(15−2−4) Osenbachの説明


Osenbach プレゼン 真実と神話

・なぜSnウィスカが重要か?
  RoHS指令が拍車。→電子装置からのPb除去、例外(2010):FC−バンプ、高信頼性応用。
  Snは現行Sn−Pb表面処理の互換。

・JEDECウィスカ規格
  JEDED22−A121:Sn、Sn合金表面処理のウィスカ成長測定試験方法
     加速試験法と目視観察法
  JESD201:Sn、Sn合金表面処理のSnウィスカ感受性に対する環境受容要求
  JP002:現行Snウィスカ理論と緩和実践指導方針

・文献概観
  1946年、Cobbが最初に報告。
  1954年、ArnoldがSnウィスカによる電子装置の故障を最初に報告。
  これ以降多くの報告等があるが
    ウィスカ成長機構の詳細な合意はない。
    定量的予測モデルは開発されていない。
    多くの明らかな不一致が報告されている。
      すべての重要変数の制御の欠如:重要変数不明。
      実験的困難さ:潜伏期間、加速成長の困難さ、統計的変動
       最も普及しているウィスカ危険性評価道具 Pinsky 2005
     変動する潜伏期間 
       ウィスカ傾向proneは発見しやすいが、ウィスカ免疫immuneは発見しにくい。
     加速:高速加速は困難。
     統計・・・ウィスカ耐性resistantSn膜でも大きな変動がありうる。
      ロット間:最も大
      パッケージ間
      端子間
      供給者間

・駆動力:過剰エネルギー
    過剰エネルギーがないと固体ウィスカ成長はない。
      応力が最も一般的に受け入れられている過剰エネルギー源。
      *応力でなく応力エネルギー U∝0.5(応力)/(剛性modulus)
      (粒界エネルギーの可能性も一部で)
    過剰応力(歪)エネルギーが駆動力だが成長機構ではない。
      応力は必要だが十分ではない。
    固体ウィスカ成長実現のためには少なくと2つの追加拘束条件が系に置かれなければならない。
      粒成長と膜再結晶というより一般的応力緩和機構を抑制する機構が存在するはず。
       すなわち粒界ピンニング機構。
      ウィスカ核生成と成長にいたる機構が系に存在するはず。
    応力緩和から生じる結果
      圧縮応力印荷によるウィスカ成長実験(Fisherら 1954)
         Snを鉄鋼で挟み圧縮応力負荷→Snウィスカは印加応力軸に垂直に成長、速度=f(印加応力)、押出ししでなく結晶成長。
      種々の応力誘起ウィスカ成長文献

・ウィスカ成長モデル
   転位モデル
     Peach(1952)、Frankら(1953、1956)、Eshelby(1953)、Hasiguti(1955)、
     Amekinckx(1957)、Lindborg(1976)
   固体ウィスカ核生成と成長は再結晶と結晶成長の一形態
     Baker(1957):最初の転位モデルを支持しないデータ
     Ellis(1958)、Stien(1961)、GlazunovaとKudryavstsev(1962)、
      Furutaら(1982)、Kakeshitaら(1982)、BoguslavskyとBush(20039
    酸化物破壊と再結晶
      Tu(1994)、Osenbachら(2005)
 *Osenbachらモデル・・・破壊酸化物−再結晶


・緩和戦略
   めっき上がり部品の応力極小化
     リード・フレームめっき前処理
     めっき化学と工程(Rosen 1968)
     めっき後アニール(Glazunovaら 1963)
     バリア層・・Ni(Britton 1974)、Ag(Dittesら2003)
     ホット・ディッピング(Arnold 1959)
     リフロー ?
   ピンニング、核生成、成長機構の極小化
     Snめっき純度(Boettinngerら 2005)
     Sn膜への添加物(Pb、Ag、Bi・・・)
      Pb Arnold (1959)
      Pb以外不成功
   絶縁被覆がウィスカの伸長と、または腐食を抑制
     成長速度を遅延するように見えるが100%の保証はない(Woodrowら 2005)
     被膜を貫通するウィスカ数減少

