(15−7−4) JEDEC(JP002 2006年)とINEMI(4版 2006年)の緩和策
CALCE
関連産業規格
特性試験方法
環境受容要求
試験条件
受け入れ基準
以下、
JP002とINEMI推奨(
INEMI 06)の実践指針を簡単に紹介する。
JP002 現行Snウィスカ理論と緩和実践指導方針
<概要>
4.1 ウィスカ形成の主要原因
駆動力はSn膜の応力。
応力はSnめっき膜の組織texture、IMC、曲げ、成形などの機械的手段、熱機械的応力(CTE不適合誘起)、あるいは酸素拡散と
表面での酸化物形成、腐食などにより生じる。
圧縮応力が基本的で駆動力となる。
多くの場合圧縮応力のような反応の背後にある駆動力は拡散に基づいた緩和機構で除去、減少されるが、拡散や他の固相反応で
解放されない場合がある。また駆動力が継続的に再発生、更新される場合がある。
IMC形成、表面での酸化反応、温度サイクル、ある種の機械的拘束などがそうである。
応力は必要であるが十分条件ではない。
局部的的表面突出あるいはウィスカにはある種の好都合な結晶体微細組織が必要に見える。
分から十年単位といった潜伏期間の変化はこれらの特殊な結晶構造の核生成と十分な圧縮応力の蓄積に必要な時間を含む機構による
と思われる。
ウィスカ形成を引き起こす応力の主要原因はCu6Sn5の不規則成長と信じられている。
他はCTE不適合でたとえば42アロイでは特に顕著。
4.1.1 Cu6Sn5形成効果
Cu6Sn5形成による応力発生は2つの寄与因子でひき起こされると考えられる。
室温ではSnへのCuの拡散は粒界経由で進行しIMC形成。この結果Snの粒界に不規則Cu6Sn5成長。
室温より高い温度では(2/3Tm)格子拡散が顕著になる。
Sn膜と界面付近での圧縮応力形成の2つの学派
Cu6Sn5形成によるモル体積増加(SnとCuのモル体積に対する)。
Sn格子へのCuの侵入とそれに伴う下地Cuの空き空間発生。
高温では主要拡散機構が変化しこれでIMC層変化がもたらされる。
60℃以上ではCu3SnがCu6Sn5からCu6Sn5とCu層間に形成され、Cu3Snはモル体積が低く応力を付加しない。
格子拡散でより規則的IMC2重層が形成される。これが150℃熱処理緩和策の基礎。
典型的多結晶体で起きる主要拡散機構遷移の温度範囲模式図
(表面拡散、粒界拡散、格子(バルク)拡散の主要3拡散機構)
典型的多結晶体材料では応力緩和は拡散で起きる。3つの拡散機構の傾き、活性化エネルギー、切片は顕著に異なる。
Snウィスカが典型的におきる温度範囲−55℃≦T≦85℃では支配的拡散機構は粒界拡散が期待される。
従ってSnウィスカは粒界拡散で制御される。もし系がピン留めされていると拡散速度は空孔の流束で制限される。
表面酸化物の局部的破れは空孔を供給する。
粒界がピン留めされているので破れ近くの粒界に沿っての粒界拡散によってのみ圧縮応力部に存在する過剰Snは減少する。
約85℃(T
homo≧0.7)以上では格子拡散が支配し始め、熱的に発生した空孔が十分でピン留めが解消される。
そのため膜の過剰応力は再結晶や粒界成長のようなより広い機構で減少する。
応力だけではウィスカ成長は始まらない。ウィスカは一般的にSn層の特殊な粒に局在する。
4.1.2 不純物
めっき浴の不純物と他の欠陥がウィスカ形成の可能性を促進する。
CuとCが膜応力を圧縮状態にする。
4.1.3 酸化物形成と湿度
酸化物形成の役割はよく理解されていない。
湿度は明らかに酸素の表面から下方への拡散による応力をもたらす。
高湿は酸化膜の厚みに影響し圧縮応力をもたらす。
高湿で腐食がおき、追加的応力をもたらす。
4.1.4 凝縮と腐食
凝縮水分露出は腐食が手助けするウィスカ成長をもたらす。
過剰な局在表面腐食は非一様な酸化物形成をもたらし、Sn膜に付加的応力状態を課す。
凝縮水分と高温の結合はウィスカの局在的密集か個々のウィスカの加速成長をもたらす。
腐食領域に核生成が見られるリード端子の”黒点腐食”ウィスカは凝縮水分を除去した後でも成長を続ける。
水の蒸発、凝縮と結合した不純物偏析もまた加速ウィスカ成長効果をもたらす。
4.2 潜伏期間
潜伏期間は非常に予測し難い。
高応力下ではウィスカ成長は非常に速い。
他の場合数年経過してからウィスカが成長する。これは適当なウィスカ粒形成のための再結晶事象への要求による。
あるいは十分な応力蓄積のためにウィスカ成長が遅れる。
5 処理と基材への考慮
以下は優先あるいは相対効果順ではない。
5.1 非Snめっき
Ni/Pd/Au、Ni/Au、Ni/PdはSnウィスカ問題がない。しかし他の潜在的問題がある。
5.2 Sn合金めっき
5.2.1 Pb(3%以上)添加
