(15−2−3) 原因−駆動力と生成・成長機構
Ashworth 2013
ウィスカ紹介
純Sn(またはZn、Cd)表面処理によるコートされた表面から成長する毛髪状結晶構造
典型的には単結晶
形状と寸法に大きな変種
繊維(典型的には直径1−5μm、長さ1mm以下)
ノジュール
変形突出
一般使用での自発成長
潜伏期間の存在
成長機構が明確でない
有効なウィスカ予測モデルがない
デンドライトとは異なる
ウィスカ成長の駆動力
コーティングの圧縮応力
IMC形成(Cu6Sn5)
CTEミスマッチ(不適合)(例:42アロイへのSnめっき)
堆積での残留電解応力
外部印加機械的応力
緩和策
2段緩和策
電解めっき工程の修正
工程変数(電流密度・・・)
浴組成(添加剤量・・・)
ナノ粒子の共析
絶縁体被覆の開発
ウィスカ成長を遅らせる高分子コーティング
コーティング組成formulationの最適化
文献調査要約
ウィスカ緩和でのPbの役割はっきりせず。
Sn堆積の表面での酸化膜の性質の情報ほとんどない。
めっき工程の電気化学と堆積の特徴化とウィスカ成長の解析を深く調査した研究が少ない。
ひとつの変数でウィスカ形成制御できず多くの因子が相互結合。
ウィスカ成長に影響する因子
Sn堆積の特徴的構造
優先配向(ウィスカが成長しやすい組織texture)
共析包含物(粒界ピンニング)
堆積厚み
浴組成とめっき変数
添加物と、あるいは不純物
電流密度、電解プロファイル(例:パルスめっき)
温度、攪拌・・・
*組織へのPb共析の効果
ウィスカ成長の詳細
成長方向に垂直な筋striation、平行な溝fluted
NEMI 2004年
従来の知見
ウィスカは室温条件で成長(〜25℃、50−80%RH)
ウィスカは〜90℃以上では成長しない。
ブライトSnがマットSnより速く成長。
バイアス、電場はウィスカ成長に寄与しないように見える。
NEMIの試験結果 上記
2004フェーズ3の実験結果参照
疑問点
応力の役割:圧縮応力が駆動力というのが一般的合意。
めっき応力は回復で常温でも解放される。
圧縮応力は粒界でのIMC成長、熱誘起応力、機械的誘起応力によるであろう。
不純物の役割:Cuは応力を増加しウィスカ成長促進、Pbは応力を減少しウィスカ緩和。不純物の効果はわからない。
不純物は粒界をピンニングし、ウィスカの発生、実際の成長機構に寄与すると理論的に考えられる。
拡散機構:原子の拡散は高エネルギーから低エネルギー領域であると一般的に思われている。
ウィスカ生成・成長の支配的拡散機構は粒界拡散と考えられている。表面拡散が関与しているという実験結果もある。
転位機構:転位機構を無視する人と転位機構の関与を主張する人がいる。
転位機構ではスクリュー転位とフランク・リード源の関与説が一般的である。
ウィスカ粒に転位構造が存在する確たる証拠はない。
再結晶:ウィスカはめっき上がりas platedの粒構造からは成長しないというのが一般的合意である。
再結晶事象の結果の粒からウィスカが成長するとする説がある。NEMI委員会メンバーではブライトSnのノジュール、ウィスカ
成長を支配するがマットSnでははっきりしないというのが一般的合意。
基体物質の役割:試験によって異なるが熱膨張率か他の機構か不明。
粒配向の役割:粒配向(方位)スペクトルが影響するという最近のデータがあるが、特殊優先配向指数があるかはっきりしない。
むしろ支配的粒配向間の角度関係が鍵である。これに反する観察は今までにない。
Sun
文献概観 2003年
熱力学と速度論の機構
Snウィスカとは
めっき表面から自発的に成長するSnの単結晶。
真空、大気中で電場なしに成長できる。
直径:0.3〜10μm、典型〜1μm。
長さ:>1.5mm、10mmまでもとも。
室温から75℃(50℃が最適に見える)で最も成長。
形状:真っ直ぐ、曲がった、屈曲kink、分岐fork、空洞も。
成長速度:不明、めっき後すぐ、あるいは数年休止状態も。
電流運搬能力:溶融前に75mAまでも。
機械的強度:強く、硬いstiff。
重要争点
熱力学
駆動力
なぜ自発的に成長? 圧縮応力
速度論kinetic
成長速度
なぜ速く成長? 種々の要因
熱力学的要因
・圧縮応力
・・内部応力(マクロとミクロ応力)
・・・保存応力
拡散とIMC
拡散種:Cu、Zn(黄銅基体から)
拡散方向:基体からSnへ
拡散経路:格子間、粒界?