   応力源
     リード・フレーム合金応力状態
       めっき前深エッチ(≧2.5μm) (Whitlawら 2003)
     界面CuxSny−IMC
     膜不純物(C、O、Cu・・・)
       SnめっきのCu不純物がウィスカ成長 (Moon 2001)
     Snめっきのマイクロ、結晶構造
       結晶方位(Egliら 2002)
     整形(切断加工)trimと成形(塑性加工)form
       1次効果はない(Osenbach 2004)
     Snと下地金属のCTE不適合
       温度サイクルで42アロイがCu合金よりウィスカが生じやすい
     アセンブリ応力
     Sn酸化

   CuxSny−IMC誘起応力 ・・・3つの一般理論
    Tu(1994)、E3(2002)
       不規則IMC/Sn界面、局在応力→ポストめっきベークで除去
    GalyonとPalmer(2004):この系はCuが速く拡散
        SnをとりのけてCuがSnに拡散しCuxSny−IMCが生じる
        とりのけられたSnがSn膜に蓄積
        これら反応で局部格子膨張し反応層に圧縮応力生じる
        この応力はCuxSny−IMCとCu界面でのKirkenndallボイドで補償される。
    Boettingerら(2005)
       CuxSny−IMCはSnとCuの体積より小さいので界面で局部的圧縮応力となる。
    観察結果
      150℃ポストめっきアニールで完全にIMC−Sn界面は平面化しない。
      Kirkendallボイドはない。
      Sn−PbはんだでマイクロボイドはCu6Sn5でなくCu3Snに存在、7025にはCu3Snは存在しない。
      →Tu、Galyonらの理論は×、Boettinger?

  ポストSnめっきアニールCu合金の素子の応力状態
   めっき上がりは無応力でない
     使用した材料と全めっき工程による
       汚染で応力増加
       高速めっきで応力増加
       基体合金?
       めっき前エッチング工程
         など・・・・
   めっき後アニール→応力減少
     減少はアニール時間と温度、保管時間、保管雰囲気の関数
     標準的粒成長、再結晶機構では応力は以下で調節
       IMC/Sn体積差
       非平面IMC
       汚染物
       粒方位
       ガス巻き込み
         など・・・・
  Cu合金素子の応力状態履歴
     基板リフロー→応力増加?
      Snとはんだ溶融
        Cu溶解
        低レベルフラックス成分包含
        表面張力でSn膜流動、非一様厚みとなる
        IMC厚み増、界面形態変化
        はんだ合金成分がSn膜に拡散、多分非一様に
        表面酸化(SnOまたはSnO2)
      Snとはんだ凝固 ・・・応力フリー金属系に設計されていない
        リードの高曲率部分のSn膜が薄くなる
        Cu、その他合金成分、フラックスの過飽和
        過飽和での上下水平の振動
        Sn、Cu−Sn IMC、Cu、基板のCTE不適合
        粒寸法増
        粒方位変化
      アセンブリが素子を無応力状態にしておくと結論するのは不合理
  実使用(フィールド寿命)→応力増加?
    環境暴露(T、RH、温度変化・・・)
      IMC成長
      酸化(SnO2)(膜表面CuSn IMCにより悪化−ガルヴァニック腐食)
    過飽和元素が粒界に沿って再配置
    取り扱い−衝撃振動、引っかき
    CTE不適合
       など・・・・
     これらでめっき後アニールはすべての応用で必ずしも無応力状態を保証するため利用されていない。

