(11−8−4) IMC剥離

 IMC剥離spallingとは溶融はんだと基材(パッド)との反応で界面に形成されたIMCが長時間反応あるいは複数回リフローで
界面から遊離していく現象である。
 またリフロー中(長時間リフロー)だけでなくエージングにより固体状態で剥離していく場合もある。

 成因は
  Cu、Niが完全IMC化し濡れの悪い下地(Cr、Ti、TiW・・・高融点金属・合金)から剥離
  2層構造となり層間で剥離
   相の異なる場合  
     Cu6Sn5とNi3Sn4
     Cu6Sn5とCu3Sn
   形態、組成の異なる2層(Ni固溶量の異なるCu6Sn52層など)
  特定成分濃縮層形成
   無電解Ni(P)でのP濃縮層形成
  各種応力
   はんだ液体流動力、熱応力
などとされる。

 剥離の状態からは
  液相での剥離
    接合部全体でIMCが層状に剥離(大規模剥離)
    部分的に小塊となって遊離

  固相での剥離
    エージングで2層となり層状に剥離(大規模剥離)
    部分的に小塊となって遊離
 が見られる。

(1) 大規模剥離

Kao spalling Kao2 →Yang(4種の大規模剥離)参照

・正常剥離regular spallingと大規模massive剥離

◎ 正常剥離・・・基材反応層の枯渇
   →UBMなど、Cu(あるいはNi)が薄く、その下地がCrなどのはんだとの濡れが悪い構造の場合


◎ 大規模剥離・・・はんだ中の反応成分の枯渇、平衡相は反応成分に敏感 →反応成分の枯渇による平衡相の変化
   SnAgCu/NiではCu 平衡相:(Cu,Ni)6Sn5、(Ni,Cu)3Sn4
   SnZn/CuではZn   平衡相:CuZn、Cu6Sn5
   Pb5Sn/CuではSn  平衡相:Cu3Sn、Cu6Sn5
   Pb5Sn/NiではSn  平衡相:Ni3Sn4、Ni3Sn2(Ni3Sn)

 *Kaoらの大規模剥離と称する現象はIMC層が帯状になって広い範囲で剥離する現象を指し、局部的に小片、小塊となって
 はんだ中に分散していく現象ではない。
  初期には部分的に剥離はしても広範囲にわたり帯状の繋がりは維持されている

 長時間反応による(Cu,Ni)6Sn5の大規模剥離


 大規模剥離を誘引する因子
   はんだ体積の減少
   長時間リフロー
   低初期Cu量
   Auの存在

 大規模剥離でおきる問題


Yang 4種の大規模剥離
・SnAgCu/Niでの大規模剥離
  下層の(Ni,Cu)3Sn4から上層の(Cu,Ni)6Sn5が剥離。
  剥離は接合の全体に渡って起きている。
 

  はんだ量の影響
   はんだ量が減少するとCu量低下も急激になり、剥離がおきやすくなる。
 

・SnZn/Cuでの大規模剥離




Wang ハルビン工科大 Sn−0.7Cu−xZnとCu



*SnZn/Niでも当然起こりうるだろう。
Chen


・Pb5Sn/Cuでの大規模剥離



・Pb5Sn/Niでの大規模剥離


Tsai
 Cu3SnとCuの間にPbリッチ相が形成され、大規模剥離が起きるが高Pb−SnではSnが多くなると剥離は起きにくくなる。




Peng
 剥離を応力で説明。


◎ 対向電極間の相互作用の影響

  反応成分(Cu)ははんだ成分だけでなく、対向電極からの溶解でも供給されうる。

Cheng
 無電解Ni/0.03Au、Sn−3.5Ag
 Ni|Sn−3.5Ag|Cuでの相互作用の影響




電解Ni/1μmAu



*エージングでは接合の局部で小片(小塊)となって遊離しているように見える。

・はんだ体積による相平衡変化の差
Ho





◎ SAC387+X(X=Zn、Al)

Kostadia
  1.5〜5%Zn、0.5〜2%Al、260℃x60s
  はんだ量の影響

 SAC+Zn


 1.5Znで2層、上のCuZnはCu基材からはがれ、界面にCu6Sn5形成。
 5ZnではCu5Zn8の1層。



  はんだ量の多いはんだ槽では1.5ZnでCuZnの1層。
  エージングではCuZnがバリア層となりSAC/Cuに比べIMC成長抑制。

 SAC+Al


 低はんだ量系ではAl2Cuははんだマトリクス中に認められる。



 はんだ槽との反応では界面にAl2Cu連続層が形成される。
 始めはCu6Sn5が形成され、その表面にAl2Cuが個々の粒として核生成。
 Al2Cuの柱状粒が発生。



  エージングでAl2CuはCu3Snに変化。
  エージング後にはCu5Sn5が存在しない。




(2) 反応層(はんだ付け層)の枯渇による剥離

 UBMなどではCuあるいはNiからなる反応層(濡れ層)が薄く、その下がSnと反応しないCrなどの構成であり、
Cuが完全IMC化すると連続層から球状化層となり剥離していく。

Liu Cr/Cu UBM
 反応層(Cu)の枯渇(完全IMC化)


 Cuが完全IMC化(a)、IMCが球形化し始める(b)、IMCがCr表面から離れはんだ中へ移動、つまり剥離(c)、
 剥離が完了し、Cr表面にはIMC存在せず、はんだが直接Crと接触。





 *文中ではリフロー時間
 端部からIMCが剥離していく。


Liu
 Cr/CuパッドでのCuの完全IMC化によるIMCの剥離とそれに伴Crのはんだ不濡れ(弾き)については、
これが生じない場合もある。
 自然酸化膜をもつSiへの厚みの異なるCuスパッタで確認、はんだ不濡れはCu厚みにより、薄い場合に生じる。
 はんだSnPb共晶。

 *下地の状態(酸化、反応層有無)によるのでは、




Jang UBM

 An3.5Agは電解めっき
 
 電解Cu(Cuは5μmと厚い)、NiV/Cu(下地NiVもはんだと濡れ、反応する)ではおきない。
 *剥離は大規模剥離でなく小塊となってはんだ中に分散していくように見える。



Jang
 電解めっきによる共晶Sn−Pbバンプ




 リフロー後の破壊機構



 薄い中間層(Ti、Ni、Pd)のSnとの反応性の差


戻 る 目 次 次 へ


inserted by FC2 system