Snでの拡散係数:(室温)
Cu:1.2x10
−6cm
2/s
Zn:1.1x10
−6cm
2/s
SnウィスカはSn膜内でだけ発生。
Snウィスカは界面でだけ発生。
密度:
Cu:8.96g/cm
3
Sn:7.28
Cu
6Sn
5:8,27
IMC形成で比体積減少し、Sn膜に圧縮応力を引き起こす。
拡散と表面酸化物
*Sn酸化物、Zn酸化物の両方が比体積変化で応力引き起こす。
*Snめっきと下地の熱膨張率ミスマッチ(不適合、不整合)
*粒子照射
・・・残留応力
粒寸法と形状
小粒寸法のSn膜はより多くの粒界をもち、Snウィスカ成長しやすい。
高角または低角粒界のどちらがSnウィスカに好ましいかは論争中。
IMCは粒界に形成
界面と基体
コーティングvs基体(下地)
IMCvs下地
めっき電流密度
高電流密度は高残留応力をもたらす。
電流密度vs粒寸法
*共析C、H
・・外部応力(マクロ応力)
論争中
Sn層の圧縮応力に影響する要因、源泉
粒寸法、形状、配向(結晶方位)orientation
炭素、水素、不純物
下地材料
外的機械応力:曲げ、引っかき、熱サイクル
下地応力
不規則、厚い、速いIMC形成
速度論的要因
温度
成長最適温度は約50℃。25℃が50℃より好ましいという報告もある。
高温は内部応力解放に有効−駆動力減少
温度上昇は拡散加速−駆動力増加
めっき厚み
0.5μm以下と20μm以上は比較的安全範囲、8μm以上がより成長耐性。
厚いと表面領域に圧縮応力は蓄積されにくい、IMCが上への拡散を遅延。
粒寸法と形状
小粒寸法が速く成長、粒角度も成長速度に影響。
傑出した争点
自己拡散とSnウィスカ成長
Sn
融点:232℃、低い。
再結晶温度:30℃(室温周辺)
自己拡散係数
拡散経路
中央から上(ありそうにない)
外から上(ありそう)
駆動力:小さな電気的ポテンシャル・バイアスがありそう。
μ
Sntop<μ
Snbottom
引っ張り応力はウィスカ成長を抑制するか?
意図的に誘起された引っ張り応力
はじめに負荷された引っ張り応力は圧縮応力蓄積built-upを遅くする。
アニールSn膜は室温で1MPaの熱引っ張り応力をおこしウィスカ成長がおきない。
Niバリア
SnのNiへの拡散でSn膜に引っ張り応力生成。
SnのNiへの拡散でSn膜側に物質欠損(kirkendall効果)
固溶度の大きな差はNiがSnに固溶するより、SnがNiに固溶し易いことを意味。
結論
圧縮応力が駆動力と広く承認。
圧縮応力の起源はまだ研究中。
速度論的には多くの因子が成長速度に影響。
緩和策は今日まで完全には有効でない。
*は2003年から補足
NPL Huntら 2010 Webセミナー
ウィスカの統計
1946年に初めて報告。
Snに限られない。
容易に1mm以上に成長、ある報告では10mmまであるいはそれ以上。
厚みは0.3〜10まで変化、典型的には1−3μm。
形状は非常に変化。
ウィスカの影響
電気的短絡
断続あるいは一定。
電圧降伏、典型1−12V。
電流運搬能力 75mAまで、典型20mA。
真空での非常に高いプラズマ・アーク。
機械的ゴミ
ウィスカ成長
めっき膜の圧縮応力
めっきによる残留応力
IMC成長
曲げ、リードの挿入、拘束・・・
引っかきあるいは表面傷
熱膨張差
表面腐食(?)
ウィスカについて何を知って、何がわからないか
ウィスカ因子
−電解工程
添加物、不純物(C、H量)
電流密度
めっき浴温度
電解液種類(例:アルカリ、硫酸)
−基材
清浄度、粗さ
粒配向
下地層(材料、厚み)
材料(組成、厚み)
−堆積の特徴
厚み
粒寸法/配向/形状
合金化成分
表面酸化
IMC形成
アニール(温度、時間)
−外部応力
成形/端子曲げ
表面損傷(引っ掻き、溝)
取り扱い(例:ねじ締め)
−保管と動作条件
電流/電圧
温度(一定とサイクル)
腐食
湿度
汚染(例:Cl2、SO2)
圧力
−部品組み立て工程
リフロー(プロファイル)
保護被覆(材料/厚み/一様性/形成方法)
はんだ浸漬dip(合金、被覆領域)
なにが現在の活動範囲か?