5.2.2 Bi(2−4%)
Sn−Pb共晶はんだとで3元系低融点相を形成しないためには3−5%に制御する必要がある。
5.2.3 Ag(2−4%)
限られた試験では見込みがある。
5.3 下地材料
5.3.1 Ni(0.5μm以上)
厚みはリフローで完全に消費されない程度で端子成形に十分な延性がある程度。
Sn表面あるいはSnマトリクスに発する圧縮応力による機構には多分効果がない。
基材がセラミックなどのようなCTE不適合により発生する応力は解決しない。
5.3.2 Ag(2μm以上)
SnとCuの間のAg下地が提案されている。
しかし限られて試験データしかない。
5.4 熱処理
5.4.1 溶融(リフロー)Snめっき
溶融はめっき後の熱い油浴浸漬によるリフロー操作。
優れた実使用歴がある。
もしIMCが形成されると溶融の有効性が減少する。
幾何効果を考慮する必要がある。リフローで端子形状によりSnめっきが薄くなる。
5.4.2 PCBアッセンブリ工程でのリフロー
部品でのリフローSnめっきと異なり、有効性は示されていない。
実験ではウィスカ成長促進例もある。
5.4.3 アニール・マットSn
めっき24時間以内でのCu基リードフレームでの150℃、1時間熱処理。
効果は
規則的、連続的IMC層形成。
粒粗大化し粒界減少。
規則的いMC層がCu6Sn5のそれ以上のの成長のバリアとなり、不規則成長を抑制。
めっきによる応力を減少させ、格子欠陥を減少させる。
5.5 ホット・ディップSn
主に構造鉄鋼部品、コネクタ、リレーなどに採用される。
Sn−4Ag、SnAgCuによるディップが普通。
純Snでは有効でない証拠がある。
5.6 厚いSnめっき
産業データでは低発生傾向と潜伏期間増が示されている。
NiあるはAg下地なしでは7−10μmが推奨される。
NiあるはAg下地でははんだ付け性とNi完全消費が避けられる厚み。
5.7 化学エッチングCu合金
限られた試験で見込みがある。
エッチング深さは3〜4μm。
より詳しい技術の研究が必要。
5.8 絶縁被覆
短絡危険性を減少させる。
100μm以上の厚い被覆がウィスカ突き抜けの抑制、遅延効果があるが薄いとアセンブリで破れる。
他の緩和策と一緒に利用できる。
絶縁被覆はSn腐食も減少させる。
5.9 処理と表面配慮
5.9.1 引っ張り応力Sn膜
めっき上がりで引っ張り応力のSn膜でエージングで引っ張り状態が維持されるのは好ましい。
使用状態で圧縮応力は好ましくない。
5.9.2 バイアス電圧効果
バイアスの影響はまだ完全には理解されていない。
マットSnでの影響の具体的証拠はない。
限られた試験でブライトSnではバイアス電圧はウィスカ成長に影響する。
5.9.3 42アロイ
室温条件では基材に不規則さ(ギザギザ、鋭い端など)、がなければウィスカ形成は少ない。
熱サイクル試験では42アロイとSnの大きなCTE不適合によると思われるウィスカ成長が報告されている。
Pbフリーめっき選択肢は低空隙NiPdAuとSn(1−4%)Biめっき。
ただしFeとPdに電気化学電位差のため腐食の可能性がある。
5.9.4 SnCu合金
ウィスカ形成、成長を促進するので満足できない。
5.10 PCBと他の部品処理
5.10.1 置換Sn
置換Snは1μm以下の比較的薄い、応力のないSn膜。
PCBでのCuのはんだ付け性保護に主に利用される。
置換SnではIMCが表面に出て酸化することではんだ付け性が低下する危惧があり、最小厚み1μmが推奨される。
置換Sn導電配線でのウィスカ成長が室温条件で見られる。
バイアスで長いウィスカが報告されている(150μm)、表面実装部品パッド端で非常に小さいウィスカが報告されている。
ウィスカ緩和からはまず全表面がめっきされるべきで、更にはんだ付けで全膜が消費されることがウィスカ形成の可能性を除去する。
5.10.2 非Sn PbフリーPCB処理
1) OSP
2) 置換Ag
3) ENIG(無電解Ni/置換Au)
4) 無電解Pd
5) Ni/Pd/Au
6) DIG(直接置換Au)
5.10.3 PCB事前Sn化
HASLとウェーヴはんだ
INEMI 06
INEMI推奨
V 一般的ガイドライン
A. 一般的に利用できる緩和策(好ましい水準)
1. 非Snめっき
Ni/Pd/Auをリードフレーム用に強く推奨。
2. SnへのPb添加
3. CuとSnの間へのNi下地追加
厚み、空隙、延性が非常に重要。
Ni層が成形等で破壊、損傷すると有効でなくなる。
Sn浴の不純物、特にCuの制御が重要。
Ni上のSnはNiSn IMCの引っ張り応力の利点もあり、熱サイクルなどの圧縮応力を補償する。
4. めっき24時間以内の150℃、1時間のアニール
