(17−3−5) 各種はんだの熱マイグレーション

Chen
  共晶Sn−Ag、UBM:電解5μmCuとCu/電解3μmNi
  バンプ:幅130μm、高さ75−80μm
  Al配線:長さ2550μm、幅100μm、厚み1.5μm
  基材Cu配線:厚み30μm、幅100μm
  ホットプレートで9.7x10A/cm(UBM開口)

  バンプ1、4は電流が流れないがバンプ2、3とほとんど同じジュール加熱を受ける。

    電流負荷前の断面


   Cu UBM
     温度勾配



     ボイド形成

   すべてのバンプでチップ側にボイド形成。
   バンプ3ではEMとTM両方でCuが基材側に移動し、カソード(チップ)側に大きなボイド形成。
   バンプ2(電子の流れる方向はバンプ3と逆、つまりEMは逆)でもアノード(チップ)側に大きなボイド形成。
   Snは高温側(この試験ではチップ側)に移動しボイドははんだとSiチップの界面に蓄積。
   更にEMでSnはアノード(Siチップ)側に移動。したがってバンプ2のチップ側にボイドははんだの
  EMあるいはTMによるものとは認められない。
   Cu6Sn5 IMCのTMが破壊機構を支配すると考えられる。
   バンプ1、4がこの仮定を支持する。この2つはTMだけが起きる。
   Cu6Sn5IMCとCu UBMの位置をボイドが置き換えるのが認められる。
   従ってCuあるいはCu6Sn5が4つのバンプで大きな温度勾配下では基材側に移動する。
   バンプ2ではEMだけだとチップ側にヒロックが形成されるだろう、しかしボイドが形成されている。
   したがってこの試験ではTMがEMを上回っていると推定される。

   TMによるCu−IMC剥離の様子




   化学ポテンシャルの影響


    アニールではCu6Sn5が厚くなるが剥がれたり、基材側に移動したりしていない。
    EMやTMにくらべ化学ポテンシャルは無視できる。

   Cuの固溶度はSnPbよりPbフリーはんだ大きいからSnPbではCu TMを観察することは困難で、
  SnPbではSnあるいはPbのEMまたはTMが勝る。

   Cu/Ni UBM
     温度勾配



    Cu UBMに比べ温度勾配が少し小さい。

   ボイド形成の様子

    EMによるボイドがバンプ3にだけ形成。
    バンプ1、2、4はNi−Sn IMCが厚くなっただけ。
    Ni UBMではCuあるいはNiのTMは認められない。

   CuとSnによるEMとTMの模式図
     



Chen Sn−8Zn−3Bi
   置換0.15μmAu/無電解2μmNi−P/Cu|250−280μmSn8Zn3Bi|Au/Ni−P/Ni
   Cu側が低温側、最大温度差は67℃。

   リフロー上がりの微細構造

    界面にAuZn3 IMC形成。

   AC電流の場合

    はんだとAu/Ni−P/Cu界面に小さなZn富化相が形成。
    Ni側界面にはわずかなZn相が埋め込まれたSn富化領域形成。
    はんだとAu/Ni−P/Ni界面にIMC形成、Sn富化領域は7.3原子%のNiを含む。

   DC電流の場合

    アノード側高温(a)ではアノード側にAuZn3 IMC相が溶解しZn富化相に(b)、
   低温のカソード側(c)は電流負荷でもAuZn3層は安定で連続的。
    アノード側低温(d)では多量のZnがアノード側に移動、灰色粒子(AuZn3 IMC)がZn富化相に見える(e)。
   高温のカソード側(f)は(c)より厚いSn富化層が形成されているが形態は同じ。
    電流方向の違いによらずはっきりしたNi−Zn IMCは観察できない。

    ACとDCの比較ではDCでNiがはんだに拡散している。

   温度勾配のシミュレーション(DC)



  結論
   AC条件ではTMだけが起きる。
   DC条件ではEMとTM両方が起きる。
   TMとEMのZnマイグレーション効果の相殺あるいは促進効果は電流方向による。