  観察結果
    ある温度での時間保持でIMCは非平面的になる。
    温度・湿度効果


  Niバリアはどのようにして履歴効果を減少させるか
    種々のSnめっき応力特徴
    Ni−Sn反応速度は少なくとも一桁減少する
      薄いIMC→より少ない応力
      Ni−Sn系ではSnが第一拡散成分なので、圧縮的界面からの過剰SnはIMCに拡散でき応力を解放。
      典型的脆さ>0.8μm
    リフローを含む関心のある全温度での溶融Snへの非常に低い溶解度(<10−2wt%)→極小飽和
      Cuの溶解度はリフローで≧0.8wt%、室温で<0.01wt%以下
    より平面的IMC界面、IMCの表面到達の機会がより少く、ガルヴァニック電池酸化が抑制。


  最後の意見
    Snウィスカは60年以上知られている。
    現行緩和策は新めっき化学以外、少なくとも30年以上知られている。
       最善はPb添加。
       Ni下地めっき端子では実地の故障は報告されていない。
    今日研究されている一般的ウィスカモデルは大部分少なくとも30年前提案されたモデルの拡張。
     しかしモデルは重要な新発見に基づくものもある。
    基板アセンブリ影響を忘れるな。
    外挿のための予測的信頼モデルと信頼評価はよく確立されていない。
      普遍的故障時間関数はあるか(TTF)
       TTF=f(温度、RH、T/C−ΔT(t)、バイアス、etc) ?
        どのウィスカ長が受け入れられるか
         どんな応力/時間の後
         異なる膜、基体合金そしてあるいは表面処理で異なるか?
        どのウィスカ密度が受け入れられるか
          端子当たり、端子領域当たり、空間的端子位置当たり、素子当たり
    ウィスカ危険性評価道具が利用できる−注意して使用
    JEDECウィスカ規格が利用でき、使用者と供給者への方向性と指導提供に役立つ。

 Pinsky 2005 高信頼性系Snウィスカ危険緩和演算器と設計器

 

 アルゴリズム
 

 r1:導体間隔
 r2:Pb量(wt%)
 r3:工程
 r4:Sn厚み
 r5:Sn直下の材料
 r6:CTEを制御する基体
 r7:めっき溶融
 r8:絶縁被覆
 r9:機械的ハードウェアの使用
 r10:どこでアセンブリが行われたか?
 r11:筐体の導体での絶縁被覆使用
 r12:アセンブリ内での空気流

危険評価計算機

 計算例
 条件:>500、<0.2、マット、250−500、no、セラミック、no、1mil、none、field assembly、Nearly all、Dynamic use(多くの動く部品をもつ大定置機械)
 →R(成長):0.0155、R(幾何):0.005、R(全):0.0000775 −4.110698297、出力:4.79



*補足 Snウィスカ 真実と神話(Osenbachら 2007)

 ウィスカ成長と危険性を予測し、究極的抑制策を提供するような定量的モデルのための基本的理解がない。
 Sn成長と緩和策の状況を批判的に概観
   現存する実験データとデータ収集の限界を調査
   提案された駆動力、機構、ウィスカ成長モデルを分析
   慎重に提案された緩和策をそしてどのように連続するアセンブリ工程と素子応用が緩和策に影響したか、しなかったかを評価する

 ウィスカ耐性:受け入れ試験でウィスカ成長の兆候を示さない
  →ウィスカ・フリー(無ウィスカ)ではない
   →ウィスカの証拠の不在は必ずしもウィスカの不在の証拠ではない

 ウィスカ成長はSn−Cu系にだけ特有ではなく、Ag、Au、Zn、Cdなどにも見られかつこれらに限られない。
 金属、非金属ウィスカ両方が金属、金属−酸化物界面上に気相核生成し成長する。
 種々の金属系での固体ウィスカ成長同様、固体ウィスカ成長と気相ウィスカ成長を制御する核生成と成長機構には類似性があるだろうが
ここではSn−CuとSn−Ni系での固相ウィスカ成長だけを考慮。

 能動電子部品componentが蒙る典型的環境条件の下で動作する装置deviceに見られるSnウィスカだけを考慮。
 過剰な外部機械的応力、擦過、摩損応用は含まない。

