。
ランドからはみだしたペーストがペーストの劣化、リフロー条件不適切等によりフラックス効果が効かず、はんだ粒が酸化し、
部品のフィレット周辺に小粒を形成する場合、印刷不良、ペースト飛散などでソルダマスクなどの非金属部にはんだペーストが
置かれた場合など。
technolab Indium
・はんだ飛散、撥ねspattering、splattering
吸湿や昇温が急速で溶剤、水分の突発による。
ペーストでは溶融前に飛散すると前記はんだボールの原因となる。
フローや手はんだなどで溶融状態で飛散すると、きれいな球形にはならないで塊状になってあちこちに発生する。
・不完全溶融、未溶融
ランド上でほとんど元のはんだ球、あるいは凝集状態程度の大きさの粒である程度部分的溶融を示して存在しぶつぶつを呈する。
ペースト劣化、リフロー条件不適切(プリヒート高すぎる、長すぎる等)によるフラックス効果不良、
あるいは特に微小ランド(部品)の場合に生じる。
微小ランド(部品)の場合はフラックス不足あるいはプリヒートでの流失、温度が上がりにくいなど。
TECHNOLAB 不完全溶融
・葡萄状化(グレーピングgraping)
はんだ表面にぶつぶつが形成された状態であるがはんだ接合(バルクはんだ)は健全。
リフロー条件不適切によりフラックスが十分効かず表面のはんだ粒が酸化。
*実際には言葉の用法としてグレーピングと不完全溶融の区別はない場合がある。
Henkel
一般的原因は
保管が不適切でペースト劣化・・・溶剤飛散、フラックス劣化、はんだ粉酸化、吸湿など。
ペースト劣化では通常印刷性に問題を生じる。
ペースト印刷に問題・・・にじみ、印刷ずれでランド外にはんだ存在。マスク上のペースト管理に問題
(古いペースト混入、ペーストの使いまわしすぎ)
マスク、PCB設計に問題・・・マスクが厚い、マスク/ランド開口比不適切等ではんだがランドからはみ出る。
マウントに問題・・・部品の押し過ぎではんだがランドからはみ出る。
リフロープロファイルに問題・・・プリヒート不適切ではんだ溶融前にフラックス効果消失、ペーストがだれる(この場合は
ペースト自体に問題がある場合もある)。
昇温が急速で溶剤、水分が突発しペースト飛散。
ペースト印刷での問題例
AIM
KOKI 日本語
AIM はんだボールとはんだビード
はんだボール:ペーストの酸化またはペーストがPCBに存在することによる場合がある。一般的に溶融はんだの飛散による。
はんだビード:多くはペーストが多すぎることによる。
KOKI
プリヒートが高すぎても、低すぎても良くない。
キャピラリーボールは液体成分が多いと発生しやすく、プリヒートが低いと発生しやすい。
プリヒートが高いと加熱ダレ、未凝集が発生しやすい。
未凝集はペースト活性力が不十分だと発生しやすく、高温プリヒートではペースト活性力が低下しやすい。
はんだペースト量が少ない(フラックス量少ない)とプリヒート条件が厳しく、未凝集が発生しやすい。
はんだペースト量が多いと加熱ダレ、キャピラリーボールが発生しやすくなる。
クックソン
無秩序はんだボール
主なはんだ溜まりから離れて形成される種々な径の小さな球形粒子。
マスクの裏に付着したはんだがはんだマスクに転写、あるいは溶媒、水分などが急激に蒸発しペーストが飛散、ペースト劣化。
はんだ飛散spattering
現象ははんだボールと似ているが、はんだが導体に存在する場合。
印刷での汚れ、アウトガスによるはんだ飛散。
チップ間はんだボール
Kester
Off-pad solder balling
Mid-chip solder balling
John Rose
Solder beading
Solder Paste Segregationペースト分離
主はんだ付け部から分離したはんだペースト塊から生じる。
最初に存在したペーストの個々のはんだ粒子より大きい。
通常はんだダレで生じる。
Solder Splatter撥ね
パッドからはなれて見つかる。
急加熱でペーストの溶媒蒸発で生じる。
不適正な基板保管も寄与要因。
Solder Splash飛散
Solder SplatterがNi/Au表面に生じた場合。
Lack of Coalescence凝集不足
数個のはんだの球ballがはんだペーストのリフロー領域に合体(凝集)しないで存在。
ルネサス
未溶融(未かえり):はんだ粉末が(はんだ接合部表面に)残っている状態
(全くリフローされない状態から大部分がリフローされているが表面に粉末はんだが存在している状態まである)
加熱不測、はんだペースト劣化(経時変化)、プリヒート過剰
パッドまたは部品周囲にはんだボールが存在
印刷にじみ、加熱だれ、キャピラリ現象
はんだ表面にはんだボールが存在
加熱不良、ペースト劣化(経時変化)、プリヒート過剰によるペースト劣化
KOKI 日本語
マイクロ・はんだボールとはんだビーディング
マイクロ・はんだボール(はぐれボール)の原因
はんだ粉の初めからの酸化
リフロー過程でのはんだ粉の酸化
印刷後、部品搭載、リフローでのはんだペーストのダレ
ステンシル(はんだマスク)からのはんだ粒子の転写
はんだビーディング
対策として有効なマスクの開口設計例
開口率はパッド領域の60〜70%。
リフローでのフラックスの挙動
リフローでのペーストの挙動
Cypress
毛細管効果に注意、ペースト粘度低下でフラックスが流出。
ウェッビング
AIM
ウェーヴでプリヒートが高すぎるか長すぎる、フラックス効果が不十分
TECHNOLAB
NASA
splatter webbing
水分汚染
はんだ飛散
Hakko Spatter
・葡萄状化(グレーピングgraping)
Scalzo
はんだ接合の表面のはんだ球のフラックスの保護効果が失われ、バルクはんだへ完全に合体しないと生じる。
フラックス消費(流失、揮発、突発)の原因は長時間リフロー、昇温条件など。
SMART GROUP
0201のような小さなチップ。
はんだ接合は健全だが、はんだ球は完全にははんだ接合のバルクにリフローされていかない。
小はんだペースト印刷部がPbフリープロファイルの高温での長時間曝露でフラックス性能が低下。
・その他の表現
JAXA
ユズ肌orange peel:はんだ表面がさらつく、凸凹が著しい、ブツブツがある。
ESTEC orange peel
Cookson
粒状接合grainy joint または冷接合cold joint
原因・対策
熱量不足
酸化とフラックス消費を小さくするようにリフロープロファイルを変更
イモ付け、コールド・ジョイント
HAKKO はんだ付け部分につやがなくザラッとした感じ。
はんだボール等の原因
パナソニック
マイクロブリッジ
パナソニック
微小チップ部品(0402)のPbフリーはんだによる不濡れ
ペースト量が少ないと、プレヒートが高いと、はんだ粒径が小さいと不濡れが増える。
藤倉
はん:だSAC305、粒径20〜32μm
急速(短時間)加熱が不良少ない。
回転ずれと濡れ不良が判別しずらいが、Bで多いのが濡れ不足という言及からすると、パッドサイズの大きいAが
少ないのは良いが、Bではパッドサイズが小さくなるにつれて濡れ不良が少なくなっているのはどうしたことか。
位置ずれはパッドサイズの最も小さいB3で急激に増えている。
SMD(はんだマスク規制)パッドがはんだボールが多いというのはパナソニックと一致。
Panasonic LGAの場合
IPC
はんだペースト はんだボール試験