Gu Sn−58Bi
  Cu|Sn58Bi|Ni
  はんだ幅240−260μm、径320μm


  リフロー上がりはんだ接合断面

   Cu側:0.7μm厚みのCu6Sn5、Ni側:0.6μm(Cu,Ni)6Sn5

  通電後での断面
 

   Ni側高温アノード条件ではアノード側のBi富化層を除いてはんだ接合の微細構造はほぼ均一。
   Bi富化層は平均8.2μm。
   Cu側低温アノード条件でははんだ接合の微細構造は不均一傾向を示し、多くのBiがアノード側に蓄積し、
  カソード側にSn富化領域が残る。Bi富化層は平均17.6μm、Sn富化帯は約30μm。
   Cu側低温アノード条件ではカソード側にボイドが発生、これはBiのアノードへ側への移動とSnのCuとの反応による。
   Cu側がアノードのときBi移動がより顕著だがこれはTMとEMの結合効果。
   NiとCuの最大温度差は42℃。
   Ni側高温アノード条件ではNi側が0.8μm(Cu,Ni)6Sn5、Cu側は1.1μmCu6Sn5。
   Cu側低温アノード条件ではNi側が(Ni,Cu)3Sn4でCu側Cu6Sn5で厚みは両者とも2.1μm。
   Cu側低温アノード条件のSn富化領域(f)では微細なBi粒が均一にSnマトリクスの分布。

  各条件での原子流束の模式図


Ye
  共晶Sn−Pb:径約150μm、高さ100μm、Al配線:厚み1μm、幅150μm、



  電流密度約1.3x10A/cm2。
  Si側(カソード側)に激しいボイド核生成。
  Cu板近く(アノード側)にヒロックが観察される。


   Siダイ側(アノード)近くにボイド核生成しているが上と比べボイドは少ない。
   EMだけではこれは説明できない。これはTM過程と考えられる。
   Al配線で最もジュール発熱がおき、このためSiダイ側が非常に高温となる。

  マーカー試験

  はんだBではマーカーはEM方向と反対方向(Siダイ側からCu板側へ)に動くと期待される。


   実際のマーカーはEMと同じ方向、実際の拡散方向はSiダイ側(高温側、アノード側)からCu板側で
  TM効果を意味する。
   はんだA(Si側カソード、高温側)では質量拡散はSiダイからCu板だがより高い値でTM促進EMによる。

  シミュレーションによる温度勾配


  大きな温度勾配が熱マイグレーションTMを引き起こす。

Yang
  共晶Sn−Pb


  150℃での温度勾配 8.1℃/30μm=2700℃/cm




  Pbの熱マイグレーションが見られる。


  粗大化以外は明らかではない。

  150℃での熱マイグレーションとエレクトロマイグレーションの駆動力を比較し、熱マイグレーションを無視できないとする。


Basaran  高電流密度での破壊モード
  はんだ:Sn−37Pb



  観察された破壊モード
   極高温によるはんだ接合破壊
   高温によるAl配線での破壊
     →この2つは
   電流負荷でのはんだ接合のボイド核生成と成長によるはんだ接合破壊
     →エレクトロマイグレーションと熱マイグレーションの組み合わせによる
      熱マイグレーションが重要、

   <極高温によるはんだ接合破壊、Al配線がジュール熱発生源>


   <Al配線での破壊>



   <ボイド核生成と成長によるはんだ接合破壊>


  はんだ接合でのボイド核生成
    4つのボイド核生成モード
     Ni UBM−はんだ界面でのボイド核生成と成長
     Ni UBM−はんだ界面近くの領域でのボイド核生成と成長
     既存のボイドの成長
     3000h試験後での無ボイド成長


   <Ni UBM−はんだ界面でのボイド核生成と成長、主要モード>



   <Ni UBM−はんだ界面近くの領域でのボイド核生成と成長>

   特異な例(b)、ヒロック領域に新しいボイド形成、せん断応力が原因か(?)

   <既存のボイドの成長>


   Pb富化領域が影響、相構造が拡散に影響。





戻 る 目 次 次 へ


inserted by FC2 system