(15−6−4) Chasonらの説明


Chason(2010)

 応力/ウィスカとIMC成長を関係付ける。
  IMCは継続的に成長。
  応力はIMC形成で間もなく飽和(→塑性変形の始まり)。
  ウィスカは応力飽和後成長開始。



 応力を制御する機構は
  標準描写はIMCが粒界に成長、Sn膜に応力もたらす。
  →弾性効果以上 →塑性変形を考慮する必要
    転位形成による応力緩和


 直下にIMCが存在しなくても離れて(700μm)存在すればウィスカは見られる。


 表面酸化物が表面での応力緩和抑制
    酸化物で転位蓄積
    酸化物除去で応力緩和


 粒界拡散と塑性変形でIMC形成による応力がSn膜に広がる。
    粒界拡散があるとウィスカがなくても応力飽和。


 ウィスカは実際はどのように成長するか
  12−13時間の潜伏期間
  ひとつの小さな粒から出現
  真空中で一様な成長速度
  核生成で先立つ表面欠陥はない


 酸化物がないとウィスカ・ヒロックは核生成しない、弱い酸化物はウィスカ形成に十分でない


 特別な粒での応力緩和促進



 ウィスカだけでなくヒロックも成長
 何がヒロック形状を決めるのか 







 要約
  ウィスカ成長機構
   1) CuがSnに拡散しIMC形成
   2) IMC成長→Sn経由で応力広がる
   3) 酸化物が表面での欠陥消滅抑制
   4) 応力が弱い粒の降伏を引き起こす
   5) 応力勾配がウィスカ根元への拡散駆動

  緩和策の示唆
   ・Snでの応力緩和促進
     Snを強くするな!
   ・Snの微細構造あるいはIMCを応力減少させるように修正。
     水平粒界を消滅個所とさせる
   ・弱い酸化物
     最上表面での応力緩和を促進
   ・拡散障壁
     ウィスカ形成の駆動力を停止させはしない


Jadhav Chason(2010)

 ウィスカ成長の2つの機構
  a:ウィスカの根元で垂直粒界が付加されない粒の成長を基礎とする機構、粒界に沿っての長距離拡散が物質運搬。
  b:ウィスカ粒が付近の粒より低降伏応力である押し出しを基礎とする機構、ウィスカ粒内の塑性せん断が膜面から物質運搬。

Two proposed mechanisms for whisker growth. (a) In grain-growth-based mechanism atoms are added to non-vertical grain boundaries at whisker base. The broad arrows indicate long-range diffusion along the grain boundary network that transports material to whisker grain. (b) In extrusion-based mechanism the whisker grain has a lower yield stress than the surrounding grains. Plastic shearing within the whisker grain carries material out of the plane of the fi lm while also maintaining low biaxial stress within the whisker. The resulting stress gradient surrounding the whisker drives the transport of new material at the whisker via grain boundary diffusion has plastic deformation induced by stress fi eld surrounding the whisker, shown by horizontal arrows; long range diffusion is essential to maintain local stress. The vertical broad arrows show the extrusion of Sn atoms.

Schematic diagram showing how the hillock can curve due to unequal rate of growth across whisker crosssection. A similar mechanism may
occur in extrusion-based deformation.

  断面での両端の成長速度差で曲がる。


The formation of hillock with lateral grain growth: (a) vertical growth followed by (b) lateral growth resulting in the “wedding cake” morphology.
(c) Lateral growth comes to an end when the grain boundary gets pinned. (d) After pinning the hillock may continue to grow
in an upward direction. A similar mechanism may occur in extrusion-based deformation.

  横方向成長がピンニングされて上方へ成長。


 Chason、Jadhav、Pei、Buchovecky、Bower(2013)

2.背景

2.1 層微細構造とウィウスカ成長の形態


  ウィスカ成長下の複雑な多層微細構造、濃度差はFIBによる結晶方位差を反映。
  Si基材にCuを気相堆積。
  ウィスカはいくつかの結晶方位をもつ。
  ヒロックはSn層の多粒幅に見える。水平方向成長も伴うことを示す。
  粒界の可動性がウィスカとヒロック形成を決める。