 限られたデータ、明らかな矛盾するデータにもかかわらずウィスカ形成、成長に影響する変数として一般的合意されているのは 
  めっき上がりSn膜の固有応力と応力分布
  Sn膜と基体合金との化学反応から生じる外来的応力
  Snめっき純度
  Snめっきの粒寸法と粒結晶方位
  リード・フレーム表面処理
  端子のめっき前化学処理
  リード形成工程
  リード曲率
  Snめっき厚み
  めっき後熱工程
  保管、操作環境
 残念ながらこれらの変数とウィスカ成長の定量的関係はまだ存在しない。
 ウィスカ成長の定量的理解の不足はPb添加という簡単な選択肢が存在したことにも起因する。

 直面する制約は
  潜伏期間
   リフロー、アニールの有無や膜厚等で潜伏期間が変化。

  統計的変動
    製品供給者、めっき浴化学、めっき浴供給者とロットを変数にするとロット間(同一供給者によって同じめっき浴で同じ工程)が最も変動大。
    リフロー部品のウィスカ応答性はめっき化学、めっき浴供給者、リードフレームめっき供給者、リードフレームCu合金で基本的に制御されていない。
    統計的変動に注意して十分な数の検査をする必要がある。
  非凝縮条件での加速ウィスカ成長の困難さ
   種々な条件のものを長時間加速試験してもウィスカ長で大差がでない。(〜1年で40−60μm程度)

   温度による加速効果がきかない
    温度が高くなると成長速度が遅くなる→エネルギー減少機構の変化、ウィスカ成長から通常の粒成長、再結晶へ
    60℃で最大成長、これは通常条件で加速条件にならない。
   相対湿度だけが唯一の加速条件。高湿条件は多くの問題→水分誘起腐食
  水分誘起腐食
   水分凝縮が局部的腐食とウィスカ成長を促進する。
   実験技術上、水分凝縮の影響を皆無にするのは簡単でない。
  汚染誘起腐食と凝縮
    雰囲気汚染
      ガス吸収、粒子の金属表面への堆積、イオン化
      ガス So2、No2、H2S、NH3、Cl2
      粒子 アルカリ、アルカリ土類、アンモニア等の硫酸塩、硝酸塩、塩化物
     屋外環境は室内環境より非常に高濃度の汚染を含むがしばしば室内レベルも十分腐食速度を増加するに足り場合がある。
     Agの場合には本質的に室内と室外の差はない。
   臨界相対湿度
     腐食速度を促進するほかに、水に溶解するイオン物質は100%以下の臨界相対湿度CRH(飽和水溶液以上の平衡湿度)をもつ。
     水分はCRT以上の環境湿度で飽和水溶液となるまでイオン物質に吸収される。
     たとえば高SO2環境ではNi硫酸塩が形成され、CRHは室温で約68%RHと報告されている。CuではCRHの報告はない。
     花と呼ばれるウィスカの群生の加速成長が報告され、花が観察される位置には水の凝縮の証拠に沿って高濃度のSが認められる。
     実験槽で凝縮した水滴落の影響やS含有粒子汚染の影響が考えられる。


 駆動力と機構
  一般的にはウィスカは異常再結晶または結晶成長の一形態であって、変形deformationや流動flowでないと認められている。
  転位の役割については不一致が続いている。
  駆動力については3つの理論が存在
   表面エネルギー効果 (Eshelby 1953)、(Frank 1953)
   貯蔵歪エネルギー (Ellis 1958)、(Furuta 1969)、(Boguskavsky 2003)
   内部機械応力 (Shengら 2002)、(Tuら 1994)