機構
緩和策
機構
ウィスカ成長機構−環境 菅沼
4つの環境
室温・・・界面のSn粒でのピラミッドIMC
湿度・・・Sn/合金成分の酸化
熱サイクル・・・熱膨張差
接触・・・外部印加応力
ウィスカ成長機構−再結晶と腐食
*Viancoら→
補足 *Sweatman→
補足
ウィスカ成長機構−粒界IMC形成と表面酸化
酸化の役割
*Chasonら→
補足
ウィスカ成長機構
1) CuがSnに拡散しIMC形成
2) IMC成長→Sn経由で応力広がる
3) 酸化物が表面での欠陥消滅抑制
4) 応力が弱い粒の降伏を引き起こす
5) 応力勾配がウィスカ根元への拡散駆動
緩和策の示唆
・Snでの応力緩和促進
Snを強くするな!
・Snの微細構造あるいはIMCを応力減少させるように修正。
水平粒界を消滅個所とさせる
・弱い酸化物
最上表面での応力緩和を促進
・拡散障壁
ウィスカ形成の駆動力を停止させはしない
圧縮応力の存在より応力分布が決定的
表面付近の負の面外応力勾配
ウィスカ根元の負の面内応力勾配が駆動力
粒界拡散による応力緩和と酸化物除去による応力緩和
直下にIMCが存在しなくてもウィスカ成長
粒配向(結晶方位) Purdueら 2010 Snウィスカ国際シンポジウム
ウィスカ周辺の粒配向をマッピングし、ウィスカ粒が不整方位(配向不整)misorientedでウィスカ粒付近で近隣が非常に不整方位
であった。欠陥粒周辺は不均一応力集中し、この状態はウィスカ成長で維持された。
しかしこのような場合でもいつもウィスカを引き起こすわけではない。
ウィスカ成長頻度 Susanら 2010 Snウィスカ国際シンポジウム
キンク、曲がりは成長遅延ないし完全停止と関係している。
キンクはしばしば形態morphologyと、あるいは径の変化を伴う。
これはウィスカの根元の粒界運動を示唆する。キンク、曲がりは真っ直ぐなウィスカとヒロック(膜内でより多くの粒が成長)の間の直接の場合。
多くの核生成したウィスカが観察されるが、成長するのはほんの一部。長いウィスカ成長に適当な条件は稀。適正な結晶方位と、あるいは
適正な粒界拡散ネットワークが条件。
一般的に低指数(100、110、・・・)結晶成長方向が見受けられる。次の段階は結晶成長方向と物理的角度を関係付けること。
成長を維持するより核生成がより一般的
応力誘起ウィスカ形成 Osterman et al 2010
圧子押し込みindentationと環境試験とはある程度の相関があるがウィスカ形成評価に関する応力誘起ウィスカ試験の
有効性が限定されるようだ。
ウィスカ成長傾向への試験の急速接近法として圧子押し込み試験は有効だが、しかし長いウィスカ成長には長い押し込みが必要。
ウィスカ形成過程への基本的理解がないとどのウィスカ成長傾向試験に重きを置くかが限定される。
線形退行regression相関 Dunlevey et al 2007
IMC厚み変化、基体硬さとウィスカ形成(長さ、密度)は穏やかな(r
2=0.75〜0.85)相関がある。
大きな(r
2<0.5)相関はない。
Snめっき厚み、Sn粒寸法、IMC厚み、基体CTE、基体導電性、基体弾性係数、基体粒寸法、基体Cu量
ウィスカは表面引っかき付近で成長
ウィスカ分布は一様でなく、端付近が多い
IMC層はウィスカ根元と遠くで似た特徴を示す
ウィスカ成長は基体合金で影響される
ウィスカ成長はIMC厚みと基体硬さ変化に穏やかな関係がある。
緩和策
表面修正
コーティング
リフロー
下地めっき
調整conditioning
再Sn化
金属キャップ(菅沼)
Sn/Niめっき・・・Snめっき上に薄い0.05μmNi、あるいは厚い0.2μmNi
絶縁conformal被覆
コーティングは突き出しを抑制しない。
一度ウィスカが成長し始めるとすべてのコーティングは突き破られる。
常温と25℃/97%RHで差、後者がより突き出る。
他の緩和策
リフロー TycoはNi基体で5000hrsウィスカなし。
キセノン・ランプ・フラッシュによる光焼結と局部溶融による効果(Nanotech)
実際の部品でのコーティングの問題
端子幾何構造は複雑
近隣端子間は接近している(高密度化)
菅沼の緩和戦略
合金化が大きな効果、SnBiとSnAgが選択肢。
Sn−BiはSn−Pb同様に微細IMC形成促進、一方Sn−Agは微細粒構造形成。
IMCはCu上Snの3重点で速く成長、薄いIMCはあるSn粒界に成長、規則はあるか?