   ウィスカ成長過程


   Cu上の電解Sn(2μm)
  ウィスカ成長サイトは他の表面サイトと変わりはない。
  表面酸化物が短期間(40分)で破れ、ウィスカが成長。

   ヒロック成長過程

  ヒロックが成長を始める前は表面に明らかな欠陥はない。


2.2 機構

  提案されている機構

  酸化



  再結晶



  応力



  超高真空でもウィスカ成長が見られるので酸化物は主要な駆動力ではない。
  応力が駆動力として広く受け入れられているが応力の起源は何かは説明しない。

  種々の応力源
   残留(めっき)応力



   機械的変形




   熱サイクル


   腐食


   IMC成長




  Lee&Leeが最初にIMC成長が応力をもたらすことを示した。
  JadhavらがどのようにIMC誘起応力の大きさがSn層の応力緩和特性に依存するかを示した。
  Tuらがどのように応力勾配が原子のながれをウィスカ根元に駆動するかを説明するためにクリープ基礎モデルを展開。
  Eshelbyらがスクリュー転位モデルを示唆。
  Smetanaが水平成分をもつ粒界を持つ表面粒からウィスカが成長することを示唆。
  Viancoらが再結晶モデルを示唆。

3. ウィスカ成長の駆動力決定

  応力がどのようにIMC成長から生じ、どのようにウィスカを成長させるか。

3.1 IMC成長、応力、ウィスカ表面密度の関係。


3.2 IMC上のSn層構造効果

  IMCと厚み
    めっき厚み(エッチングで変える)



  SnとPb−Sn


3.3 機械的特性

    Sn、SnP等軸、SnBi等軸、柱状


  微細構造と塑性が応力緩和に大きな役割を演ずるが、微細構造がより顕著。

3.4 応力緩和に影響する他の機構:表面酸化物層と粒界拡散



3.5 応力進展のFEAシミュレーション


4.ウィスカ、ヒロック発生を制御する過程

  ウィスカ、ヒロックは弱い粒から成長し始める。
  酸化物層の表面欠陥あるいは弱点、粒方位(集合組織texture)、IMC蓄積、動的再結晶、微細構造
 (水平粒界をもつ表面粒)
  ウィスカ形成のもっとも困惑する様相はめったにしか形成しないこと。ほんの一部の粒しかウィスカに変形しない。

4.1 ウィスカ形成サイトの特徴化

  酸化物」除去の影響(FIBで径0.5〜5μm、深さ10nm)

  酸化膜のないところからはウィスカ成長せず、10μmはなれたところから成長。
  粒の結晶方位が関係?


  堆積膜は2峰性、優先方位〔010〕、〔001〕方向
  ウィスカは同じような環境から発生、〔010〕に囲まれた〔001〕近く、しかし同様の粒は多い、方位だけでは不十分。
  ヒロックは成長にしたがい顕著に回転、ヒロックの結晶方位は成長する粒と同じでない。
  ウィスカ、ヒロックが形成された場所から離れたSn層には大きな粒成長はない。


  IMC構造とウィスカ、ヒロック発生の関係
   IMCはSn−Sn粒界の沿って優先的に成長する傾向がある。
   ヒロック根元にはIMCの多量蓄積はない。
   IMC成長とヒロック形成の関係はない。

4.2 ウィスカ成長のFEAシミュレーション



  高ひずみ速度では応力勾配は大きく、高ウィスカ成長速度となるがウィスカ成長速度はひずみ速度に強くは依存しない。
  (応力解放は主に塑性で解放される。)
  低ひずみ速度では応力勾配は小さくウィスカ成長粒間の応力場は重なり始める。ほとんどの応力はウィスカ成長で解放。
  IMC成長速度とウィスカ成長は応力緩和過程(塑性、ウィスカ根元への拡散)の釣り合いとウィスカ間間隔で媒介される。
  動力学によって応力緩和は塑性変形または成長するウィスカへの拡散に支配される。

5. 要約とウィスカ抑制戦略

  ウィスカとヒロックは弱い粒から発生し始める。(低応力で変形)

  横方向粒成長がないと長いウィスカとなる。


  垂直と横成長の連続でウェディングケーキ状形態となる。


  緩和策
   厚い膜と大きな粒のマットめっき
   酸化物を弱める、表面粒子
   合金化・・・熱サイクルとは両立しない
   Ni、Agバリア層・・・曲げや熱サイクルで破壊
   リフロー、アニール・・・顕著な遅延効果
   絶縁被覆・・・短期策として最も有効だが、しばし被覆を突き破って成長。