  EshelbyとFrankは独立して負の表面エネルギーがウィスカ成長の原因とした。
    局在した負のエネルギーがFrank−Readが生み出す転位ループ形成を駆動する。
    ループはウィスカが生まれる表面へすべる。
    Eshelbyの見積もりでは最大ウィスカ成長速度は0.001mm/年で1mm/年という観測結果より小さすぎる。
  FurutaらはEllisのモデルを発展させSnの単位体積当たりの過剰歪エネルギーとSnウィスカ表面領域当たりの過剰表面エネルギーの
    釣り合いから成長速度を1mm/年と見積もった。
  BoguskavskyとBushは過剰歪エネルギーがLindbrog(1975)の提案した転位機構でウィスカ成長させると示唆した。
    Lindbrogは2段階モデルを提案した。第1段階ではBardeen−Herring源が転位を生み出し、第2段階で転位ループが
    表面へ滑りウィスカを生み出す。成長は物質の根元への追加で先端ではない。
  最初の応力誘起ウィスカの直接的証拠はFisherらが発見。ウィスカは機械的応力で成長し、非外部的・機械的応力のSn膜からの成長した
   ウィスカと同じ特徴をもっていた。
   (押出しでなく単結晶、変動応力依存潜伏期間、変動応力依存成長速度、ウィスカ成長速度が0となる閾値応力)

 ウィスカ先端は本体より太い、また先端が表面窪みと一致、表面破れが存在。→根元から成長した証拠。

  応力はしばしばウィスカ成長と関係付けられる物理量であるが熱力学的にはウィスカ成長に基本的なのは過剰エネルギー。
  Snウィスカが起きる多くの場合、過剰エネルギーは応力でなく歪の系への負荷で発生する。
   歪は熱膨張係数不適合、基材合金とSn膜の反応、Sn酸化などで生じる。
   その他の過剰エネルギー源
    粒界
    転位
    H、C、O、・・・のようなめっき不純物
    空隙porosity
  駆動力は過剰エネルギーだがウィスカ成長の機構ではない、応力は必要だがウィスカ成長実現に十分ではない。
  少なくとも2つの追加拘束条件が固体ウィスカ成長実現のため系に設定される必要がある。
   粒成長と再結晶というより一般的に見られるエネルギー緩和機構を抑制する機構、すなわち粒界ピンニング機構
   ウィスカ核生成と成長の両方を系に引き起こす機構
  粒界の移動でなく、ウィスカ成長による自由エネルギー減少に影響するために具体的粒界不動性が必要。(Ellis 1958)
  Ellisが提案した可能な2つのピンニング機構
   粒界での不純物偏析
   表面のさびtarnish
  BoguskavskyとBushは粒寸法が膜厚みに近づくと正常粒成長は抑制される、または停止すると指摘。
  同様のピンニング拘束が膜粒界での酸化物成長の抑制に十分な無酸素(酸素フリー)膜堆積条件でないときにAl系でおきる。
  Boettingerらはウィスカ成長を避けるためにはSnめっき浴に高純度水が必要で、高純度水でもCuを添加するとウィスカ成長することを発見。
  KehrerらはCu上の蒸着Sn膜でウィスカ傾向を測定し、背圧10−4でウィスカが生じ、背圧10−6では生じなかった。

  Tu(1994)はさび理論を展開し、更に低温で形成される非平面的形態のCu−SnIMC層を主要な過剰応力源とする概念を追加。
   亀裂酸化物理論
    CuSn IMCは室温でも非常に速く成長、粒界に沿っての激しい成長のためIMC成長は非一様な圧縮応力がSn膜に発達。
    系がピン止めされているので歪による過剰エネルギーは正常な再結晶機構では解放されない。
    Tuは空孔源が利用できれば過剰エネルギーが減少減少できると考えた。
    彼はこれが表面酸化物の局在した弱い点が破れると起きると提案した。
    このような破れが起きると酸化物破壊点で周囲から導入された空孔によりピン止め解除が起きる。
  Boettingerら(2005)は応力は堆積上がり膜応力と過飽和不純物の析出によるもので時間によるCu−Sn IMC成長によるものは小変化とした。
  Galyon(2005)らは応力は主に時間によるIMC成長から来るとした。
  Osenbach(2005)らはTuのモデルを少し修正し相対する粒界と異なる配向の酸化の差が酸化物破壊の原因と提案。
  Osenbachらは酸化物破壊に至る他の機構を認めた、これは外部負荷応力、機械的損傷、他の内部からの応力と歪。
   2つの主な外部応力は温度サイクルと外部的に負荷された機械的力。
   Snは異方的で、熱機械的性質は方位依存。
   方向依存熱機械特性で多結晶内に異なる応力応答を引き起こす。
   Sn膜が熱サイクルに曝されると、この異なる応力は異なる方位の粒の粒界で酸化物破壊を起こすことができる。
   追加応力がSn膜に対する基材、IMC、表面酸化物のCTE差でもたらされる。
   引っかきによる機械的変形は圧縮応力と局在的高径曲率領域をSnに加える。
   更にひっかきは系の汚染をもたらす。これら汚染は局部的に酸化動力学kineticsを変え応力上昇をもたらす。
   また機械的損傷はNi下地などの保護バリアを劣化させる。

