(15−6−3) 拡散クリープ関係理論


@ 界面IMC形成反応による圧縮応力発生と酸化膜亀裂

 K.N.Tu 1973
  Cu−Snバイメタル薄膜のウィスカ成長の駆動力は相互拡散と反応による。

 K.N.Tu 1994
  IMC形成反応による体積変化で2軸圧縮応力がSn膜に発生。
  原子移動性が顕著に反応生成物と形態に影響。
  温度が100℃以上だとIMC形成が速くヒロック形成。
  ウィスカはSn表面の弱い点(表面の酸化物が破壊)で成長、弱い点が局在化した応力解放センター
 となり、これらはウィスカ成長に必要な長範囲応力勾配に取り囲まれている。


 Lee 1998
 ウィスカは結晶方位が膜の主要な結晶方位と異なる粒から成長。
 圧縮応力がSnの弾性異方性により生じた弾性歪により膜面に垂直に粒を搾り出す。



  圧縮応力が弾性歪により膜面に垂直に粒を搾り出す。




  転位運動が過剰な原子面をSn膜粒に形成。


  ウィスカは結晶方位が膜の主要な結晶方位と異なる粒から成長。
  圧縮応力がSnの弾性異方性により生じた弾性歪により膜面に垂直に粒を搾り出す。



  ウィスカは結晶方位が膜の主要な結晶方位と異なる粒から成長。
  表面酸化膜が粒界に沿ってせん断される。
  せん断応力は異なる粒に発生した異なる歪から生じる。
  異なる歪はSnの弾性異方性により発生する。
 
  Sn膜の圧縮応力を解放するために表面酸化物がせん断された粒からウィスカ成長。
  ウィスカ成長はBardeen−Herring転位源活動で制御される。
  転位網拡張は粒界で制約される。


 K.N.Tu 機構と抑制 (2005) 

  自発的ウィスカ成長は応力発生と応力緩和が室温で同時に起きるクリープ過程。
  ウィスカ成長に必要な3条件は
   SnでのSn室温自己粒界拡散
   室温でのCuのSnへの拡散とCuとSnとの反応によるCu6Sn5の形成とこれによるSnでの圧縮応力発生。
   安定で保護的なSn酸化物


  共晶SnCuは真っ直ぐで溝flutedがある。
  ウィスカ成長方向は多くはC軸。
  純SnまたはマットSnのウィスカは短く、ファセット。成長もSnCuめっきより遅く,成長方向もより無秩序。
  先端の形態が成長で変化しないので成長は根元から。
  圧縮応力の起源が熱あるいは機械的なものでは有限なので自発的・連続的成長はしない(Sn拡散ですみやかに緩和)、化学的力が本質。
  CuとSnの反応によるCu6Sn5形成による圧縮応力が駆動力。
  最初の応力状態が引張りであろうが圧縮であろうがそれは有限で、常温でのSn拡散で緩和される。
  その後の継続的化学反応による圧縮応力がウィスカ成長に必要。
 

 Schematic diagram of the cross-section of a whisker on a layer of eutectic Sn-Cu finish which contains the Cu6Sn5 precipitates.
 The surface of the finish and the whisker has oxide, except the root of the whisker where the oxide is broken.
 From the broken surface, vacancies can diffuse in and enables Sn atoms to diffuse.
 The diffusion of Cu into the volume V will expand the volume and generate a compressive stress.
  V領域の存在で格子面が移動し応力緩和。Snの粒界拡散でも応力緩和。これは酸化膜で抑制。
  ウィスカの根元だけが酸化物が破れ、空孔が拡散し、Sn拡散が可能となる。V領域へのCu拡散で体積が広がり圧縮応力発生。

 なぜ応力緩和がウィスカ成長によるのか。

  Al、Snのような保護酸化膜が成長する金属だけがヒロックあるいはウィスカが成長。
  局部的に成長するためには酸化膜の破れが必要。


  SnCuでは粒寸法とウィスカ径が関係。

  側面がのこぎり歯状、成長がなめらかでない、酸化物の繰り返し破れ。


 緩和策
  3つの不可欠条件
   室温でのSn中でのSnの粒界拡散
   室温でのSnとCuとの反応によるCu6Sn5形成
   安定な保護表面Sn酸化物
    Snウィスカ成長には小さな応力しか必要でない。(10MPaで拡散距離0.02μm程度)
  解決策はCuとSnの反応抑制。