 Chason(2008),

  IMC形成による応力が長距離に伝達され塑性変形領域が全膜に広がって飽和。
  酸化物亀裂源とこの応力がウィスカ成長の駆動力。

  純SnとSn−PbではIMC形成は同じだが、応力(応力の広がり)は異なる。
  粒径により塑性変形が異なるためSn−Pbは応力の広がりが遅い。


 Jadhav(2010)  IMC、応力進展、Snウィスカ核生成の関係を理解する
  IMC成長による応力がSnウィスカ成長の駆動力というのは一般的に受容、応力進展とウィスカ成長の関係が未答の疑問。
  種々の応力緩和機構と応力進展の関係を有限要素法で研究。
  粒界拡散と結合した塑性変形で観察された応力水準が説明できる。
  このモデルでは平均定常応力は主に緩和機構(転位と拡散媒介)によって決定され、ウィスカ成長は主要な
 拡散機構ではない。

  どのように応力が発生し、広がるか。どのように応力はIMC成長機構に依存するか、Sn膜での応力緩和機構は何か、
 どのようにして応力でウィスカが形成されるか。

  再結晶、酸化、応力などが機構として提案。
  一般的合意は応力が駆動力、IMC成長による応力だけが堆積過程後時間と共に増加し続ける。

  ウィスカ成長はSn膜で膜面からの材料輸送によってSnの圧縮応力を緩和する機構と一般的にみなされている。

  実験結果
   厚みとIMC堆積、応力進展、ウィスカ密度


  IMC成長
   IMC成長は厚い膜(より大きい粒寸法)で速いが、成長速度増加は粒寸法の増加の結果と思われる。
   IMCはSn層に成長。IMC成長で体積膨張しウィスカや変形で調節される。
  応力発生と緩和
   体積変化は弾性変形だけで調整されるには大きすぎる。
   応力発生と応力緩和のつりあいが応力進展と飽和を決定。
   応力緩和は?
    ウィスカ成長
    クリープ
     転位クリープ
      Sn内、特に大きなIMC粒付近での激しい転位活動が見られる。
     粒界拡散クリープ(Cobleクリープ)
      ウィスカ成長の長さが膜厚みより大きい、ウィスカ根元から遠い応力印加でウィスカ成長。
      Cobleクリープの抑制
       強いSn表面酸化が表面への拡散抑制。
       柱状に近い粒構造が重要な役割 →表面に平行な粒な方位の粒界の役割

    表面への原子の拡散が応力緩和の主要機構ではないが、粒界拡散はウィスカ成長と共に応力分布制御に大きな役割。

    転位媒介塑性変形と応力誘起粒界拡散のIMC成長で発生した応力進展をどのように決定するか。

  粒界拡散で圧縮応力が膜内に広がり平均応力は大きい、粒界拡散がないと塑性変形はIMC付近だけとなり平均応力は小さい。



  ウィスカ核生成と成長
   柔らかい粒の影響



  体積増加速度とウィスカへの物質流動の釣り合いでウィスカ周辺の応力場径が決まる。



Buchovecky(2009)
  塑性流動と粒界拡散の結合によるウィスカ成長モデル
   周辺より少し降伏応力が低い粒が物質の沈降場所sinkとして作用しゆっくりと膜から突き出る。

Buchovecky
  IMC形成による応力の広がりと弾性、塑性挙動と粒界拡散の影響。

  IMC成長と膜応力

   平均応力は定常状態となる、追加応力を生み出さない調整過程がある。

  弾性変形、塑性変形、粒界拡散の影響




  応力伝達への粒界拡散機構は柱状微細構造と不活性化酸化層に依存する。



  表面酸化膜がない場合


 Buchovecky

  ウィスカ成長期機構


  (*図の説明に誤り)
 (a):周りの粒より低い降伏応力の柔らかい粒機構
 (b):水平根元粒界の浅いウィスカ粒
 (c):傾いた根元粒界の浅いウィスカ粒

  ウィスカ成長動力学

   ウィスカ成長速度予測



   ひずみ速度(E)とウィスカ密度(N)を因子とする緩和機構と成長速度 



 Sn−Cu2層金属でのはしの影響 Reinbold

  構造
   酸化Si基材(375μm)/Cr(100Å)/蒸着Sn(1200nm)/Cu(600nm)


  位置とウィスカ密度、Cu濃度






  ウィスカはCu6Sn5から遠い場所でも発生する。






    Cu最上層領域のウィスカは頭にCu粒をもつSnウィスカ。
    頭のCu粒は粒界ファセットを示す。


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