  このモデルはアレニウス・フラックス/温度図で表現できる。
  基本的仮定は
   Snは空孔機構で拡散。
   Sn拡散が系に存在する過剰エネルギーを減少するのに必要。
   粒界とSn膜表面がピン留めされている。
  固有intrinsicSnフラックス(流束、拡散係数)が温度を関数として空孔利用制限でないとして図示。
  表面(<0.35Thomo)、粒界、格子(バルク、>0.7Thomo)の主要拡散機構の起こる温度範囲が示されている。
  系がピン留めされているのでウィスカ成長が起きる全温度で実際の空孔フラックスは固有Snフラックスよりはるかに低い。
  空孔供給がもはや応力緩和過程の速度制御段階でないとピンニング拘束は部分的に除去される。
  垂直点線は酸化物破壊などでピンニング拘束が除去されたときの空孔供給を示す。
  これで高速拡散路に沿ってのSn拡散はもはや空孔供給に拘束されず、可能で、系の過剰エネルギー解放するようなし方で実際起きる。
  粒界がピン留めされているので系への空孔供給で、エネルギー減少が正常粒成長でなくウィスカ成長でおきる。
  SnPb膜では室温でも空孔供給と粒界移動は応力緩和にとって十分高いようである。(おそらくPbの表面張力の低さに関係)
  Snだけの領域とSnとPb共存領域のように膜が非均一化したときにSnPbでもウィスカ成長がおきる。
  温度サイクルでもSnPbでウィスカ成長がおきる。
  この場合ひずみ速度が固有空孔フラックスと粒界運動と結びついた時定数を越えることができる。

 →JEDEC JP002の図


 環状の筋が縦筋とともに見える。→ウィスカ成長がある不連続な時点に酸化物破壊とSn膜表面の再酸化の間に起きた。

 モデルは以下と整合する。
  なぜウィスカ潜伏期間の大変動が可能かはっきりさせるのに役立つ。
  なぜウィスカは温度サイクルではCu上SnとCu上SnPb両方に、等温試験ではCu上Snにだけ見られるか。
  なぜ湿度は加速的なのか。
  なぜウィスカ傾向はSn膜厚みに依存するのか。
  なぜウィスカ成長は高温で抑制されるのか。
  なぜめっき後アニールは潜伏期間を増加させるが、しかし必ずしもウィスカ免疫をもたらさないのか。
  なぜウィスカは押し出しextrusionのような過程と整合しているようにみえる様相をもつのが認められるのか。
  なぜ小粒寸法膜がウィスカ成長しやすいのか。
  なぜ膜汚染contaminationがウィスカ免疫を劣化させるのか。
  なぜあるバリア層と工程が大きなウィスカ免疫をもたらすのか。
  なぜ機械的損傷がウィスカ成長耐性を基材と無関係に減少させるのか。
 更にこれはクリープかつ、または転位によるウィスカ成長の可能性を禁止しない。