Ni下地は薄いIMCを速く、無秩序に形成。Niの緩和機構は、平板状IMC形成?
リフローは熱サイクルによるウィスカに大きな効果、機構は、粒あるいは粒界の変化?
Alキャパシタ・ウィスカがピンの溶接領域周辺に成長。Fe線がCuよりウィスカ形成しやすい。エッチングが抑制。Sn−Biが抑制。
種々のウィスカ緩和策が現実的になってきている。
コーティング
ALD−Cap:0.2μmアルミナコーティング
絶縁ポリマー
選択的金属キャップ
金属コート(無電解Ni)
*欧米では絶縁コートが重視されるように見受けられる、特に軍用・宇宙用で。
補足
Sweatman
西村 内部応力型ウィスカの発生メニズムと抑制技術
ウィスカは多くの場合、単結晶で根元から成長。
圧縮応力発生機構
めっき残留応力
めっき後の塑性加工
基材とのIMC形成
酸化・腐食
熱膨張率差や温度分布
なぜウィスカ特定の部位から成長するか
酸化膜の亀裂や弱い部分 酸化膜の影響?
周囲の結晶粒と異なる結晶方位粒が存在、Snの異方性で結晶粒間にひずみの差(
Leeら)
周囲と結晶方位の異なる特定の粒や粒界に応力集中(
Su、
Zhao)
傾斜粒界
*ウィスカ基点のモデル
*圧縮応力の発生機構
抑制技術
合金めっき・・・SnPb以外にSnBi、SnAg、SnCuなど。
Sn−Pb
柔らかい相の分散による応力緩和
ウィスカ表面やめっき表面での酸化膜形成への影響
Sn拡散への影響(柱状晶を等軸晶化)
?→10%添加でも柱状晶があり、1%未満でも効果がある、
Cu−Sn IMC形成への影響。(Sn−Pbでは界面に微細なIMC粒子)
→温度サイクルや外部応力型の効果が説明できない。
Sn−Bi
Pbと混合で強度低下、Cuリサイクル障害で海外では普及せず。
界面での不均一IMC形成抑制、Bi量とともに膜応力が圧縮から引っ張りに変化(?)
室温保管で優れた効果。
リフロー処理の42アロイの温度サイクルでウィスカ成長促進例。
抑制機構不明。
Sn−Ag
添加量が増えても脆化しにくい、融点変化も少なく、多量に添加可能。
日本では早くから実用化。
プロセス管理困難。
Ag−Sn形成で体積収縮し引っ張り応力。
界面に粗大なCu6Sn5形成。
抑制機構不明。
Sn−Cu
評価がわかれる。
IMC成長抑制⇔過飽和CuがCu6Sn5として析出し圧縮応力発生、柱状晶粒界に析出しピン止めし、
水平方向成長を抑制しウィスカ発生。
熱処理
欧米では150℃x1時間熱処理が主流。
ひずみ除去、界面に一様なIMC形成し、Cu拡散バリア効果。
42アロイ基材の温度サイクルや高温高湿に効果ない。
下地めっき
Cu基材上にNi下地めっき。
受動部品、コネクタ端子表面処理で広く採用。
Cu拡散バリアでSn−Cu IMCによる圧縮応力発生抑制。
NiへのSn拡散で界面Sn側に引っ張り応力。
高温高湿に効果ない。
めっき厚
室温では厚いほど抑制効果、厚くなると格子不整合やIMCによる応力が緩和。
高温高湿やCu基材の温度サイクルでは必ずしも効果なく、逆の場合も。
めっき液、めっき条件
結晶方位や粒子形状から説明。
(220)面配向めっき膜が良い。(合金化も含め)
小傾角粒界がクリープによる応力緩和阻害→めっき前エッチング深さ
等軸晶が柱状晶より良い。
コーティング
電子部品の実装後樹脂コーティング。
ウィスカ発生や貫通を完全阻止できない。
隣接端子のコートでショート可能性低下。
結露防止効果期待。
高信頼用途でのショート・リスク低減。
*
笹川らは応力誘起ウィスカを
ストレス・マイグレーションとして扱っている。
→
ナノ・ワイヤ(圧縮応力が誘起する金属、金属酸化物ウィスカ)
PSMC
Snの圧縮応力がウィスカ成長をおこすと信じられている。
熱サイクル−熱膨張係数促進応力
IMC成長がSn応力増加
腐食とエレクトロ・マイグレーションがSn応力増加
酸化物がSn応力増加を促進