  ウィスカ成長を抑制するには応力発生と応力緩和の結合をさせないこと、両方を除去すること。
  応力緩和抑制にはクリープ過程あるいはSn原子のウィスカへの拡散を抑制する必要がある。
  Cu量を多くし(2〜7%)粒界にCu6Sn5を析出させSn粒を被覆しSn拡散バリアとする。(Cu添加でCu溶出抑制にもなり、
 濡れもよい)



 K.N.Tu&Wu(2007)
 

  ウィスカの表面酸化物が横方向への成長を抑制する。
  ひずみエネルギーと表面エネルギーが釣り合ってウィスカ径がきまる。
      

  粒界拡散によるウィスカ成長速度



A 長範囲粒界拡散

 Hutchinson(2004),
  ウィスカ成長の駆動力は被膜の弾性応力から生じる。
  室温での速い成長速度論kineticsは粒界拡散による拡散制御成長で説明できる。


 Boettinger(2005),  → (15−5−8) ウィスカ形成とヒロック形成
  Tu、Hutchinsonらのモデルを基礎としたクリープ・モデル(BHTモデル)。
  応力解放は長範囲粒界拡散によりおき、粒界が拘束(ピン留め)されていればウィスカが生じ、可動であればヒロックが生じる。





 Tu、Hutchinsonモデル


 Ω:Snのモル堆積、ウィスカ距離2b、直径2a


 Osenbach(2009)
  固体拡散効果だけに依存(クリープ依拠理論)
   ウィスカ成長は長範囲粒界拡散クリープ緩和速度と短範囲クリープ緩和速度の比で制御される。
    これによれば
   ・成膜上がりの応力状態は本質的でない。
   ・べき乗則クリープ(転位スベリ・上昇による応力)緩和が支配する高応力部ではウィスカは形成されない。
   ・べき乗則クリープに必要なより低い準安定応力状態でウィスカ形成。
   ・粒界ピンニングなどのようなべき乗則クリープとそれと結びついた応力消失に影響することがウィスカ成長傾向を増大。
   ・ピンニングがウィスカ傾向と成長速度を増大させ、熱機械的特性には関係なく、Snの異方性拡散によりある結晶方向と
    粒寸法の膜がウィスカ成長しにくい。
  これで説明されるのは
   厚いまたは薄い膜より1−10μmのSn膜がよりウィスカ成長しやすい。
   CH、Cu、HなどのSn膜不純物がウィスカ傾向を増大。
   溶融膜よりめっき上がり膜がウィスカ成長しやすい。
   めっき後アニールが耐ウィスカ性を改善。
   100℃を越えるとウィスカ成長速度0に近づく。
   ウィスカ成長傾向のSn膜の結晶方位依存性。
   ウィスカ密度と潜伏期間の大きな統計的変動。

 (Wangによる紹介) 
  応力解放は長範囲粒界拡散により起こり、もし粒界がピン止めされているとウィスカ、粒界が可動だとヒロック
 となる。
  ピンニングは不純物偏析、表面酸化、自由表面でのピンニング、酸素粒界汚染。
  4つのクリープ機構(Nabarro−Herring(格子拡散)、Coble(粒界拡散)、Ashby−Coble(粒界拡散とすべり)、
 べき乗クリープ(転位すべりと上昇))を比較しBHTモデル(長範囲粒界拡散)が実験結果を説明できるとした。
  また格子拡散、粒界拡散とその異方性の影響を議論し、粒寸法と結晶方位、粒構造の影響を評価。
  格子拡散がピン留めを解除し、ある粒寸法以下では格子拡散がウィスカ成長を抑制する(格子拡散は十分速く、粒界が動く)とした。





  応力ひずみ予測によるBHTクリープとCobleクリープが等しい拡散距離は約2μmとする。


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