緩和策

 ウィスカ成長の駆動力の同定と除去に向けた多くの調査があるが、粒界ピンニングの原因となる、あるいはウィスカ核生成と
成長に要求される機構を同定する試みは比較的少ない。
 普遍的ではないとしても普及した見解は応力がウィスカ成長の主要駆動力というもので応力源の同定と除去に最大の注意が受けられている。
 膜の応力状態は多くの源で影響される。
  リード・フレームのめっき前化学処理
  めっき工程と浴化学
  膜厚、粒寸法、粒結晶方位
  整形(切断加工)trimと成形(塑性加工)form工程の間に加えられるような外的負荷
  めっき後熱処理
  Cu−Sn IMC成長
  めっき下地(Cu、Ni、Ag、黄銅、42アロイ)
  系のCTE不適合mismatche
  基板組立(アセンブリ)board assembly
  酸化、腐食

 めっき化学
   Rozen(1968):めっき化学
   Zhang (2000):Snめっき浴、C>0.2wt%以上が以下よりウィスカ成長しやすい。
   Moon(2001):めっき浴のCu(0.8ppm)が促進、Cu6Sn5の粒界析出が促進と結論。
   Schetty(2001):浴中6.4%Cuが良い結果。
  いくつかの相矛盾する結果、基材やめっき装置からの不純物がこの原因のひとつと思われる。
 膜厚
   Glazunova(53):種々の基材への種々のSn厚み。基材により種々の結果。
   他の結果では厚みが増加するとウィスカ成長傾向は減少。
 めっき後熱処理
   Glazunova(1962、1963):めっき後100−180℃での1−24hの熱処理効果。
   Rozen(1968):同様の結果、CuSnIMCの影響を論じる。
   Britton(5):150℃x1hは効果なし、Cu上Snでは200℃効果あり。
   Ditte(56):150℃x1hめっき後熱処理効果認める、Sn/IMC界面の平面化と圧縮応力減少提案。
   →完全には局部的厚み変化を除去できない。
   Osenbach(21):めっき後熱処理の効果は潜伏期間の増加によるのであって必ずしも完全免疫ではない。
  Boettinger(2005)以外はCuSn IMC成長での時間による圧縮応力増加を言明。
  BoettingerらはSn膜応力はIMC層成長に大きくは依存しないことを発見し、時間とともに変化する4層(Sn、Cu6Sn5、Cu3Sn、Cu)モデルを提案。
  Gaylonら(2005)は界面付近での拡散、反応による膨張(界面付近のSn、IMC共存領域)、Cu収縮帯(Kikedallボイド)存在効果を指摘。
   (4帯構造モデル) →Kikedallボイドは見られない。
  *Cu上Snめっきでの非リフロー、<70℃エージングでのKikedallボイドは見られない。
   Kikedallボイド生成のためには追加条件が必要→Cuパッドの接合されたはんだボールで100℃以上のデータ。
   多くのデータでは125℃以上ではCu−Sn系でSnが主要拡散種、それゆえKikedall効果ならボイドは界面のSn側、はんだボールでは反対側。
   室温と125℃では主要拡散種の変化がある。しかしデータでは25−225℃まで1つの活性エネルギーで示される。(Osenbach 2005)

 製品寿命サイクルでのCu上Sn緩和策の有効性

  基板リフローを経た装置deviceを考慮。
  部品が無応力Sn状態で寿命を始めたとしても引き続く工程とフィールド暴露でSn膜の応力状態にウィスカ核生成と成長を引き起こしうる
 変化が起きる。
  リフローが無応力、平衡状態をSn膜にもたらす物理的基礎はない。
   液体状態では膜はほとんど無応力状態であるが凝固では典型的にはそうでない。