B.一般的にやや利用しにくい他の実行可能な緩和策(ほぼ好ましい水準)
5.ホット・ディップSn
Sn−4AgあるいはSnAgCu
6. めっき後すぐの溶融Snめっき
7. SnAgめっき(2−4%Ag)
8. Sn−Bi(2−4%Bi)
C. 一般的に避けるべき処理
9. Ag表面処理
多くの環境ではウィスカ成長しにくいが、H2Sが存在するとAgデンドライトの速い成長、ある場合には
Agウィスカが形成される。
またエレクトロマイグレーションとはんだ付け性シェルフ寿命の問題の可能性から避けられる。
10. Sn−Cuめっき
11. Cu、Niバリア層のない黄銅へのSnめっき
もし下地をCuにするならCu上Snに対する追加的緩和策を推奨。
最低厚みはCu、Niで1.27μm。
12. ブライトSn
一般的には推奨されないが、特殊な場合実行可能な解決策。
Niバリア層がない場合やはんだ付け(IC、受動部品など)には推奨されない。
非はんだ付け用途ではNi下地と低C量ブライトSnめっきでウィスカ成長が抑制される。
Niは全部品表面で連続で非多孔性でなければならない。
歴史的にはブライトSnはマットSnよりウィスカ成長に良くないと見られている。
ブライトSnは典型的にはC>0.8%でマットより圧縮応力が高い。
伝統的マットSnは大きな粒でブライトSnより低C量である。
しかし新しいブライトSnは低C量で低応力のものが商業的に利用できるそうである。
粒寸法とC量のウィスカ形成促進の役割には議論がある。
D. もっと研究の必要な緩和策
13. Ag下地
14. 多くの水平および斜角粒界をもつ非柱状粒構造(等軸粒構造)
拡散による圧縮応力現象促進によりウィスカ成長を減少あるいは除くとされる。
確信するデータが限られている。
15. めっき前のCu合金の表面化学エッチング
E. 利用での問題
16. Snめっきの腐食
腐食(典型的には水の凝縮による激しい酸化)は圧縮応力の顕著な源であると理論付けされており、ウィスカ成長を駆動しうる。
腐食が大きな問題の用途では絶縁被覆や非Snめっきのような追加配慮な考慮されるべきである。
17. 継続的機械的圧縮応力が印加される応用(フレックス・ケーブル・インタコネクタのゼロ挿入力コネクタなど)
18. 顕著な熱サイクルが起きる応用(パワー・サイクル、屋外利用など)
下地めっきやアニール処理はIMC形成によって生み出される応力にだけ有効で熱サイクル用途には有効でない。
19. 42アロイ
激しい熱サイクル用途には42アロイ(Fe−42Ni)使用は注意。Sn(1−4%)Biが見込みがある。
低空隙NiPdAuが少なくとも1リードフレーム供給者より利用できる。
20. 置換Sn
ウィスカ成長が報告されているが典型的には長さ20μm以下に限られている。
はんだ付け性シェルフ寿命のため一般的には電子部品の表面処理には不適だが、PCBではPbフリーの選択1候補。
21. 鉄鋼上へのSnめっき
鉄鋼上へのSnめっきではSnウィスカ危険性を下げるため緩和策を採るべきである。
5μm厚み以上のマットSnと180℃、1時間のアニール併用緩和策などが推奨される。
Ni下地の有効と報告されている。
鉄鋼と黄銅上Snに対するアニールも古くから報告され適当であると思われる。
アニール温度は100−190℃と変化し時間は9時間(100℃)から1時間(190℃)と変化。
F. 更な配慮と推奨
22. 回路基板アセンブリ・リフロー
回路基板アセンブリ・リフローを緩和策とは認識しない。
公開文献で合意はない。
ルーズな部品ではウィスカ成長を示唆する文献がある。
はんだ付けされた部品でのウィスカ成長もある。
ある表面での部分的リフローはウィスカ成長を増加させる可能性がある。
23. 厚いSn処理
産業データでは熱いSn処理は低Snウィスカ傾向と大きい潜伏期間を示す。
Ni、Ag下地がない場合の部品では少なくとも公称10μm(最低8μmが好ましい)推奨。
Ni、Ag下地でははんだ付けシェルフ寿命確保のため厚みは最低2μm。
Ni下地部品ではNiは空隙(孔)がなく最低厚さ0.5μm。
Ag下地部品ではAgは最低厚み2μm。
24. 絶縁被覆
25. マクロ応力
Sn膜のマクロ応力はウィスカ成長に影響がある。
めっき上がりで引っ張り応力でエージングでも引っ張り応力であるのが好ましい。
使用中に圧縮的であるSn膜は好ましくない。
26. バイアス電圧、電流
27. データ収集
W 電子部品リードと端子処理
電子部品リードと端子処理とは電子部品の適用されたはんだ付けのための処理。
X 着脱コネクタ
[ 印刷回路基板(PCB)
置換SnはSnウィスカを形成する可能性があり、置換Agは硫化銀デンドライトを形成する可能性がある。