  リフローによる溶融と凝固の影響
    Snの融点(232℃)でCuの溶解度は少なくとも0.1μm/s、温度とともに増加し、少なくとも0.7wt%以上。
    最大Cu溶解度ははんだ合金に影響される。
    このようにSn膜はリフロー最大温度の平衡飽和量を少なくとも含む。Sn膜へのCuの混入のほかに他の成分の巻き込み、IMC厚みと平面性の変化
   表面張力による膜流動flow、はんだ濡れと流動、Sn酸化などがリフロー中に起きる。
    他の成分はフラックス、はんだ、基板金属層、基板または封止樹脂ガス放出などで生じる。
    Sn膜内でのこれらの量や空間分布には量に関する以外何の制約もない。それはまたリフロー炉とその雰囲気に依存する。
    膜凝固で、膜の薄い領域が凸曲面と端のようなリードの高曲率領域で生じる。リードが封止樹脂に入る部分でも薄くなる。
    もしはんだペーストが少ない、あるいは濡れが悪いとリード先端近くが薄いはんだフィレットとなる。
    時間とともに飽和Cuは拡散で低エネルギー状態へ移動し、Sn膜中に徐々にCu6Sn5−IMCが核生成し成長する。
    Boettingerによるとこれで膜は体積増加し析出領域付近は圧縮応力となる。このためリフローでウィスカ傾向propensityが上昇する。

 リフローはSn膜の重大な再配置をもたらす。(上写真で薄い領域にウィスカが見られる。)

    Henshall(2006)は基板にリフローし60℃、87%RH暴露したもので約3μmの薄いSnのリード領域ではウィスカが見つかり、
   リード全長が少なくとも16μmの厚い装置ではウィスカがなかったと報告。
    Cu−Sn系ではNiのようにSnに格子間拡散する他の金属成分で過飽和したSn膜の体積はSnとMeSn−IMCの混合より体積が
   小さく、入り込んだ過飽和種は徐々に析出しSn膜内に局部的体積増加をもたらす。
    ある成分の過飽和量はピーク・リフロー温度での溶解度と溶解速度、リフロー工程に依存する。
    それではNiはなぜCuよりリフロー後のウィスカ免疫となるのか。
    260℃でNiの溶融Snへの溶解度は約0.01wt%と非常に少なく、Cuの10〜100倍以下である。
    このため溶解、過飽和、析出による過剰応力発生の可能性はNi−SnではCu−Snより非常に少ない。

  Sn膜にNi3Sn4析出は見られず、リフロー後のNi3Sn4IMC厚みはCu−Sn IMCより非常に薄く、平面的である。

  NiとSnの固体反応もCuとSnより少なくとも一桁低く、装置の実使用でのIMC成長はNi−Sn系ではCu−Sn系より非常に小さい。

  このモデルでホット・ディップでも効果に差が生じる理由の理解ができる。
  はんだポットのSn量、ポットの使用歴、リードの形状とディップされた表面領域、ポッ温度、詳細なディップ工程などにより
 異なるウィスカ応答が生じるだろう。
  ディップごとにCuや他の成分がポットのはんだに溶解し、ディップごとに不純物量が増加し、Sn膜に混入しウィスカ傾向が増加する。

  装置(部品)の基板アタッチ後実使用に供される。
  温度、相対湿度、温度サイクル、大気汚染などの環境に曝され、膜の応力状態は変化するだろう。

  D=0.0160exp(−0.86eV/kT)、R≒0.96、勾配からEa=0.86eV


  凝縮水無存在下での高湿暴露でのウィスカ傾向の増加

   ウィスカ成長は室温から60℃では強く温度と湿度依存、しかし85℃、85%RHではウィスカ観察されず。
   試料はめっき上がりでアニールやリフローなしで腐食は観察されず。
   非凝縮環境での長期暴露はウィスカ傾向を増加。

  温度サイクルでのウィスカ
   ウィスカの密度と長さは基体とSnめっきの熱膨張係数差に依存しているように見える。
   Cu上Sn(ΔCTE〜6ppm/C)<Ni上Sn(ΔCTE〜11ppm/C)<42アロイ上Sn(ΔCTE〜19ppm/C)
   Cu上SnとNi上Snでは温度サイクルによるウィスカは典型的には50μm以下で、径5μmかそれ以上。
   長さは−55℃と85℃の間では1000−2000サイクルで飽和するように見える。


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